住宅ローンを借り換えても、実は「住宅ローン控除(減税)」は継続して利用できる。減税メリットが大きいので、以下の「借り換えの4つのポイント」を確認して後悔しないようにしたい。特に、繰り上げ返済についてはタイミングをよく考えて行うだけで、収支を大きく改善できる。
借り換えても、住宅ローン控除は利用可能
住宅ローン金利は長期固定金利を中心に上昇基調にあるものの、金利は今なお史上最低金利を更新している。そのため、住宅ローンを借り換えする人も多い。金利上昇に備えて、変動金利から固定金利に借り換えする人もいる。その際に気になるのが「住宅ローン控除(減税)」だ。数百万円ものメリットがある制度だけに借り換え後も利用したい。
結論から言えば、借り換え後も住宅ローン減税は継続して利用できる。「借り換えたら、利用できなるのでは?」と考える人がいるかもしれないが、「継続できる」ということであり、残りの控除期間は、新しい住宅ローンに引き継いで利用できるということだ。
住宅ローン控除を利用するための3つの注意点
「借り換えで、住宅ローン控除をフル活用するための4つのポイント」は以下の通りだ。
(2)借り換え時は、できれば借り換え額を減らす
(3)「金利<控除率」なら、控除期間終了まで繰上返済しない
(4)「金利>控除率」なら、積極的に繰上返済
(1)借り換え後の返済期間を10年以上にする
ファイナンシャルプランナーの山根裕子氏によれば、「借り換えをしても、住宅ローン控除のメリットを受けられるように注意すべきです」と指摘する。
「借り換え時に、期間を極端に短縮しないように気をつけてください。どんなに短くするにしても10年以上の返済期間を残しておかないと、減税を受けられません」と山根氏はアドバイスをする。
例えば、最初の借り入れから5年目に借り換えて、借り換え後の返済期間を8年間に設定したとすると、借り換え後は住宅ローン控除を受けられなくなってしまう。借り換えた時点で住宅ローンの返済期間が10年未満になって要件を満たさなくなり、それ以降は減税措置を受けられなくなるのだ。
本来なら、減税を受けるチャンスはまだ残っており、非常にもったいないので、余裕を持って返済できる場合でも、10年以上の返済期間を取るようにしよう。
参考:国税庁のサックスアンサー「No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき」
(2)借り換え時は、できれば借り換え額を減らす
借り換え時に、手持ちの資金で一部繰り上げ返済を行い、借り換える金額を減らすという人は多い。基本的にはこうした繰上げ返済はすべきだ。
多くの銀行では借り換え時に、手数料や保証料がかかる。手数料「借入金額×2.2%」、保証料「借入金額×2.06%(借入期間35年の場合)」などがかかるケースが多い。1000万円を借り換える場合、20万円強もかかるのだ。手数料・保証料を考えると、できるだけ借り換える金額を減らしておいた方がお得になる。
なお、一部の銀行では手数料を「定額」としている銀行がある。こうした銀行の場合は、借り換え額を減らさず、住宅ローン控除のメリットをフルに享受するとお得というケースもある。ただし、手数料「定額」の住宅ローンの金利はさほど低くないため、あまり真剣に検討する必要はないだろう。
(3)借り換え後、「金利<控除率」なら、控除期間は繰上返済しない
借り換え後に注意したいのが、繰上げ返済のタイミングだ。低金利時代ならではの新しい対応策として、「安易に繰り上げ返済しないこと」が挙げられる。
通常、お金に余裕があれば、すぐに繰上返済するのがおすすめなのは前述したとおり。繰上返済をして元本が減少すれば、支払うべき金利も減少するので、総支払額を大きく減らせるからだ。
ただし、変動金利の住宅ローンであれば金利が0.4%前後と低い現在、「借り換えた住宅ローン金利<自分の控除率」であれば、住宅ローン控除が使える10年間または13年間は「あえて繰上返済をしない」ほうが得をすることになる(入居年によって、控除率が違うので、下表で確認しよう)。
なぜなら、住宅ローン控除では借入残高の0.7%の所得税等が還付されるのに対して、支払う金利が0.7%未満であれば、「戻ってくる所得税>支払っている金利」となり、実質的にマイナス金利状態(金利を払うのではなく、金利をもらえる状態)になる。マイナス金利状態では、繰上返済せずに借入残高を多く残しておいたほうがたくさんの金利をもらえるので、「借入残高が多ければ多いほど儲かる」のだ!
これが実現できれば、住宅ローン控除の期間中は、「儲かる状態」となるので、この条件にあてはまる場合は繰上返済をせずに、住宅ローン控除のメリットを最大限活かすべきだろう。
ただし、あえて繰上げ返済しないのは、控除期間のみ。住宅ローン控除が適用となる控除期間終了の12月までは繰上返済はせず、翌年の1月以降に繰上返済するのがおすすめだ。「余裕があればすぐに繰上返済」という今までの常識とは逆の対応になるので、気をつけたいところだ。
借り換えメリット額も試算できる!
借り換えシミュレーションはこちら >>(4)借り換え後、「金利>控除率」なら、繰上返済する
一方で、「借り換えた住宅ローン金利>自分の控除率」であれば、通常通り、繰り上げ返済をせ局的にすべきだ。
また、住宅ローン残高が住宅ローン控除の対象になる金額を上回っている場合はどうすべきか。住宅ローン控除をフル活用できないので、住宅ローン残高が控除額の上限になるまでは繰上返済を優先すべきだろう。
なお、繰上返済を年に1回程度しか行わない人にとっては、毎年1月に繰り上げ返済するのがベストだ。住宅ローンの総支払額を抑えるためには、繰上返済は非常に有効な手段で、なるべく早いタイミングでこまめに繰上返済したほうがいい。ただし、そのタイミングが重要だ。住宅ローン控除額が確定するのは毎年12月末。繰上返済をするなら、その直後の1月に行えば、控除額を大きくできる(なお、こまめに毎月返済するのが可能であれば、毎月返済のほうがメリットは大きい)。
【関連記事はこちら!】
⇒「住宅ローンの繰上返済手数料を17銀行で徹底比較!即日返済可能でお得な、ソニー銀行、三井住友銀行」
住宅ローンの控除率、期間は年により違う
最後に、「住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)」の制度を確認しておこう。
住宅ローン控除はメリットの大きい制度だ。住宅ローン控除は、最大13年間にわたって、年末の住宅ローン残高の0.7%〜1%も所得税額から還付される制度。入居年によって控除率などが違う。一度、適用された控除率などは、控除期間が終わるまで変更されることはない。住宅ローンを借り換えした場合でも、控除率、控除期間は引き継がれる。
住宅ローン減税は、入居年によって控除率、控除期間が違う
|
|||||
入居年 |
控除率 |
最大控除期間 |
住宅ローン残高 の上限 |
||
---|---|---|---|---|---|
2013年〜 |
1% |
10年 |
3000万円 |
||
2014年〜 |
1% |
10年 |
5000万円 |
||
2019年10月〜 |
1% |
13年 |
4000万円 |
||
2022年~ |
0.7% |
13年 |
5000万円 |
||
2024年~ |
0.7% |
13年 |
子育て世帯等 |
※2022年以降は、国土交通省「令和6年度住宅税制改正概要(令和5年12月)」、国税庁「タックスアンサー・土地・建物(住宅ローン控除等)」を参考に作成。子育て世帯等とは、「19歳未満の子を有する世帯」又は「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」。2025年度税制改正でも同様の方向での緩和を検討している。
例えば、2024年度に認定住宅に入居した、子育て世帯の場合、年末の住宅ローンの残高が5000万円だとすれば、5000万円×0.7%=35万円までの所得税が還付される。
2022〜2025年度の税制改正では控除額の上限が年間35万円で、最大13年間有効なので、最大で累計455万円の税額控除を得られる。初年度には必ず確定申告する必要があるが、2年目以降は会社員なら年末調整で対応可能だ。なお、物件タイプ等が違う場合は控除額の上限が違ってくる場合もあるので、国税庁のサイトなどで確認しよう。
【関連記事はこちら!】⇒住宅ローン控除額(減税額)シミュレーション! 年収別に計算可能
借り換え時にリフォームの検討も
なお、リフォームを検討中であったなら、借り換えする際にリフォーム資金も追加で借りよう。住宅ローンでリフォーム資金を借りれば、通常のリフォームローンよりも金利が低いのでお得だ。
なお、リフォーム資金を追加した分、借入額が増えるが、住宅ローン減税の対象借入額が増えるわけではないので、注意したい。減税対象額は、以下のように算出する。
減税の対象額=
「借換えによる新たな住宅ローン等の年末残高」
×「借換え直前における当初の住宅ローン等の残高」
÷「借換えによる新たな住宅ローン等の借入金額(当初金額)」
参考:国税庁のサックスアンサー「No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき」
リフォーム資金も追加して借り換えたい!
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132銀行を比較◆住宅ローン金利ランキング[借り換え] (⇒ 新規借入はこちら) |
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【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
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Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
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淡河範明さん
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