住宅購入にかかる諸費用などを含めて、住宅ローンを水増しして借りることを「オーバーローン」と呼ぶ。一部の工務店などがすすめてくる手法で、絶対にやってはいけないので、誘いには乗らないよう注意したい。ローン問題に詳しい森川清弁護士にそのリスクを聞いた。また最近は、諸費用を借してくれる銀行が増えているので、あえてリスクをとる必要はないことも知っておこう。
オーバーローンが発覚すると、一括返済の可能性も
オーバーローンは昔からある手法で、不動産業者や中小工務店、ハウスメーカーなどがすすめてくることがある。施主には実際の建築費用以上の請求書を出し、施主はその金額で住宅ローンを借りる。業者は施主から入金があったのち、上乗せした金額を施主にバックするというものだ。業界では、「かきあげ」と呼ばれることもある。
自宅を購入した際は、引越し代や家具代など何かと物入りになる。また、住宅ローンの金利は他のローンに比べて低いため魅力的だ。「ちゃんと返済すればバレることもないだろうし、問題ない」と安易に考える人もいるだろう。
しかし、このような手段で住宅ローンを組むことは絶対にやってはいけないことで、たとえ業者に提案されても誘惑に乗るべきではない、と専門家は注意を呼び掛けている。住宅ローンなどの金銭消費貸借契約に詳しい森川清弁護士は次のように指摘する。
「一般に、住宅ローンは住宅購入の目的のために使用されることに限定して優遇された金銭消費貸借契約なので、本来、その金額に上乗せした金額で契約することはできません。住宅ローンを組む場合には、使用目的が契約条項に明確に盛り込まれています」
当たり前のことだが、住宅ローンに目的以外の金額を上乗せしたオーバーローンは認められておらず、ごまかして住宅ローンを組むことは契約に反しているのだ。では万が一、不正が発覚した場合はどうなるのか。
「オーバーローンが発覚した場合、契約条項に反しているため、契約が解除されたり、期限の利益を損失して一括弁済(一括返済)を求められることもあり得ます。さらに、支払い意志及び支払い能力に欠けているような悪質な場合には、詐欺罪などの刑事責任を問われることも考えられます」
住宅ローンを一括弁済するとなれば大変だ。また詐欺罪のリスクもあると考えると、割に合わないリスクを背負う行為と言えるだろう。
オーバーローンをすすめる不動産会社には近づかない
オーバーローン以外でも、住宅ローンを不正に契約するケースが存在する。
「給与明細書の偽造などによる所得のごまかしや、実際には住んでいない物件への住宅ローン契約などは契約条項に違反しているとして、高利の利息や一括弁済を求められるケースもあります。金融機関にとっては見逃せない問題です」(森川清弁護士)。
いずれの場合も、不正が発覚すれば一括弁済を迫られる可能性はあるということだ。
万が一、一括返済を求められた場合、その返済のためローンで購入した住宅を売却するにしても、借入金額の全額を返済できるという保証はない。住宅は誰かが住んだ瞬間から中古住宅となり、それだけで価値が1〜2割下がるのが通例だからだ。
購入したばかりの住宅を失ってしまう上に、借金が残る事態が容易に想像できよう。多少の自由になる金額と引き換えにオーバーローンを組むことは、そのような大きなリスクを伴う行為であることを認識しておこう。
もちろん、オーバーローンの違法性やリスクについては、不動産業者やハウスメーカーも十分に理解している。つまり、オーバーローンをすすめるような営業方針の業者に出会ったら、むしろ遵法精神の欠如を疑うべきだ。当然ながら、本業の不動産取引や設計・施工などの品質にも疑わしい。そして、オーバーローンに伴って発生したトラブルの責任を、それらの業者が取ってくれることもない。
くれぐれもオーバーローンや違法な取引の誘いには乗らないよう注意したい。
不動産仲介手数料まで借りられる銀行もある!
とはいえ、住宅を購入する際はいろいろと出費がかさむ。不動産売買時にかかる手数料や引越し代金など、住宅ローンを借りる際に関わる諸費用はバカにならない。さらに、新居を購入すれば家具やカーテン、家電製品、さらには自動車を購入することもあるだろう。そこで活用したいのが、こうした諸費用を含めて住宅ローンとして借りられる銀行だ。すべての諸費用をカバーできるわけではないが、高額な諸費用をかなりカバーできるので、ぜひ活用したい。
高額になりがちな諸費用としては、不動産仲介手数料、住宅ローンの手数料、水道加入負担金、リフォーム費用などがある。こうした諸費用を住宅ローンとして貸してくれる主要銀行を下記にまとめてみた。
諸費用名 | 対応する銀行 |
---|---|
不動産仲介手数料 | イオン銀行、auじぶん銀行、楽天銀行、SBI新生銀行、ソニー銀行、PayPay銀行、みずほ銀行 |
住宅ローンの手数料、保証料 | アルヒ、イオン銀行、auじぶん銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、楽天銀行、SBI新生銀行、PayPay銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行、みずほ銀行 |
水道加入負担金 | イオン銀行、楽天銀行、SBI新生銀行、みずほ銀行 |
中古住宅のリフォーム費用 | イオン銀行、SBI新生銀行、ソニー銀行、楽天銀行、PayPay銀行(借り換えのみ)、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、アルヒ |
※2023年12月調べ、各銀行の主力商品の商品説明書を元に作成。諸費用に関する記載がない銀行でも、上記の諸費用を貸してくれるケースもあるので、詳細は各銀行に問い合わせよう。 |
「不動産仲介手数料」は、中古の不動産を購入した場合にかかるもので、「物件価格の3%+6万円+消費税」(物件価格が400万円超の場合)もかかる。物件価格が5000万円ならば、156万円+消費税だ。主要15銀行では、イオン銀行など4銀行が貸してくれる。
「住宅ローンを借りるときの手数料や保証料」も結構な金額になる。借入額の2%程度かかることが多く、5000万円借りれば、100万円程度かかることになる。
「水道加入負担金」は、地域によって価格にばらつきがあるが、数十万円かかることがある。対応しているのは、主要銀行では、イオン銀行、楽天銀行、みずほ銀行の3行だけだ。
「中古住宅を購入した際のリフォーム代」も、かなり多くの銀行が貸してくれる。リフォーム代となれば数百万円は当たり前なだけに、金利の高いリフォームローンで借りるのではなく、住宅ローンと一緒に低い金利で借りるのが賢いやり方だ。
金利 | ⇒「イオン銀行」詳細ページを見る |
無料団信の保障範囲 | 死亡・高度障害 |
オプション保険 [保険料] |
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(関連記事はこちら!⇒[イオン銀行の住宅ローンの金利・手数料は?])
マンションの修繕積立一時金も貸してくれる
住宅ローンとして貸してくれる諸費用としては他にも、マンションの修繕積立一時金、引越費用などといった、住宅取得に関するものもある。
「オーバーローン」という危ない橋を渡らなくても、諸費用を貸してくれる銀行を使えばかなりの部分は住宅ローンをして借りられることがわかっただろう。各銀行の諸費用をよく見て、なるべく住宅ローンとして借りるようにしたい。
(関連記事はこちら!⇒[諸費用込み、頭金なしで住宅ローンを借りられる銀行は?17銀行を比較して、オーバーローン可能な銀行を探せ!])
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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