2019年10月から消費税が増税され、税率が8%から10%に引き上げられた。消費税負担が増えるため、いまのタイミングで住宅を買うのはどうかという気がするが、実は、そんなことはない。政府が実施する住宅取得支援策が、消費税増税と同時に改定になったので、物件価格や金利動向を除けば、むしろ増税後のいま買ったほうが得になるケースが多いのだ。(山下和之)
消費税が8%から10%に引き上げられ税負担が増えたことで、家を買うことをためらう人がいるかもしれない。しかし、増税によって住宅の売行きが鈍化すれば、新設住宅着工戸数が減少し、景気の足を引っ張る可能性が高いため、そうならないように住宅取得支援策が実施されている。
1. 住宅ローン減税の期間延長(10年→13年)
2. すまい給付金の支給
3. 次世代住宅ポイントの付与
4. 住宅取得等資金贈与の特例の非課税枠拡充(最大1500万円→最大3000万円)
この4つの住宅取得支援策を使えば、消費税の2%増額分は相殺になることがほとんどで、むしろ増税後のいま買ったほうが得になるケースが多い。
消費税2%引き上げのインパクトはどれほどか
住宅は金額が大きいだけに、消費税が2%上がるだけでも影響は大きい。確かにそうなのだが、全ての住宅で税率が2%高くなるわけではないことを知っておきたい。
■個人間取引きの中古住宅には、消費税はかからない
まず、売主が個人の中古住宅を買う場合には、消費税はかからない。最近はマンションを中心に、高くなりすぎた新築は手が出ないため、やむなく中古に目を向ける人が増えているといわれる。その場合、仲介会社を通して、個人の売主から中古住宅を買うことになるが、消費税はかからないので、増税後の負担増加を懸念するには当たらない。
ただ、中古住宅でも、このところ増加しているリノベーションマンションのように、所有者が不動産会社や工務店などの事業者である場合には、消費税がかかるので注意が必要だ。
■新築の分譲住宅の税負担は、実質1%の増加に
新築の分譲住宅については、売主は不動産会社や住宅メーカーなどの事業者なので、消費税の対象だが、土地は消費財ではないから税金はかからず、税金がかかるのは建物部分だけになる。
例えば、4000万円の新築マンションで、土地・建物の価格が2000万円ずつだとすれば、建物の2000万円に消費税がかかる。税率8%なら160万円だった消費税が、10%になると200万円になり、40万円増える。税負担は重くなるものの、購入価格4000万円に対しては2%ではなく、実質的に1%の負担増ということになる。
なお、土地を持っている人が注文住宅を建てる場合には、建築費全体が消費税の対象になる。3000万円の一戸建てを建てるのであれば、8%なら240万円のところが、10%になると300万円だから、こちらは2%の税率アップだ。
住宅購入者が減少しないように、4つの支援策を実施
いずれにもしても、新築住宅を買う場合は消費税増税になるわけで、それによって負担感が増えて住宅取得熱が低下すると、新設住宅着工戸数が減少、景気の足を引っ張る可能性が高い。なので、そうならないように、図表1にあるような4つの住宅取得支援策が実施されている。
まず、「住宅ローン減税制度」においては、従来の控除期間10年が、消費税10%で取得した場合には13年に延長される。その延長される3年分の控除によって、減税額が増えて消費税増税分を相殺できるようになっている。
加えて、「すまい給付金」や「次世代住宅ポイント」で、現金や各種商品に交換できるポイントが付与される。さらに、両親などから受ける贈与における「贈与税非課税枠が増える」ため、むしろ増税後に買ったほうが得になるケースが多いのだ。
下記より、4つの住宅取得支援策の詳細を見ていこう。
ローン減税期間の延長で、消費税負担増加分は返ってくる!
例えば、4000万円のローンを組んで、5000万円(建物2500万円)の新築マンションを買う場合、増税前なら200万円(2500万円×8%)だったのが、増税後は250万円(2500万円×10%)になるため、税負担が50万円増える。
それに対して、ローン減税期間が延長されたことで、返金される税金が増える。増税前は住宅ローン控除が10年間だったので、10年間の最大控除額は約350万円だった。それが、控除期間が3年間延長されたことで、控除額の合計は50万円増えて、合計約400万円になる。
ローン減税によって返ってくる税金が350万円から400万円になるわけで、この50万円の増加分で消費税増税分は相殺できる計算だ。
すまい給付金と次世代住宅ポイントで、年収によっては数十万円の収入に
加えて、新築住宅を取得した場合には、「すまい給付金」の対象になり、一定条件を満たす住宅なら「次世代住宅ポイント」が付与される。
「すまい給付金」とは、ある一定額の年収を下回る人を対象に、政府から支援金を受け取れる制度。今回の増税をきっかけに改定となり、対象となる人の年収制限が引き上げられ、最大支給額も増加した。消費税率8%時には年収510万円以下の人が対象で、最高30万円の支給だったのが、10%時には年収775万円以下まで対象が拡がり、最高50万円が支給されるようになる。
例えば、年収510万円以上の人だと、税率8%時には給付額ゼロだったのが、税率10%時には40万円支給されるなど、年収によって給付額が格段に増える。
また、「次世代住宅ポイント」は税率8%時には実施されていなかった新しい制度だ。省エネ性、耐震性、バリアフリー性能など、定められた基準を満たした住宅を購入する場合に、国からポイントが付与される。取得したポイントは、家電や日用品など、さまざまな商品と交換できる。具体的には、税率10%で住宅を取得すると、新築住宅は1戸当たり最大35万ポイント(35万円相当)が付与される。
この2つの制度を併用すると、年収によっては、実質75万円相当の給付金やポイントを取得できるケースもあるわけだ。住宅ローン減税で消費増増税分の税金が返ってきた上、これらの給付があるのだから、増税後のほうが有利になっているのは間違いない。
【関連記事はこちら】>>住宅ローン減税が3年延長したけど、消費税増税前と増税後ではどっちがお得か、新築、中古住宅で試算!
親から贈与を受けられる人は、3000万円まで非課税に
「住宅取得等資金贈与」の特例における非課税枠が、最大3000万円に拡充されているのも大きなメリット。これは、両親や祖父母などの直系尊属※から住宅を取得するための資金を贈与された場合、3000万円まで税金がかからないという制度だ。(※父母や祖父母など、自分よりも前の世代で、直系する親族のこと)
この制度がないと、多額の贈与税が発生する。例えば、3000万円の贈与に対しては、3000万円から年間の基礎控除110万円を引いた2890万円に対して贈与税がかかる。税率は45%で、控除額が265万円なので、税額は2890万円×0.45-265万円で1035.5万円の贈与税になる。
それが、この特例があれば税額ゼロになるのだから、メリットは大きい。親などから贈与を期待できる人は、増税後のいまこそ最大のチャンスといってもいいかもしれない。
住宅取得支援先には適用期限がある点に注意が必要
ただし、これらの住宅取得支援策は、いずれも期間限定の時限措置である点に注意しておく必要がある。なかでも、図表2にあるように次世代住宅ポイントは2020年3月末までに住宅取得の契約を結び、注文住宅の場合にはそれまでに着工する必要がある。
住宅取得資金等贈与の特例における非課税枠最大3000万円も、2020年3月末までに売買契約などを締結する必要がある。それ以降は段階的に非課税枠が減少する予定だ。それだけに、親などから贈与を受けて取得しようと考えている人は、可能な限り、2020年3月末までに物件を見つけて契約するようにしたいところだ。
そのほか、住宅ローン減税の拡充期間も2020年12月までに購入して入居する必要がある。それ以降の入居だと、いまところ控除期間が従来通りの10年間に戻ってしまう可能性が高く、減税額が大幅に減少する可能性がある。
以上のように、増税後のいまだからこそ、増税前より得できる可能性が高いのだが、その期間には限りがある。賢くマイホームを取得するためには、各種の住宅取得支援策をフルに活用できるように、早めに準備するのがいいのではないだろうか。
とはいえ、この損得計算は住宅取得価格の変化、また金利動向によっても異なってくる。住宅取得支援策をフルに活用しようとして急いで取得したあと、住宅価格が急激に低下して損をしてしまうことも、ないとは言えない。そのあたりの判断は、あくまでも自己責任ということで。
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【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
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調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
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