「転職すると住宅ローン審査に通りにくい」という話は、一般的によく知られています。住宅ローンは返済期間が長期にわたるため、収入の安定性が重視されているからです。しかし、近年では審査基準に特徴を打ち出す銀行が増えていて、融資を受けるチャンスが広がっています。本記事では、転職したばかりの方でも、住宅ローン審査に通るためのポイントや注意点を紹介します。(淡河範明・住宅ローンアドバイザー)
転職に対する住宅ローンの審査基準は、銀行によって違う
転職した人が住宅ローンを借りようとする際に銀行が見るのは、現在の勤め先での「勤続年数」です。
ひと昔前であれば、会社員はおおむね「勤続年数3年以上、前年度年収300万円以上」が住宅ローンを借りられる最低基準でした。
ところが、現在は年収による単純な返済能力を重視する傾向が出てきて、転職から3年経過していなくても申し込みできる銀行が増えています。
勤続年数による制限を設けていない銀行
例えば、ソニー銀行や楽天銀行は、住宅ローンの審査にあたって、勤続年数による制限を設けていません。転職直後でも事前審査に申し込むことができます。
メガバンクや信託銀行などの大手銀行でも、勤続年数については門戸を広げつつあり、三井住友銀行やみずほ銀行は、勤続年数による制限はありません。フラット35(アルヒなどが取り扱い)も同様です。
そのほかにも、イオン銀行は「勤続年数6カ月以上」、りそな銀行は「勤続年数1年以上」で、両行とも「前年度年収100万円以上」と、審査のハードルをかなり下げています。
このように、銀行を選べば、転職したばかりでも審査を受けることは十分可能になっています。
ただし、「転職回数を審査対象にする」という銀行もあります。転職回数が多いこと自体は問題になりにくいですが、あまりに短期間で何度も転職していたり、関係のない業種を転々としている場合には、「安定性がない」と判断されることもあります。
なお、借り換えについても新規借入と同様の傾向となっています。銀行を選べば転職直後でも借り換えは可能です。
「転職前」に住宅ローンを借りるメリット・デメリット
転職する前に住宅ローンを借りるメリット・デメリットは以下の通りです。
・勤続年数の長さから満額借入できたり、最優遇金利が適用される
転職前のデメリット
・年収が下がれば返済負担が大きくなる
・借入申し込み中の転職なら再審査になる
多くの人は、転職前に住宅ローンを借りるようにしています。先程解説したように、銀行によっては転職するとしばらく住宅ローンを借りにくくなります。
勤続年数の長さも審査基準に入っており、希望通り満額借りられたり、最優遇金利が適用されやすいなど、転職前に住宅ローンを借りるメリットは大きいのです。
一方で、転職前に住宅ローンを借りるデメリットもあります。
転職によって、年収アップする場合はいいのですが、もし下がるとすれば年収の良かった前職の時に借りた住宅ローンの返済負担が大きくなります。
収入が減っても住宅ローンの返済金額が減額されるわけではないので、家計に占めるローンの返済比率が高くなるというわけです。
また、住宅ローンの借り入れを申し込んでいるタイミングで転職する場合は、前職を前提に審査しているため、途中で転職したとなれば再度審査し直すために審査期間が長引いてしまうのです。
「転職後」に住宅ローンを借りるメリット・デメリット
一方で、転職した後に住宅ローンを借りるメリット・デメリットは以下の通りです。
・年収が上がるなら審査に通りやすい
転職後に借りるデメリット
・銀行によっては借入が厳しくなる
・最優遇金利が適用されにくくなる
先程見たように、ソニー銀行などは「勤続年数を問わない」のです。給与明細をもとに返済負担率(=ローンの年間返済額÷年収)を計算するのが一般的です。
ですから、転職した後のほうが年収が高くなるのであれば、転職後に住宅ローンを借りたほうが審査をパスしやすいといえるでしょう。
一方、転職してから住宅ローンを申し込むデメリットとしては、勤続年数がいったんゼロになるため、銀行によっては借りられなくなります。最優遇金利が適用されにくくなるかもしれません。
もし、共働きで夫が転職するのであれば、妻と収入合算したり、妻を主な借り入れ人として一緒に借りることで、借り入れが可能になるかもしれません。
【関連記事】>>夫婦で住宅ローンを借りる「3つの方法」とは? 離婚リスクも考慮して契約を選ぼう
転職後に住宅ローン審査を受ける際の注意点は?
転職してから住宅ローンを申し込む際は、基本的には1カ月以上勤務してからにしましょう。
給与水準や締め日を考慮して審査に申し込む
また、気をつけたいのは給与の締め日です。仮に毎月20日締めなら、月初から丸々1カ月間勤務しても、20日分の給与明細しか手にすることができません。
例えば、正規の給与が月35万円だとすると、年収は420万円。ローンの毎月返済額が12万円だとすると、年間返済額は144万円です。
本来ならば、「ローンの年間返済額144万円÷年収420万円=返済負担率約34%」となり、フラット35であれば、年収400万円以上の返済負担率の基準である35%をクリアします。
ところが、月収35万円だとしても20日分しか給料をもらえていない場合、給与が24万円になり、返済負担率を審査するときは、「24万円×12カ月=年収288万円」として計算されます。
そのため、「ローンの年間返済額144万円÷年収288万円=返済負担率50%」という結果になってしまい、基準をクリアできません。
また、転職した場合、例えば数カ月間の「試用期間」後に正式採用となるまで、本来より低い額の給与を受け取ることになります。
この場合も、低い給与をベースに年収が算出されるため、返済負担率をクリアするのが難しくなります。基本的には、申し込みができるようになるまで、数カ月〜半年程度待つしかありません。
細かいことですが、このように転職したてのときは、給与の締め日や、初回給与の水準も考慮したうえで、ローンの申し込みを行うようにしましょう。
ただし、銀行によっては、転職時から1年間の見込み年収額で、審査してくれるところもあります(転職先が発行する「年収見込証明書」などが必要)。
それまでの職務経歴によって対応が異なる銀行もありますので(まったく違う職種への転職は不利)、まずは問い合わせてみましょう。
転職直後だと、保証料が高くなる可能性も
転職直後で勤続年数が短いと、一括支払い型の保証料が高くなる可能性がある点にも注意しましょう。
保証会社によって、一括支払い型の保証料の算出方法はさまざまです。
ある銀行では、勤続年数によって5つのランクに分けてベースの金額が決まっていて、そこに申込者の勤務先や収入などの属性や担保評価を加算して決めています。一番上のランクと最下位のランクでは、ベースとなる保証料に4~5倍の違いがあり、加算分についても同様です。
例えば、一番上のランクの保証料(20年保証)が100万円あたり約6500円のところが、最下位ランクでかつ属性が悪いと、じつに約15万5000円まで跳ね上がることもあります。
これほどの差があることを知らないでいると、住宅ローンの審査は通っても、保証料の支払い額が想定していたよりも高額になるケースが出てきます。
勤続年数が短いことで、不利になる可能性があることも知っておいた方がよいでしょう。
一度審査に通っても、転職したら再審査が必要
なお、新築マンションなどの購入では、契約から引き渡しまでに1年以上かかることもあります。
一度審査を通っていても、その後、転職した場合、銀行に報告せねばならず、改めて再審査が必要になります。
万が一、新たな勤務先での収入証明書の取得などが間に合わず、再審査を受けられないような場合、契約違反となり、違約金や遅延損害金を求められることもあります。
だからといって、転職の事実を隠してはいけません。銀行によっては融資実行の直前に勤務先に電話を入れて在籍を確認するところもあるので危険です。
これから転職する可能性のある人は、審査とのタイミングをよく考えて実行してください。
会社員から個人事業主になったら、3期黒字が原則
なお、個人事業主やフリーランスになる場合はどう評価されるのでしょうか。
著名な作家や芸能人でも、審査に通らなかった話を耳にしたことのある人も多いと思います。実際、自営業者や小さな会社の経営者は収入が不安定であるとみなされ、会社員よりも審査基準は厳しくなっています。
自営業者や小さな会社の経営者が審査を受ける場合、直近3期分の決算書や確定申告書の提出を求められます。
さらに、直近の3期のうち1期でも赤字だと、収入の安定性がないと判断されて、審査に通らない銀行もあります。3期連続黒字を達成するまで待つのが基本です。
個人事業主になってすぐに住宅ローンを借りることは、かなり難しいでしょう。
【関連記事】>>年収200万の自営業・個人事業主でも住宅ローンの審査は通る!14銀行の審査基準を徹底比較!
絶対にしておくべき未納の税金類の処理
一方、税金や社会保険料に滞納がある人はほぼ一発アウトになります。
日々の業務で手が回らなかったり、資金繰りの都合などによって、気軽に対応しがちな自営業者の人も多いと思いますが、審査に申し込む前に必ず支払いを済ませておきましょう。
滞納額がいくらかは問題ではありません。「この程度の金額も払えないのか」「だらしない。完済できるとは思えない」と、審査側は判断するからです。
【関連記事】>>住宅ローンの審査に落ちた原因は年収不足?借金? 審査に通るための基準、ノウハウを紹介!
【まとめ】銀行によって転職についての審査基準は違う
以上が、転職した人や自営業者の審査の注意点です。重要なポイントをまとめたので参考にしてください。
・転職直後の場合、できれば、まるまる1カ月分の給与明細が出てから審査に申し込む
- 【住宅ローンの基礎知識 リンク集】
-
- ◆住宅ローン選びの実践法◆
- (3)諸費用込みの「総支払額」で比較しよう!
- (4)変動金利なら「金利上昇リスク」の想定を
- (5)固定金利は、固定期間終了後に注意!
- (6)借入金額、借入期間、金利タイプ決め方は?
- (7)正しい「ランキングサイト」の見分け方
- (8)「シミュレーションサイト」の使い方
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2024年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【借り換え】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
新規借入2024年11月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額3000万円、借入期間35年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.459%
- 総返済額 3242万円
- 表面金利
- 年0.329%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 75,629円
①「がん・4疾病50%+全疾病+月次返済保障」が無料!
②住宅ローン金利優遇割ならダントツの低金利
③三菱UFJ銀行とKDDIが立ち上げたネット銀行。ネット申し込みで、全国に対応
- 実質金利(手数料込)
- 0.512%
- 総返済額 3271万円
- 表面金利
- 年0.375%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+33000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,229円
①注文住宅なら、分割融資に対応でお得
②手数料不要の「借入時負担ゼロ型」は、将来住み替えを考えている人におすすめ
③中古物件でもリフォーム資金含めて借り入れが可能
- 実質金利(手数料込)
- 0.531%
- 総返済額 3281万円
- 表面金利
- 年0.390%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+55000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,426円
①「団信革命」は要介護まで保障も
②自社商品なら、最大3億円まで借り入れOK!
③【期間限定】WEB完結金利優遇キャンペーン実施中。変動金利が年0.390%~
-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
auじぶん銀行の魅力は、業界トップクラスの変動金利です。変動金利が大好きな人なら、最上位にすすめたいですね。最大2億円まで借りられるのも大きなポイントです。
審査に関しては、めちゃくちゃ早いです。申し込んでから基本的には1ヶ月以内に融資実行ができるので、急いでいる場合にはありがたい。「今月中に融資して欲しい」とアピールすれば、審査がスムーズに運びやすいです。
団信では「がん・4疾病50%保障団信」が無料で付いているので、通常の団信より手厚いと言えます。通常、保障を厚くするのであれば、金利を上乗せする必要がありますが、無料でつくのは魅力です。