住宅ローン審査の際、追加で書類の提出を依頼するケースがあります。どのような書類が、なぜ必要になるのか。追加書類ベスト5とその理由を、住宅ローンの審査をしている銀行員がわかりやすく解説します。住宅ローンの借入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
住宅ローン審査で追加書類が必要になる理由
住宅ローンでは、申込者に必要書類を提出してもらい、銀行で融資の審査を行いますが、場合によっては追加で書類の提出をお願いするケースがあります。
追加書類をお願いするのは、審査の過程で不明な点があったり、あるいは何かしらの「弱み」(個人信用情報などに問題はないが、審査を通過するための基準に満たない点)がある人です。この弱みをクリアするために、プラス材料の裏付けとして、銀行から書類をお願いすることがあります。
本記事では、追加で必要になることが多い書類のベスト5をお伝えしますが、まずは、知識のブラッシュアップとして住宅ローン審査の流れと、基本的な必要書類を確認しておきましょう。
こちらを参考にしながら、追加で必要な書類について読み進めていただけると、より理解しやすくなると思います。
住宅ローン審査の第1段階(銀行内部では「一次審査」とも表現)であり、方法は《個人信用情報のチェック》《自己申告ベースによる簡易な審査》の2つに分かれる
パソコンやスマホから自分で入力するのが主流だが、事前申込書などに記入して提出するケースもある
(住宅展示場でモデルハウスを見たあと、出張してきている銀行員やメーカー担当に渡す場合もある)
【必要書類】
仮審査の段階では、原則として書類を求められることはない
(銀行によっては、基本的な必要書類〈後述〉が必要になることもある)
-
《個人信用情報のチェック》《自己申告ベースによる簡易な審査》
- 《個人信用情報のチェック》
*返済滞納や自己破産の記録などの「異動事項」(「金融事故」とも)がないか、個人信用情報のチェックをする
*異動がある人は仮審査の時点で審査落ちとなるケースが多く、俗に「ブラックリスト」などとも表現されている
《自己申告ベースによる簡易な審査》
*「住所・氏名・生年月日」「職業・雇用形態・勤務先・勤続年数」「年収」「返済中ローンの内容・残高・年間返済額」などを、仮審査のフォームに自分で入力する
*仮審査では、簡単にローンの申し込みに進んでいける便利さをアピールしているため、書類などを求めない
*仮審査の時点では、本人が入力(記入)した自己申告の内容をもとに、専用の審査システムを用いたAI審査(スコアリング審査)で仮の審査回答を判断する
*通常はデータがそろってから、数十分から1日程度で審査結果が出力される
仮審査を通過した人を対象に行われる正式な審査(銀行内部では「本審査」とも表現)であり、仮審査で自己申告のあった内容を証明書類などで確認する
【必要書類】
基本的な必要書類は《本人確認書類》《収入確認書類》《通帳のコピー》の3点
※《物件に関する書類》も必要だが、担保と物件に関連する書類なので、審査の必要書類からは省略する
※ローン契約・担保契約で必要になる書類もある(印鑑証明書など)
-
《本人確認書類》《収入確認書類》《通帳のコピー》
- 《本人確認書類》
①写真付きの身分証明(運転免許証など)
②住民票(世帯全員)
③健康保険証
上記すべて、または一部(銀行により異なる)
《収入確認書類》
①源泉徴収票
②住民税課税決定通知書(市区町村などから勤務先経由で受け取る)
上記の両方、またはどちらか(銀行により異なる)
《通帳のコピー》
*ローン審査において、家計全体のお金の流れを把握するために必要となる
*住宅ローンを申し込んだ銀行がメインバンク(最も主要な取引をしている銀行)以外の場合は、6カ月程度の通帳コピーが求められる
*メインバンクへの申し込みで、銀行側が口座の入出金などを把握できる場合には、提出が不要になることもある
*「住宅ローン必要書類のご案内」などでは、通帳のコピーが記載されていないケースもあるが、実際の申し込みでは多くの銀行で通帳コピーが必要になる
参考:住宅ローン申込時の必要書類 | 三菱UFJ銀行
なお、上記はサラリーマンが住宅ローン審査を受ける場合に必要な書類です。個人事業主や会社役員の場合は必要書類も変わりますので、ご自身で確認してください。
【関連記事】>>住宅ローンの仮審査で基準となる21項目を徹底解説! 本審査までの流れや必要な書類とは
住宅ローン審査で必要になる追加書類ベスト5
それでは、住宅ローンの審査の際に、追加で必要となる書類ベスト5を紹介していきます。
なお、必要書類は銀行によって異なるため、上記の書類が最初から基本的な必要書類に含まれている場合もあります。とはいえ、それぞれの書類が審査で必要になる理由は共通しているため、参考になるはずです。
1. 所得証明書・課税証明書
2. 給与明細
3. 診断書(健康診断結果)
4. 産休・育休の関連資料
5. 返済中の借り入れ明細
以下で、それぞれ解説していきます。
1.所得証明書・課税証明書
住宅ローンをしっかり返済していけるかを判断するカギは、年収です。
仮審査時に自己申告で入力された年収の裏付けを取るため、本審査では「源泉徴収票」と「所得証明書」が必要になります。
ところが、前年の年収の所得証明書は、翌年の5月頃まで発行してもらえません。そのため、ローンの融資実行まで時間がない場合など、あとになってから市区町村役所で入手して、追加の書類として銀行に提出してもらう場合もあります。
2.給与明細
転職をして1年未満など、所得証明や源泉徴収票で前年の収入が確認できない場合には、現在の給与明細の提出が必要になるケースがあり、具体的には、直近3カ月から6カ月程度の給与明細・ボーナス支給明細を提出してもらいます。
銀行では給与明細から平均的な月収を計算し、その12カ月分(ボーナスも含む)を「見込年収」として審査をするのが一般的です。そして、この給与明細は「在籍確認」の資料にもなります。
「在籍確認」とは、自己申告された勤務先に、実際に勤めているのかを確認することです。銀行が勤務先に電話をして確認を取る方法が一般的でしたが、最近は個人情報保護の観点から難しくなりました。そのため、給与明細が在籍確認の資料として用いられるようになっています。
なお、給与明細を必要な時に自分で印刷する会社も増えています。個人が印刷しただけで、会社名などの記入がない場合には、会社に証明印を押してもらうか、銀行所定の「給与支給証明書」などを勤務先に記入・押印してもらう必要があることもあります。
3.診断書(健康診断結果)
住宅ローンは団体信用生命保険に加入するのが原則です。しかし、現在病気で治療中の人や、過去に大きな病気の経験がある人など、場合によっては団体信用生命保険に加入するための追加書類として「診断書」が必要になります。
診断書が必要になる具体的なケースは以下の通りです。
1. 「告知事項あり」の場合
団体信用生命保険では、本人が自分の健康状態や通院、資料状況、そして過去の病歴などを記入する「告知書」が重要になってきます。
【参考:団体信用生命保険 申込書兼告知書 | 岡崎信用金庫】
過去の病気などが原因となり、加入できない可能性のある状態を「告知事項あり」と呼びます。
この場合には、専用の診断書を渡されて、必要な診察や検査を受けたうえで、団体信用生命保険に加入できるかどうか、「査定」を受ける必要があります。
2. ローン借入金額が一定以上に大きい場合
住宅ローンが5,000万円を超えるなど、借入額が一定の金額より大きい場合、健康状態に不安や問題点がなくとも、事前の査定が必要となり、診断書の作成が求められることもあります。3大疾病保障特約、がん保障特約などを付帯した場合も診断書が必要となることが多いです。
【参考:〔住宅ローン〕 団体信用生命保険の申込みに診断書は必要ですか? | よくあるご質問TOP | NEOBANK 住信SBIネット銀行)】
上記以外にも診断書が必要になるケースがありますので、必ずご自身で確認してください。
4.産休・育休の関連資料
パートナーの収入をプラス要素にする(ペアローンや収入合算など)場合、パートナーが産休や育休などで長期に休職するときや、産休・育休明けで職場復帰した場合などのケースに応じて、確認書類が必要になります。
【参考:(住宅ローン 共通) 産休・育休中ですが、住宅ローンの借り入れは可能ですか? - よくあるご質問|楽天銀行(個人のお客さま向け)
【住宅ローン】最近産休・育休から復帰した場合、追加で必要な書類はありますか。(PayPay銀行)】
これは、産休・育休後に職場復帰が確約されているか、産休明けの制限勤務における収入でも滞納せずに返済できるかなどを、審査で検討するためです。
ただし、銀行は住宅ローンの取り扱いで、妊娠や出産、育児をネガティブにとらえているわけではありません。
そもそも住宅ローンは借金であり、借りた人が滞納せずに返せるかどうかが審査のポイントです。そのため、住宅ローン審査では、産休・育休とお金の関係もしっかりと把握する必要があるのです。
なお、産休や育休は、休職できる期間、休職中の収入、復職後の勤務時間と収入など、企業側もしっかりとした制度設計をしています。したがって、収入が減少する期間や減収額もある程度は予想できるようになっています。
5.返済中の借り入れ明細
追加の書類として、返済中の借り入れ明細(マイカーローン・カードローンなど)が求められることがあります。
これは、仮審査で自己申告された借り入れの内容が、明細と一致しないことがあるからです。
記憶違いや勘違い程度の誤差ならば、それほど問題にはなりません。しかし、借り入れ残高や返済額が事実と大きく異なっていたり、仮審査の自己申告になかった借り入れ明細が出てきたりすると、最悪では審査落ちになってしまう可能性もあります。
融資の内容が詳しく記載されていて、住宅ローン、マイカーローン、カードローンなどの借り入れをすると、銀行から郵送されてくる書類のこと。返済の予定が記入されているところから「返済計画表」などとも呼ばれる。
借り入れ明細には「当初借入日・最終返済日・当初借入金額・現在残高・毎月の引落額」などの情報が記載されているので、住宅ローン審査では必須の書類となる。
なお、住宅ローン審査には最新の借り入れ明細を提出する。手元にない場合は銀行で再発行が可能。ただし、再発行には1週間程度を要する。また、再発行に手数料が必要な金融機関もある。
【参考:返済予定表の見本 | イオン銀行】
追加書類を依頼されたら審査に落ちる可能性があるか
最後に、住宅ローンを審査する銀行員として、書類についていくつかお伝えしたいと思います。
まず、追加で書類提出をお願いされるということは、審査がスムーズに流れていないのだと意識するようにしてください。
とはいえ、「追加で書類をお願いされたから、審査落ちが確定している」などということはありません。団体信用生命保険の診断書に代表されるように、審査が暗礁に乗り上げたから書類が追加で必要になるケースばかりではないのです。
もちろん、暗礁に乗り上げたから追加でお願いする場合もあります。しかし、それは審査を通過するためのプラス材料を求められているとも言えるのです。
いずれにしても、住宅ローン審査で書類を追加依頼されることは珍しくありません。依頼があった際には、可能な限り早く対応することをおすすめします。
【関連記事はこちら】>>住宅ローンの審査に落ちた原因は年収不足?借金? 審査で通るための基準、ノウハウを紹介!
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