住宅価格の高騰により「買いたくても自分たちの年収ではとても買えない」と諦めかけている人が少なくないのではないだろうか。そのため、金融機関では最長35年の返済期間を40年、50年に延長して買いやすくする動きが強まっている。35年超のローンならどれくらい返済負担が減り、マンションが買いやすくなるだろうか。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
首都圏のマンション購入には1,000万円以上の年収が必要な時代
不動産経済研究所の調査によると、2025年度の首都圏新築マンションの平均価格は9,383万円。2015年度は5,617万円だったから、10年で67.0%も上昇したことになる。
※出典:不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2025年度(2025年4月〜2026年3月)」
仮に2015年度に全額ローンを組めたとすれば、毎月返済額は18万6,070円(借入額5,617万円、金利2.0%、35年元利均等・ボーナス返済なし)。年収に占める年間返済額の割合である返済負担率を、銀行の審査基準の上限の35%とした場合、必要な年収は638万円。平均的な会社員でも新築マンションを手にできたのではないだろうか。
しかし、2025年度の9,383万円のマンションを購入するとなると、毎月返済額は31万823円となり、必要な年収は1,066万円と1,000万円を超えてしまう。かなりの高額所得者でなければ、手が届かない状況になっている。
まして、首都圏でも東京23区となると、いよいよ手に負えなくなる。2025年度の23区の平均は1億3,784万円だから、全額ローンを組んでの試算では毎月返済額は45万6,612円で、必要年収は1,566万円になる。
住宅ローンの返済期間を延長する銀行が増えている
こうした現状では、新築マンションが売れなくなるし、銀行にしてみれば住宅ローンを利用してもらえなくなる。
そこで、住宅価格高騰下でも住宅ローンを利用してもらえるよう、住宅ローンの返済期間を40年や50年に延長する銀行が増えている。返済期間を長くすれば、毎月の返済額が減って買いやすくなる。
住宅金融支援機構では民間金融機関を対象に、住宅ローンへの取り組みを調査している。その中で、住宅ローンの積極化姿勢として、どのような商品力強化に取り組んでいるかを質問している。
その結果が図表1で、回答の中でもっとも多かったのが「返済期間35年超のローン提供」の75.7%だった。2位の「団体信用生命保険の保障内容の充実」(50.7%)に25ポイントの差をつけている。35年超のローンの開発・促進が金融機関にとってもっとも大きな関心事となっているわけだ。
図表1 住宅ローンの商品力強化の取組み(上位10項目)
35年超の住宅ローンは、地方銀行や大手銀行、ネット銀行が実施し、今や住宅金融支援機構でもフラット50を実施するようになっている。
それに応じて、35年超の返済期間で住宅ローンを利用する人が増えている。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者実態調査」によると、2026年1月調査で「40年超〜」は5.5%、「35年超〜40年以内」は17.9%で、35年超の合計は23.4%とほぼ4人に1人に達している。若い世代ほど利用率が高い。
50年返済なら必要年収が100万円以上減少する
では、実際に超長期ローンでは、どんなに借りやすくなるのか、どれくらい借入可能額が増えるのだろうか。
まず返済期間別の返済額と必要年収は図表2のようになっている。共通条件は借入額5,000万円、金利2.0%、元利均等・ボーナス返済なし。返済負担率別に試算している。
図表2 返済期間別(35〜50年)の返済額と必要年収
設定条件:借入額5,000万円、金利2.0%、元利均等・ボーナス返済なし、返済負担率35%

返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のことで、多くの金融機関では上限を35%としている。ここでは借入可能額が多くなる返済負担率35%で必要年収を試算する(年収がさほどでない場合、返済負担率35%では家計への負担が重くなり過ぎるので、25%程度までに抑えるのが無難である)。
従来の最長返済期間であった35年返済では毎月返済額が16万5,631円で必要年収は568万円。それが50年返済では毎月13万1,895円、必要年収は452万円まで減少する。若くてまだ年収がさほどでない人も購入できる。
1億円以上のマンションも購入可能に
超長期ローンが可能になって返済負担が軽くなれば、借入可能額が増えて、高額のマンションも買えるようになる。図表3は返済期間によって、どれだけ借入可能額が増えるのかを年収別に示している。
図表3 返済期間別(35〜50年)の年収別借入可能額
設定条件:金利2.0%、元利均等・ボーナス返済なし、返済負担率35%

年収600万円の場合、 35年返済では借入可能額は5,282万円だが、返済期間40年では同5,778万円に、45年では同6,227万円に、50年返済では同6,634万円に増える。50年返済を利用できれば、35年返済より借入可能額が1,350万円以上増加する。その分、購入する住まいを広くしたり、より利便性の高いエリアで購入したりすることが可能になる。
首都圏の新築マンションの2025年度の平均価格は9,383万円だが、都下は6,823万円、埼玉県は6,306万円、千葉県は6,828万円、神奈川県は7,481万円。1億円以上の23区は無理でも、都下や周辺3県なら自己資金次第で購入が可能になる。
超長期ローンにはデメリットもある
しかし、返済期間35年超の住宅ローンはメリットばかりではないため、慎重な姿勢が欠かせない。
まず注意しておきたいのが、誰でも50年返済を利用できるわけではない点。通常、住宅ローンには「完済時年齢満80歳まで」という規定があるので、50年返済を利用できるのは20代の若い人たちで、30歳以上では45年、40年などに制限される。
また、35年超のローンでは35年以下に比べて金利が高くなる。たとえば2026年6月のフラット35は返済期間21年から35年が3.21%に対して、36年から50年は3.38%となっている。民間でも、三菱U F J銀行では返済期間31年から35年が3.92%に対して、36年から40年は3.98%となっている。
利用したい金融機関の条件がどうなっていて、自分の条件なら何年返済まで利用できるのか、金利はどうかなどを十分に確認しておく必要がある。
【関連記事】>>50年ローンなら高額なマンションも購入できるが、返済負担は1500万円も増える!
繰上返済でリタイアまでに完済できるようにする
最後に、超長期ローンは毎月の返済負担が軽くなる半面、完済までの総返済額が多くなってしまう点を理解しておきたい。図表4は返済期間別の総返済額の差を比較している。
図表4 返済期間別(35〜50年)の総返済額の差
設定条件:借入額5,000万円、金利2.0%、元利均等・ボーナス返済なし、返済負担率35%

借入額5,000万円で35年返済では総返済額は6,956万5,020円だが、40年返済を利用すると35年返済より311万2,740円増える。45年返済では630万3,900円、50年返済では957万1,980円と1,000万円近くも返済しなければならない。
また、超長期ローンを利用するとリタイア後も返済の続く可能性が高く、老後の生活が不安になる。
だから、超長期ローンで毎月の返済額が軽減される分、家計管理を徹底して貯蓄を進め、ある程度の金額になれば一部繰上返済で返済期間を短縮し、できるだけ早く返済を終えられるようにしたい。そうすれば、リタイアまでに返済を終え、老後の不安を解消できるだろう。
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
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