家の購入にあたってはほとんどの方が住宅ローンを利用します。しかし、新築ではなく中古住宅の場合、審査の基準が異なってきます。本記事では、中古住宅の住宅ローン審査において銀行が重視するポイントを解説。担保評価をクリアし、希望額の借り入れを実現するための対策もお伝えします。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
中古住宅の住宅ローン審査で銀行が重視する3つのポイント

新築物件の価格が高騰を続ける中、割安な中古住宅の購入に舵を切る人が増えています。日本不動産研究所のデータによると、首都圏の中古マンションの成約戸数は前年同期比で増加傾向にあり、中古戸建て住宅も2024年上半期は、2年ぶりに7,000戸台に戻ってきています。
しかし、住宅ローンで中古住宅を購入する場合には、新築物件とは異なる審査基準があります。
担保評価
住宅ローンは購入する不動産を担保にして借り入れをすることが大前提です。ローンの返済ができなくなった場合、銀行はその担保物件を売却することで貸し付けをした資金を回収します。銀行が物件の担保価値を厳正に評価するのはそのためです。
新築物件の場合、建物と土地の双方にそれなりの担保価値が認められます。しかし、中古住宅になると事情は大きく変わります。
まず、建物の担保評価はほぼゼロに近いか、非常に低く見積もられるケースが多いのが実情です。なぜかというと、建物は年数を経るごとに劣化し、価値が減少していくからです。
たとえば、木造住宅では法定耐用年数が22年と定められており、それ以上に築年数が経過している建物の担保価値はほとんど評価されません。
住宅ローンの審査では担保評価がローンの借り入れ可能額を大きく左右します。建物の評価がほぼゼロの中古住宅では、借入額に対しての担保評価が足りずに、希望通りの住宅ローンを組めないという結果になることもあります。
築年数
中古住宅は、築年数がローンの返済期間にも影響を与えることがあります。なぜなら、建物の残存耐用年数を返済期間の上限にする金融機関があるからです。
残存耐用年数とは、法定耐用年数(建物の種類によって定められた税法上の使用可能な年数のこと)から築後の年数を差し引いた年数のことです。金融機関によって基準は微妙に異なりますが、筆者が勤める銀行では国税庁が定める「主な減価償却資産の耐用年数表」(※1)を審査の基準にしています。
※1:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表
築10年が経過した木造住宅を購入する場合、残存耐用年数は以下のように算出されます。
つまり、木造で築10年の中古住宅の価値は12年分しか残っていないということになります。
返済期間が35年や50年ある住宅ローン商品でも、中古住宅だと返済期間を差し引かれるということになります。返済期間が短くなると毎月の返済額が増え、家計への負担が大きくなります。
ただ、最近では楽天銀行(※2)などの金融機関で残存耐用年数にかかわらず最長35年などの長期で返済できる住宅ローンも出てきています。
※2:楽天銀行 住宅ローンのピックアップFAQ
耐震基準
新耐震基準を満たした中古住宅でないと審査に通過できない可能性があります。建築基準法の改正による新耐震基準の物件とは、1981(昭和56年)年6月1日以降に建築確認申請がなされたものを指します。それ以前の建物は耐震性が問題視されるので、審査を通過することが困難になります。
とはいえ、ここで考えるべきなのは築年数です。そもそも1981年より前に建てられたということは築年数が44年以上の建物であるため、建物評価はほぼゼロになります。また、取り壊しのための費用もかかるため、建物はマイナス評価になるかもしれません。
【関連記事】>>中古マンションの耐震性や耐震補強を解説! 大地震が起きた時、あなたのマンションは耐えられるか?
【コラム】中古住宅で住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)の利用は可能か?
中古住宅の場合、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用するにはかなりハードルが高いと言えます。
中古住宅で住宅ローン控除を利用するには、築年数要件(1982年1月1日以後に建築されたもの)があるので、それよりも古い物件は原則として住宅ローン減税の対象外(*例外あり)になります。(※3)
※3:国土交通省 住宅ローン減税制度について
このように、やはり新耐震基準の建物でないと、住宅ローン減税を受けられない可能性があります。
とはいえ、住宅ローン減税はあくまで住宅ローンを利用している人の減税措置であって、家を手に入れるという大きな目的の中で、必ずしも最重要なポイントではないと思われます。
購入したい家と、借り入れできる住宅ローンの金額や自己資金、そして毎回の返済額がどうなるかなどを総合的に考えるべきだと考えています。
中古住宅の担保評価が厳しい場合の対策
ここまで説明したとおり、とくに築年数の古い物件では、建物の担保評価が低くなって審査落ちしたり、審査は通っても希望額に届かないことがあります。このような場合の対策を銀行員が解説します。
自己資金を増やす
自己資金(頭金)を増やすことでローンの借入額を減らすことで、審査の通過ラインを低く調整できます。
他の担保の提供(追加担保)
親族が所有する不動産などを追加担保として提供することで融資額を増やせる場合があります。ただし、銀行によっては増加した調査や管理の手間を嫌がり、認めないケースもあります。また、返済できなくなったときには追加担保も失うリスクがあるため慎重に検討する必要があります。
事前査定で担保評価を調査してくれる銀行も
では、担保評価が足りない場合はどうすればよいのでしょうか。銀行によっては担保の評価が心配な方や不動産業者などから依頼があれば、事前査定・評価をしてくれる場合もあります。
事前に評価額がわかれば、物件が住宅ローンの審査に通過する可能性や、希望通りの金額を借りることができるかなど、ある程度の目安を把握することができます。ただし、銀行によって対応が異なるので注意が必要です。
まとめ
中古住宅は価格や立地の面で大きな魅力がありますが、住宅ローンを組む際には新築とは異なる審査ポイントが数多く存在します。
担保評価、築年数(残存耐用年数)、耐震基準の3点を踏まえたうえで、事前査定や自己資金計画、追加担保などの対策を講じることが、希望のマイホーム取得への近道です。
【関連記事】>>中古住宅購入時に使えるお得な減税・税制優遇制度、補助金とは? 制度の内容と要件を一挙解説!
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
![]() |
![]() |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2025年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【借り換え】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
新規借入2025年8月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額3000万円、借入期間35年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.722%
- 総返済額 3387万円
- 表面金利
- 年0.590%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 79,074円
①保証料など0円サービスが充実
②新規借入で変動金利の場合は自己資金10%以上で金利優遇あり
③最大3億円まで借入可能


- 実質金利(手数料込)
- 0.782%
- 総返済額 3421万円
- 表面金利
- 年0.650%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 79,880円
①店舗相談でも、低金利商品あり
②新規借入なら、注文住宅で必要な「つなぎ融資」に対応!
③3大疾病の50%保障が無料付帯!
③無料で、3大疾病50%保障&就業不能保障&就業不能保障を付帯する


- 実質金利(手数料込)
- 0.783%
- 総返済額 3421万円
- 表面金利
- 年0.640%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+55000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 79,745円
①「団信革命」は要介護まで保障も
②自社商品なら、最大3億円まで借り入れOK!


-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
SBI新生銀行の住宅ローンは、10年固定、15年固定、20年固定といった金利が低い点が特徴です。
商品も特徴的で、介護状態を保障する団信や、長く借りていると金利が下がっていく「ステップダウン金利」があるのも主要銀行ではここだけです。
審査はオーソドックスに行なっている感じです。住宅ローン処理センターで集中審査しているので、窓口のかたの力量があまり問われず、公平に審査されるという印象です。
なお、相談から審査、契約の手続きまでネットで完結できるようになりました。不安な方には、ビデオ通話で自宅から気軽に相談ができるので、コロナ禍の現状では最適な方法が用意されているようです。