2025年1月は、日銀の利上げ決定とトランプ大統領の就任という、住宅ローン金利に影響を与えるイベントが2つありました。これにより、住宅ローン金利が今後どうなるか、変動金利を選んだ人やこれから借りる人はどのような行動をとるべきかなどを解説します。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
2025年1月、政策金利を0.25%から0.5%へ引き上げ決定
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
日銀は1月24日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%から0.5%へ引き上げることを決定しました。
アメリカのトランプ政権発足を受けた金融市場や日本経済への影響を見極めるとのことでしたが、株式市場などに大きな混乱は起きず、利上げを判断したようです。
いまのところ、2025年度末を目途に最低でも1%程度と言われる中立金利※を目指して利上げを行う姿勢に変化はなく、前回の記事でお話しした変動金利の着地点に変更はないと見ています。
※中立金利とは、政策金利が緩和でも引き締めでもない中立の金利のこと
2025年度後半までに段階的に1%まで利上げする
植田総裁の記者会見を見たのですが、利上げに反対した委員は1名のみで、賛成多数での決定だったとのことです。
今回の利上げに踏み切った主な理由としては、経済物価について、概ね想定どおりに推移しているので、2%の持続的安定的な物価上昇率の実現の確度が高まっていると判断したとのことです。
今回の利上げによって政策金利は0.5%となりましたが、実質金利はまだマイナスの状態にあるので、緩和的な金融環境が維持されており、引き続き金利を上げていく必要があるという見方をとっています。
日銀は2024年7月の会合で、2025年度後半の「物価安定の目標」実現を前提とし、政策金利を中立金利まで引き上げていくとし、その中立金利は最低でも1%程度とみているとしています。
記者会見では、0.5%への利上げ後も中立金利までには「まだ相応の距離がある」との認識も示しました。
さらに、中立金利については「1%~2.5%」であると具体的な数字に言及したのも見逃せません。
日銀は、急ピッチの利上げを避けるために、経済・物価の反応を確認しながら適時段階的に利上げしていくとしています。
今回の利上げは昨年の7月から6カ月後、0.25%引き上げの0.5%なので、最低ラインの1%まではあと2回。見込みどおりに達成できるペースになっていると思います。
日銀はトランプ政権の不確実性をどう見ている?
2024年12月の会合では、トランプ政権発足を受けた市場や経済への影響を見極めるとのことでしたが、蓋を開けてみれば大きな混乱が起きなかったこと、また最も注目している関税政策については、日銀の金融政策に反映できる段階まで進行していないことで、利上げに踏み切っています。
しかし、トランプ新大統領は、就任演説で「直ちに貿易制度の見直しに着手する」と言及しており、2月1日からメキシコやカナダからの輸入品に25%の関税を課すことを検討していると明らかにしています。
就任初日の関税導入を見送った理由としては、さすがのトランプ氏も就任初日に株価が暴落することは避けたかったからではないかとの憶測もあり、まだまだ本番はこれからという見方もあります。
今後は中国も標的になるでしょうし、現地の有力紙では「今後、数週間から数カ月間のうちに大統領がさまざまな理由で数多くの国々に関税を課すことができるようになり、世界的な貿易戦争が起きる可能性がある」と伝えています。
日銀の植田総裁は1月24日の記者会見で「不確実性」を理由に金融政策に反映しないと言っているのですが、わずか1カ月前の12月会合では同じ「不確実性」を理由に利上げを見送っています。
トランプ政権の関税政策の影響が、今後の日銀の利上げペースに対して強いブレーキとなり得ることは間違いないでしょう。
トランプ政権が日本経済と金利に与える影響
関税については直接日本が対象とならなくても、すでに標的となっている国に販売や製造拠点を置く日本の大企業の業績に悪影響を及ぼします。業績見込みの下方修正は日本企業の株価に影響し、現に業績が悪化すれば賃金の上昇にもマイナスの圧力となってきます。
また、一部報道で可能性が示唆されているように、アメリカが関税を交渉の手段とすることによって、各国が報復関税をかけることで、世界経済が停滞する可能性も否定できません。日本経済への影響として良い材料は何一つとして無いのです。
また、長期金利の面では、トランプ氏の当選後は「トランプトレード」によって米長期金利が上昇し、それが日本に波及する形で日本の長期金利も上昇しました。
その後、FRBが利下げを開始して長期金利が下がるかに思われたのですが、それでも米国の債券は継続して売られ、長期金利は上昇し続け、連動して日本の長期金利も上昇を続けています。
日本の長期金利の上昇については、日銀が利上げ局面にあるからという説明もできるのですが、米国の金利上昇については不可解です。
その背景についてはさまざまな考察がされていますが、トランプリスクも一つの要因であると見ています。
通常はリスクが意識されると、安全資産とされる債券が買われて債券価格が上がり、利回りが下がる=長期金利が下がるのがセオリーです。
しかし、通常レベルを超える大きなリスクに直面すると、債券(国債)すらも「リスク資産」として売られることがあるのです。
住宅ローンの変動金利と固定金利はどうなる?
民間銀行の固定金利については、長期金利を指標に金利を決定する銀行が多いので、今後はある程度上がっていくことになるでしょう。
ただし、全期間固定金利タイプとしては、住宅金融支援機構の「フラット35」は、政府の少子化政策を反映して金利の上昇を抑える傾向が続いています。この傾向は今後も続くものと思います。そのため、民間銀行の固定金利が上がっていくとしても、フラット35の水準がキャップのようになって、上限が抑えられると見ています。
【関連記事】>>来月の住宅ローン金利(フラット35、変動金利、10年固定)を予想! 金利の推移、今後の金利動向を確認しよう
なお、2025年1月時点のフラット35の買取型は1.86%です。ここに、昨年2月からスタートした金利引下げ制度の「子育てプラス」で、当初の期間にわたり最大年1%下がると0.86%で固定できることになります。
今後も住宅金融支援機構が政策的にこの水準を維持するとすれば、民間銀行も固定タイプをこのあたりの水準にしていかなければ、金利上昇リスクを回避しようとする顧客を取りこぼすことになるのです。
ただし、民間銀行の中には固定金利を選ぶ顧客を割り切って諦め、変動金利を選ぶ顧客を獲得しようとする営業戦略を採用する銀行もあると思います。
変動金利は、概ね1%に収束する?
変動金利については、まさに日銀の政策金利に連動するということになるのですが、これについては1%という水準がすでに日銀によって公開されているのがポイントでしょう。
さらに、民間銀行は預金者を集めたい思惑から、政策金利の上昇よりも変動金利の上昇を抑える傾向があります。政策金利の上昇局面においてはこの状態が続くと考えられるので、変動金利の上昇も0.45~0.75%程度に抑えられるであろうと見ています。
現在の変動金利の水準が0.4%~0.6%に分布していることに鑑みると、変動金利の到達点としては、日銀が政策金利の目標としている概ね1%に収束すると見ています。
つまり、変動金利の水準と固定金利の水準はだんだんと近づいてくると考えています。
まだ借り換えすべきでない
現在の日銀のスタンスは変わらず金融緩和であり、政策金利をドンドン上げていく想定はしていないと見ています。
また、最も影響が大きいトランプ政権の関税政策が日本経済に与える影響としては基本的にネガティブなものであり、政策金利の到達点としては日銀の想定よりも下振れするリスクの方が高いでしょう。
一方で、住宅ローンの借り換えにあたっては新たな借り入れと同じくらいの手数料が必要になります。4000万の住宅ローン残高であれば100万円前後はかかってきます。
借り換えで100万円を手数料として銀行に払うと、借金は減らずに純粋なコストとして家計から資本が流出してしまいます。現在から10年程度さかのぼって住宅ローンを組んだ人を想定すると、借り換えることによって得する環境にはありません。
現在、変動金利で借りていて今後の金利上昇が不安な人は、借り換えによって現金預金を家計から流出させるのではなく、繰り上げ返済資金として確保しておくことを選択すべきでしょう。
住宅ローンの繰り上げ返済のために銀行にお金を払うことで、同額の借金(負債)が減るため、コストとして出ていくのとは違うのです。
【関連記事】>>変動金利の5年ルールは多数が勘違い?! これから住宅ローンを借りる人が知っておくべき3つの新セオリーとは
まとめ~日銀の利上げから家計を守るために心がけること
日銀の1月利上げによって政策金利は0.5%となり、2008年以来17年ぶりの高水準に達しています。
植田和男総裁は、「1%~2.5%」の中立金利までには「まだ相応の距離がある」として今後の利上げについては予断を持たずに毎回の会合で判断していく考えを表明しています。
今後も緩やかな金利上昇が見込まれる環境下で、変動金利で住宅ローンを借りる人、すでに借りている人は、金利に関する情報収集を行う必要があります。
そして、「金利上昇によって具体的に自分の支払がいくら増えるのか?」「予定どおりに完済するためにはいくら繰り上げ返済が必要になるのか?」を把握しておく必要があるのです。
【関連記事】>>住宅ローンの10年後の変動金利はどこまで上昇する? 12銀行を試算
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