住宅ローンを借りる際、悩みのタネになるのが銀行・金融機関選びでしょう。特に地方在住の人は、メガバンク、ネット銀行のほかに地方銀行という選択肢もあります。そこで、勤続30年以上の銀行員である私が、地方における銀行・金融機関の選び方を3つのポイントから解説します。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
銀行選びのポイントは3つある
住宅ローンを借りる銀行選びのために公式サイトを見ても、選び方のポイントを知らなければ正確な比較は困難です。なぜなら、各行にとって住宅ローンの融資は「商売」のため、どのサイトを見ても「わが社が一番」と自社商品の優位性を強調しているからです。そこで、こうした“商売っ気”を一切排除した、銀行選びのポイントを3つ紹介します。
<地方における銀行の選び方3か条>
- 1.店舗の「格」で選ぶ
- 2.住宅ローンへの「熱量」で選ぶ
- 3.返済に困ったときの「やさしさ」で選ぶ
では、それぞれ解説していきます。
選び方その1.店舗の「格」で選ぶ
実は、銀行内部で支店にも「格」、つまり上下関係があります。
たとえば、地銀や信金の場合、支店の規模や立地などではっきりとランクが分かれています。なかでも、地域の中心となる大規模店は「中核店」「基幹店」と呼ばれ、融資金額や審査の決裁などで、「小さな銀行」と言えるほどの権限があります。これが「本店」ともなれば、さらに権限は大きくなります。
一方でメガバンクの場合、あくまで本店は東京にあり、地方でも中核と位置づけるのは大都市圏(大阪、横浜、名古屋など)だけ。それ以外は、たとえ県庁所在地でも「地方の支店」とされ、支店の「格」は下がります。
つまり、メガバンクでは大都市圏以外はすべて「田舎の支店」ということになり、融資の取り扱いや決裁権などが制限されます。
では、地銀や信金で権限の大きい「格上の店」と、メガバンクの「田舎の支店」のどちらを選べばいいか?
私なら地銀や信金の「格上の店」を選びたいです。
融資金額や審査の決裁などを支店独自で持っていれば、本来だったら審査に通らなかった人が住宅ローンを借りられる可能性があります。また、希望する借入額が満額認められなくて困っている場合も、「担保を追加したり、保証人を追加したりすれば満額借りられますよ」などといった柔軟な対応も可能です。
ぜひ、格上の店を探してみてください。住宅ローン相談を専門に取り扱っている住宅ローンセンターがある場合は、それでもいいでしょう。
選び方その2.住宅ローンへの「熱量」で選ぶ
銀行選びの次の「ものさし」は、住宅ローンへの「熱量」です。「熱量」と言っても分からないと思うので、ここは「すでに住宅ローンを借りている人が自行に金利引き下げを要望したときの対応」から「熱量」を推し量りたいと思います。
そもそも住宅ローン金利は人によって違うため、自分が利用している住宅ローンの金利が高いと感じたなら、ほかの銀行で借り換えるのはよくある方法です。
しかし、その前に現在取引している銀行と金利の引き下げ交渉をしてみると、住宅ローンへの「熱量」が分かります。実際にみなさんが金利の引き下げ交渉をできるわけではないので、各金融機関がどんな対応をするかを解説していきます。そこから「熱量」を推し量ってください。
メガバンクの場合
メガバンクの基本姿勢は、「来る者は拒まず、去るものは追わず」です。
なぜなら、メガバンクは人気が高く、少しくらい他行に借り換えられたとしても代わりがいくらでもいるからです。そのため、「金利の引き下げ交渉に時間とお金を費やすより、新規ローンを獲得したほうが効率がいい」というスタンスでいることが少なくありません(*あくまで、銀行員としての経験をもとにした筆者の個人的見解です)。
このように、メガバンクは基本的に金利の引き下げには消極姿勢なので、希望してもどこまで取り合うかは正直疑問です。
もちろん、金利引き下げに応じてくれる場合もありますが、地方銀行や信用金庫ほど必死ではないので、それなりの対応になる可能性があります。
ネット銀行の場合
ネット銀行は非対面、ネット完結で人件費などの経費を抑えることで、住宅ローンの低金利を実現しています。
だから、とまでは言い切れませんが、「借りたあとに何かを変更する」のも原則としてネットを通じて自分で操作します。しかし、ネットでの操作メニューには「金利引き下げ」の文字はありません。
具体的に金利引き下げを交渉するには、メールか電話で「金利が高いから、なんとかしてよ」と相談することが考えられますが、冒頭の通り対面の手続きを省略するのがネット銀行なので、銀行員と向き合わなければできない「交渉」に関することについては積極的には応じてくれない可能性があります。
地方銀行の場合
地方銀行と信用金庫は、金利引き下げに真剣に対応してくれる、というより必死につなぎ留めようとします。「一度付き合ったお客様は、最後まで放したくない」というのが本音です。
なぜなら、地方銀行は地域間で競争が激しいから。再編の真っただ中にいる地方銀行であればなおさらです。
ただし、地方銀行の場合はただ金利を下げてと言ってもあまり効果はなく「材料」が必要になります。金利を引き下げることは、銀行にとっては当然損失であるからです。
たとえば、他行から提案を受けた「提案書」を持参すれば効果は絶大です。それがなくても、現在取引している銀行より低金利な銀行を探してきて、「こっちの方が低いんだけど……」とサイトを見せるだけでも効果があります。
信金・信組の場合
信金・信組になると、必死度はさらに高まります。
私のお客様を通じて聞いた話ですが、信金・信組ではエビデンスすら不要で、「下げて!」と言えば金利をすぐに引き下げようと動いてくれるようです。
住宅ローンの新築案件や借り換えなどを獲得するには、銀行・金融機関同士の競争だけでなく、営業努力も非常に重要です。規模が小さいほど新規案件獲得のハードルは高くなるので、今の顧客を離したくないという思いが一番強いのが、信金・信組というわけです。
「熱量」で選ぶなら、地銀か信用金庫
メガバンクと違って、地方銀行や信用金庫は「去るものは追わず」などとは言っていられない競争状態なので、金利引き下げへの感度、つまり顧客を手放したくない熱量が高いです。
また、新規に借りる場合も親身に相談に乗ってくれるだけでなく、「将来、金利が下がっているので、借り換えようかな」と考えた場合に、金利引き下げに応じてくれる可能性が高いです。住宅ローンへの「熱量」という観点で選ぶなら、地方銀行か信用金庫となります。
【コラム】金利交渉は明文化されていない
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ちなみに、銀行で住宅ローンを利用中に金利を引き下げるのは可能ですが、それを公表しているところはまずありません。
理由は単純で、わざわざ「うちは利用中の住宅ローン金利を下げられます!」と手の内を明かすのは損だからです。
では、なぜ金利引き下げに応じてくれるのか。それは、金利に不満な顧客が借り換えで他行に移られてしまったら困るからです。顧客をつなぎとめるために、仕方なく金利を引き下げているというのが実態です。
そして、金利引き下げに対する金融機関の違いは、どこまで頑張れるか?という「熱量」の差になります。
なお、金利引き下げの対応をしてもらえるのは、正常に返済できている人だけです。収入が減ったり転職したりなどで、返済が遅れている人は金利引き下げには応じてもらえないのが原則です。
【関連記事はこちら】>>銀行が住宅ローン借り換えに必死なのは、他行のシェアを奪える「倍返し」施策だから!
選び方その3.返済に困ったときの「やさしさ」で選ぶ
すべての銀行に共通して、住宅ローン返済に困った顧客のために、返済は柔軟に支援するという内容を公式ホームページで公表しています。
住宅ローン返済に困った場合、各銀行の対応にどのような違いがあるか。その時の「やさしさ」の差がポイントとなります。
メガバンクの場合
メガバンクの対応は基本的にWEB、または電話です。直接店舗に出向く場合も、WEBや電話で事前予約を取ってからというのがスタンダードになりつつあります。
地方銀行などでもこれは同じですが、メガバンクは電話での相談がかなり長く続き、なかなか面談して話を聞いてもらえない傾向にあるようです。
メガバンクはどうしても動きが遅くなりがちなので、返済に困りそうなら早めに相談する方がいいでしょう。
ネット銀行の場合
ネット銀行もメガバンクと同様、返済に困った場合の相談はWEBが基本です。そもそも、ネット銀行は非対面が大原則なので、当然でしょう。
とはいえ、WEBの説明を見ると、メガバンク同様か、それよりも動きが遅いように感じてしまいますので、やはり早めに相談したほうがよさそうです。
以下は、住信SBIネット銀行のサイトに記載されていた、Q&Aです。
地方銀行の場合
地方銀行では、メガバンクやネット銀行と比べてもう少し顧客目線に立っているようです。
「返済の期限を延長する」などの表現を明記している十六銀行の例を見ると、地方銀行なら具体的にサポートしてもらえそうです。
Q. 住宅ローンの返済額は減らせますか?
A. 返済額を減額したい場合は、繰上返済あるいは借入期間延長などの借入条件変更により取扱いできます。期間延長には所定の審査が必要となりますのでお取引店へご相談ください。別途手数料がかかる場合があります。
信金・信組
さらに顧客目線の強い信金や信組は、より親身な対応になっているようです。
ご返済条件変更手続きについて お客さまのご事情に応じて、ご返済条件の変更(返済額の増減、お借入期間の短縮・延長)などのご相談を承っております。
例えば
ご返済用預金口座の変更
増額返済の一部または全部を毎月返済部分へ切替える
ご返済が困難となった場合:ご返済額の減額、お借入期間の延長
毎月のご返済日の変更
ライフイベントに合わせたご返済額の増額、お借入期間の短縮
繰上げ返済により短縮した返済期限を短縮した範囲で延長する
など
とりあえずの連絡先は店舗かフリーダイヤルですので、ハードルは低そうです。相談に乗ってもらえる内容も細かく説明されているので、これなら気軽に問い合わせできると感じます。
返済に困ったときの「やさしさ」で選ぶなら地銀、信用金庫
月々の返済を減らすには、今の状況や家計の収支などを聞き、対応を考える必要があります。
湖東信用金庫の例を見ればわかるように、ローン返済に困ったときの具体的な対処法まで示してくれているのは、「返済に困った人の話は前向きに聞く」という姿勢の表れと感じられます。
銀行員から見ると、引用した湖東信金の内容は「ウチは返済に困ってもちゃんと対応しますので、困ったらいつでも相談にきてくださいね!」と言っているようなもので、思い切った対応だと感じ入っています。
というのも、そもそも住宅ローン返済の相談や対応などは、利益を追求する銀行では積極的に取り組みたくはない、後ろ向きな業務だからです。
そう言った意味で、「やさしさ」を重視するなら、小規模な銀行・金融機関を選ぶといいでしょう。
まとめ
今回は銀行・金融機関別に、地方在住ならどこを選ぶべきかについて語ってきました。
いろいろ述べましたが、最終的にどの銀行・金融機関を選ぶかは、個人の自由です。
メガバンクの知名度や安心感を選ぶのもよし、小回りが利いて親身に対応してもらえそうな地銀、信金・信組を選ぶのもよし。もちろん正解はありません。
ただ、どれを選んだらいいかわからないときには、「メガバンクなら安心だろう」となんとなく決めるのではなく、長い目で見て「金利引き下げや返済など、もしなにかあった時にしっかりと向き合って対応してくれるか」という観点があることを覚えておいてください。
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