「住宅ローン不正」「なんちゃって不動産投資」と呼ばれている不正な融資による投資について解説します。これらの手法がなぜ危険なのか、どのようなリスクがあるのか、もし関与してしまった場合にはどのように対処すべきかを説明していきます。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)
目次
住宅ローン不正・なんちゃって不動産投資とは
住宅ローン不正とは、本来、自己居住用の物件を購入する目的で利用されるべき住宅ローンを、投資用物件の購入に流用する行為です。通常、住宅ローンは自己居住が前提となっており、その条件で低金利や有利な融資条件が適用されます。
しかし、この前提を悪用し、実際には居住する意思がないにもかかわらず、自己居住を偽って住宅ローンを組むのが住宅ローン不正の典型的な手法です。
「なんちゃって不動産投資」とは、このような不正な手段を用いて行われる投資活動全般を指す俗称です。正規の投資用ローンではなく、住宅ローンを不正に利用することで、より有利な条件で物件を購入し、それを賃貸で運用するという手法が一般的です。
金融機関の審査をくぐり抜けるため、一定期間その物件に住むケースや、一時的に物件に住民票を移すなどの偽装工作を行うこともあります。
また、金融機関は郵送物を送ることで居住確認を行う場合もあり、入居者と結託して郵送物を受け取るなどの工作を行う手法もあります。
フラット35の不正利用も問題になっている
フラット35は、住宅金融支援機構が提供する、つまり国が提供している長期固定金利の住宅ローンです。本来は自己居住用の住宅取得を支援する目的で設計されていますが、その低金利と比較的緩い審査基準を悪用し、投資用物件の購入に利用されることがあります。
2019年に、住宅金融支援機構は「フラット35の不適正利用懸念事案に係る調査結果の公表」を行っており、調査の結果(追加公表も含め)、平成30年10月~令和元年8月の間で147件の不適正利用があったと発表しています。消費者への注意喚起や融資審査の強化が図られています。
【関連記事】>>フラット35を投資目的で不正利用した人の末路は? 一括返済できないと競売後に借金が残るケースも
投資用ローンより金利が低い住宅ローンが悪用されている
住宅ローン不正・なんちゃって不動産投資が横行する要因として一番大きいのは、住宅ローンは投資用ローンと比較して金利が低いため、実質利回りが良くなるという点が挙げられます。
不動産投資を販売する業者からしても、低金利の住宅ローンで物件を購入できれば、見かけ上の利回りは高くなるため、投資検討者にとって魅力的に映るのです。
また、住宅ローンは投資用ローンよりも融資条件が緩く、融資を受けやすい傾向があります。特に公的融資であるフラット35は、民間金融機関のローンと比べて借り入れる人の属性に関係なく審査基準が比較的緩いといわれています。
住宅ローン不正にならないケース
一方で、当初は自己居住の意図で住宅ローンを組んだものの、海外赴任や転勤が理由で、一時的に住まいを空ける間、賃貸として貸し出すケースなどは、住宅ローン不正にはなりません。
その場合は、事前に金融機関へ相談した上で貸し出すことが可能です。
住宅ローン不正がバレた時の代償は大きい
住宅ローン不正が発覚した場合、金融機関から融資金の一括返済を求められる可能性が高くなります。
さらに、一括返済が難しい場合には、任意売却や強制競売にかけられる恐れもあります。競売では、通常、市場価格よりも低い価格で物件が売却されることが多いため、借入額を超える残債が生じる場合があります。この場合、その差額をローンの借り主が負担することになります。
また、金融機関が損害を被ったと判断した場合、民事訴訟や刑事告発に発展する可能性もあります。たとえば、2024年2月には、フラット35の不正利用で金融機関の元社員が逮捕された事件や、2024年6月には不動産会社が不正な住宅ローンを利用して顧客に物件を売却し、詐欺容疑で逮捕される事件が発生しています。
さらに、金融機関は不正行為を信用情報機関に報告する可能性が高く、その結果、長期間にわたって信用情報に傷がつくことになります。これにより、住宅ローンだけでなく、他のローンやクレジットカードの取得、保険加入、銀行口座の新規開設も困難になる可能性があります。
このように、住宅ローン不正が発覚すると、金銭的な損失のみならず、個人の信用や将来の生活に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、「バレなければ大丈夫」という考え方は非常に危険で、正当な手段を用いることが最も重要です。
【関連記事】>>不動産投資の偽装がバレたときの重い結末エピソード2選!「なんちゃって住宅ローン」の手口を銀行員が解説
住宅ローン不正に関与してしまったら、対策はある?!
すでに住宅ローン不正を行ってしまった場合、可能な限り早く自己居住を開始するか、投資用ローンへの借り換えを検討することが対策として挙げられます。
ただし、借り換えの際は金利上昇や融資条件の厳格化が予想されるため、その影響を十分に考慮する必要があります。
また、物件を売却してリスクを最小限に抑える選択肢もあります。ただし、市場価格よりも低く売却する可能性もあるため、損失を受け入れる覚悟が必要です。
さらに、専門家への相談も重要です。不動産や法律の専門家に状況を相談し、最適な解決策を見つけることが重要です。場合によっては、金融機関との交渉や法的手続きが必要になることもあります。
重要なのは、問題が大きくなる前に迅速に対処することです。住宅ローン不正は時間がたつほどリスクが増大するため、発覚を恐れて放置することは最悪の選択肢です。
悪徳不動産会社が言葉巧みに勧誘してくるケースも
住宅ローン不正や不適切な不動産投資のペナルティーは、物件所有者だけでなく、その取引を促した不動産会社にも影響を及ぼします。
不正融資であることを知りつつ、消費者に対して物件販売や不動産投資を持ちかける不動産事業者も存在し、その責任は重大です。
過去には、不動産会社が投資初心者や低所得者、消費者金融からの借り入れを抱えた人をターゲットに、「誰でも簡単に不動産投資ができる」「消費者金融の借金を返済しつつ、投資マンションも取得できる」などと勧誘するケースがありました。
中には、本来の物件価格を上回る金額で住宅ローンを組ませて消費者金融の借金返済に充て、さらに投資物件を購入させるという手口が横行していたこともあります。
金利の高い借り入れを低金利の住宅ローンに統合することで、”かきあげ”と呼ばれる不正手法が一部の悪徳不動産会社で行われていました。
こういった方法で販売される物件は、市場価格よりも高く設定される傾向があり、不動産会社の利益が不正に確保されることが多々あります。たとえば、市場価値が2000万円の物件を2800万円で販売するといった過大な価格設定がなされ、将来的な売却や賃貸運用時にリスクを伴う可能性が高くなります。
つまり、不正行為によって取得された物件による投資は、投資が上手くいかない可能性が非常に高いのです。
不動産投資は投資用ローンを利用する
住宅ローン不正や不適切な不動産投資は、低金利で多額の融資が受けられることや、高い利回りの期待から、一見すると魅力的に見えるかもしれません。
しかし、法的リスクや金融機関からのペナルティー、信用情報の低下、物件の強制売却、残債リスクなど、住宅ローン不正には多くのリスクが伴い、個人の生活や将来に重大な影響を及ぼす恐れがあります。
不動産投資を検討する際には、正規の投資用ローンを利用するなど、合法かつ倫理的な手段で行うことが大切です。信頼できる不動産専門家や金融専門家の助言を求め、リスクを回避する方法を選びましょう。
既に住宅ローン不正を行ってしまった方は、問題が拡大する前に迅速な対処を行うことが重要です。
【関連記事】>>住宅ローンで別荘、投資用物件、賃貸併設物件を購入できる?
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
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Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
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【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
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どちらかといえば不満である(2点)
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・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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淡河範明さん
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