7月の日銀会合を経て利上げが新たな局面を迎えるなか、変動金利は今後1年で1%上昇し、2%台に入るシナリオの想定が必要です。これから住宅ローンを組む人は、変動金利か固定金利かをゼロ金利時代の感覚で決めてしまうと、大きな判断ミスにつながりかねません。本記事では、住宅ローン金利の新局面における、20代から50代までの年代別に住宅ローンの選び方を解説します。(住宅ローン・不動産ブロガー 千日太郎)
利上げペースの加速で、住宅ローンの変動金利への影響は?
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。
日銀は、2026年7月30日・31日の金融政策決定会合(以下、日銀会合)で政策金利を1%に据え置きました。しかし、会合後に公表された主な意見をみると、「物価の上振れを防ぐ局面に入った」「待つことのリスクが小さいとは言えない」「金融緩和度合いの調整をペースアップする必要がある」などの発言がありました。
特に重要なのは、「局面の変化」という表現です。これまでの日銀は、基調的な物価上昇率を2%へ近づけるために政策金利を調整するというスタンスでしたが、今回、さらなる利上げや利上げペースの加速を意識した発言が複数の委員から出ています。
これは、半年に1回、0.25%ずつ引き上げるという従来の利上げペースを前提にするのは甘くなってきたと言えるでしょう。
したがって、今後の住宅ローンで変動金利を考えるときは、これまでよりも上振れを意識する必要があります。日銀が推計している中立金利のレンジは非常に広く、1.1%から2.5%程度とされています。現在の政策金利1%は、その下限に届いていない水準です。
このまま物価の上振れリスクを放置すると、後からより大幅な利上げが必要になる可能性があります。そうならないために、利上げペースを早めるべきだという意見が出ているわけです。
これは変動金利の利用者にとっては悪いニュースに見えます。しかし、あとから大幅な利上げに追い込まれるより、早めに利上げして物価上昇を抑えるほうが、結果として傷が浅く済むという考え方もできます。
後ほど解説しますが、筆者はあとから大幅な利上げに追い込まれるような悲観シナリオでは、政策金利を3%にするようなケースもあるとみています。
現在の変動金利は3年前の固定金利を超えている
かつて、住宅ローンは「変動金利一択」と発言する専門家も多かったです。3年前(2023年)の8月にさかのぼると、変動金利は0.3%から0.4%程度。固定金利の代表であるフラット35買取型は1.72%程度で、さらに当初5年や10年にわたって0.5%下がる金利引き下げ制度があり、1.22%になりました。
しかし、それからわずか3年で状況は一変。政策金利は0%から1%まで上昇し、変動金利も、政策金利の1%(+0.25%)が反映されると、銀行によっておおむね1.2%から1.6%程度になります。これは、3年前のフラット35の当初引き下げ後の水準をすでに上回っています。
つまり、当時は固定金利として高いと見られていた水準よりも、現在の変動金利のほうがはるかに高い。多くの人が変動金利を選んだ時代に、いま実際に起きているのは、変動金利がかつての固定金利を追い越しているという事実です。
ここで重要なのは、「固定が正しかった」「変動が間違いだった」という話ではありません。住宅ローンを選ぶときに、現在の金利差だけを見るのではなく、将来の金利上昇幅とそれに対する保険料をどこまで織り込めていたかという点です。
住宅ローンの変動金利は、今後1年で2%から3%台まで上がる
利上げの新局面に伴って、これまで筆者が予想してきた変動金利も上方修正が必要です。これまでは、「2年間でプラス1%(半年に1回、0.25%ずつ利上げ)」のシナリオを中心に置いていました。
しかし、日銀がペースアップを意識し始めた以上、今後1年程度で1%上がるシナリオがノーマルと考えるべきでしょう。
現在の変動金利は、おおむね1.2%から1.6%程度です(政策金利1%)。ここから1年で1%上がると、低い金利の銀行で2.2%前後、高い銀行では2.6%前後になります。
保守シナリオも見ておきます。日銀の推計レンジ上限に近い政策金利2.5%まで上がる場合(現在からプラス1.5%)、金利の低い銀行で2.7%前後、金利の高い銀行では3.1%前後が視野に入ります。
日銀の推計レンジを超えて政策金利3%(現在からプラス2%)に達する悲観シナリオもあります。これは物価上昇が止まらず、後手に回った結果として急激な利上げが必要になるケースです。この場合は、変動金利が低い銀行でも3%台に入り、金利の高い銀行では3.5%前後になる可能性も十分あります。
各シナリオで変動金利がどうなるのか、主要な銀行で見てみましょう。

以上から、変動金利を選ぶ場合は最低でも2%台前半、保守的には2%台後半、悲観的には3.5%近い水準まで耐えられるかを確認しておく必要があります。
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金利上昇シナリオ別の変動金利と固定金利(フラット35)を比較
では、現在のフラット35はどうでしょうか。8月の金利は買取型で3.29%です。保証型では頭金を多く入れたり、団信を外したりすることで3%前後に下げられるケースがあります。借り換えではキャンペーン適用で2%台の金利が出ているケースもあります。

この水準だけを見ると、変動金利の1%台前半に対して、フラット35は3%台ですから、固定金利はかなり高く見えます。金利差が大きいため、住宅ローンシミュレーションでも変動金利が有利になりやすいです。
しかし、悲観シナリオでは見え方が変わります。変動金利が3.0%台まで上がるなら、フラット35の全期間固定3.29%と同水準になります。つまり、現在の固定金利は、変動金利が大きく上振れした場合の到達点に近い水準といえます。
さらに、フラット35には当初の金利引き下げ制度があります。「子育てプラス」や住宅性能によるポイントを使えば、当初5年または10年について最大1%の引き下げを受けられます。
3.29%のフラット35でも、当初期間は2.29%まで下がります。保証型や団信不加入、頭金を組み合わせれば、当初期間は1%台後半から2%台前半になるケースもあります。
そうすると、今後1年で変動金利が2.2%から2.6%程度に上がるノーマルシナリオでは、当初期間の固定金利が変動金利と同程度、むしろ低金利になる場面も出てきます。ここが非常に重要です。
金利上昇局面の住宅ローン選びで頭に入れておきたい2つのルール
金利上昇局面では、変動金利の「5年ルール」と「125%ルール」、固定金利は変動金利より先行して上がるという2つのルールを頭に入れておく必要があります。
変動金利の「5年ルール」と「125%ルール」
「5年ルール」は金利が上がっても、元利均等返済の場合、毎月返済額が5年間据え置かれる仕組みです。ただし、金利は上がっていくので、返済額に占める利息の割合は増え、元本の減りは遅くなります。そして6年目に帳尻を合わせる形で毎月返済額が見直されます。
このとき、返済額の上限は直前の1.25倍までという「125%ルール」があります。変動金利は金利が動く商品ではありますが、支払額だけを見ると5年間は固定される面もあります。厳密には5年固定ではありませんが、家計管理上は少し似た特徴があります(※一部のネット銀行や元金均等返済では5年ルール・125%ルールが適用されない商品もあります)。
この5年ルールがうまくはまる人は、金利上昇局面でも変動金利を合理的に使えます。たとえば若い世代で、今後5年の間に収入が上がり、6年目に返済額が1.25倍になっても耐えられる場合です。金利上昇の時間差を、自分の収入上昇で吸収できる人にとっては、変動金利はまだ有力な選択肢です。
【関連記事】>>変動金利の5年ルールは多数が勘違い?! これから住宅ローンを借りる人が知っておくべき3つの新セオリーとは
固定金利は将来の金利上昇を先取りして先に上がっていく
2つ目は、固定金利は将来の金利上昇を先取りして先に上がっていくということです。フラット35などの固定金利は、長期金利の影響を受けます。長期金利は将来の政策金利や物価上昇を先取りして動くため、固定金利は変動金利より先に高くなります。
つまり、金利が上がる局面では、変動金利と固定金利の差(開き)が大きくなりやすくなります。この金利の差額は、言ってみれば「将来いくら金利が上がっても返済額が変わらない安心を買うための保険料」です。
金利が上がっている最中は、この保険料が高く設定されるため、一見すると固定金利はすごく損(割高)に感じられます。だからこそ、「そこまで高い保険料を払ってでも、返済額をずっと固定する価値が自分にあるのか」を慎重に判断する必要があるのです。
年代別に見る、変動金利が向く人、固定金利が向く人
ここからは、年齢別に「変動金利が向く人」と「固定金利が向く人」のタイプを見ていきます。
20代〜30代前半
・毎月返済額を世帯手取り月収の4割以下に抑えられている
・ボーナス払いを選択していない
・勤続によって昇給が期待できる。今のところ転職等は考えていない
・共働きであり、出産後はフルタイムで職場復帰したい
固定金利が向く人:=返済継続力がギリギリだが、長く住み続ける
・当初の毎月返済を世帯手取り月収の4割程度に抑えられている
・長く住み続ける前提で家を買う
・金利上昇のたびにストレスを感じたくない
・子育て期の収入減と支出増加を見越して住居費を固定したい
20代~30代前半の若い世代は、現時点の収入では返済継続力が弱点ですが、今後の上がり代があります。賃上げの対象になりやすく、勤続を重ねることによる昇給も見込みやすい。5年ルールによって当初5年間の返済額が変わらない間に収入が増えれば、6年目以降の返済増加にも対応しやすくなります。
毎月返済額は返済を継続できる上限の目安として4割以下に抑えるようにします。ただし、ボーナス払いを選択する場合は変動金利はおすすめできません。6年目に返済額が最大1.25倍になるルールはボーナス返済分にも適用されるため、増額される金額そのものが大きくなってしまうからです。
一方、固定金利を選ぶ場合も、当初引き下げ期間の返済額が世帯手取り月収の4割程度に収まるなら、生活設計を安定させる有力な選択肢になります。
30代後半〜40代前半
変動金利に向く人:金利上昇耐性が高く、自己資金が厚い
・毎月返済が1.25倍になっても、影響を吸収できる
・ボーナス払いを選択していない
・5年後に今よりも収入が上がっていることが具体的に想定できる
・子の教育費について、積立貯金などの原資を用意してある
固定金利に向く人:定年時のローン残高を固めたい、長く住み続ける可能性が高い
・返済継続力は安全圏だが、定年時残高が大きくなるので固定しておきたい
・長く住み続ける前提で家を買う
・借り換えや金利交渉を将来に持ち越したくない
・子の教育費について、積立貯金などを計画的に行いたい
ミドル世代は若い世代より収入が高く、家族構成も固まっていることが多いです。共働きを維持できている場合、収入の見通しも立てやすいため、変動金利に向く人も多いです。ただし教育費が増えてくる時期でもあるため、学費に備えた積み立てや原資を確保できているかが重要です。
また、変動金利か固定金利かは、毎月返済額だけで決めず、定年時の残高をどう見るかです。65歳または70歳時点でどれだけローンが残るのか、その残高を固定して読みやすくしたいのか、それともある程度リスクを取ってもよいのか。ここが判断軸になります。
【関連記事】>>金利上昇局面で中古マンションの買いどきはいつ? 物件価格が下がるのを待てば買える人・買えない人の判断軸を解説!
40代後半〜50代
変動金利に向く人:金利上昇耐性が高く、自己資金が厚く、完済以外の選択肢を複数持つ
・毎月返済が1.25倍になっても、影響を吸収できる
・ボーナス払いを選択していない
・購入後の時点で定年時のローン残高と同額以上の蓄えがある
・物件の売却可能性やリバース・モーゲージなど複数の選択肢を検討できる
固定金利に向く人=定年後の返済額を確定させたい
・返済継続力は安全圏だが、定年時残高が大きくなるので固定しておきたい
・長く住み続ける前提で家を買う
・収入増加を見込まずに安全に組みたい
・終の棲家を想定しているが、売却は可能である
シニア世代の場合、住宅ローンの返済リスクは老後資金に直撃します。若い世代なら「5年ルール」の間に給料が上がる期待も持てますが、シニア世代はそうはいきません。6年目に返済額が1.25倍に増えるタイミングは、役職定年や退職で収入が減る時期と重なりやすいからです。
そのため、シニア世代で変動金利が向くのは、「借入額を十分小さく抑えている」「ボーナス払いを使わない」「購入後も定年時のローン残高以上の手元資金が残る」「いざとなれば売却やリバース・モーゲージなどの選択肢がある」といったように、複数の脱出ルート(出口)を用意できる人です。
一方、固定金利が向くのは、定年後の毎月の返済額をきっちり確定させて老後資金を守りたい人です。ただし、固定金利を選んでも「定年後の返済期間の短さ」や「ローン残高の多さ」という根本的なリスクが消えるわけではありません。固定金利は、あくまで安全な予算枠の中で「将来の金利上昇という不安要素を排除するための手段」として活用するのが基本です。
まとめ
以上のように、これからの住宅ローン選びでは、5年ルールをうまく使え、収入増加が見込め、金利上昇に耐えられる人にとっては、金利上昇局面にあっても変動金利は合理的な選択肢です。
ただし、今後1年でプラス1%、つまり変動金利が2%台に入るシナリオは、想定しておく必要があります。さらに日銀の推計上限である政策金利2.5%、それを超える3%まで想定するなら、変動金利は3%台まで上がる可能性もあります。
一方、変動金利より先に動く固定金利はすでに金利が上がっています。現在のフラット35は高く見えますが、「子育てプラス」や保証型の恩恵を大きく受けられる人にとっては、当初期間の固定金利が変動金利と同じ、あるいは変動金利を下回る局面もありえます。
固定金利が高いのは金利上昇リスクに対する保険料なので、その差分が自分にとって納得できるのかを見なければなりません。
住宅ローンは、最終的に少し得をするかどうかだけで決めるものではありません。35年以上という長期間、生活を安定して維持できるかが重要です。そのため、変動金利と固定金利で返済額をシミュレーションしてから決めるようにしてください。
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淡河範明さん
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