6月のフラット35の住宅金融支援機構債の表面利率はの3.32%(前月比+0.35)と急上昇し、変動金利も1%を超える銀行が増えています。シンクタンクの最新予測では政策金利は最大2%まで上昇の可能性があり、住宅ローンはもはやゼロ金利時代の感覚では判断できない局面に入りました。変動・固定それぞれの見通しとシミュレーションを交えながら、選び方を解説します。(公認会計士・千日太郎)
金利ある世界の住宅ローン選びの判断基準とは
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。6月は住宅ローンの世界が「金利ある世界」へ完全に塗り替えられる月となります。
5月21日に発表されたフラット35のベースとなる住宅金融支援機構の機構債表面利率は3.32%でした。前月の2.97%からわずか1カ月で0.35%もの上昇です。このペースでの上昇幅は前例がありません。
変動金利についてもすでに多くの銀行で1%を超え始めており、日銀の追加利上げを織り込む動きが続いています。もはや、変動金利が0.3%台、フラット35が1%台だったゼロ金利時代の感覚では、住宅ローンを判断できない局面に入ったということです。
これからの住宅ローンの判断基準は、変動型が危険・固定型が安全という単純な話ではありません。どの程度の金利上昇を想定し、その時に自分の家計が耐えられるのかを具体的な数字で把握することが重要です。
政策金利の上昇で変動金利はどこまで上がるのか
変動金利はどこまで上がるのかについて、最新のシンクタンクのレポートが参考になります。
みずほリサーチ&テクノロジーズは、日本の政策金利が現在の0.75%から2028年度にかけて1.5%程度まで上昇し、長期金利は3%程度まで上がる見通しとのレポートを公開しました。これは中東情勢の早期安定化を前提とした比較的順当なシナリオです。
レポートによると、1.5%までの利上げに伴って、家計では預貯金などの収入増と配当収入増が住宅ローン利払い増を上回るプラス効果があるとしながらも、対象を負債保有世帯に限ると差し引きマイナスになり、とくに若年層や低・中所得層に負担が集中するとしています。
さらに、OECD(経済協力開発機構)は対日経済審査報告書を公表し、日本銀行が2027年末までに政策金利を現在の0.75%から2.0%に引き上げるとの見通しを示しています。
つまり、今後の変動金利の上昇が政策金利と連動すると仮定すれば、みずほリサーチ&テクノロジーズの1.5%シナリオなら0.75ポイント上がる計算、OECDの2.0%シナリオなら1.25ポイント上がる計算になります。
主要な銀行の金利で試算してみましょう。

このように、現在1%前後の変動金利は1.7%から2%程度まで上昇することになり、もし政策金利が2%まで行くなら変動金利は2.2%から2.5%程度まで視野に入ります。
みずほリサーチ&テクノロジーズのレポートが低めに出ているので、変動金利を想定している人はこちらを採用したくなるのが人情ですね。
しかし、みずほリサーチ&テクノロジーズの母体はみずほ銀行であり、変動金利を主力商品に据えています。あくまで私見ですが、変動金利の上昇が緩やかとなるシナリオを強調する傾向も否めません。なお、レポートの中では予想に上下のレンジを持たせており、2%の可能性もあるとしています。
つまり、今後の住宅ローンを考える上では、変動金利は最低でも+0.75ポイント、保守的にあえて高めの+1.25ポイントの上昇まで想定しておく必要があるということです。
※出典:みずほリサーチ&テクノロジーズ「本格化する「金利のある世界」と日本経済~家計の資産選択シフトを踏まえた先行きシミュレーション~」、OECD「Latest Economic Survey of Japan, May 2026
」
フラット35の金利は3%前後まで上昇か
今回発表された機構債の表面利率は3.32%でした。これは住宅金融支援機構が市場から資金調達する際の金利です。フラット35は、この機構債で集めた資金を原資として住宅ローンを貸し出しています。つまり、機構債の金利が0.35%上がったということは、本来であればフラット35も同じだけ上がるのが自然です。
ただ、ここでポイントになるのが逆ザヤです。住宅金融支援機構は、これまでも調達金利より低い金利でフラット35を提供してきました。例えば3月は2.65%で資金調達しながら、フラット35は2.25%で貸していました。つまり0.4%分、機構が損をかぶっていたということです。
この逆ザヤ幅は減少傾向にあり5月は-0.26%まで縮小したのですが、6月にはこれが-0.30%に拡大し、6月のフラット35は3.02%前後になるというのが筆者の予想です。

しかし、実際にはもう少し抑える可能性もあるとみています。あまり急激に金利を上げすぎると、住宅購入者が返済を継続できなくなるリスクが高まるからです。
とくに問題になるのは、3カ月前に2.25%の前提で住宅ローン計画を立てていた人です。例えば、5,000万円の物件で4,500万円借りるケースを考えます。2.25%なら毎月返済額は約15.5万円でした。しかし、3.02%になると約17.4万円になります。
毎月約1.9万円増える計算で、総返済額では約789万円増えます。この差は決して小さくありません。だからこそ住宅金融支援機構としても、できるだけ激変緩和のために金利上昇を抑えるインセンティブが働くとみています。
変動金利とフラット35の返済額をシミュレーション
ここで、標準的な前提をとって具体的な金額で見てみます。
【比較条件①】標準ケース
36歳、定年65歳、定年で一括返済する
借入金額4,500万円、35年、元利均等返済、ボーナス払いなし
変動金利:当初2年1.2% / 残り33年2.45%
フラット35(子育てプラス4ポイント):当初5年2.02% / 残り30年3.02%

毎月の返済額では平均的に1.2万円変動金利の方が低くなり、総返済額では変動金利が約6,610万円、フラット35が約7,046万円で、変動金利の方が約436万円少なくなります。
ただし、この差は「高くて損」ではなく、金利上昇リスクに対する保険料の意味を持ちます。安心に対して払うコストですから、これを割高ととるか割安ととるかは、その人の収入のみならず、性格や生き方のポリシーによっても違ってくるのです。
【比較条件②】フラット35の金利引き下げ最大活用ケース
フラット35は子育てプラスのポイントが多いと当初の引き下げ金利・期間が大きくなることに加え、保証型を選び団信不加入を選択するなどして金利を下げる方法があります。その条件で比較してみました。
36歳、定年65歳、定年で一括返済する
借入金額4,500万円、35年、元利均等返済、ボーナス払いなし
変動金利:当初2年1.2% / 残り33年2.45%
アルヒスーパーフラット8団信不加入(子育てプラス8ポイント):当初10年1.67% / 残り25年2.67%

そうすると毎月の返済金額に有意な差はなくなり、総返済額では変動金利が約6,610万円、フラット35が約6,486万円で、フラット35の方が約124万円少なくなります。ただしフラット35では団信不加入としている分、別途生命保険に加入するのでそのコストを踏まえると、ほぼ同じくらいの水準になるでしょう。
まとめると、特にフラット35に振り切った選択をしない限り、標準的なケースで単純な損得で見れば変動金利に分がある、という結論になります。しかし誰にとっても変動が正解とは限らない、というのが今の局面です。
変動金利に向く人、固定金利に向く人とは
変動金利は金利上昇への対応力がある人向けです。具体的には以下のような人です。
変動金利に向く人
- ・今後の賃上げが期待できる
- ・余裕ある予算で借りている
- ・繰り上げ返済できる資金余力がある
- ・金利の変動を冷静に管理できる
固定金利に向く(変動金利をすすめにくい)人
- ・40代後半以降で今後の賃上げ余地が限られる
- ・金利上昇がそのまま家計圧迫につながりやすい
- ・返済額を確定させることで将来の不安を減らしたい
みずほリサーチ&テクノロジーズのレポートでは、とくに若年層や低・中所得層に利上げの負担が集中するとされています。
しかし、逆に若年層は変動に向くケースがあります。今の日本は人手不足で、若い世代ほど賃上げ対象になりやすい環境です。実際、日銀の利上げも賃上げ継続を前提に進められています。
金利が上がる局面では、賃金も同時に上がる可能性があります。そのため、金利上昇分を収入増で吸収できる人にとっては、変動金利は合理的な選択肢になり得ます。
一方、現在のフラット35は単なる固定金利ではないという点が重要です。「子育てプラス」による金利の引き下げがあります。
住宅性能や子どもの人数によって、当初5年間・10年間、最大で1%の金利引き下げを受けられます。さらに保証型では、頭金を2割入れる・団信不加入にすることで金利をさらに引き下げられます。
つまり、今のフラット35は金利の上昇局面にあっても、政策支援を活用することで十分競争力のある固定金利になっているということです。
住宅ローン選びに普遍的な正解はない
住宅ローンは、誰にでも当てはまる絶対の正解がある商品ではありません。変動金利が得になるシナリオもありますし、固定金利が結果的に有利になるシナリオもあります。しかも、それは今後の金利や物価・賃金・景気によって変わります。
だからこそ重要なのは、自分の収入・性格・リスク耐性に合った住宅ローンを選ぶことです。
経済情勢に関心が高く、金利上昇を管理しながら柔軟に対応するのが得意な人なら、変動金利は割安に感じると思います。一方で金利を固定することで将来不安を減らしたい人にとっては、金利を固定することにより、金利上昇リスクに対しての保険料としてのコストは十分に払う価値があります。
重要なのは、住宅ローンで「もっとも得すること」ではありません。金利が動いても、生活を安定して維持できることです。
【関連記事】>>住宅ローンの金利推移(変動・固定)は? 最新の動向や金利タイプの選び方も解説
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【調査概要】
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淡河範明さん
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