銀行は住宅ローンをどのように捉えているのでしょうか? 住宅ローンの優先順位が低い銀行は、今後の追加利上げで、躊躇なく住宅ローン金利(特に変動金利)を上げてくる可能性があります。そこでメガバンク、地方銀行、ネット銀行など各銀行の現在のスタンスを公式サイトから分析してみました。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
銀行の住宅ローン優先度を公式サイトで探る
マイナス金利が3月に解除され、社会では今後のゼロ金利解除による「金利のある世界」に注目が集まっています。
そこで今回は、メガバンク、地方銀行、ネット銀行などが「優先順位としているものは何か?」という点を公式サイトなどから探っていきたいと思います。
例えば、住宅ローンの優先順位が低い銀行は、利上げにより住宅ローン金利をすぐに上げる可能性があるといったことが予想されます。
メガバンクは住宅ローンを推していない
まず、メガバンクから見ていきましょう。以下の情報ソースからメガバンクの方針を探ります。
<銀行の戦略・方針検索方法>
- ・公式サイトで横に自動スワイプする広告やキャンペーン(※)
- ・商品一覧における住宅ローンの優先度など
- ・「銀行 住宅ローン」などの検索で上位ヒットした銀行の専用ページ
(※ スワイプ広告やキャンペーンは筆者が調査した時点のもので、日々更新されています)
各銀行がどこに力を入れているのか? 住宅ローンは商品一覧で何番目くらいに位置しているのか? について、銀行員の視点で表にまとめてみました。
図表1 メガバンクの住宅ローン優先度とトピックス
メガバンクの「戦略」は?
まず、公式サイトで住宅ローンが前面に出てくるメガバンクは一つもないことがわかりました。
もちろん、検索キーワードでたどり着くことはできますが、やはり公式サイトで住宅ローンがすぐ目に飛び込んでこないのは、メガバンクが住宅ローンから一歩引いている姿勢の表れかもしれません。
銀行として重視しているのは新規預金者の獲得で、そこから銀行アプリやクレジットカードなどの派生サービスに結びつけたい戦略が見えてきます。
もちろん取引の先には住宅ローンもあるわけですが、まずは入口段階である新規口座開設と、そこで同時に銀行アプリを浸透させたいようです。
地方銀行は住宅ローンはそこそこに、生き残りに必死
現在、日本の地方銀行は第一地銀(いわゆる地方銀行)が62、第二地銀(旧・相互銀行など)が37となっています。【参考①】地方銀行の数 銀行免許一覧(都市銀行・信託銀行・その他)
今回は、第一地銀で規模の大きい3行をピックアップして、公式サイトを見てみました。
図表2 地方銀行の住宅ローン優先度とトピックス
地方銀行の「戦略」は?
メガバンクと同じように、公式サイトで住宅ローンが前面に出てくる地方銀行はないことがわかりました。
地方銀行の経営が振るわず、生き残りに必死なのはよく知られていることです。そのため現在の地方銀行は、それぞれが収益源を求めて独自路線を進んでいます。
大きく分けるとNISAなどに代表される「投資や運用イチオシ銀行」(上記では福岡銀行・横浜銀行)。カードローンや複数借り入れおまとめローンなど「消費者金融寄りの銀行」(上記では千葉銀行、他には静岡県のスルガ銀行など)があります。
しかし、住宅ローンに限定すれば、地方銀行でもメガバンクと同じようにやはり優先度は低い傾向にあります。
たとえば、ローンに力を入れている千葉銀行も、住宅ローンはローンで4番目(1番はおまとめローン)なのです。
また、地方銀行の特徴としては「来店予約」が目立つことも挙げられます。来店予約により顧客の目的を事前に知ることができるので、投資や運用などもうけにつながる客と、それ以外のあまりもうからない(住所変更、預金の引き出しなど)来店客を選別できます。
そのため、来店予約はメガバンクから地方銀行へと浸透しています。そして、やたらと来店予約を前面に推してくることからも、やはり生き残りに必死な地方銀行の一面が見えてきます。
ネット銀行によっては住宅ローンに注力している
現在、日本国内のネット銀行(正式名称は「インターネット専業銀行」)は17行あります。ここから代表的なものをピックアップしました。
図表3 ネット銀行の住宅ローン優先度とトピックス
ネット銀行の「戦略」は?
インターネット専業というくらいで、原則として店舗を持たないのがネット銀行最大の特徴です。そのため、ATM利用の利便性を高くすることで顧客を集めるのが一つの戦略で、ATM利用網や手数料無料などに力を注いでいます。
また、これと同様にメガバンクや地銀・信金との差別化で、ネット銀行が住宅ローンに力を入れていることが一覧表からもうかがい知ることができます。
しかし、ネット銀行の中においても住宅ローンへの力の入れ具合に温度差も見えてきます。
銀行員の目から見ると、楽天銀行、ソニー銀行などは住宅ローンよりもクレジットカードや外貨預金推しのように感じます。
一方、公式サイトだけでは住宅ローンへの力の入れ具合がわかりにくいのもネット銀行の特徴です。なぜかというと、インターネットが命とも言えるネット銀行では、検索ワードなどでユーザーの目に飛び込むよう上位でヒットするような工夫をしているとも思われるからです。
ネット銀行で住宅ローン推しと言われる住信SBIネット銀行は「住宅ローン 銀行」とか「住宅ローン 金利」などと言ったワードで検索すると上位でヒットするようになっていて、その特集ページは非常に充実しています。
その代わりなのか、公式サイトでは素っ気ないほど住宅ローンの表現は控えめに見えるほどです。
ここまでまとめると、ネット銀行全体では住宅ローンに力を入れているが、銀行での温度差もあり、住宅ローンを推す銀行はネット検索で上位でヒットするように工夫し、ネットユーザーの住宅ローン取り込みを狙っていると言えます。
銀行員としてはあまり実行してほしくないですが…
今回は、各銀行の戦略や住宅ローンへの力の入れ具合を探りました。今後、ゼロ金利政策の解除により、住宅ローン、特に変動金利が上昇する可能性があります。その際、住宅ローンの優先度が低い銀行では、躊躇なく金利を引き上げるかもしれません。
この見解はあくまで個人的なもので、確定的なことは言えません。しかし、先行き不透明な現在、「自分が取引している銀行は何を優先しているのか?」という視点で見つめ直すことも一つの対策かもしれません。
また最近のネット記事では、住宅ローン金利が上昇したときの対策として「固定金利への切り替え」や「繰り上げ返済」といった内容が多く見られます。
これに関して反論が出るのを覚悟で申し上げるなら、金利が上昇した後に固定金利に換えるとしても、変動金利が上昇するなら、固定金利はもっと高水準になっているでしょう。
また、繰り上げ返済は、まとまったお金がある人には有効ですが、資金がない人にとっては現実的な解決策とは言えません(私自身、子供の進学などで繰り上げ返済の資金を持っていないため、金利上昇が心配です)。
したがって、銀行員の私からすれば、これらの解決策は現実的とは思えないのです。
解決策として挙げるなら、例えば「金利を引き上げるなら、ほかの銀行で借り換えるよ!」とアピールして、金利引き上げを防ぐ行動をする。このように自分から何らかのアクションを起こすことをおすすめします。
実はこの対策、銀行員としてはお客さまにあまり実行してほしくないことなのですが…。とにかく、黙っていては金利引き上げに納得したことになってしまいますので「動くなら今」だと思います。
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
・返済中の住宅ローン変動金利がいよいよ上昇!
・「これから変動金利を上げます」と発表する銀行が続出! 住宅ローン検討中、返済中の人へ銀行員が伝えたいこと
・返済中の住宅ローン金利を下げさせる交渉術は?〜銀行員がリアルに解説
・銀行員が考える、住宅ローン金利引き上げシミュレーション! その時、顧客は選別される
・住宅ローン金利の引き上げを自分だけ回避する方法!
>>現役銀行員の加藤隆二氏の記事一覧はこちら
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
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・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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