不動産売却のプロが教える失敗しない仲介会社の選び方! 大手・中堅・中小の特徴を理解して、最低3社から見積もりをとろう
シリーズ「不動産売却の秘訣」

2020年12月4日公開(2023年10月20日更新)
山本健司:ミライアス株式会社 代表取締役

不動産売却を考えたとき、まず決めなければならないのは、不動産会社です。つい大手の会社を選んでしまいがちですが、必ずしも大手がよいとは限りません。地元で信頼のある中堅や中小の不動産会社も含め、特徴が異なる数社から見積もりをとることがおすすめ。また、不動産会社選びは、「会社×営業担当社」の掛け算で選ぶことも覚えておきましょう。

安定の「大手」、独自の得意分野を持つ「中堅」「中小」も捨てがたい!

 不動産売却を考え始めた方の多くは、査定をしてもらう段階で、初めて不動産会社と本格的に接触することになると思います。ネットでちょっと調べるだけでも、膨大な数の不動産会社が出てきますが、

①売却したい物件がある地域に対応可能であること
②マンション、戸建て、土地など、売却したい物件の売買に明るいこと

は、不動産会社を選ぶための最低条件です。

 会社の規模ということでは、大手、中堅、中小と3つに大別できます。

 日本各地でチェーン展開する大手不動産会社は、店舗数も社員数も多く、豊富な顧客リストから買手を探しやすいのがメリットです。さまざまな保証制度やサービスも提供しており、それが安心感にもつながります。

 しかし大手以外にも、地元で厚い信頼を得ている中堅の不動産会社、高い志や発想力で新風を吹き込む中小の不動産会社と、優れた会社は多数あります。土地と戸建ての売買に強い、中古マンションの売買をたくさん手がけているなど、得意分野で独自性を発揮する会社も多いので、その点に注目して、自分のニーズに合う会社を選んでもよいでしょう。

 また、ネットや広告からの情報だけでは、どういう会社か判断しづらいという場合は、近くに店舗があれば、実際に足を運んでみるのもよい考えです。

 店内が整理整頓されていない、社員が来客に挨拶をしない、でかでかと売り上げのノルマが張り出されている、落ち着いて商談ができる個室の用意もない……。こういう会社は、詳しく話を聞くまでもなくアウトでしょう。

担当者の顔が見えないネット系の不動産会社は、注意が必要

 査定を依頼する選択肢に、地元の不動産会社を加えるのもよいと思います。しかし、インターネットが普及した現在、土地に根差した不動産会社にこだわる意味は、実はあまりありません。

 レインズ(*1)をきちんと使えば、小さな地域に限定せず、条件のよい買手を広く探すこともできるからです。(*1:不動産会社が利用する業者専用のコンピューターネットワークシステムのこと。販売中の物件情報や成約事例が登録され、ほぼすべての不動産会社が利用している。)

 最近は不動産業界にも、ネット系の会社が出てきています。

 手数料の定額制や手数料無料などを打ち出していて魅力的ですが、保証面や営業担当者の質など、わからない部分が多いのは気になるところです。

 中には私たちの会社・ミライアスと同じように、問題の多い両手仲介に挑戦して、片手仲介を専門とする不動産会社もあります。ただ、売手の立場に立ち、買手と接点をもたないようにするあまり、買手の気持ちや住宅ローンの現状がわからないなど、知識や経験値が不足していることも少なくありません。有効な販売戦略が立てられない可能性がある点には、注意が必要です。
【関連記事はこちら】>>家やマンションを高値で売却したいなら、「囲い込み」「両手取引」に気をつけよう! 悪徳不動産業者の「騙しのテクニック」を公開

 以上をすべてまとめると、査定を依頼する際には、印象がいいなと思う大手を1社と、特徴が異なる会社を数社、合わせて3社から5社くらいに依頼してみることをおすすめします。単に査定金額を比較するというだけでなく、やりとりを通じて各社の個性や好感度も確認できると思います。

 ネットの一括査定サイトを利用する場合も、依頼をする前に各社の情報や評判が見られますので、それらを参考に選んでください。
【関連記事はこちら】>> 不動産一括査定サイト&仲介業者25社で比較! メリット・デメリット、掲載不動産会社、不動産の種類で評価しよう

不動産会社選びは、担当者選びでもある

 不動産会社選びには、担当者選びという側面もあります。

 自分に合う不動産会社選びとは、ひとことでいうと「会社×営業担当者」の掛け算なのです。大手でも、営業担当者によって経験値はまったく異なります。

 どんなに素晴らしい会社でも、実際に営業担当者と接してみて、能力に疑問がある、態度が悪いなど、あなたの評価がゼロだとしたら、掛け算の答えもゼロ。納得できる担当者に代えてもらうなどしない限り、その会社を媒介契約の相手として選んではいけません。営業担当者が優秀であなたとの相性も良好なのに、会社自体が信頼性に欠けるような場合も、総合評価は低くなります。

 両手仲介か、片手仲介(*2)か、囲い込み(*3)をしないか、どんな形で物件情報を告知してくれるのかなど、気になることははじめに確認しておきましょう。(*2:同じ不動産会社が片手で売主とつながり、もう片方で買主とつながっていることを両手仲介という。両者から仲介手数料を受け取ることができる。これに対し、売主とだけつながり、買主は別の不動産会社が仲介しているのが片手仲介。*3:囲い混み:売却物件の情報を自社だけで独占し、ほかの不動産会社の目から隠してしまうこと。)

 「御社は囲い込みなどしないでしょうね?」と念を押すだけでも、相手にプレッシャーをかけることができます。この売主さんは侮れないと思えば、担当者は緊張感をもって、販売活動に取り組んでくれるでしょう。
【関連記事はこちら!】>>大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?! 住友不動産販売の「両手比率」は、62.75%! 不動産売却時は「両手比率」が高い会社に注意を

よい営業担当者かどうかを見分けるポイントは?

 簡易査定(*4)を終えてあなたのもとを訪れた営業担当者は、物件を見てあなたの話を聞きながら、自分ならこの物件をどう売っていくか、頭のなかでどんどんプランニングが湧いてくるはずです。(*4:物件を見ないで行う査定で、立地や築年数、公示価格・路線価などから見積額を算出する。ネットで申し込む一括査定サービスも簡易査定にあたる。)

 このように、会って話をする中で、なるほどと思う提案があったり、気をつけるべき点を丁寧に説明してくれたり、率直に質問に答えてくれたりと、親身に対応してくれるのがよい営業担当者です。

 自分が買主さんを見つけて両手仲介を成立させたいという下心から入る営業担当者は、売主さんに値下げをさせるためのトークに傾きがちです。

 良心的な担当者なら、できるだけ高い値段で、少なくともあまり値を下げずに、なおかつ確実に売却するために、「まずはこういう準備から始めましょう」などと提案してくれます。

わるい不動産会社の担当者
(画像:PIXTA)

 売主さんも営業担当者も同じ人間同士ですから、話をしていてなんとなく相性がいい人を選ぶというのも合理的な判断基準です。反対に波長が合わない相手とのご縁は、そこで切ってしまってかまいません。

 これから売却が完了するまで、長い場合は1年以上お付き合いをするかもしれないのですから、担当者との相性は思いのほか重要です。ここで断ったら悪いのではないか、相手が気を悪くするのではないかなどと、気にする必要はまったくありません。

 担当者の見た目も、とても重要です。スーツはヨレヨレ、靴はボロボロで、お世辞にも清潔感溢れるとはいえない担当者が、お客さまにあなたの物件の説明をしているところを、思い浮かべてみてください。

 一流のホテルやブランドショップのスタッフは、決してくたびれた格好で人前に出てきたりはしません。不動産会社の担当者は、それ以上の高額商品を販売するのです。売主さんだけでなく、未来の買主さんからも信頼される身だしなみが、どれほど重要かは想像に難くないと思います。
【関連記事はこちら】>>家を売るなら、こんな不動産営業マンは避けるべき! 「他社の悪口を言う」「担当エリアが広すぎ」など、“ヤバい営業”を見抜く、「5つのポイント」とは?

あなたの意向を汲んでくれる担当者が、よい担当者

 できるだけ優秀な担当者についてほしいと思うのは、すべての売主さんの当然の願望です。

 しかし「デキる営業」ほど抱えている案件が多いため、担当してもらったのはいいけれど、なかなかあなたの物件にまで手が回らず、後回しにされてしまうこともあり得ます。

 大切なのは、自分と同じ方向を向いてくれる営業担当者を選ぶことです。「同じ方向を向く」とは、どういうことでしょうか。

 売主さんの希望や事情は、一人ひとりさまざまです。とにかく高く売ってほしいという人、何が何でも指定期日までに売却しなくてはという人、売却に出していることを、周囲に知られたくないという人。どんな希望や事情があってもよいのです。不動産を売るのはあくまでもあなたなのですから。

 あなたが不動産取引を通じてかなえたい要望、一番大切にしていること、この不動産取引で成し遂げたいこと、解決したいことを、どうぞ営業担当者に伝えてください。

 その言葉にきちんと耳を傾け、意向を汲み取ったうえで販売活動に取り組んでくれる担当者こそ、「あなたと同じ方向を向いてくれる」担当者、あなたにふさわしいパートナーです。

まとめ

・不動産会社は、安定の大手、独自の強みをもつ中堅・中小に分かれる

・査定は、大手を含め特徴が異なる3~5社に頼む

・希望や目的を共有してくれる担当者を選ぶ

・囲い込みをしないことを事前に確認する

【関連記事はこちら】>>不動産会社・営業担当者の正しい選び方とは? 騙されたくない人向けに「7カ条」を公開!

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