2024年10月から多くの銀行で住宅ローンの基準金利が引き上げられました。変動金利で返済中の人はこれから返済額が上がる可能性があります。本記事では、「メガバンク、地銀」「ネット銀行」の2つのケースで、返済額のシミュレーションをしてみます。また、今後の返済額増加までのタイムラインについても解説します。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
10月1日、多くの銀行で住宅ローン金利が引き上げに
日銀がゼロ金利解除へ政策を転換し、いよいよ「金利のある世界」に突入しています。2024年10月1日時点では、多くの金融機関で住宅ローン金利の引き上げが発表されました。
銀行により方針が異なり、たとえばメガバンクで金利を引き上げるのは、三井住友銀行とりそな銀行で、地銀もこれに追従しています。一方、金利を据え置いたのが三菱U F J銀行、みずほ銀行です。
このように銀行によっても対応が異なっており、情報が混在している状況なので、住宅ローンを返済中の人は、
「いつから、いくら返済額が増えるのか、よくわからない!」
「そもそも自分の契約ってどうなっているの?」
など、不安や疑問を抱えている人も多いと思います。
そこで本記事では、「メガバンクや地銀・信金」と「ネット銀行」の2つに分けて返済額がどのように増えるのかをシミュレーションし、今後のタイムラインについても説明していきます。
なお、2つに分けた理由は、変動金利の基本ルールがネット銀行とそれ以外の金融機関では異なるからです。
住宅ローン金利の基本事項:変動金利の「店頭金利」には2つの種類がある
①メガバンク、地方銀行などの「短期プライムレート基準」
②ネット銀行の「独自基準」
(ただし住信SBIネット銀行は短期プライムレートが基準)
店頭金利(基準金利、標準金利ともいわれる)とは住宅ローンの基準となる金利のこと。この店頭金利から、優遇(属性や取引ぶりなどで引き下げること)された適用金利(実際に利用者が支払う金利のこと)を払っていく
2024年10月1日の状況は?
・短期プライムレート基準変動金利では、店頭金利は1.975%〜2.475%までと銀行により異なるが、「プラス0.15%の引き上げ」が大多数
・ネット銀行では、基準金利自体がそもそも異なる水準なので、引き上げ幅もまちまち
【関連記事】>>住宅ローン金利の決まり方は? 変動金利は短プラが基準だが銀行によって異なるので確認しよう!
【メガバンク、地銀・信金】
返済額増加のシミュレーション
まず、メガバンクや地銀など「短期プライムレートを基準としている」変動金利で、これからの動きを解説します。
短期プライムレート基準の銀行では10月1日から、2.475%→2.625%へと、店頭金利(基準金利)の0.15%引き上げなど、金利の引き上げが実施されています。
変動金利は基準となる金利=店頭金利に連動する仕組みなので、変動金利で返済中の住宅ローン金利は原則として0.15%引き上げになるのです。
メガバンクや地銀(短期プライムレート基準)の基本ルール
メガバンクや地銀では、短期プライムレートをもとにした基準金利(店頭金利、店頭表示金利とも)に連動して金利が変動する形式が主流です。
短期プライムレート基準では「5年ルール※」と「125%ルール※」という、金利変動に関する決まり事があります。
※5年ルール
返済の最初から5年間、以後も5年経過するまでの間は、金利が上下動しても毎回返済額が変わらないルール。ただし毎回返済額は変わらなくても、返済額の内訳に占める利息の割合は金利変動に応じて変わるので、金利が変わらないということではない
※125%ルール
5年ごとの区切りの中で、次の5年間の返済額は、その直前の返済額に対して最高でも125%(1.25倍・例10万円⇒最高でも12万5千円)でとどめるルール。一方、金利が低下した場合の下限はない
【関連記事】>>変動金利の5年ルールは多数が勘違い?! これから住宅ローンを借りる人が知っておくべき3つの新セオリーとは
今後のタイムライン
メガバンクや地銀の変動金利型住宅ローンの今後は、基本的には以下のような動きになっていくと考えられます。
- 新しい金利の基準日は2024年10月1日
- ↓
- 新利率の適用開始日は2024年12月返済日の翌日(※2025年1月の返済から新金利が反映される)
- ↓
- 新金利が適用された内容は、11月上旬頃に郵送される返済明細表で確認できる
- ↓
- 5年刻みの残り年数(※自分が返済から3年を経過しているなら残りは2年、返済から7年が経過なら残り3年)の間は、返済額は変わらない
ただし、金利はあくまで2024年12月から引き上げになり、返済額は変わらなくても金利が上昇して増えていることになります。
いつから、いくら増えるかをシミュレーションで確認
では、実際に金利上昇の影響について、シミュレーションしてみましょう。以下のモデルケースで「10月1日から金利が0.15%引き上げ(0.6⇒0.75%)になった場合の返済額の変化」を試算してみます。
<モデルケース>
・2017年9月に3000万円・変動金利0.6%・35年返済(ボーナス返済なし)で借りた
・2017年10月から返済を開始して84回支払済み
・2024年9月現在のローン残高は24,493,026円
・2024年9月現在の毎月返済額は79,208円(このうち元金67,130円、利息12,078円)
図表1 【メガバンクや地銀・信金】返済額増加のシミュレーション
10月1日に金利が引き上げられ
↓
12月の返済が終わった翌日から新金利になり
↓
翌年1月から返済額が増える(利息が増えて元金が減る)
金利引き上げと返済額の変化について5つのポイント
短期プライムレート基準の変動金利で、金利が引き上げになった場合のポイントは以下のとおりです。
②ただし利息の占める割合が増え、代わりに元金の割合が減る
③毎回返済額が変わらない(5年ルール)、前回の1.2倍を超えて増えることはない(125%ルール)
④といっても、これは上昇して増える利息を棚上げしているだけで、どこかで支払う必要がある
⑤金利が3%⇒5%⇒7%など急激に、しかも上昇を続けた場合には最終回までに利息を払いきれない「未払利息」が残る恐れもある
このように5年ルールがあるので、毎回返済額は変わらなくても、水面下では自分の支払う利息負担が増えているという状態になります。
なおシミュレーションはあくまでイメージのため簡易的に計算したもので、実際に利息や返済額がどうなるか? は返済明細表等で確認することが必要です。
【関連記事】>>住宅ローンの未払利息が発生した時、銀行はどうした? 現役銀行員が過去の金利上昇時の対応を解説
【ネット銀行】返済額増加のシミュレーション
ネット銀行は、ほとんどが独自基準の変動金利となっていて、新金利がすでに発表済みのところもあります。今後のタイムラインもそれぞれのネット銀行間で違いがあります。
ネット銀行の基本ルール
ネット銀行は短期プライムレート基準ではなく、独自に変動金利の基準となる金利を定めているところが主流です。
メガバンクや地銀では、短期プライムレートをもとにした基準金利(店頭金利、店頭表示金利とも)に連動して金利が変動する形式が主流です。
今後のタイムライン
変動金利住宅ローンの今後は以下のような動きになっていくことになります。ネット銀行は金利見直しの時期や頻度などがそれぞれ異なるため、ここではソニー銀行発表の流れで解説しますが、基本的な流れはほぼ同じです。
- 新しい金利の基準日は2024年11月1日
- ↓
- 新利率の適用開始日は2024年12月返済日の翌日
- ↓
- 2025年1月の返済から返済額が変更になる(ボーナス月によっては別のケースも)
- ↓
新金利が適用された内容は、11月上旬頃に郵送される返済明細表で確認できる
上記のように「5年ルールや125%ルールがない」ネット銀行(SBI新生銀行、PayPay銀行、ソニー銀行)では、変動金利で基準金利に変化があると、時間をおかずに返済額が変わるところに注意が必要です。
変更後の返済額は、新金利適用日現在の元金残高、最終ご返済日までの残存期間、適用金利などにより、ソニー銀行所定の計算方法で再計算されます。
なお、ソニー銀行では、いわゆる「5年ルール」や「125%ルール」に基づく返済額の計算を行っていません。したがって、適用金利が上昇した場合には、その上昇幅に応じて返済額が見直されます。
引用元:ソニー銀行:【重要】住宅ローン金利の改定について
いつから、いくら増えるかをシミュレーションで確認
では、実際に金利上昇の影響について、シミュレーションしてみましょう。以下のモデルケースで「10月1日から金利が0.15%引き上げ(0.6%→0.75%)になった場合の返済額の変化」を試算してみます。
<モデルケース>
・2017年9月に3000万円・変動金利0.6%・35年返済(ボーナス返済なし)で借りた
・2017年10月から返済を開始して84回支払済み
・2024年9月現在のローン残高は24,493,026円
・2024年9月現在の毎月返済額は79,208円(このうち元金67,130円、利息12,078円)
図表2 【ネット銀行】返済額増加のシミュレーション
10月1日に金利が引き上げられ
↓
12月の返済が終わった翌日から新金利になり
↓
翌年1月から返済額が増える(利息が増えて元金が減る)
なお、上記のシミュレーションは簡易的に計算したものです。金利引き上げ後の返済額や利息と元金の内訳などは、各銀行で異なるので返済明細表や専用サイトなどで確認が必要です。
金利引き上げと返済額の変化について3つのポイント
ネット銀行の短期プライムレート基準の変動金利で、金利が引き上げになった場合のポイントは以下のとおりです。
②金利引き上げ後の返済額は返済明細表など、自分で確認が必要
③金利が3%⇒5%⇒7%など急激に、しかも上昇を続けた場合には最終回までに利息を払いきれない「未払利息」が残る恐れがある
このように、5年ルールや125%ルールがないので、毎回返済額は変わることになります。
まとめ
ここまでの説明を整理すると、銀行など「5年ルール」がある場合には、5年刻みの残り年数(自分が返済から3年目経過しているなら残りは2年、返済から7年目経過なら残り3年)の間、返済額は変わりません。
しかし、金利はあくまで2024年12月から引き上げになり、返済額は変わらなくても金利が上昇して増えていることになります。
一方、ネット銀行など「5年ルール」がない場合には、金利上昇に応じて返済額は増えることになります。
ただし、以下のように考えることもできるため、どちらが良いか悪いかなどは単純に比較できないのです。
・5年ルールがないと、金利上昇で増えた利息を払うことになるが、金利支払いを棚上げはしていない
住宅ローン金利引き上げを受けて、「今後もローン金利は上昇するはず」「変動金利はやばい、早く固定金利にしよう!」といった報道やネット記事を見受けますが、これらはあくまで予想に基づくものであり、その内容はしっかりと検証する必要があります。
また、こうした報道に対して、「金利が0.1%程度上がっただけで払えなくなるなら、住宅ローンなんて借りなければいいのに」「自分は変動金利のリスクを知っていたから固定金利を選んで正解だった」など、さまざまな意見があります。
しかしこれらもあくまで個人的な見解です。「金利変動のリスクを許容することで、低金利のローンが利用できる変動金利」のメリットが消滅したわけではありません。
いずれにせよ、ゼロ金利解除から住宅ローン変動金利の引き上げという大変動が起きることは間違いない事実なので、確かな情報を把握して今後を考えていく必要があります。
【関連記事】>>住宅ローンの10年後の変動金利は1.2%〜2.6%まで上昇と予想! 12銀行を試算
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[新規借入] |
132銀行を比較◆住宅ローン実質金利ランキング[借り換え] |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2024年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【借り換え】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
新規借入2024年12月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額3000万円、借入期間35年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.413%
- 総返済額 3218万円
- 表面金利
- 年0.284%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 75,045円
①「がん・4疾病50%+全疾病+月次返済保障」が無料!
②住宅ローン金利優遇割ならダントツの低金利
③三菱UFJ銀行とKDDIが立ち上げたネット銀行。ネット申し込みで、全国に対応
- 実質金利(手数料込)
- 0.512%
- 総返済額 3271万円
- 表面金利
- 年0.375%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+33000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,229円
①注文住宅なら、分割融資に対応でお得
②手数料不要の「借入時負担ゼロ型」は、将来住み替えを考えている人におすすめ
③中古物件でもリフォーム資金含めて借り入れが可能
- 実質金利(手数料込)
- 0.531%
- 総返済額 3281万円
- 表面金利
- 年0.390%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+55000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 76,426円
①「団信革命」は要介護まで保障も
②自社商品なら、最大3億円まで借り入れOK!
③【期間限定】WEB完結金利優遇キャンペーン実施中。変動金利が年0.390%~
-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
auじぶん銀行の魅力は、業界トップクラスの変動金利です。変動金利が大好きな人なら、最上位にすすめたいですね。最大2億円まで借りられるのも大きなポイントです。
審査に関しては、めちゃくちゃ早いです。申し込んでから基本的には1ヶ月以内に融資実行ができるので、急いでいる場合にはありがたい。「今月中に融資して欲しい」とアピールすれば、審査がスムーズに運びやすいです。
団信では「がん・4疾病50%保障団信」が無料で付いているので、通常の団信より手厚いと言えます。通常、保障を厚くするのであれば、金利を上乗せする必要がありますが、無料でつくのは魅力です。