住宅ローンの融資を行なっている金融機関は大きく、メガバンク・地方銀行・信用金庫(信用組合)・ネット銀行に分かれ、それぞれ優遇したい顧客層や審査基準の傾向が異なります。金利が低いからといって、自分の属性とかけ離れた銀行を選ぶことで、審査に通らず物件の契約期限に間に合わない、という事態も起こり得ます。そこで本記事では、金融機関ごとの審査の特徴と、自分に合った銀行の選び方を解説します。(金融ライター・加藤隆二)
住宅ローンを融資する金融機関のタイプによって審査の特徴が異なる
住宅ローンを検討する際、比較サイトで金利ランキングを確認する方は多いでしょう。しかし、金利だけで申込先を決めてしまうと、審査に通らず希望額を借りられないという落とし穴にはまることがあります。
金融機関にはそれぞれ優遇したい顧客層があり、金利の低い銀行が誰にとっても通りやすいわけではないからです。
金利上昇局面で厳しさを増す「審査金利」
政策金利が1.0%に達し、変動金利の指標となる短期プライムレートの引き上げや、固定金利の基準となる長期金利の上昇など、金融市場は大きな転換期を迎えています。
こうした状況下で、銀行は住宅ローン審査にあたり、将来金利が上昇した際にも返済を継続できるかを検証する「ストレステスト」を、以前より厳しく行うようになっています。
ここで重要になるのが「審査金利」です。変動金利では低い最優遇金利を提示する銀行もありますが、融資の可否を判断する際には、実際に適用する金利ではなく、それより高い「審査金利」を用いて返済負担率を計算します。
そのため「適用金利が低いから余裕で借りられる」と考えて申し込んでも、審査金利で計算された結果、希望額を満額で借りられないケースがあります。
一般に、審査では年間返済額が年収に占める割合(返済負担率)を、年収に応じておおむね30〜35%以内に収まるかどうかで判断するとされています。適用金利ではなく審査金利で計算されると、この返済負担率が上がり、借入可能額が想定より少なくなる点に注意が必要です。
(注)「審査金利は年3.0%」「年4.0%」などといった表現を目にすることがあります。しかし各行の審査金利や審査基準は非公開であり、具体的な水準については本記事でも言及できません。あくまで返済負担率が上ぶれし得るという点をご理解ください。
各金融機関が持つ「審査の特徴」
それぞれの金融機関には「どのような顧客に融資したいか」という方針があり、それが審査基準の傾向として表れます。
したがって、まず自分の職業・収入形態・勤続年数・自己資金といった条件(金融業界では「属性」と呼ばれます)を把握し、それと相性の良い審査基準を持つ銀行を選ぶことが、住宅ローンをスムーズかつ有利な条件で借り入れるための近道となります。
【関連記事】>>【銀行員が解説】メガバンク?地方銀行?ネット銀行?地方で住宅ローンを借りる際の銀行・金融機関の選び方を3つのポイントから徹底解説!
メガバンク:勤務先・収入といった属性を重視するため柔軟性は低い
メガバンクは住宅ローンにおいて魅力的な金利や充実した付帯サービスを提供していますが、その審査には独自の基準があります。
勤務先・収入をスコアリングする審査システム
メガバンクの住宅ローンは、システム化された「スコアリング審査」を取り入れています。全国の支店やネット経由で膨大な数の申し込みがあるため、一人ひとりの事情を個別にヒアリングして審査することが物理的に難しいからです。
年収・勤務先の企業規模・勤続年数・自己資金の割合・雇用形態といったデータが点数化され、その合計で評価されます。とくに公務員や上場企業の正社員で、勤続年数が長く収入が安定している方は高く評価され、低い優遇金利が提示される傾向があります。
審査基準から外れると厳しくなる「融通の利かなさ」
一方で、メガバンクの審査は柔軟性の点では期待しにくい面があります。スコアリングの基準に満たない点があると、審査のハードルが上がります。たとえば、以下のようなケースです。
・年収は1,000万円を超えていても、基本給が低く、収入に占めるインセンティブ(歩合)の割合が大きい営業職
・独立して3年目で利益は十分に出ているものの、適法な範囲の節税対策で申告所得を低く抑えている個人事業主
こうした方々は、収入の安定性がスコアリング上は評価されにくく、審査通過が難しくなることがあります。
また、自己資金なしのフルローンに諸費用まで上乗せして借り入れようとするケースにも、審査は慎重になります。申し込みが多いため、基準に合致しない案件は減額や否決となることも少なくありません。
こんな人はメガバンクに向いている
・公務員、または上場企業や社会的信用度の高い企業に正社員として勤めている
・給与形態が固定給中心で、毎月の収入が安定している
・物件価格の1〜2割以上の自己資金(頭金)を用意できる
・過去にクレジットカードや携帯電話端末代金の支払い遅延など、信用情報に問題がない
上記の条件に当てはまる方は、メガバンクの低金利と充実したサービスを受けやすいでしょう。
地方銀行:地元の安定企業と公務員に強いが、変化を嫌う
各都道府県に本店を置き、地域経済を支える地方銀行。メガバンクが規模ゆえに全国一律の基準を持たざるを得ないのに対し、地方銀行はより地域密着型の審査基準を持てるのが特徴です(ここでは第一地方銀行・第二地方銀行をあわせて「地方銀行」と呼びます)。
地元企業の情報網を活かした審査と、公務員への強さ
地方銀行の強みは、地元の企業情報に精通していることです。メガバンクのスコアリング審査では全国的に名の知れた大企業でなければ高い評価を得にくい傾向がありますが、地方銀行は日々の法人営業を通じて地域の中小企業の実態を把握しています。
そのため、全国的な知名度はなくても地元で堅実に経営している優良企業の社員であれば、地方銀行が業績や安定性を評価し、審査で有利になることがあります。
また、自治体の職員や、地域の基幹病院に勤務する医師・看護師・職員なども、給与振込口座の指定などの取引が見込めるため、好まれる顧客層です。
「変化」を嫌う保守的なスタンスと、転職への警戒
一方で、地方銀行の審査は保守的で、変化を避ける傾向があります。近年はキャリアアップのための転職が一般的になり、ネット銀行などでは勤続半年〜1年未満でも審査の対象となります。しかし多くの地方銀行は、いまだに勤続1〜3年以上を一つの目安としています。
たとえ年収が上がる前向きな転職であっても、地方銀行では「転職直後は収入の安定性を確認しにくい」と見られることがあります。
ただし、同業種・同職種へのステップアップ転職や、看護師・システムエンジニアなど資格を活かした転職であれば、支店長の権限による稟議で対応できるケースもあります。
(注)稟議とは、担当者が自分の権限だけでは決められない事項について稟議書を作成し、上位役職者に回覧して承認・決裁を得る、銀行内部の手続きのことです。
また、新しいビジネスモデルのベンチャー企業に勤務している場合も、「事業の実態を把握しにくい」として審査に時間がかかることがあります。
こんな人は地方銀行に向いている
・地元で長く経営を続けている安定した中小企業に勤めている
・自治体の職員や、地域の基幹病院などに勤務している
・転職の回数が少なく、一つの会社で堅実にキャリアを積んでいる
・対面での相談を重視し、返済に困った際にも近くの支店で相談できる安心感を求めている
とくに地方都市で物件を購入する方にとって、地方銀行は地域の実情を踏まえた対応を引き出しやすい、頼もしい選択肢となります。
【関連記事】>>地方銀行で住宅ローンを借りても大丈夫? 銀行員がメリット・デメリットを解説!
信用金庫・信用組合:個人事業主の味方だが、高額案件は苦手
信用金庫・信用組合(以下、信金・信組)は、株式会社である銀行とは異なる協同組織の金融機関です。地域の会員(組合員)による相互扶助を理念としており、住宅ローン審査でもメガバンクや地方銀行とは異なる姿勢がみられます。
数字だけでなく「人と事業を見る」きめ細かな審査
信金・信組の審査の特徴は、表面上の数字だけでなく、申込者の事業や背景まで含めて見る点にあります。
メガバンクやネット銀行が評価しにくい個人事業主や中小企業の経営者は、信金・信組にとっては日頃から取引のある大切な顧客(組合員)です。スコアリング審査では通りにくい「直近に赤字のある決算書」であっても、信金・信組の担当者が事業の将来性や返済計画を確認したうえで、本部に融資を掛け合ってくれる姿勢があります。数字だけで機械的に判断しないこうした姿勢は、信金・信組ならではの強みといえます。
資金規模とエリアの限界という弱点
一方で、信金・信組には明確な弱点があります。「高額な案件」と「営業エリア外の物件」です。
信金・信組は地域密着を徹底しており、信用金庫法や定款で営業エリアが定められています。購入する物件がそのエリアから外れると、原則として融資はできません。
また、資金規模がメガバンクや規模の大きい地方銀行に比べて小さいため、都心の数億円規模のタワーマンションのような高額案件には慎重になります。数千万円程度の一般的な価格帯であれば問題ありませんが、金額が大きくなるほど審査のハードルは上がります。
こんな人は信金・信組に向いている
・個人事業主または地元の中小企業経営者やその親族
・収入に波がある、過去の決算に赤字の期があるなど、大手銀行の審査に不安がある
・自己資金が少ない、他に借り入れがあるなど、個別の事情を担当者に直接相談したい
・地域の金融機関担当者と、長く付き合っていきたい
書類の数字だけでは伝わりにくい返済力を持つ方にとって、信金・信組は心強い味方になります。
ネット銀行:スピードと金利が魅力だが、対面相談は原則できない
近年、住宅ローンの取扱いを伸ばしているのがネット銀行です。実店舗を持たないことでコストを抑え、それを低金利として顧客に還元しています。ただし、その手軽さの裏には、割り切った審査基準があります。
アルゴリズムによる「可否がはっきりした」審査
ネット銀行の審査は、必要書類のアップロードから契約まで、すべてがネット上で完結します。営業担当者と対面で面談することはありません。
審査の特徴を一言でいえば、メガバンクのスコアリングをさらに徹底したものです。あらかじめ設定された条件に適合すれば迅速に本審査まで進みますが、その条件から外れると「総合的に判断した結果、見送り」という定型的な通知が届きます。
「もう少し自己資金を出せば通るのか」「この事情を考慮してもらえないか」といった個別交渉の余地は、基本的にありません。設定された基準に沿って可否が判定される仕組みです。
個別事情を相談しにくいという弱点
ネット銀行の弱点は、想定外のケースへの対応力です。物件の権利関係が複雑な場合(私道に接している、市街化調整区域にある、保留地であるなど、通常の物件と権利や担保評価の扱いが異なるケース)や、夫婦のペアローンで特殊な持ち分割合を希望する場合など、定型のフォーマットに当てはまらない案件は手続きが行き詰まりやすくなります。
対面窓口があれば担当者に相談できますが、ネット銀行ではコールセンターやチャットでの対応が中心のため、複雑な相談は進みにくい面があります。
こうした物件を検討している場合は、あらかじめ対面相談ができる銀行を併願先として確保しておくと、いざというときに手続きが止まるリスクを減らせます。
こんな人はネット銀行に向いている
・公務員や安定した企業に勤めており、審査上の条件が整っている(メガバンクが優遇する層と重なります)
・健康状態が良好で、手厚い保障の団信を低金利で利用したい
・銀行の窓口が開いている平日昼間に来店するのが難しい
・権利関係が複雑でない、一般的な新築戸建てや分譲マンションの購入を予定している
・書類の準備やWEB上の手続きを自分で完結できる
複雑な事情がなく、金利の低さと手続きの合理性を重視する方にとって、ネット銀行は有力な選択肢となります。
銀行選びのポイントは「自分の状況」と「銀行の得意層」が合っているか
住宅ローン選びは、単なる金利の比較ではありません。自分自身の状況(属性)と、銀行が優遇したい顧客層とが合っているかどうかが重要です。両者が合っていれば、審査はスムーズに進み、有利な条件を引き出しやすくなります。
筆者も融資の現場で、金利の低さだけを見て相性の合わない銀行に申し込み、希望額に届かなかった例を数多く見てきました。
目先の金利という数字だけにとらわれず、各金融機関の審査の傾向と得意な顧客層を理解したうえで、自分の属性に合った金融機関を選んでください。それが、審査落ちのリスクを抑え、理想のマイホームを手に入れる近道になります。
■ 住宅ローンの金利・審査を比較する
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淡河範明さん
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