住宅ローンの変動金利が上昇したら、いくら繰上返済すべきか、借入金額別に診断!

【第22回】2022年10月10日公開(2026年1月6日更新)
千日太郎:住宅ローン・不動産ブロガー

こんにちは、千日太郎です。銀行間で住宅ローンの変動金利の獲得競争が激化しています。競争によって金利が下がるのはいいのですが、変動金利のネックとなるのは、銀行に金利を引き上げる権利があるということ。そこで今回は、金利上昇リスクを計算し、いくら繰上返済すればそのリスクを相殺できるかを計算してみました。ぜひ、あなたにとって金利上昇リスクがどのくらいあるのかを診断してみてくださいね。

変動金利の値下げ合戦「auじぶん銀行 vs 住信SBIネット」

銀行による住宅ローンの変動金利値下げ合戦が続いている
銀行による住宅ローンの変動金利値下げ合戦が続いている 出所:PIXTA

 銀行間で住宅ローンの変動金利の獲得競争が激化していますね!

 変動金利では、auじぶん銀行、住信SBIネット銀行、みずほ銀行、りそな銀行、PayPay銀行などが金利引下げ合戦を繰り広げており、現在は0.4%を切るという低金利になっています。

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 これからは少子高齢化で日本経済の先行きが不安と言われるのに、不動産価格は高止まりという今のご時世。そうした環境で、人類史上最低水準となっている変動金利は魅力ですよね。でも変動金利は、「いずれ上がる可能性」があります。安心して変動金利で住宅ローンを借りるために、金融のプロが金利の上昇リスクを「見える化」しましょう。

(関連記事はこちら!⇒[住信SBIネット銀行の住宅ローンの金利・手数料は?]

変動金利は銀行の都合でいつでも上げられるからこそ安い

 変動金利が安い理由は、銀行の都合でいつでも上げることが出来るからです。なので、変動金利で借りる場合は、「上がらないだろう」「上がったら困る」「上がった時に考えよう」ではダメです。

 ひとたび銀行が金利を上げてきた場合にどうなるのかを具体的に知り、自分がどう対応すればいいのかを知っていなければなりません。

変動金利が上がったらどうなるか?

 まず、変動金利が2倍になったからといって、すぐに毎月の返済額が倍増するわけではありません。2倍になるのは利息だけです。

 そして、元利均等返済方式を選択していると、多くの銀行が、変動金利には「5年ルール」と「125%ルール」を適用しています。毎月の返済額が上昇するのは金利が上がった5年後からとなり(5年ルール)、しかも上がる直前の毎月返済額の125%を上限とする(125%ルール)というルールがあるのです。

 例えば、4,000万円を変動金利0.45%、借入期間35年、元利均等方式で返済する場合、もし仮に借りた直後に金利が2倍の0.9%に上がったらどうなるか、分かりやすく並べてみると以下の通りです。

金利が上昇しても、5年は返済額を据え置き(元利均等返済方式)

  金利0.45% 金利0.9%に上昇
毎月の利息(A) 1万5000円 3万円
(2倍)
毎月の元金(B) 8万7953円 7万2953円
(大幅減)
毎月の返済額(A)+(B) 10万2953円 10万2953円
(5年据え置き)

 つまり、変動金利を元利均等返済方式で借りると、金利が上がって利息が2倍になろうが3倍になろうが、5年間は直前の返済額で固定されるのです。上がった利息にしても、想像したほどの増加ではないと思います。

 もともとの金利が低いため金利が2倍になってもこの程度なのです。加えて、金利は変動するけど、返済額は固定するようになっているのですね。

金利上昇時は返済額据え置きで、元本は底だまり

 ですから、金利がいくら上がってもすぐに困るということは無いんですよ。しかし、利息が増えた分だけ、元本の返済額が減っています。予定よりも多くの元本が残り、それに対しても上がった金利がかかるのです。

 なので、途中で金利が上がった場合、そのまま返済を継続していくと当初予定していた期間では完済できず、最後に元本が残る可能性がありますね。残った元本はまとめて最終回に完済することを求められるケースが多いそうです。

 すぐには困らないけど、上がった金利の支払いはドンドン先送りされ、その分高い利息を払うことになります。

変動金利が上がったら、いくら繰上返済すればいいか?

 変動金利は日銀が民間銀行に貸す時の政策金利の影響を受けます。企業の業績が上がり、それが人々の収入に反映して物価が上がるゆるやかなインフレ状態となれば、政策金利が上がり住宅ローンの金利も上昇するのがセオリーです。収入が増えた分だけ変動金利が上がるのであれば、それほど脅威に感じる必要はありません。

 しかし、定年退職が近くなる最後の方に底だまりの元本を残しておくというのは、やはり不安です。

 それにここ最近の低金利による銀行の収益悪化や、団塊ジュニア世代の人件費の負担増に耐え切れずに銀行が変動金利を上げてくるとすると、自分の収入は上がっていないのに変動金利だけが上がるというシナリオも考えられます。私の予想では、2023年ごろが変動金利の上がる危険なゾーンです。

【関連記事はこちら】
>>住宅ローンの変動金利が上がる時期を大胆予測! 高い貸出金利の人が激減して、銀行が一斉に金利を引き上げるのは「2023年」

 ですから、元本が溜まってしまわないように、ちょうどよい金額を繰上返済して、元本を減らしておけば安心ということです。

 そこで、今回は想定される変動金利の上昇幅として2つのパターンで、必要な繰上返済の額がいくらになるのかシミュレーションしてみました。

通常の金利上昇シナリオ:
 「現在の店頭金利の水準2.775%まで変動金利が上昇する」

リスクシナリオ:
 「過去32年の変動金利の平均利率4%まで変動金利が上昇する」

【関連記事はこちら】>>変動金利の住宅ローンは、金利が何%まで上昇すると考えられば破綻しないでむのか?

通常の金利上昇シナリオの繰上返済額

 変動金利が最低である住信SBIネット銀行の店頭金利は2.775%です。店頭金利というのはいわば定価。そこから金利を大幅に引き下げて、言い換えると出血大サービスの値引きをしているのです。

 つまり銀行のホンネとして、定価である2.775%で貸したいのだとすれば、今後2.775%くらいまで金利が上がる可能性は想定しておくべきだろうという考え方です。

 例えば、3,000万円を変動金利0.45%、35年元利均等返済で支払うと、毎月の返済額は7.8万円です。これから金利が2.775%に上がったとしても最後まで7.8万円の返済で、当初の予定どおりに35年で完済するには、金利が上がった時にいくら繰上返済すればいいのでしょうか?

 5年後、10年後、15年後、20年後の4パターンでシミュレーションを行いました。

3,000万円、35年で借りた人の金利上昇リスクは?
(標準シナリオ:金利0.45%→2.775%)

  住宅ローン残高(A) 返済7.8万円を継続した時の返済可能額
(B)
金利上昇時に、繰上返済すべき額
(A)-(B)
5年後に金利上昇
(残り30年)
2,600万円 1,904万円 696万円
10年後に金利上昇
(残り25年)
2,191万円 1,686万円 505万円
15年後に金利上昇
(残り20年)
1,772万円 1,435万円 337万円
20年後に金利上昇
(残り15年)
1,344万円 1,147万円 197万円

 シミュレーションは以下のように試算しています。「5年後に金利上昇 (残り30年)」のケースについて、詳しく説明しましょう。

  • 1) 3,000万円を変動金利0.45%、35年元利均等返済で支払うと、5年後(残り30年)の残高は2,600万円です。
    2) 毎月の返済7.8万円を継続しつつ金利2.775%、30年で完済できる住宅ローンの借入金額は1,904万円です。
    3) つまり5年後に変動金利が0.45%から2.775%に上がったときには、696万円(=2,600万円-1,904万円)繰上返済すれば、毎月の返済7.8万円を維持したまま、残り30年で完済できます。

 同じく、10年後に変動金利が0.45%から2.775%に上がったときには505万円、15年後ならば337万円、20年後ならば197万円を繰上返済することで、毎月の返済7.8万円を維持したまま残りの期間で完済できるという表です。

 残りの期間が短くなれば、それだけ残高も小さくなりますので、繰上返済すべき金額は少なくて済むのですね。使いやすいように4,000万円借りた場合と、5,000万円借りた場合の表もつけておきます。

4,000万円、35年で借りた人の金利上昇リスクは?
(標準シナリオ:金利0.45%→2.775%)

  住宅ローン残高(A) 返済10.3万円を継続した時の返済可能額
(B)
金利上昇時に、繰上返済すべき額
(A)-(B)
5年後に金利上昇
(残り30年)
3,466万円 2,514万円 952万円
10年後に金利上昇
(残り25年)
2,921万円 2,226万円 695万円
15年後に金利上昇
(残り20年)
2,363万円 1,895万円 468万円
20年後に金利上昇
(残り15年)
1,792万円 1,515万円 277万円

【4,000万円借り入れのケース】
 首都圏の新築マンションのボリュームゾーンは5,000万円台です。首都圏の新築マンションを購入し、頭金を2割くらい入れる人は上記のケースになるでしょう。また、地方の新築マンションをフルローンで購入するケースも近いですね。

 5年ないし10年後には金利が2.775%まで上がったとしても、おかしくはないのです。それが5年後であれば952万円、10年後であれば695万円を繰上返済することで10.3万円の毎月返済を維持したまま残りの期間で完済出来ます。

5,000万円、35年で借りた人の金利上昇リスクは?
(標準シナリオ:金利0.45%→2.775%)

  住宅ローン残高(A) 返済12.9万円を継続した時の返済可能額
(B)
金利上昇時に、繰上返済すべき額
(A)-(B)
5年後に金利上昇
(残り30年)
4,333万円 3,149万円 1,184万円
10年後に金利上昇
(残り25年)
3,651万円 2,788万円 863万円
15年後に金利上昇
(残り20年)
2,953万円 2,373万円 580万円
20年後に金利上昇
(残り15年)
2,240万円 1,897万円 343万円

【5,000万円借り入れのケース】
 首都圏の新築マンションをフルローンで購入する場合に近いケースです。金利上昇時に繰上返済すべき金額はおおむね借入額と比例していますよね。

 なお、5年後に金利が2.775%に上昇した場合は、1,184万円もの繰り上げ返済が必要となります。

 ただし必ずしも、金利が上がったら一時に繰上返済しなければならないということではありません。毎月の返済額を増やすことで対応することも可能です。こうして条件を揃えて比較することで、私たちが負うリスクの大きさを金額で把握し、「見える化」するのが目的なのです。

リスクシナリオの繰上返済額

 もう一つは悲観的なシナリオです。過去32年間の変動金利の平均は4%でした。現在の金利のほぼ10倍です。ですから逆に、今の変動金利の水準がいかに破格で安いかということですよね。

 過去実際にあった金利水準であるが今の10倍の金利だ、ということで悲観的なシナリオとして4%に上昇した場合も想定しておくと良いでしょう。過度に悲観的なので、ロスが多すぎるシナリオと考えていいでしょう。

 あとは、さきほどと同じく3,000万円を変動金利0.45%、35年元利均等返済で支払うと、毎月の返済額は7.8万円です。これから何年か後に金利が4.0%に上がったとしても最後まで7.8万円の返済で、当初の予定どおりに35年で完済するには、金利が上がった時にいくら繰上返済すればいいのかをシミュレーションしました。

 金利が高くなった分、必要な繰上返済額も増えました。5年後だと、1,000万円を大きく超える繰上返済が必要な結果となっていますが、5年後に金利が10倍になるというのはかなり極端なケースです。

 逆に言えば、「1,000万円強の貯蓄がある」「保険の満期返戻金がある」「相続が見込める」という場合には、変動金利の上昇リスクにほぼ確実に対応できるということですね。

3,000万円、35年で借りた人の金利上昇リスクは?
(リスクシナリオ:金利0.45%→4.00%)

  住宅ローン残高(A) 返済7.8万円を継続した時の返済可能額
(B)
金利上昇時に、繰上返済すべき額
(A)-(B)
5年後に金利上昇
(残り30年)
2,600万円 1,633万円 967万円
10年後に金利上昇
(残り25年)
2,191万円 1,477万円 714万円
15年後に金利上昇
(残り20年)
1,772万円 1,287万円 485万円
20年後に金利上昇
(残り15年)
1,344万円 1,054万円 290万円

4,000万円、35年で借りた人の金利上昇リスクは?
(リスクシナリオ:金利0.45%→4.00%)

  住宅ローン残高(A) 返済10.3万円を継続した時の返済可能額
(B)
金利上昇時に、繰上返済すべき額
(A)-(B)
5年後に金利上昇
(残り30年)
3,466万円 2,157万円 1,309万円
10年後に金利上昇
(残り25年)
2,921万円 1,951万円 970万円
15年後に金利上昇
(残り20年)
2,363万円 1,699万円 664万円
20年後に金利上昇
(残り15年)
1,792万円 1,392万円 400万円

5,000万円、35年で借りた人の金利上昇リスクは?
(リスクシナリオ:金利0.45%→4.00%)

  住宅ローン残高(A) 返済12.9万円を継続した時の返済可能額
(B)
金利上昇時に、繰上返済すべき額
(A)-(B)
5年後に金利上昇
(残り30年)
4,333万円 2,702万円 1,631万円
10年後に金利上昇
(残り25年)
3,651万円 2,443万円 1,208万円
15年後に金利上昇
(残り20年)
2,953万円 2,128万円 825万円
20年後に金利上昇
(残り15年)
2,240万円 1,743万円 497万円

変動金利が上がった時には固定金利はもっと上がっている

 「変動金利が上がったらその時は固定に借り換えればいい」という声をきくことがありますが、それは不可能です。

 住宅ローンの固定金利は金融市場の長期金利(国債利回り)に連動して上がったり下がったりします。金融市場は常に動いていますので、住宅ローンの固定金利もその影響を受けて毎月上がったり下がったりするのです。

 これに対して変動金利は6カ月毎に銀行によって見直されます。

 つまり変動金利が上がったタイミングでは、時すでに遅しなのです。景気や為替という、いわば自然現象によって変動する長期金利(≒固定金利)の方が、6カ月ごとに見直す変動金利よりも遥かに早く反応するからです。

まとめ ~ 変動金利上がったときのリスクを「見える化する」ことが大事

 金利に関しては、銀行の方が一枚上手ですよ。その土俵で勝負しても勝ち目はありません。「金利」は銀行がコントロールします。私たちは「残高」を握っているのです。なので、金利を上げてくる銀行に対して、シンプルかつ最も有効な対処方法は繰上返済です。

 その繰上返済の金額について、ホントざっくりでいいんですが、だいたいのボリュームを金額で把握しておくことで、自分が負うことになるリスクの大きさが目に見えますよね。

 「いつどれだけ上がるか分からないから、そういうことは想像しない」なんて考えで何千万円もの住宅ローンを借りるなんて危なすぎますよ。逆に「上がったら怖いから固定金利一択だ」なんていうのも、この人類史上最低金利の変動金利のメリットをみすみす見逃してしまうことになって損ですよね。

 このシミュレーションを使ってご自身のリスクの大きさを把握し、住宅ローンの借り入れ、借り換えの参考にしてください。また著書「家を買うときに『お金で損したくない人』」でも変動金利のポイントやどんな人が変動金利に向いているかを分かりやすく解説していますので、ぜひ読んでくださいね!

【関連記事はこちら】
>>住宅ローンの変動金利を2年以内に引き上げる銀行は4行!? 各銀行の変動金利見通しと、リスクを抑える方法を紹介

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調査日:2023年12月
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有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とする

 アンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。

【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
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Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
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【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
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