変動金利の住宅ローンを利用している方は、自分のローンがいつから金利引き上げになり返済額がどう変わるかをご存知ですか? 住宅ローンを変動金利で返済中なので返済中の筆者自身が自分のケースでわかりやすく解説します。住宅ローンを借りている人、これから借りようと考えている人は、ぜひ参考にしてください。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員)
2025年1月から、筆者の住宅ローン返済額も引き上げに!
ゼロ金利解除後、返済中の住宅ローンの変動金利がいよいよ引き上げになります。
筆者も自分が勤務する銀行で住宅ローンを変動金利で借りており、2025年1月から引き上げ後の金利が適用されることになりました。以下は筆者の住宅ローンの状況です。
・住宅ローンを変動金利型で借りており、金利が引き上げられる
・2025年1月から引き上げ後の金利が適用される
・ただし「5年ルール」の途中なので、返済額は2025年10月まで変更なし
「5年ルール」の途中なので、まだ返済額は変わりませんが、金利は引き上げられるため、返済額が変わらない期間でも、毎回の返済額に占める利息の割合が増えることになります。
<基礎知識>
変動金利かつ元利均等返済で借り入れの場合には、以下のルールがあります。
【5年ルール】
返済額は5年ごとに見直しします。金利が変更になっても、次回の見直しまで返済額は変わりません(元金と利息の内訳は変わります)。
【125%ルール】
返済額は5年ごとに見直ししますが、金利上昇により返済額が大きくなる場合でも、新返済額は前回までの返済額の125%を超えることはありません。
10月1日を1回経過する毎に1年経過したものとみなします。
適用利率が急上昇して利息分だけで返済額を超えてしまった場合、超過分は未払利息として翌月以降に繰り延べします。
元金均等返済で借り入れの場合は、5年ルール・125%ルールはありません。
引用元:三菱UFJ銀行「金利タイプ」
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参考:これまでの住宅ローン金利引き上げに関する状況
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これまでの金利に関する動きを整理してみましょう。現在(記事執筆時2024年11月27日)の状況は以下の通りです。
2024年3月 ゼロ金利解除の決定
日銀が金融政策決定会合で「マイナス金利政策」を解除し、金利を引き上げることを決定しました。およそ17年続いた「異次元の金融緩和」「ゼロ金利政策」が終わり、「金利のある世界」に突入しました。2024年7月 日銀による利上げ開始
日銀が利上げを実施しました。具体的には「無担保コールレート・オーバーナイト物を0.25%で推移するように促す」ことが施策となりました。2024年8月 金融機関の住宅ローン基準金利引き上げ発表
日銀の利上げを受け、金融機関で短期プライムレート引き上げが相次ぎ発表されました。それに伴い、住宅ローン基準金利も2024年10月より引き上げられることとなりました。2024年10月~11月現在 顧客宛てに金利に関する案内文書を発送
多くの金融機関が「金利変更に関するお知らせ」などの文書を顧客に郵送している状況です。
返済額はいつからどのくらい増えるのか、額増加をシミュレーション
それでは筆者のケースを例に、具体的にいつからいくら増えるのかをシミュレーションで見ていきましょう。
銀行員・加藤隆二の住宅ローンの内容は?
実際の借り入れ内容は下記の通りです。
・一戸建て購入資金として3,000万円の住宅ローンを変動金利住宅ローン・保証会社保証付き(保証料は一括前払い)で借り入れ
・2010年11月から返済開始
・15年返済し、2025年11月から16年目(「5年ルール」における次の5年間)となる
返済額と金利については、以下となります。
【返済額】
・35年返済・ボーナス増額なし、元利均等返済
・返済額は毎月91,488円、年間返済額は1,097,856円
・15年返済して2024年10月時点の残高は18,181,670円
・繰り上げ返済は行っておらず、毎月の返済額は借り入れ当初から変更なし
【金利】
・変動金利で年1.475%、借り入れ当初から金利の変更なし
・基準金利は2.475%で、優遇▲1.00%(一般顧客より優遇幅は少なめ)
以下が金利引き上げの内容です。
・住宅ローン基準金利の見直しにより、金利が+0.15%引き上げ。引き上げ後の金利は2025年1月から適用
・現在の金利:1.475%
→新金利:1.625%(2025年1月返済分から適用)
返済額の変化は下記の通りです。
【返済額増加の時期と増加額】
・15年経過し、「5年ルール」の節目であるため、金利変更後すぐに返済額が増加する
【返済額】
・金利変更前:毎月91,488円
→金利変更後:毎月92,700円(増加額+1,212円)
金利引き上げにより毎月の返済が1,000円強、増える計算
では、返済額の増加について、さらに詳しくシミュレーションします。
金利引き上げによる返済額の変化をシミュレーション
まず、金利引き上げ前のAを見てください。元利均等返済なので、返済開始時よりも返済額に占める利息が減り、元金の割合が増えていることがわかります。
毎月返済額 (①+②) |
①うち利息額 | ②うち元金額 | |
---|---|---|---|
※参考:第1回返済 | 91,488円 | 36,875円 | 54,613円 |
A:金利引き上げ前(2024年11月時点) | 91,488円 | 22,433円 | 69,055円 |
B:金利引き上げ後(2025年1月から) | 92,700円 | 23,559円 | 69,141円 |
増加額(BーA) | +1,212円 | ー | ー |
そして、その後も元金の割合が増え、最終回で完済=元金0円となるのが「元利均等返済」の仕組みです。
ただし、元利均等返済の途中で金利が変わると、予定通りにはいかなくなることがわかると思います。
(※結果をシンプルにするため数字は修正しています。あくまで参考としてください。実際の変更内容は銀行からのお知らせや問い合わせにより確認してください)
約1,800万円ローンが残っている私の場合、+0.15%の金利引き上げで、約1,200円程度の返済額増加となります。
ちなみに、同じ条件(35年返済で16年目から金利が+0.15%引き上げ)となる場合の毎月返済額の変化は、借入額に応じて以下の増加額となります。
・借入額5000万円なら、毎月返済額は+2,056円
・借入額8000万円なら、毎月返済額は+3,288円
・借入額1億円なら、毎月返済額は+4,110円
現在の金利引き上げ水準である+0.15%の引き上げでは、借入額が1億円でも概算で毎月の返済額の増加は約4,000円程度です。
これを多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれですが、まだ0.15%程度の引き上げなら返済増加額も甚大なものではないだろうと銀行員の私は考えています。
【シミュレーション】>>借り入れ額の入力で、銀行ごとの返済額がわかる!
5年ルールの途中なら返済額はそのままだが、実際は利息が増え元金が減る
紹介したケースはシミュレーション結果をわかりやすくするために、金利引き上げからすぐ返済額が変わるという事例です。
しかし、変動金利には「5年ルール」を設けている銀行もあるため、実際にはまだ5年ごとの期間中で、返済額が変わるのは次の5年目からという人もいます。
例えば、借り入れから13年目の人は2年後の15年目(5年ごと×3回目)から金利変更後の返済額になるといった具合です。
そのため、5年ルールの期間中は返済額が変わらないことになりますが、その内訳では、利息が増えて元金が減っている点に注意してください。
【関連記事】>>変動金利の5年ルールは多数が勘違い?! これから住宅ローンを借りる人が知っておくべき3つの新セオリーとは
まとめ
今回は現在の金利引き上げレベルで、どのくらい返済額が増えるかに重点を置いて述べてきました。
金利は確かに上昇するため、返済額が増える場合もあります。しかし、現時点の返済額増加なら、影響も決して甚大なものではないと思います。
それよりも大事なのはこれからです。繰り上げ返済や固定金利への切り替えも選択肢の一つです(ただし、変動金利引き上げよりもさらに金利が上がることになりますが)。
また、他の銀行へ借り換えを考えている人もいるかもしれません。自分はどうするか? 金利上昇後の返済増加額と比べながら考えてみてはいかがでしょう。
この記事が参考になれば幸いです。
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淡河範明さん
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