「親の土地に家を建てられるなんて羨ましい」。周囲からそう見られているようでも、銀行員の立場から言えば、親の土地への建築は、もっとも慎重に進めるべきものです。土地代ゼロのメリットだけに目を奪われると、せっかくのマイホームが「家族崩壊の引き金」になりかねません。(金融ライター・現役銀行員 加藤隆二)
1.親が担保提供者(連帯保証人)になることのリスク
子が親や祖父母が所有する土地に家を建て、その土地を住宅ローンの担保に入れるのは、自宅新築の計画ではよくあるケースです。しかし、そのよくあるケースに、親の老後生活や親子の関係性を揺るがすリスクに発展していく可能性があります。
担保提供者は連帯保証人とほぼ同じ
自分名義ではない土地に家を建てる場合、土地の所有者である親は銀行に対して「担保提供者(※1)」という立場になります。担保価値に満たない場合には、親や祖父母が所有する実家や遊休不動産(※2)を「追加担保」にするケースも同様です。
※1:住宅ローンの担保として自己所有の不動産を提供する人。「抵当権設定者」とも呼ばれる
※2:店舗やビル、工場、倉庫や土地などのうち、企業活動にほとんど使用されておらず活用もされていない住居以外の不動産
このように自分の財産を他人の借金の担保として提供することから、担保提供者は「物上保証人」(「物の上だけの保証人」)とも呼ばれます。
もし住宅ローンを返済できなくなれば、担保提供した親の土地は競売にかけられ強制売買されます。子がローンを返済できなくなれば不動産を失うことになるため、銀行によっては担保提供者である親に「連帯保証人」になることも求めます。
連帯保証人になれば、担保不動産だけでなく親の現預金や他の資産すべてが支払い義務の対象となります。この事実を双方が正しく理解していないことが、トラブルの種となるのです。
親の老後資金と住まいを奪う可能性も
「親の土地だから安心」というのは、返済が順調なときだけの話です。人生には勤務先の倒産、病気や離婚など、予期せぬリスクが潜んでいます。もし、子がローンを延滞し破綻したならば、最終的に銀行は担保不動産を競売(契約に基づき強制的に売却すること)にかけます。
こうした一連の流れを「抵当権の行使」と呼びますが、子の自宅を建てるために提供した親の土地が失われることになります。追加担保として親の自宅が入っていた場合、それも強制売却され、親が老後の住まいを失うことになります。
私は銀行員としてこうした場面に何度も遭遇してきました。仕事とはいえ、子の借金のせいで住まいを追われる高齢のご両親を見るのは非常に忍びないものです。
銀行審査の裏側〜親の年齢と「意思確認」
銀行員が審査は、借り入れする本人の属性だけでなく、土地提供者である親の年齢や健康状態も注視します。
たとえば、親に認知症の疑いがある場合など、有効な担保提供の意思表示ができないと判断されると、ローンが否決されることもあります。
高齢の親が担保提供者および連帯保証人になる場合、銀行は親子の合意が書面だけでなく実態として円満になされているかを、面談などを通じて厳しくチェックします。
契約書類は銀行員の面前で自署してもらうのが大原則です。親の年齢によっては会話がスムーズでない場合もあり、銀行員が複数で対応し、代筆などの対応をするケースもあります。
【解説】担保提供する親の個人信用情報をチェックされる場合もある
住宅ローンでは申込者の個人信用情報(※3)以外に、連帯保証人になる人の個人信用情報もチェックされる可能性があります。連帯保証人はローンを借りる本人とまったく同じ責任と義務を負うため、親が担保提供者の場合、親の個人信用情報もチェックされることがあります。(※4)本人の信用情報に問題がなくても、親に延滞履歴があった場合、ローンが借りられなくなります。
※3:クレジット払いや過去のローン支払いでの滞納・破綻・自己破産などが記録されている情報の総称。ローン審査のほか、クレジットカードの新規契約や携帯電話の機種代金の分割払い申し込みでもチェックされます
※4:担保提供者兼連帯保証人の場合は個人信用情報もチェックされますが、担保提供者だけ(物上保証人だけ)の場合はチェックしないなど、金融機関により対応は異なります
<回避策>とにかく話し合い、必要なら「書面」に残す
トラブルになったお客様が口を揃えておっしゃるのが「もっとしっかり話し合っておけばよかった」という言葉です。兄弟には「実家を担保にすることは言いにくくて内緒にしていた」「もともと兄弟仲が悪いので教える必要もないと思っていた」。こうした後悔は後を絶ちません。
トラブルを防ぐにはとにかく話し合うことから始めるべきです。理解が得られれば心配の種も減りますし、断られたなら諦めることでトラブルを回避できます。必要に応じて遺言書などの書面に残しておくことも検討しましょう。
2.共有名義が「修羅場」になる
家を建てたときはよくても、数十年後にかならずやってくるのが「相続」の問題です。親の土地に家を建てるという行為は、将来の相続財産を複雑にし、兄弟姉妹との争いを誘発する要因となります。
子どもの頃は仲がよかった兄弟姉妹でも、それぞれが結婚し家庭を持つと状況は一変します。各人の配偶者や子どもとの生活を守るために、兄弟姉妹各人が親の遺産に対して権利を主張するのは当然のことです。
その一方で、親の土地に家を建てた子は「土地は自分が使っているから自分のもの」と考えがちです。しかし、ほかの兄弟姉妹からは「あいつだけえこひいきされてずるい」と映ることになります。
「お前が親父の土地に家を建てるとは聞いていなかった」「実家をローンの追加担保にするとは聞いていたが、親が死んだんだからもう終わり。長男の俺によこせ」。こうした兄弟姉妹間の争いに発展する可能性があります。
代償分割の難しさ:現金がないという行き止まり
相続において、土地を特定の相続人が引き継ぐ代わりに他の相続人に現金を支払う行為を「代償分割」と呼びます。(※5)親の土地に家を建てていた場合、遺産分けで兄弟から不公平だと言われ、お金を支払わなければなりません。
しかし、住宅ローンの返済に追われていれば、相応の現金を兄弟に支払う余裕があるかという切実な問題が発生します。話し合いがまとまらず、土地が「兄弟全員の共有名義」になってしまうことさえあります。
※5出典:国税庁「No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」
自宅の土地が兄弟との共有になってしまった
共有名義はまさに「修羅場」への入り口です。将来、家を建て替えしたり売却したいと思っても、共有者全員の同意が必要になり身動きが取れなくなってしまいます。
筆者が経験したケースでは、親が担保提供した土地に自宅を建てたお客様が、親の死亡後の相続で他の兄弟との共有名義になってしまいました。住宅ローンの担保になっている以上、ほかの兄弟が住むことも簡単には処分できません。
しかし、兄弟間の争いが感情的にエスカレートした結果、共有とされてしまったのです。本人曰く「地獄のような日々だった」と言います。
共有者の一人が自分の持ち分だけを売却することは可能です。ただし羊羹のように切り離して使うことはできません。このケースでも最終的に兄弟の一部が持分を売却しましたが、その過程でさらに揉め事がエスカレートしたバッドエンドとなりました。
<回避策>土地を「分筆」してリスクを切り離す
相続トラブルを防ぐ手段のひとつに「土地の分筆」があります。実家の一部に家を建てる際、敷地の一部を切り分けて子名義の土地にする方法です。分筆すれば、住宅ローンの担保になる範囲もその土地だけに限定されます。
ただし、分筆には測量費用がかかるほか、自治体の条例で最低敷地面積が定められているなど法的な制限があります。建築計画の初期段階で、土地家屋調査士や銀行に相談し、将来の相続を視野に入れた「境界線」を引いておくことが重要です。
3.贈与税の問題と「使用貸借契約」の重要性
親の土地を無償で借りて家を建てることは、税務上で「贈与」とみなされるリスクがあります。
親から無償で土地を借りる「使用貸借」と贈与税・相続税の関係
通常、他人から土地を借りて家を建てる場合、借地権割合に応じた「権利金」や「地代」を支払います。しかし親子間では地代も権利金も支払わない「使用貸借」が行われることも多くあります。
この場合、一般的には贈与税は発生しませんが、親が死亡すると相続税の対象になることもあります。(※6)税金に関わることですので、住宅ローンを借りる前に税理士や税務署に相談することをおすすめします。
※6参考:No.4552 親の土地に子供が家を建てたとき|国税庁
<回避策>相続時精算課税制度と公正証書の活用
贈与や相続など税金面でのリスクを回避する手段として、「相続時精算課税制度」の活用があります。2,500万円までの贈与を非課税とし、将来の相続時にその額を合算して精算する制度です。これを利用して土地そのものを先に子へ贈与することで、不透明な使用貸借関係を解消できます。(※7)
また、どのような形で土地を利用するにせよ、親子間・兄弟姉妹を含めた合意内容を「公正証書」にしておくことを強くおすすめします。(※8)
口約束は時間が経てば必ず風化します。「あのとき父さんはこう言った」「いや、そんな話は聞いていない」という泥沼の争いを防ぐ唯一の手段として、公的な書面を残しておきましょう。
※7:一般社団法人全国銀行協会「相続時精算課税制度」っていったいどんな制度?
※8:公正証書 | 日本公証人連合会
親の土地に建てる前に、家族全員で確認すべきこと
親の土地に家を建てることは、決して「楽をして家を建てる」ことではありません。むしろ自分一人で完結する通常の建築よりも、はるかに高いコミュニケーション能力と、将来を見据えた緻密な設計が求められるプロジェクトです。
住宅ローンは長い人で35年近くかけて返済していくものです。その間に家族の形は変わります。親が年老い、介護が必要になり、やがて見送る日が来ます。
そのとき、あなたの建てた家が「家族が集まる場所」であり続けられるか、それとも「憎しみ合う場所」になってしまうか。その分かれ道は、計画段階での「透明性」と「準備」にかかっています。
【関連記事】>>土地の相場(購入・売却)、今後の価格推移は?
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淡河範明さん
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