都心部の中古マンション平均価格が高値を更新する一方、足元では一部の物件に値下げの動きもみられます。金利上昇と価格高騰が交錯するいま、「価格が下がるまで待つべきか」、それとも「待つほど買えなくなるのか」。本記事では、金利上昇局面で中古マンションの買いどきの見極め方を解説します。(住宅ローン・不動産ブロガーで公認会計士・千日太郎)
中古マンションは売り出し価格と売却価格の差が広がっている
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
2026年に入って、東京23区や大阪市の都心部を中心に、マンションを売り出した後に値下げする事例が増えているという報道が目立つようになってきました。
実際に都心の高価格帯では在庫が増え、価格を下げる物件も目立ち始めています。大阪市の都心6区でも、投資需要を背景に価格が上がりすぎたマンションを中心に、売却希望者の増加に購入需要が追いつかない動きが出ているようです。
こうした背景には、これまでの売り出し価格が実需層の購買力を超えていたことに加え、日銀による政策金利の引き上げもあるでしょう。金利が上がれば購入者の借入可能額が減るため、物件価格には下押し圧力になります。
一方で、中古マンションの平均価格はいまだ高値を更新しています。東京カンテイの市況レポートによると、東京23区の中古マンション売り出し価格は、2026年5月も70㎡換算で1億2,849万円となり、25カ月連続で最高値を更新しています。平均価格だけを見れば、まだ右肩上がりです。
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ただし、これは市場全体が一斉に下がり始めたという意味ではありません。実需層の購買力を超えて高く値付けされた一部の物件が、売れる価格へ修正され始めた段階とみるほうが正確です。
つまり、今の状況は住宅価格の全体的な低下ではなく、価格調整の入り口と見るのが妥当です。過熱していた高価格帯から、実際に住む人が買える価格へ戻ろうとする動きが始まった可能性があります。これは購入者にとっては朗報といえるでしょう。
このような状況で「価格が下がるまで待つべきか」、それとも「待つほど買えなくなるのか」を見ていきましょう。
金利が1%上がると、借入可能額は約15%減る
中古マンションの平均価格が下がるのを待つなら、自分が購入したいエリア、広さ、築年数、価格帯で値下げが増えているかを見る必要があります。
さらに同時に見なければならないのが、住宅ローン金利の動向です。
日銀は、2026年6月に政策金利を0.25ポイント引き上げ1%としました。7月現在、変動金利が1%未満の銀行もありますが、多くの銀行が金利改定を行う10〜11月には、低い銀行で1.2%前後、高い銀行では1.6%前後まで上がる可能性があります。
さらに政策金利が2%へ向かえば、変動金利は2%台、銀行によっては2.5%前後まで見る必要があるでしょう。金利が上がると、毎月返済額が同じでも、借りられる金額が減ります。
そこで、30歳から返済を開始する場合の毎月返済額を約15万円にそろえて、金利ごとに借りられる金額を比較します。
表1 30歳・35年返済で毎月返済額を約15万円の場合の金利別・借入額
金利1.4%なら、借入額5,000万円で毎月返済額は約15万円です。ところが金利が1%上がって2.4%になると、同じ返済額で借りられるのは4,259万円です。さらに金利が1.5%上がって2.9%になると、3,954万円まで下がります。
頭金なしのフルローンなら、いま5,000万円で買える住宅は、金利が1%上がった後には約4,259万円、つまり約15%値下がりしなければ、毎月返済額は同じになりません。金利が1.5%上がれば、約3,954万円、つまり約21%下がる必要があります。数年でここまで不動産価格が下がるなら、記録的な大暴落といえるでしょう。
日銀の利上げは既定路線との見方が多いですが、住宅価格によほどの低下が伴わなければ、むしろ家の購入は遠ざかることになります。「金利上昇で住宅価格は下がるから待てばよい」という考え方には、この借入可能額の低下という視点が抜けています。
ただし、金利上昇局面は誰にとっても買いにくいわけではありません。日銀は賃金の上昇を確認しながら利上げを進めます。待っている間に、金利の上昇とともに収入が上がった人は、かつて高根の花だった物件に手が届くこともあるわけです。
つまり、待つことで家の購入が近づくのは、その間に収入や頭金が十分に増えるケースだといえます。
20代から30代前半なら、価格が下がるのを待つ戦略が取れる
20代から30代前半の若い世代は、「待つ時間」を比較的使いやすい世代です。現時点では50年ローンにペアローンを駆使しなければ届かない物件でも、数年後に世帯年収が上がり、頭金が増え、物件価格が適正化してくれば、より無理のない条件で買える可能性があります。
若い世代にとって待つことは武器になります。ただし、価格が下がるのを何となく待つだけではいけません。待っている期間に頭金をいくらためるのか、世帯年収がいくらになったら動くのか、子どもの誕生や就学など、どのタイミングまでに購入するのかを設定しておく必要があります。
30代後半から40代前半は、待ちすぎると購入機会が遠のく
30代後半から40代前半のミドル世代は「待つほど不利になりやすい」と言えます。この世代は、住宅ローンで借りられる金額が自分史上、最大値に達する時期です。キャリアとともに収入が上がっているうえに、定年までの実働期間も長いからです。
一方で、待つことはもろ刃の剣になります。40歳から35年ローンを組むと、65歳時点でも約10年分の返済が残ります。表1と同じ借入条件でシミュレーションすると、定年時のローン残高が1,600万円前後になります。
表2 40歳・35年返済で毎月返済額が約15万円の場合の定年時残高
さらに待って収入が少し増えたとしても、定年までの期間が短くなる分、定年時のローン残高は増えていきます。5年前の年齢と収入なら買えた家が、物件価格があまり下がらないまま金利だけ上がることで、買えなくなる可能性があるのです。
ミドル世代が待つなら、シビアに期間を区切る必要があります。1年から2年程度のスパンで、自分の狙うエリアに価格調整が出るかを確認するのは合理的でしょう。
しかし、5年を超えてじっくり待つとなると、自分自身が住宅ローンを借りにくいシニア世代へ移ってしまう可能性が高くなります。価格の下落を待つメリットと、返済期間が短くなるデメリットを、同時に見る必要があります。
40代後半から50代は、価格下落より年齢の影響が早い
40代後半から50代のシニア世代は、価格下落を待つコストが最も大きい世代です。価格が下がるより先に、年齢による借入条件の悪化が進むためです。
住宅ローンの完済時年齢の上限は、多くの金融機関で80歳未満とされています。そのため50歳から借りる場合、返済期間の上限は30年未満になります。返済期間が短くなれば、同じ金額を借りても毎月返済額は増えます。さらに収入は今がピークという人が多く、その後は役職定年や定年退職が見えてきます。
50歳で、毎月返済額を約15万円にそろえた場合の借入額と定年時残高は、次のとおりです。
表3 50歳・30年返済で毎月返済額が約15万円の場合の借入額と定年時残高
35年返済だった30代・40代と異なり、返済期間が30年に短くなるため、同じ毎月15万円の返済でも、借りられる額は金利1.4%で約4,407万円と、5,000万円には届きません。しかも定年(65歳)時点では、30年ローンのうち15年分しか返済が進まないため、2,000万円を超える残高が残ります。
価格が少し下がるのを待っている間に、借りられる期間が短くなり、無理なく返せる金額も下がっていくのです。
この年代で購入するなら、住宅価格が下がるまで待つことよりも、自己資金と定年時残高を重視すべきです。十分な頭金があるか、退職金を住宅ローン返済に使わなくても老後資金が残るか、定年後も返済を続けられるか。これらを確認する必要があります。
そして条件が整わない場合は、無理に買わず賃貸を続けることも、現実的な選択となるでしょう。
買い時は「環境軸」と「自分軸」の2つで決める
中古マンションの買いどきを考えるとき、筆者は下記の「環境軸」と「自分軸」の2つの軸で整理することをすすめています。
・マンション価格が下がっている
・住宅ローン金利が低い
自分軸
・今の収入で無理なく買うことができる(返済比率が30%以内)
・家族が本当に住みたいと思えるか
ただし、環境軸については現在のマンション価格が底かどうかはあらかじめ分かりませんし、価格が下がらない可能性もゼロではありません。そのため年齢によっては何年も待つことはできません。
そこで重要なのが自分軸です。住宅価格が少し高い時期でも、「買える家」と「欲しい家」が高い水準で一致しているなら、購入後の満足度は高くなります。反対に、欲しいマンションに全振りして返済が苦しくなるケースや、価格だけで選んだマンションを買う場合は、後悔につながります。
この自分軸と環境軸を組み合わせると、買い時は次の4タイプに分けられます。

■ 理想型(環境軸:高 × 自分軸:高)
住宅価格が安い時期に、納得できる家を無理なく買えたなら理想型です。住んで満足でき、売却する場合も損が出にくい状態です。
■ 住み切り型(環境軸:低 × 自分軸:高)
住宅価格は高いものの、自分の収入で無理なく買え、長く住みたいと思える家なら住み切り型です。将来価格が下がれば売却時に損が出る可能性はありますが、住み続ける限り、その損は顕在化しません。現在のように価格が高い局面では、住み切り型として成立する物件を選ぶほうが現実的です。
■ 出口あり型(環境軸:高 × 自分軸:低)
安い時期に買ったものの、返済や住み心地に後悔がある場合は出口あり型です。価格上昇によって売却益が出るなら、売ってやり直すことができます。
■ 袋小路型(環境軸:低 × 自分軸:低)
もっとも避けたいのが袋小路型。高い時期に、返済が苦しい、または満足できない家を買い、価格下落によって売るにも持ち出しが必要になる状態です。
現在のようなマンション価格が高い局面で避けるべきなのは、高い家を、無理なローンで、しかも納得しないまま買うことです。
一方、高くても住み切れる家なら購入は成立します。安くなるまで待っても、自分の借りる力が先に下がれば、理想の家には近づけません。
まとめ~「価格」「頭金」「期限」の3つを決めて判断する
住宅価格が高いと感じるなら、今すぐに買う必要はありません。しかし、いつまでも待てるわけではありません。待つなら、価格・頭金・期限の3つを決めておくべきです。
購入したい価格:狙っているエリアの物件価格がいくらまで下がったら動くかを、あらかじめ決めておきます。
貯める頭金:待っている期間に、自己資金(頭金)をいくら上乗せして蓄えるかを明確にします。
判断する期限:子どもの就学前や何年後など、最長でもいつまでに最終決断をするか期限を設定します。
例えば、「狙っているエリアの5,000万円の物件が4,500万円になったら動く。その間に頭金を300万円増やす。最長でも子どもの就学前、または2年後までに判断する」。このように決めれば、待つことが住宅購入の戦略になります。
条件がそろわなければ、予算を下げる、エリアを広げる、購入を見送って賃貸を続けるという次の判断もできます。
住宅価格は、一部の高価格帯で調整の兆しが出ているものの、市場全体が下落に転じたとはまだ言えません。一方で、住宅ローン金利はすでに上昇し、待っている間に借りられる金額が減る可能性があります。
買い時は、市場だけでは決まりません。価格と金利という環境軸に、自分の年齢・収入・頭金・家族構成、そして欲しい家という自分軸を重ねて決めるものです。
これから住宅を購入する人が見るべきなのは、市場が底かどうかではありません。待っている間に、頭金や収入が増えて借入可能額が伸びていくのか、それとも年齢とともに返済期間が短くなり、借りられる額が減っていくのか。判断の分かれ目はそこにあります。前者なら待つことは有効な戦略になり、後者なら待つほど購入は遠ざかります。
数字に振り回されず自分の基準で選んだ家こそ、長く安心して暮らせる、あなたにとっての「買い時の家」だと言えます。
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淡河範明さん
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