住宅ローン金利が上昇するなか、変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか。現時点で数字上は変動金利が有利に見えますが、その優位性は不確かなシナリオの上に成り立っています。金利の水準だけでなく、自分の年齢・収入・物件特性まで踏まえた判断が求められる局面にあるといえます。(公認会計士・千日太郎)
金利上昇局面で住宅ローン金利をどう選ぶ?
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
住宅ローンの変動金利は、すでに多くの銀行で1.0%から1.2%程度に上がってきている一方、フラット35は住宅金融支援機構が上昇抑制を縮小しつつあります。
こうなると、変動金利が得なのか固定金利が安全なのか、どちらを選ぶべきかという問いが一気に真剣味を帯びてきます。
ここで注意したいのは、今の局面はどちらかが一方的に有利という状況ではないということです。
金利だけを見れば、現時点では変動金利が低くなりやすい。しかし、固定金利には金利上昇リスクを切り離して生活基盤を安定させるという、数字に出にくい価値があります。
だからこそ、今は金利の低さだけで決めるのではなく、自分の前提と将来の対応力を含めて考える必要があります。
フラット35は上昇傾向だが、まだ低金利水準
まずは直近のフラット35の上昇傾向をみてみます。4月の住宅金融支援機構債の表面利率は前月から0.18ポイント上昇して2.97%となりました。背景には10年国債利回りの上昇があります。
ここで同時に見ておくべきなのは、住宅金融支援機構が依然として逆ザヤでフラット35を提供しているという点です。逆ザヤとは、機構が2.97%で資金を調達しながら、それより低い金利で住宅ローンを貸しているということです。
2026年2月まではこの逆ザヤ幅が0.52%まで拡大しましたが、3月を境に0.4%、4月は0.3%と縮小してきました。つまり、これまでの異常な低金利状態を少しずつ正常化する方向に動いているわけです。
今後、10年国債利回りの上昇と逆ザヤの縮小が同時進行していけば、フラット35は4月の2.49%から2.70%へ、そして3%台も見えてくることになります。2008年秋のリーマン・ショック直前のフラット35は、団信込みで3.3%前後でしたので、リアルな水準です。
ただし、上昇傾向にあるとはいえ、フラット35は依然として政策的に低く抑えられた金利水準であり、この点を見落としてはいけません。また「子育てプラス」という年最大1%の引下げの補助金制度もあります。まだフラット35はゼロ金利時代を引きずった、低金利水準です。
【関連記事】>>フラット35の金利、手数料を徹底比較【最新版】 おすすめの銀行は?
変動金利はすでに新しいスタートラインに立っている
変動金利は昨年12月の日銀利上げを受けて、すでに4月に見直しを行った銀行が多く、5月に見直しを予定している銀行もあります。各行の営業方針によって引き上げ幅には差が出ていますが、現状の水準としてはおおむね1.0%から1.2%程度で見ておけばよいでしょう。重要なのは、この金利水準が到達点ではなくスタートラインだということです。
日銀の利上げ幅は1回につき0.25%です。これまでの利上げペースは半年に1回程度であったことから、今後2年で4回の追加利上げを行うことは想定の範囲内と考えられます。つまり、1.0%程度の上昇があるとすれば、変動金利の最終到達点は2.0%から2.2%前後が一つの目安になるということです。
これから変動金利を考える人に向けては、今の1.0%前後ではなく、1年から2年で1.5%〜2.0%前後まで上がった状態を前提にして考えておくことをおすすめします。上がると決まったわけではないが、上がってもおかしくはないというニュアンスで捉えてください。
変動金利と固定金利でシミュレーション
ここで、標準的な前提を設定して、具体的な金額を試算します。
【比較条件①】標準ケース
- 36歳、定年65歳、定年で一括返済する
- 借入額:4,500万円、35年、元利均等返済、ボーナス払いなし
- 変動金利:当初2年1.2% / 残り33年2.2%
- フラット35(子育てプラス4ポイント):当初5年1.67% / 残り30年2.67%

毎月の返済額では、平均的に約1万円変動金利の方が低くなり、総返済額では変動金利が約6,398万円、フラット35が約6,702万円で、変動金利の方が約303万円低くなります。
ただし、フラット35は子育てプラスのポイント数で当初の引下げ金利・期間が大きくなることに加え、保証型を選び団信不加入を選択するなどして金利を下げる方法があります。その条件で比較します。
【比較条件②】フラット35の金利引下げ最大活用ケース
- 36歳、定年65歳、定年で一括返済する
- 借入金額4,500万円、35年、元利均等返済、ボーナス払いなし
- 変動金利:当初2年1.2% / 残り33年2.2%
- アルヒスーパーフラット8、団信不加入(子育てプラス8ポイント):当初10年1.27% / 残り25年2.27%

そうすると毎月の返済金額に有意な差はなくなり、総返済額では変動金利が約6,398万円、フラット35が約6,111万円で、フラット35の方が約288万円ほど低くなります。
ただし、フラット35では団信不加入としている分、別途生命保険に加入するのでそのコストを踏まえると、ほぼ同じくらいの水準になるでしょう。
まとめると、特にフラット35に振り切った選択をしない限り、単純な損得で見れば、変動金利がお得、という結論になります。
変動金利の優位性は、想定通りに金利が進んだ場合の話に過ぎない
ただし、上記のシミュレーションは金利が想定通りに動いた場合の数字です。もし、変動金利が想定よりも上振れして、2.2%ではなく2.7%程度まで上がれば、総返済額は約6,826万円となり、フラット35の6,702万円を123万円超えてきます。変動金利の優位性は、今の不確かなシナリオの上に成り立っているものです。
ここを見落としてはいけません。変動金利は、今の数字だけ見れば低い。しかしその低さは、将来の上振れリスクを自分で引き受けることと引き換えに得ているものです。
固定金利の価値は、支出を固定できることにある
一方、固定金利のメリットは、今後の金利動向にかかわらず、住宅費を固定できることです。
毎月の返済額が読める、将来の支出計画が立てやすい、住居費が上がるかもしれないという不安を抱えなくて済む。このメリットは貨幣単位に換算できないため、総支払額の比較表にはそのまま表れません。
先ほどの試算では、フラット35のほうが毎月約1万円、総額で約303万円高いという結果でした。しかし、この差は生活基盤を安定させるための保険料であると考えるなら、固定金利を選ぶ合理性は十分にあります。
住宅ローンは短期シナリオにもとづく仮定の損得よりも、長期の視点で無理なく払い続けられるかどうかの方がはるかに重要です。
変動金利に向く人と固定金利に向く人
最終的な判断は、その人の前提によって変わります。変動金利に向きやすいのは、今後の収入増加がある程度見込める人です。
変動金利に向く人
・30代前半で今後の昇給余地が大きい人
・大企業や公務員のように賃上げ政策の恩恵を受けやすい勤務先にいる人
・資産に余力があり、いざとなれば繰り上げ返済で対応できる人
固定金利に向く(変動金利をすすめにくい)人
・40代後半で今後の収入増加が見込みにくい人
・教育費などほかの固定支出が重い人
・金利上昇に対応する余力が小さい人
数字だけ見れば変動金利がお得に見えても、想定より上振れしたときに詰んでしまうのなら意味がないからです。
物件にも向き不向きがある
意外に思われるかもしれませんが、物件にも変動金利向きと固定金利向きがあります。物件と住宅ローンは1対1で結びついているからです。
変動金利が想定よりも上振れして、自己資金での完済が難しくなった場合には、出口戦略の一つとして物件の売却による完済という選択肢が必要になります。
つまり、売りたいときに売りやすい物件、流動性の高い物件は変動金利と相性が良いのです。典型的な例は都心のマンションです。同じ建物やエリアで売りに出ている情報が入手しやすく、回転も速いので相場の動向を追いやすい。残債よりも高い金額で売りに出ているのであれば、随時リセットできるという状態を把握できます。
変動金利に向かないのは、その反対の物件です。購入する人が限られているエリアは売却に時間がかかります。また、こだわりの間取りや設備はコストがかかっている一方、それを売価に反映できるものか不確実性が高くなります。
変動金利か固定金利の選択は、自分にとっての正解を見つけること
数字だけを見れば変動金利が有利に見えますが、固定金利には金利上昇リスクを切り離して支出を固定できるという、数字に出にくい価値があります。金利上昇局面だからこそ、その価値は改めて問い直されます。
結局のところ、住宅ローン選びに普遍的な正解はありません。大事なのは、金利の数字だけでなく、その人の年齢、収入の伸びしろ、勤務先、資産の余力、そして金利上昇への考え方を踏まえて、自分にとって合理的な結論にたどり着くことです。
変動金利は当初期間が低コストで不確実、固定金利は高コストだが長期安定。この構造を理解したうえで、自分がどちらのリスクを引き受けるのかを決めてください。それが今の局面でおすすめする住宅ローンの選び方です。
【関連記事】>>住宅ローンの金利推移(変動・固定)は? 最新の動向や金利タイプの選び方も解説
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
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淡河範明さん
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