2022年から世界的な長期金利上昇のなかで、わが国でも固定金利型住宅ローンの金利がジワジワと上がってきた。2022年12月に日本銀行が実質的に大規模緩和政策を修正。長期金利の上限を引き上げたこともあって、2023年1月の住宅ローン金利もアップした。日銀の政策変更の可能性が高まり、2023年は住宅ローン金利の本格的な上昇の年になりそうだ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
住宅ローン金利の上昇は2023年にいよいよ本格化?
2022年12月下旬、日本銀行が突然大規模緩和修正を決定、長期金利の上限を従来の0.25%から0.50%に引き上げた。この修正に関して、黒田総裁は「利上げや金融引き締めではない」としているが、金融市場では事実上の金融引き締めという受け止め方が広がっている。
2023年は本格的な金融引締めの年になり、それにともない長期金利が上がり、住宅ローン金利も上昇傾向がより鮮明になるのではないかという見方が強まっている。これから住宅ローンを利用してマイホームを購入しようと考えている人は、それを前提に資金計画を立てる必要がある。
固定金利型住宅ローンの代表格である住宅金融支援機構のフラット35の金利は、図表1にあるように、2022年はジワジワと上昇し、2023年1月にも上がって、返済期間21年~35年の金利は1.68%になった。2022年当初に比べると0.4ポイント近く上がった計算になる。
図表1 フラット35借入金利の推移(単位:%)
金利1.0%アップで毎月返済額が2万円増加
では、住宅ローン金利が上がると返済負担はどれくらい増えるのだろうか。図表2は、借入額4000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしの場合の毎月返済額を金利上昇幅別に試算した一覧表になる。
図表2 金利が上昇した場合の返済額の増加額試算
まず、2023年1月現在の1.68%で借り入れた場合、毎月返済額は約12.6万円。フラット35は全期間固定金利型だから完済まで金利・返済額が変わらないので、35年間の総返済額は約5292万円になる。
これが、金利が0.50ポイント上がって2.18%になると毎月返済額は13.6万円と、金利1.68%に比べて返済額は1万円ほど増えてしまう。35年間の総返済額は5712万円で、金利1.68%に比べて420万円も増えてしまう計算だ。
さらに、金利が1.00ポイント上がって2.68%になると毎月返済額は14.6万円で、1.68%に比べて2万円強の増加。35年間の総返済額は6132万円で、1.68%に比べると840万円も増える。
1.50ポイント上がり3.18%になると、毎月15.7万円で、35年間の総返済額は1.68%に比べて1342万円も増えてしまうのだ。
金利2.68%の場合、 年収400万円台だと4000万円の家を買えなくなる⁉
金利が上がると、返済負担が増え、必要な年収が高くなる。年収がさほど高くない人たちは、購入環境が一段と厳しくなる。
ほとんどの銀行では返済負担率(年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合)を35%までとしている。金利1.68%であれば、図表3にあるように借入額4000万円に必要な年収は432万円だが、金利2.18%に上がると必要な年収は467万円、金利が2.68%になると504万円に増えてしまう。 年収400万円台までの人は、4000万円の借り入れに手が届かなくなる。
図表3 金利が上昇した場合の必要な年収
現実には、年収400万円台、500万円台で返済負担率35%となると、手元に残る生活費が少なくなって家計のやりくりが大変になってくるので、返済負担率を25%程度に抑えるのが無難と言われている。
それを前提に再計算すると、金利1.68%だと年収605万円で借り入れ可能だが、金利2.18%では654万円、2.68%では705万円、金利3.18%では758万円に上がる。金利が上がると、年収が600万円台、700万円台にならないと、なかなかに厳しい借り入れになってしまう。
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金利が大幅に上がると年収1000万円以上でないと家が買えない!?
以上は借入額が4000万円の場合だが、借入額が増えれば、毎月返済額が多くなり、必要な年収は高くなる。
借入額6000万円の場合の毎月返済額は図表4のようになる。金利1.68%なら、毎月返済額は19万円弱だが、金利2.18%では20万円半ばになり、2.68%だと約22万円に増える。
図表4 金利が上昇した場合の返済額の増加額試算
35年間の総返済額を見ると、2.18%だと1.68%より約642万円増え、2.68%なら約1319万円、3.18%だと約2013万円も増加する。たかが金利0.50%、1.00%の違いとはいえない大きな差が出てくる。
必要な年収の変化は図表5にある通りだ。金利1.68%なら返済負担率35%だと648万円になるが、金利2.18%では701万円に、金利2.68%では755万円に、金利3.18%だと812万円に上がる。
図表5 金利が上昇した場合の必要な年収
より安全な範囲である返済負担率25%で試算すると、金利1.68%なら907万円だが、金利2.18%になると981万円と1000万円近い年収が必要になり、金利2.68%では1000万円を超える1058万円に、さらに金利3.18%では1137万円になってしまう。金利が大幅に上昇すると1000万円以上の年収が必要になるわけだ。
年収400万円では4000万円の借り入れは難しい
この関係を現在の年収別に見ると、図表6のようになる。金利1.68%で買えたとしても年収400万円では、返済負担率が37.8%に達し、金融機関の審査基準35%を超えるので、4000万円の融資は難しい。もちろん、金利が2.18%、2.68%と上がるとますます買えなくなる。
図表6 金利が上昇した場合の返済負担率の変化
そこで年収600万円でみると、金利1.68%なら返済負担率が25.2%だから、銀行の審査基準をクリアできる。ただし、先にも触れたようにあまり年収が高くない世帯だと、返済負担率が25%を超えると家計管理が厳しくなるので注意が必要だ。
金利が2.18%、2.68%と高くなると返済負担率が27.2%、29.4%と段階的に高くなるので、より慎重な家計管理が必要になる。年収800万円だと、金利が上がった場合でも返済負担率は25%以下になるので、まずは問題なく借り入れできそうだ。
住宅ローン以外のローンを一括返済しておく
ここまでの返済負担率は、住宅ローンの返済額だけで計算したが、実際の審査の現場では、住宅ローン以外のローンがある場合には、その返済額を加えて計算、審査される。たとえば、住宅ローンの返済額が10万円であっても、そのほかに自動車ローンの返済などが2万円あれば、返済額は12万円として計算され、審査が厳しくなる。
そのため、金利が上がって審査にひっかかる可能性が高い人は、事前に住宅ローン以外のローンについて整理しておくのがお勧め。住宅ローンの金利は自動車ローンや教育ローンなどのその他のローンより金利が低いのが普通なので、その他の方を一括返済してしまい、可能であれば、その分住宅ローン利用額を増やすようにするのがいいだろう。
住宅ローンの金利は、
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
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Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
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【回答の配点】
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満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
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プロの評判・口コミ
淡河範明さん
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