近年、都内新築マンションの平均価格は7000万円に迫っており、物件価格はバブル期以来の高水準だ。しかし「住宅ローンで1億円を超える借り入れはできるのか?」そんな疑問を持つ人も多いだろう。そこで、主要な金融機関の住宅ローン21金融機関・40商品の「借入限度額(融資上限額)」と「下限額」を調査した。高額物件の購入を検討している場合には参考にして欲しい。
1億円を超える借り入れに対応している銀行は?
昨今、首都圏では物件価格が高騰している。マンションの平均価格こそ、2018年にいったん下落したが、それは千葉県・埼玉県で低価格物件が増えたために首都圏全体の平均値が下がっただけで、都内の物件価格が大きく値下がりしたわけではない。戸建ても同様で、都内主要都市にはもう家を建てるだけの充分な土地が余っていない。そのため価格が下落しにくい状況が続いている。
物件価格が高騰すれば購入者は減りそうなものだが、そうでもない。要因のひとつとして、史上最低水準の低金利が続いていることがある。2019年9月現在の住宅ローン金利は、かつてのリーマンショック直後と同じほど低い。フラット35にいたっては、保険料などを含むと過去最も低い金利だ。
既婚世帯の「共働き比率」が上がっていることも、理由のひとつだ。夫婦で合わせて1000万円を稼ぎ出す世帯も増えている。特に新築マンションは、世帯年収1000万円に近い共働き世帯が、需要を下支えしていることが分かっている。
ところが、高額の不動産を購入しようとする際に、意外なネックとなるのが、住宅ローンの「借入限度額(借入上限額)」だ。特に1億円以上の物件を購入しようと思ったら、対応している住宅ローンは限られる。
住宅ローンには、一般的に「融資額の上限」と「下限」が設定されている。下限を気にする人はあまり多くないだろうが、商品によって違いがあることは知っておきたい。そこで、主要銀行の中で実質金利※が低い60商品(新規借入、借り換え含む)について、借入限度額(融資上限額)・下限額を調査したので紹介する。
※実質金利:金融機関が提示している「表面金利」に、「手数料・保証料・団体信用生命保険料・固定期間終了後の、上昇した分の金利」を足した数値。
【関連記事はこちら】>>住宅ローンを比較するなら「実質金利」に注目!手数料や団信など、すべてのコストを金利に換算した「実質金利」で、本当にお得な住宅ローンを探そう!
フラット35は、借入限度額が8000万円
長期固定住宅ローンの代表格である「フラット35」は、一般的な35年固定商品と比べて金利が安くなるケースが多いので、利用者も多いメジャーな商品だ。
多くの金融機関がフラット35を取り扱っているが、今回調査した13商品全てが「下限100万円、上限8000万円」であった。そして、フラット35は基本的に8000万円までの物件しか融資対象にならないため、1億円以上の高額物件を購入する場合の住宅ローンとしては利用できない。
・アルヒ「スーパーフラット」
・三井住友信託銀行「フラット35、フラット35S」
・住信SBIネット銀行「フラット35 保証型」
・楽天銀行「フラット35 金利Aプラン」
・みずほ銀行「フラット35 手数料定率型 金利Aプラン」
・優良住宅ローン「フラット35」
※全ての商品が「借入額100万円以上、8000万円以下」
新興金融機関は、auじぶん銀行、PayPay銀行などが対応
フラット35以外の商品ではどうだろうか。ネット銀行を含む新興系金融機関の住宅ローンでは、大手銀行に比べて借入上限額が高く、借入下限額も高い傾向にある。
■新興金融機関(ネット銀行含む)住宅ローン「借入下限額」「借入限度額」
【500万円以上、2億円以下】
・auじぶん銀行「全期間引き下げプラン」
・SBIマネープラザ「ミスター住宅ローンREAL 通期引き下げプラン」
・PayPay銀行「全期間引き下げプラン」
・ソニー銀行「住宅ローン」「変動セレクト住宅ローン」「固定セレクト住宅ローン」
【2000万円以上、1億円以下】
・SBI新生銀行「ステップダウン金利タイプ」
【500万円以上、1億円以下】
・住信SBIネット銀行「通期引き下げプラン(ネット専用)」
・楽天銀行「住宅ローン 金利選択型」
・SBI新生銀行「パワースマート住宅ローン」
【200万円以上、1億円以下】
・イオン銀行「金利プラン定率型」「当初固定金利プラン定率型」
今回調査した新興系金融機関8社の中で「上限2億円」としていたのは、auじぶん銀行とPayPay銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行の11商品。「上限額1億円」としていたのは、SBI新生銀行、イオン銀行、住信SBIネット銀行、楽天銀行、auカブコム証券の15商品だった。
auじぶん銀行は2018年12月に、ソニー銀行は2020年1月に、借入金額上限を1億円から2億円に引き上げた。また、今年の7月に住宅ローンに新規参入したPayPay銀行は、サービス開始当初から2億円を上限にしている。これは、高額融資希望者の要望に応えられるような商品を作ることで、他行との差別化を図りたいのだと考えられる。
また、SBI新生銀行の「ステップダウン金利タイプ」では下限が2000万円と高額なのも着目したい。SBI新生銀行のステップダウン金利タイプは、借り換えをする場合、他と比べて実質金利が低くお得だが、借入額が2000万円未満では利用できないので注意が必要だ。
大手銀行の借入限度額は1億円が主流
次に、大手金融機関の借入上限額と下限額について紹介する。下限は金融機関によってさまざまだが、上限についてはいずれの金融機関も「1億円以下」としている。
■大手銀行住宅ローンの「借入下限額」「借入限度額」
【30万円以上、1億円以下】
・三菱UFJ銀行「住宅ローン」
【50万円以上、1億円以下】
・みずほ銀行「最後まで変わらずオトク!全期間重視プラン」
・りそな銀行「ずーっとお得!全期間型 融資手数料型」「はじめがお得!当初型 融資手数料型」
【100万円以上、1億円以下】
・三井住友銀行「WEB申込専用住宅ローン」「超長期固定金利型」
・三井住友信託銀行「当初期間金利引下げ 融資手数料型」
【500万円以上、1億円以下】
・三菱UFJ信託銀行「三菱UFJネット住宅ローン 三菱UFJ信託銀行専用 変動金利選択プラン」「三菱UFJネット住宅ローン 三菱UFJ信託銀行専用 固定10年プレミアム」
下限を気にする人は多くないと思うが、三菱UFJ銀行の「ネット専用住宅ローン」は30万円から、みずほ銀行とりそな銀行では下限50万円からの商品を複数取りそろえている。しかし、ネット銀行は借入下限を「500万円」としている金融機関が多く、低額の不動産には対応していないので、比較的安い不動産を購入する際は、大手銀行の住宅ローンが使い勝手がいいだろう。
その他金融機関では、5億円まで借りられる商品も
今回調査した金融機関は、基本的に対象エリアを全国としている。ほかにも、対象エリアや申込経路が限られている金融機関で、高額な借入限度額を設定している商品がいくつかある。
■1億円超の借入限度額を設定しているその他の金融機関
・アルヒ「楽天銀行住宅ローン Type-R※」…2億円
・スーモカウンター新築マンション「楽天銀行住宅ローン LGBT住宅ローン※」…2億円
・千葉銀行「プレミアム住宅ローン」…3億円
・みなと銀行「大型住宅ローン」…2億円
・SMBC信託銀行プレスティア(旧シティバンク)「住宅ローン」…5億円
・横浜銀行「融資手数料型金利プラン 変動」など…1億円を超える場合は窓口で相談可能
※楽天銀行の商品だが、楽天銀行からの申し込みは不可。「Type-R」はアルヒ、「LGBT住宅ローン」はスーモカウンター新築マンションからの申し込みに限る。
いずれも2017~2019年ごろにサービスを開始しているのを見ると、ここ数年で高額物件用の借り入れ需要が増していると想定できる。千葉銀行にいたっては、今年の5月、これまでの上限1億円から3倍に引き上げた。
SMBC信託銀行プレスティア(旧シティバンク)は「5億円」とずば抜けて高額な上限を設定しているが、当然ながら借入対象となる制限は厳しい。なお、各店舗、出張所のある場所から1時間以内のエリアにあることが条件にもなっているため、全国どこでも利用できるというわけではない。
また、横浜銀行では上限1億円としているものの、「それを超える借入希望者については窓口で相談可能」だと明記しているので、個人によって対応を変えているのだろう。
まとめ~ 借入上限額はあくまで目安。
ライフプランに合わせた「返済可能額」の意識を
ここまで、各金融機関の借入上限・下限額について説明した。なお、多くの銀行が借入限度額を引き上げる流れになっており、表向きには「借入限度額は1億円」だとしていても、窓口で個別に説明すれば、それぞれの事情に応じて対応してくれることが多い。
ただ、借入額を増やすということは、月々の返済額も増えるということ。銀行はリスクが少ないと判断すれば、なるべく多くの金額を融資したいのが常である。貸してくれるからといって、その限度額まで借り入れをするのは得策ではない。
実は、共働き世帯であれば、借入限度額1億円のローンにそれぞれが契約する「ペアローン」の形式をとることで、「上限2億円」とすることもできる。むしろ、共働きの場合はそちらの選択肢をとるケースの方が多いといえるが、そのメリット・デメリットも知っておいた方が良いだろう。
どちらにしても、子育てに必要な教育費や老後の生活資金、共働き世帯の場合はどちらか片方の収入が不安定になるリスクなども考えて、自分のライフプランに見合った返済可能額を借りることが重要だ。
【関連記事はこちら】>>夫婦で一緒に借りた住宅ローンは、離婚すると「思わぬトラブル」の原因になる!連帯保証、ペアローンのデメリットを解説
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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