「住宅ローン金利はいつ上がるの?」「知らないうちに引き上げられるの?」住宅ローン金利上昇への不安が高まる今、お客様から銀行員の私に対して、このような質問が数多く寄せられています。そこで今回は、銀行員がどう答えているのかを解説します。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
お客様の声1.「住宅ローン金利は上がるの?」
お客様「気付かないうちに自分の金利は上がっているの?」
銀行員・加藤「安心してください、上がっていないですよ」
お客様「これから引き上げられることはある?」
銀行員・加藤「現時点で金利の引き上げの予定はありません」
お客様は金利が心配、だからこそ銀行員は慎重になる
現在(記事執筆・2024年3月)、最も多く寄せられているのは金利上昇に関する質問です。「住宅ローン金利は上がるのか」がお客様の関心を強く集めていることを現場で感じています。また、「知らないところで、自分の住宅ローン金利が既に引き上げられているのでは」と心配する方も多くいらっしゃいます(なお、お知らせもなく「内緒で金利引き上げ」を行うようなことはありません)。
【関連記事はこちら】>>銀行員が考える、住宅ローン金利引き上げシミュレーション! その時、顧客は選別される
現状、私の勤務する銀行では、上層部からの金利引き上げの指示はありません。一方で、お客様から金利動向などを尋ねられた際には、「推測的な発言も、逆に断定的な発言も禁止」「『個人的にはこう思う』も禁止」との指示事項が存在しています。
住宅ローン利用者が金利の引き上げに「ヤキモキしている」今、金利に関する発言は厳に慎めと、いわば「箝口令(かんこうれい)」が発せられている状況にあるのです。
お客様の声2.「どのような契約だった?」
お客様「自分の住宅ローン金利だけど、契約の内容がよく分からない」
住宅ローン・金利の優遇や契約内容は、銀行員でも説明がむずかしい
自分が借りている住宅ローンの内容や、その金利に関する優遇条件の詳細を知らない(忘れてしまった)お客様は少なくありません。
現在のように金利に関するニュースが流れると、「知らなかった」「説明を受けていない」との声をいただくこともあります。
とはいえ、自分の金利や優遇条件などに関して理解できていなくても、少しも恥ずかしいことはありません。
なぜなら、プロである銀行員でさえ説明に苦心する部分だからです。お客様にわかりやすく、かつ正しく理解してもらえるような説明をすることは簡単ではありません。そのため、分からないことは遠慮なく銀行員に聞いてください。
仮に質問をした際、「そんな事も知らないのか?」といった顔をした銀行員がいて、それが部下だったなら私は「お客様の無知を指摘する前に、顧客に内容を理解させることができなかった自分の対応を反省するべきだ」と言うでしょう。
お客様の声3.「金利が上がりそうなら教えてよ」
お客様「忙しくて金利の心配をする余裕がない。金利が上がりそうなときはメールとかで教えてほしい」
銀行員・加藤「大丈夫です。金利が変更になるような場合には、必ずお知らせをする決まりになっています」
本人が知らなくても「お知らせしましたから」
金利変更がある場合、銀行は少なくとも数カ月前に、対象の顧客宛に郵送で通知をします。これは変動金利でも固定金利でも変わりません。
仮に変動金利の引き上げのような大々的な動きが起こるとすれば、通常の郵送通知だけではなく、ホームページや、場合によってはテレビ・CMなどでお知らせをしたり、個別に顧客へ電話・訪問などで説明したりといった対応もあり得ます。
ただし注意すべきなのは、転居(※1)や電話番号の変更があったことを銀行に届け出ていなかったような場合です。このような状況で金利変更などの重要な通知を受け取れず、その事実を知らなかったとしても、銀行側は「お知らせしました」と対応するしかありません。
宛所不明や転居などの理由によって、郵送物が銀行に戻ってきた場合でも顧客に届いていることとなります。なぜなら、顧客から住所変更などの届け出がなかったことが原因だからです。こうした注意事項は住宅ローン契約書類や規約などに記載されており、契約書類に署名捺印した時点で本人も承知していることとなっています。最善の手段を尽くしても連絡が取れなければ「金利変更の通知は顧客に届き、金利変更も承諾された」こととなり、銀行は所定の金利引き上げ手続きを進めます。
幸いというべきか、これまで私の銀行員生活で、住宅ローン変動金利の一斉引き上げといった事態はありませんでした。しかし、固定金利期間が終了(※2)するお客様が転居してお知らせが届かず、自動的に変動金利へ変更となり、後日「勝手に変動金利にされた」とお客様があわててやってきた、という経験はあります。
住所や電話番号など変更がある場合は、必ず銀行に連絡して変更手続きをするよう、銀行員としてお願いします。
※1 原則として、住宅ローンを借りた人がその家から転居すると、住宅ローンとして成り立たなくなります。しかし一時的な転勤などで数年間など転居する場合などは特例的に銀行も転居を認めます。またローンを借りた本人だけ単身赴任する場合など、本人限定郵便物などが届かないケースも想定されますので、まず銀行に連絡するようにしてください。
※2「金利ミックス型」などと呼ばれる金利タイプで、3年・5年・10年などの期間で固定金利を選択し、固定金利の期間が終了したら、もう一度固定金利を選ぶか、変動金利に変更することも選択できます。また上記したケースも含め「固定金利を再選択しなかった場合は、変動金利へと自動的に変更される」という形態が主流です。しかし自動的に変動金利へ変更された場合には金利優遇なしで基準的な金利になってしまう可能性もありますので、注意が必要です。
お客様の声4.「金利を上げるなら他に借り換える」
お客様「金利が引き上げになるなら、いっそのこと他の銀行に借り換えしようかな?」
銀行員・加藤「まあまあ、そう結論を急がれなくても。よろしければあちらでお茶でも」
金利を下げられる人は下げる、しかし・・・
金利上昇の話題が多くなってきた最近は特に、「金利を引き上げるなら他の銀行に行くよ!」と「予防線」を張る方もいます。
しかし、銀行員に対して「あおり」や「ブラフ」をかけたとしても、銀行があわてて金利を下げるようなことはありません。とはいえ、金利に不満を持っていることを打ち明けてくれた場合、金利を引き下げて「慰留」をし、ローン流出を防ぐ対応をすることもあります。
ただし、返済を滞納している人などに対しては、銀行側が引き下げに応じてくれないこともあります。住宅ローン金利の引き下げは、少なくとも毎回返済という約束を果たしているお客様である、というのが大前提です。そもそも、返済が遅れているのであれば、他の銀行の借り換え審査に通らない可能性が高いとも考えられます。そのため、金利が引き下げられることはないでしょう。
【関連記事はこちら】>>住宅ローンの変動金利は、借り換えなければ、金利は下がらない!
お客様の声5.「自分だけは金利を上げないで!」
お客様「自分だけは特別に金利を上げないで!絶対に誰にも言わないから!」
銀行員・加藤「いえいえ、お客様だけ特別扱いはできません。すべての方が特別なお客様です」
お客様は全員「特別扱い」
住宅ローンの金利が引き上げになるときでも、自分の金利だけは上げないでほしい。このように自分だけを特別扱いしてと要求される人も少なくありません。
しかし、一部の顧客だけを特別扱いしたことが外部に漏れると、大きな問題に発展することもあります。
さらに、銀行は顧客の属性(年収や職業・勤務先など)や銀行取引内容などで個別に金利を決めるため、初めから人によって金利は違っています。これを「特別扱い」あるいは「依怙贔屓(えこひいき)」だとは、銀行では考えません。銀行も営利企業ですから当然です。
そのため、もしも今後、金利引き上げの局面を迎えた際の対応も個別に違ってきます。その意味では「あなただけ特別」でもあり「みんな特別」なのです。
ちなみに私は、金利に不満を訴えるお客様に対し「あなただけ特別な低金利対応をするので、くれぐれも他の人には言わないでください」と付け加えることもあります。そしてそのセリフは、次のお客様に繰り返すこともありますし、またそれを聞いたお客様が口外しないとも信じていません。もちろん、聞きつけた人から「自分の金利もあの人と同じにしてよ!」と言われても、やり取りの事実の有無を含め「お客様の個人情報なのでお話しできません」と答えるだけです。
まとめ
今回は、金利上昇への不安が高まっているなか、住宅ローン利用者の「生の声」をお届けしました。
私は銀行員として「金利が引き上げになることは絶対ありません。安心してください」などとは決して言えません。しかし、利用している住宅ローンについて心配なことがあり、1人で解決できそうもないときには、遠慮せず銀行員に相談してください。そうすれば、彼らはきっと親身に答えてくれるでしょう。
銀行員の対応が悪ければ、その銀行とこれからも付き合い続けるべきか、を考えるきっかけになるかも知れません。その銀行が本当にお客様へ冷たい対応なのか、あなたが銀行に求めるレベルが高すぎるのか。それぞれだとは思いますが、少なくとも、対応に納得のできない銀行では、今後もしも金利上昇が始まったとき、その対応も満足いかない可能性がありますので・・・
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
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調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
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【回答の配点】
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満足している(5点)
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・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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淡河範明さん
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