住宅購入に際して、広く利用されているのは担保が必要な住宅ローンだが、担保が不要な「無担保住宅ローン」もある。こちらは、住宅ローンと比べて金利がやや高い。さらに借入額の上限が低く、借入期間も短いなど制限があるが、リフォーム費用やセカンドハウス購入費用など、さまざまな用途で利用される。そんな「無担保住宅ローン」について詳しく解説していこう。(フリージャーナリスト:福崎剛)
「無担保住宅ローン」とは?
通常の「住宅ローン」では、不動産を担保にして融資を受ける。万が一、ローンの返済ができなくなった場合、金融機関が土地・住宅を差し押さえ、住宅ローン残債に充てるためだ。
しかし、担保が不要な「無担保住宅ローン」という商品もある。その名の通り土地・住宅を担保に入れることなく、融資を受けられるのが大きな特徴だ。
担保が必要な住宅ローンと無担保住宅ローンの違いは、大きく以下の5つがある。それぞれの違いは図表1のとおりである。
① 担保の有無
② 金利
③ 借入期間
④ 借入金額
⑤ 取扱銀行・金融機関
図表1:無担保住宅ローンと住宅ローンの違い
住宅ローン | 無担保住宅ローン | |
---|---|---|
担保の有無 | あり | なし |
金利 | 超低金利※ | やや高め※ |
借入期間 | 最大35年〜50年※ | 25年以内※ |
借入金額 |
最大2億円※ (フラット35は8000万円) |
住宅ローンより低い※ |
取扱金融機関 | 多い |
少ない (リフォームローンとして |
※は金融機関によって異なる |
無担保住宅ローンは担保が不要なため、万一、返済が不可能になった場合は差し押さえる担保がない。そのため、一般的な住宅ローンより融資のリスクが増すため、金利は高めで、借入期間も短めに設定されている。なお、金利に関しては、銀行・金融機関で異なる。
無担保住宅ローンを取り扱っている銀行・金融機関によっては、その資金用途が異なっており、「無担保住宅ローン」と言いながら、他行で借りた住宅ローンの借り換え専用であったり、リフォームローンと位置づけている場合もある。
無担保住宅ローンの資金用途は?
無担保住宅ローンは、通常の住宅ローンを利用できない人が利用するケースが多い。銀行・金融機関によって規定は若干異なるが、おおよそ下記の用途が考慮されている場合が多い。
・土地付き住宅(新築・中古)の購入
・住宅用土地購入
・新築・増改築(リフォーム)費用
・諸費用の支払い資金
・インテリア・家電購入費用
・住宅ローンの借り換え資金
※銀行・金融機関により、リフォームのみに利用できないなどの制限がある
それぞれの用途について、詳しく見ていこう。
土地付き住宅やマンション(新築・中古)の購入
すでに自身が居住している住宅があり、その物件の住宅ローンを支払っている人が、セカンドハウスや別荘などを購入する際、一般的な住宅ローンを利用することはできない。こういったケースでは、無担保ローンが活用できる。
このようなケースの場合は、新築か中古か、戸建てかマンションか、といったことは問わない。
住宅用土地購入
宅地を購入する際に、通常の住宅ローンが使えない場合は、無担保ローンを使うことができる。土地購入にあたっても担保が不要だが、住宅ローンより金利は高めに設定されている。
新築・増改築(リフォーム)費用として
住宅の購入のほか、増改築(リフォーム)の費用にも使えるのが無担保住宅ローン。資金用途が広く、使い勝手がよい。ただし、無担保住宅ローンとは別に、リフォーム専用ローンとして用意している銀行・金融機関も多い。
諸費用の支払い資金
無担保住宅ローンは、その資金用途が広く設定されているのも特徴だ。
不動産の購入や、建て替えによる空き家の解体費用、その手続きにかかる諸費用(印紙代、登記費用、仲介手数料、住宅性能評価の費用、設計監理料、土地造成費用、解体工事費用など)にも使うことができる。
インテリア・家電購入費用
無担保住宅ローンは、住宅取得に伴い必要となったインテリアや家電製品の購入費用としても活用できる。なお、銀行・金融機関によっては、資金用途や金額制限がされている場合があるので注意しよう。
住宅ローンの借り換え資金
他の銀行・金融機関で借りている住宅ローンの借り換え資金、および繰り上げ完済手数料として使うことも可能だ。
担保となる不動産の価値が目減りしており、住宅ローン残高よりも少ない場合は、通常の住宅ローンへの借り換えは難しいが、無担保住宅ローンなら借り換え可能となることもある。
かつての住宅ローン金利はかなり高かったので、無担保住宅ローンの金利が高いといっても、借り換えメリットが出やすい。
無担保住宅ローンには、借り換え専用やリフォーム用もある
無担保住宅ローンと一口に言っても、すでに説明したように銀行・金融機関によって用途範囲は異なる。
たとえば、イオン銀行では2011年10月31日から、「イオン銀行無担保住宅借換ローン」の取り扱いをしているが、こちらは公的ならびに民間銀行・金融機関からの住宅ローンの借り換えのみを対象にしている。このように用途が限定されている場合もある。
ちなみに、イオン銀行ではリフォーム用住宅ローンに関して、リフォーム規模などによって使い分けるプランが用意されているので、ここで簡単に紹介しておこう。
イオン銀行では、一般的な住宅ローン(有担保)の中のひとつとして「住宅ローン・リフォーム活用プラン」(有担保)があり、これとは別に、担保不要の「リフォームローン(無担保ローン)」がある。
リフォームだけをしたい場合、審査も早く担保も不要な無担保リフォームローンの方が利用しやすい。ただし、金利が住宅ローンより高く、借入金額や借入期間も短い。
一方、「住宅ローン・リフォーム活用プラン」は、住居を購入と同時にリフォームをする場合など、全体の費用が大きくなる場合におすすめだ。担保は必要になるが、借入金額、借入期間も金利も金利は住宅ローンと同じになるメリットがある。デメリットは、審査の時間や手数料がかかることだろう。
【図表2】イオン銀行のリフォームプラン比較表(無担保ローンなど)
イオン銀行 リフォームローン |
イオン銀行住宅ローン リフォーム活用プラン |
イオン銀行住宅ローン | |
借入金額 | 30万円以上500万円以下 | 1億円以内 | 1億円以内 |
借入期間 | 1年以上10年以内 | 1年以上35年以内 | 1年以上35年以内 |
金利 | イオン銀行リフォームローン金利(全期間固定金利) | イオン銀行住宅ローン金利 (変動/当初固定型) |
イオン銀行住宅ローン金利 (変動/当初固定型/フラット35) |
団体信用生命保険 | なし | あり(8大疾病保障も選択可) | あり(8大疾病保障も選択可) |
担保/保証人 | 不要 | 担保が必要 | 担保が必要 |
手数料 | 不要 | 定額型:110,000円(税込) 定率型:借入額×2.20% ※最低取扱手数料 220,000 円(税込) |
定額型:110,000円(税込) 定率型:借入額×2.20% ※最低取扱手数料 220,000 円(税込) |
書類審査 | 短い | 一定の日数が必要 | 一定の日数が必要 |
付随特典 | なし | あり(毎日5%OFF) | あり(毎日5%OFF) |
用途 | 軽微なリフォーム、太陽光発電システムの導入 | 増築・改築、借換+軽微なリフォーム、借換+太陽光発電システムの導入 | (1)住宅の新築・購入資金 (2)住宅の増改築・改装資金 (3)住宅ローンのお借換え資金 (4)上記にかかる諸費用 |
ただし、多くの銀行・金融機関では、「無担保住宅ローン」の中にリフォーム用途が含まれているため、イオン銀行のように用途別に細かく分けていないことが多い。利用を検討する場合は、複数の銀行・金融機関の無担保住宅ローンを比較するといいだろう。
【関連記事はこちら】>>リフォームローンを借りるのならば、住宅ローン借り換え時に一括借入するのがお得! リフォーム費用も貸してくれる銀行はどこ?
【関連記事はこちら】>>イオン銀行の住宅ローンの口コミ・金利・手数料は?
担保に関する審査がないため、融資までの時間が短い
「住宅ローンの仮審査で基準となる21項目を徹底解説! 本審査までの流れや必要な書類とは」の記事でも解説したように、住宅ローンの審査は、仮審査・事前審査と本審査の2段階に分かれ、申込から融資実行まで1カ月半ほどかかることもある。では、無担保住宅ローンの場合は、どうだろうか?
無担保住宅ローンでは、担保評価をする必要がないため、担保に関わる審査の項目が減り、審査スピードは格段に速いといわれる。無担保のため、担保となる土地・住宅の抵当権設定が不要で、その手続きに必要な費用がかからないことも無担保住宅ローンのメリットだろう。
一方、担保がないため、申込人の属性に関しての審査が中心となり、年収や勤続年数などがより重視されるほか、住宅ローン以外のローンやクレジットカードのキャッシングによる借り入れはないか、返済遅延がないかなど、過去の借入返済状況について厳しくチェックされることがデメリットとも言えるだろう。
【関連記事はこちら】>>担保不足で、住宅ローンで減額された? 不動産の担保評価方法を徹底解説
無担保住宅ローンの金利はやや高く設定されている
現在の住宅ローンは超低金利で、特に変動金利(表面金利)は0.4%台の金融機関も多い(2023年9月時点)。しかし、無担保住宅ローンの金利は、担保が必要な住宅ローンよりもやや高く設定されている。
では、どれくらい差があるのだろうか。
たとえば、2023年9月、群馬銀行の無担保住宅ローンは、0.975%(変動金利、割引後)となっているが、有担保の住宅ローンでは、0.65%(変動金利、割引後)となっており、同じ銀行・金融機関でも0.325%の金利差がある。
千葉銀行の無担保住宅ローンは2.0%(変動金利、割引後)、住宅ローンの金利は0.725%(変動金利、割引後)となっており、金利差は1.275%にもなる。要するに、無担保ローンの金利は高めに設定されていることが分かる。
図表3のように、城南信用金庫、群馬銀行、千葉銀行、近畿ろうきんの無担保住宅ローンを比較しても、金利の違いに幅がある。また、借入額の上限も有担保の住宅ローンより少なく、銀行・金融機関によって異なるが、1000万円〜2000万円になっている。さらに、借入期間も短い。
【図表3】無担保住宅ローン、4銀行・金融機関を比較(2020年8月)
城南信用金庫 | 群馬銀行 | 千葉銀行 |
近畿ろうきん |
|
借入金額 |
2000万円 |
50万~1000万 |
1500万円 |
2000万円 |
借入期間 | 25年 | 3〜15年 | 20年 | 25年 |
金利(変動金利) | 2.50% | 0.975% | 2.0% |
1.95%(会員組合員) 2.23%(生協組合員) 2.45%(一般勤労者) |
金利(固定金利) | 3.70%〜 4.00% (融資期間25年の場合) |
1.40%(3〜5年) 1.65%(5〜10年) 1.75%(10〜15年) |
4.35% | 2.90%(会員組合員)
3.18%(生協組合員) 3.40%(一般勤労者) |
団体信用生命保険 | 融資金額が1,000万円超で団体信用生命保険を付さない場合、法定相続人1名の連帯保証が必要 | 団信付き | 団信付き | ー |
担保 | なし | なし | なし | なし |
保証料 | 融資金利に含む | 4,580円~29,953円 | 不要 | 融資金利に含む |
手数料 | 11,000円(税込) | 55,000円(税込) | 返済条件の変更には、手数料 5,500円(税込)が別途必要 | 11,000円(税込) |
担保が不要で借りやすい一方、リフォームなどで利用する場合は、借り過ぎて返済負担を大きくしないことも無担保住宅ローンを上手に使うポイントだろう。利用する場合は、しっかりと返済計画を確認した上で、複数の銀行・金融機関の中から自分の用途に最適な無担保住宅ローンを選びたい。
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無担保住宅ローンのメリット・デメリットは?
無担保住宅ローンについて理解いただけただろうか。最後に、メリット・デメリットを整理しておこう。
メリット
・セカンドハウスや別荘の購入、住宅用土地購入など、通常の住宅ローンを利用できない場合に、無担保住宅ローンなら融資を受けられる
・インテリア・家電購入費用や住宅ローンの借り換えなどにも利用でき、資金用途が広い
・(有担保住宅ローンに比べて)審査が速い
・担保となる土地・住宅の抵当権設定が不要で、その手続きに必要な費用がかからない
デメリット
・(有担保住宅ローンよりも)金利が高い
・(有担保住宅ローンよりも)借入期間が短い
・(有担保住宅ローンよりも)最大借入可能額が小さい
・銀行・金融機関によっては手数料が発生する場合がある
・担保に関する審査はないが、属性に関する審査が中心になり、ほかのローンやクレジットのキャッシングなどの借り入れ、返済状況などがより厳しくチェックされる
・銀行や金融機関によって、資金用途や金額制限がある
無担保住宅ローンを申し込む前に、これらのメリット・デメリットをよく理解しておくことが大切だ。なお、無担保住宅ローンの場合でも、金利比較だけでなく、手数料など諸費用すべてを含めた実質金利で比較検討したい。
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