住宅ローンの金利優遇制度で注意すべき3つの落とし穴! 
金利が上がらなくても返済額が増えることもある!? 

2020年6月10日公開(2026年4月1日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

住宅ローンには、さまざまな金利優遇制度があって、ほとんどの住宅ローン利用者が金利引き下げの適用を受けている。この金利優遇制度、意識する・しない、知っている・知らないにかかわらず利用しているので、そこには落とし穴がぽっかりと口を開けて待っていることを知らない人が多い。その落とし穴にはまらないために、3つの注意点をお伝えしよう。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

金利優遇制度に潜む3つの落とし穴とは

 ほとんどの住宅ローンには、金利優遇制度がある。一定条件を満たす人に対して金利を引き下げてくれる、利用者にとってはありがたい制度なのだが、そこには大きく分けると3つの落とし穴がある。

誰もが最優遇金利の適用を受けられるわけではない
当初の金利引き下げ幅が大きいタイプは、途中で金利引き下げ幅が小さくなる
ローンの延滞が発生すると金利優遇の対象外になって適用金利が上がる

 それぞれの注意点について解説していこう。

注意点①:誰もが最優遇金利の適用を受けられるわけではない

優遇金利の注意点
優遇金利の落とし穴に注意(画像:PIXTA)

 まず、注意点①に関して見てみると、銀行の住宅ローンに関するホームページなどでは、金利について「0.525%~」あるいは「0.525%~0.775%」などと記載されていることがある。これは、0.525%が最も金利の低い最優遇金利だが、利用者の条件によっては、その最優遇金利が適用されず、0.775%になることもあるということだ。

 年収が高く、自己資金が多く、勤務先もしっかりしているなど、条件がそろった人には最優遇金利が適用されるが、そうでない人も少なくない。

金利によって年間の負担額が数万円変わることも

 しかし、「0.525%~」とあれば、自分も0.525%で利用できるものと思い込んでしまうもの。それを前提にシミュレーションを行って、「これなら大丈夫」などと勝手に判断しがちだが、それが0.775%の金利を適用されるとなると、計画には狂いが生じる。

 「借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし」の場合、0.525%だと毎月返済額は7万8207円だが、0.775%になると8万1576円に増える。月額の差は3369円だが、年間にすると4万円以上の増加なので、思った以上に負担が重い。借入額が多くなると、負担差はもっと大きくなるのは言うまでもない。

 勝手に思い込むのではなく、自分たちの場合には実際にどの金利が適用されるのかを確認した上でシミュレーションしないと、あとで、「こんなはずでは…」ということになりかねないので注意が必要だ。

 図表1で、「金利別・返済期間別の返済額の違い」を一覧にしているので、試算の参考にしていただきたい。

 【図表1】金利別・借入期間別の毎月返済額

ー設定条件ー
・借入額3000万円、元利均等返済・ボーナス返済なし

金利別・借入期間別の3000万円当たり返済額
住宅金融支援機構の返済プラン比較シミュレーションより試算

注意点②:金利引き下げ方法の違いによる落とし穴

 次に、注意点②の「当初の金利引き下げ幅が大きいタイプは、途中で金利引き下げ幅が小さくなる」とはどういうことか。

 住宅ローンの金利優遇には、当初の一定期間の金利引き下げ幅が大きく、その後は小さくなる「当初重視型」と、完済までの金利引き下げ幅が変わらない「全期間型」とがある。

 「当初重視型」は、当初の金利引き下げ幅が大きく、一定期間後、金利引き下げ幅が小さくなるというタイプ。利用者からしてみれば、当初の金利が低くなるので計画を立てやすい半面、一定期間後に金利引き下げ幅が小さくなって、適用金利が高くなるリスクがあるわけだ。

 それに対して「全期間型」は、完済まで金利引き下げ幅が変わらない。したがって、借入後に店頭表示金利が上がっても、当初と同じ幅の金利優遇が継続されるので、「当初重視型」に比べて、適用金利の引き上げ幅は小さくなるという安心感がある。ただし、その分、当初の金利は「当初重視型」に比べると高くなる

店頭表示金利は変わらなくても返済額が増える!?

 たとえば、2020年6月のメガバンクの例としては、図表2のようなケースがある。固定期間選択型の3年固定「当初重視型」で、当初の3年間は店頭表示金利の2.94%に対して、金利引下げ幅が2.55%なので、適用金利は0.39%という破格の金利で利用できる。

 しかし、3年後からは金利引き下げ幅が1.85%に縮小される。つまり、2.55%の引き下げが1.85%に減少するわけで、金利引き下げ幅が0.70%小さくなる。そのため、3年後の店頭表示金利が当初の2.94%のままで変わらないとしても、適用金利は当初3年間の0.39%から0.70%上がって、1.09%になってしまうわけだ(再び、3年固定金利を選ぶとする)。

 借入額3000万円で、実際の増額率を試算すると、店頭表示金利が変わらなかったとしても、返済額は当初3年間の7万6426円から11.4%増えて8万5126円に増加することが分かる。

 【図表2】優遇金利の適用幅が小さくなる場合の返済額の変化

ー設定条件ー
・借入額3000万円、35年元利均等・ボーナスなし
・3年後にまた3年固定を選んだとする
・当初3年間の金利0.39%(店頭表示金利2.94%から2.55%優遇)
・4年目以降の優遇幅は1.85%に縮小
・当初3年間の毎月返済額7万6426円、3年後残高2758万5960円

優遇金利の適用幅が小さくなる場合の返済額の変化
住宅金融支援機構の返済プラン比較シミュレーションより試算

固定期間選択型には、25%ルールが適用されない

 それが、市中金利(金融市場で適用されている標準的な金利)が0.50%上がって店頭表示金利が3.44%になっていると、適用金利は1.59%になって、返済額は9万1703円で、20.0%も増加することになる。

 さらに、市中金利が1.00%上昇すれば、適用金利は2.09%に上がって、増額率は29.0%だから、3割近くも返済額が増える計算だ。

 そこまで金利が上がることは考えにくいとしても、計算上は市中の金利が2.00%上がると返済額が48.1%増える。5割近く増加するのだから、何とも恐ろしい。

 周知のように、変動金利型の住宅ローンについては、金利が上昇しても返済額の見直しを行うのは5年後であり、さらに増額時には増額率を25%までに抑えるという「25%ルール」が適用されるが、固定期間選択型にはそのルールはない。金利動向によっては、青天井で返済額が増えてしまうわけだ。

注意点③:返済を延滞すると優遇金利の適用がなくなる

 最後に、注意点③についてみると、住宅ローンの優遇金利には、一度でも延滞が発生すると優遇金利の適用を受けられなくなるというルールがある。1回の延滞ですぐに来月から、という厳しい金融機関は少ないだろうが、2カ月、3カ月も続くと優遇金利適用外となるのを免れない。

 優遇による金利引き下げがなくなれば、適用金利が大幅に上がり返済額が増える。ただでさえ延滞するような苦しい家計環境なのだから、返済額が増えては一層苦しくなる。果ては、任意売却、競売といった最悪の事態もあり得る。

 実際、どれくらい返済額が増えるのか、下の図表3をご覧いただきたい。

 【図表3】 優遇金利の適用がなくなった場合の毎月返済額の変化

ー設定条件ー
・借入額3000万円、金利0.525%、35年元利均等・ボーナス返済なし
・当初の毎月返済額7万8207円、3年経過後の残高2763万9001円
        ↓
 金利優遇がなくなって店頭表示金利の2.475%に
        ↓
 毎月返済額は10万4273円に! 33.3%も増加

 2020年6月現在、メガバンクの住宅ローン(変動金利型)の店頭表示金利は2.475%。それが優遇金利制度によって、ネット経由だと0.525%に引き下げられるところがある。「借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし」の毎月返済額は7万8207円だが、3年後に延滞が発生して適用金利が2.475%になると、毎月返済額は10万4273円に増える。33.3%もの増額だから、ますます返済が厳しくなるのは目に見えている

延滞が発生する前に相談すれば道が開ける

 延滞による優遇金利適用外とならないためには、返済が厳しくなった段階で、延滞が発生する前に、金融機関に条件変更などの相談を行う必要がある。そうすれば、返済期間の延長などで返済額を減額、返済を継続する道が開ける可能性がある。延滞が発生してからでは、相談しにくくなるので、くれぐれも延滞前の相談が大切だ。

【関連記事はこちら】>>住宅ローン延滞が6カ月以上なら自宅を失う可能性も! ローン破綻を避けるため、返済困難なら早めに銀行に相談を

 ここまで解説してきたとおり、住宅ローンの金利優遇制度は、返済負担を軽くしてくれるうれしい制度だが、その裏側にはリスクも潜んでいる。金利優遇制度を利用する際にはしっかりと頭に入れて、落とし穴にはまらないように注意していただきたいものだ。

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