マンションの賃料が上昇している。なかでも東京23区の30㎡以下の単身向けの2026年2月の月額賃料は、初めて11万円台に乗せ、前年同月比12%アップした。これでは年収がそれほど高くない若い世代にとっては、負担が大き過ぎる。家賃の負担を少しでも減らすにはどうしたらいいのか。エリアや駅別の家賃データから解説する。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
東京23区、単身マンションの平均家賃は11万円台に
不動産情報サイトのアットホームでは、定期的に全国主要都市の「賃貸マンション・アパート募集家賃動向」の調査を行っている。2026年2月分の調査結果から、首都圏主要都市の30㎡以下の賃貸マンションの平均家賃と、前年同月比の増減を示したのが下の図1だ。
【図1】首都圏主要都市の30㎡以下のマンションの平均家賃(単位:円)
言うまでもなく首都圏で最も家賃が高いのが東京23区で、月額11万0177円と前年同月比12.0%上昇した。調査開始以来、初めて11万円台に乗せた。
不動産関連の価格の中でも、賃貸住宅の賃料は“粘着性が高い”といわれ、一度定着した相場がそう極端に上下することはなく、比較的安定している。地価やマンション価格などに比べて上下動が少ないとされているわけだが、それが年率12.0%もアップしているということは、いよいよ賃貸住宅にも、マンションをはじめとする不動産価格上昇の波が押し寄せているのかもしれない。
国税庁の調査によると、20代の平均年収は約341万円。家賃11万円とすれば年収の4割近くを住居費に持っていかれるわけで、生活がかなり厳しくなってしまいそうだ。
23区の家賃相場がここまで上がった理由
23区の家賃がこんなに上がってしまったのには理由がある。まず、マンション価格が高騰しており、なかでも都心部を中心とする23区の価格上昇は著しいものがある。
投資用として分譲される専有面積30㎡以下のマンションは少なくないが、土地価格、建築費ともに上がっているため、分譲価格は大幅に上昇。それを買って賃貸に出して収益を上げるためには、賃料を上げざるを得ない。
不動産経済研究所の調査によると、2024年に首都圏で発売された投資用マンションの平均価格は3599万円で、前年同月比10.4%も上がっているのだ。
既存の物件に関しても、賃貸管理にかかる諸経費が上がっているため、賃貸契約の更新時に家賃を上げるケースが増えており、退去後の再募集に当たっては、リフォームや賃貸管理に関する諸経費の高騰を受けて、賃料を大幅に引き上げるケースが増加している。
そんなに家賃を高くすれば、まださほど年収が高くない一人暮らしの単身者にとっては負担が重くなって敬遠されそうだ。だが、若くてもバリバリ働いて高収入を得ている人、また高収入を目指したい人にとっては、交通アクセスに恵まれ、生活利便性が充実した23区はどうしてもはずせないエリア。多少家賃が高くても住みたい人が一定数いて、家賃の上昇が受け入れられているのだろう。
都下マンションなら周辺3県より家賃が安い
でも、そんな高い家賃は払えない人もいるだろう。というより、そういう人のほうが多いのではないだろうか。では、どうすればいいのか。
まずはエリアを見直してみる。先の図1に戻ってみよう。同じ首都圏でも、23区が月額賃料11万円台に対して、それ以外は6万円台、7万円台にとどまっている。エリアを変えれば、賃料負担を大幅に減額できるわけだ。
なかでも注目したいのが、東京都下(東京23区以外の市町村)だ。神奈川県、埼玉県、千葉県より都下のほうが平均家賃が安い。周辺3県は6万円台後半から7万円台に対して、都下は6万円台の前半となっている。
都下なら、JR中央線、京王線、西武新宿線などで都心に直結しており、23区ほどではないにしても交通アクセスが充実し、生活利便施設が整ったエリアが多いので、23区とさほど変わらない生活を送ることができるのではないだろうか。
しかも、東京都アドレスであり、対外的なイメージも良い。東京都は各種住民サービス(出産、子育ての支援策など)が充実しているというメリットもある。
実際には、先にみたように都下の平均家賃は神奈川県より安いのだが、「都内なら神奈川県より家賃負担が高くても、各種の支援策や補助金などが恵まれているので、生活関連の総負担は変わらないのではないか、むしろ安くすむケースもあるだろう」と考える居住者が少なくない。もちろん、家賃以外の物価が高いことは覚悟しなければならないが、それは家計管理の仕方次第だろう。
都心にアクセス良好で、家賃が安い穴場の駅は?(JR中央線の例)
また、エリア選びだけではなく、駅選びにも注目しておきたい。人気の駅、複数路線が入っているターミナル駅などは家賃が高くなるが、そこから1、2駅離れた駅なら家賃水準が低くなる。
快速などが停車せず、各駅停車のみの駅が多く、駅周辺の商業施設などが整っていないなどのデメリットはあるが、普段は駅周辺で買い物し、まとまった買い物はターミナル駅などにお出かけ感覚で行くようにすれば、そんなに不便を感じることはないのではないだろうか。
たとえば、JR中央線のワンルーム・1K・1DKの家賃相場をみると、図2のようになっている。
【図2】JR中央線の家賃相場(単位:万円)
23区から都下に入るエリアでは、西荻窪駅、吉祥寺駅が家賃11万円台と最も高いが、手前の荻窪駅は10万円台、阿佐ヶ谷駅は9万円台で、吉祥寺駅から1つ先の三鷹駅は9万円台、2つ先の武蔵境駅は8万円台で、3つ先の東小金井駅まで行けば7万円台にダウンする。
交通アクセス面では、JR中央線の吉祥寺駅は快速が停まり、特別快速は停まらないものの、家賃が安い一駅先の三鷹駅は特別快速が停まる。また、三鷹駅は東京メトロ東西線の始発駅でもあり、余裕をもって出かければ、座って通勤できる可能性もある。交通アクセスは吉祥寺駅より恵まれているという見方もできる。それでいて、平均家賃は吉祥寺駅より安いのだ。
さらに都心からの距離は遠くなるが、国立駅、立川駅が次の山になっていて、手前の国分寺駅、西国分寺駅、先の日野駅は、この2駅より若干安くなっている。こうした“ずらし駅”は各路線にあるので、希望の沿線で探してみてはどうだろうか。
【JR中央線(東京都下11駅)賃貸マンション・アパートをチェックする】
| 駅名 | 住所 | 平均賃料(単身向け) | LIFULL HOME’Sで空室を見る |
|---|---|---|---|
| 吉祥寺 | 東京都武蔵野市 | 11万3100円 | |
| 三鷹 | 東京都三鷹市・武蔵野市 | 9万8300円 | |
| 武蔵境 | 東京都武蔵野市 | 8万6600円 | |
| 東小金井 | 東京都小金井市 | 7万6800円 | |
| 武蔵小金井 | 東京都小金井市 | 7万8800円 | |
| 国分寺 | 東京都国分寺市 | 7万7200円 | |
| 西国分寺 | 東京都国分寺市 | 7万5100円 | |
| 国立 | 東京都国立市 | 8万5000円 | |
| 立川 | 東京都立川市 | 8万5000円 | |
| 日野 | 東京都日野市 | 7万3400円 | |
| 豊田 | 東京都日野市 | 8万5400円 |
ピーク時期を外せば、家賃が安くなる可能性も
そのほか、“ずらし駅”と同じような発想で、可能であれば「時期をずらす」という考え方もある。わが国では4月が年度初めであり、3月、4月に引っ越しが集中している。人手不足が深刻な運送業界は、引っ越し時期の分散化を呼び掛けているが、それは賃貸住宅にも当てはまる。
3月、4月の引っ越しを目指して、年始から賃貸住宅探しが活発化し、引き合いが増加、需要が供給を上回り、貸し手有利の環境となる。借り手にとっては、募集家賃が上がるほか、ライバルが多いため、じっくりと選択する余裕がなくなり、家賃などの交渉の余地もほとんどなくなってしまう。下手に交渉しようものなら、「ほかにも希望者がいるので」とあっさりパスされてしまうのがオチだ。
そこで、可能であれば、物件を探す時期をずらしてみてはどうか。進学、就職、転勤などで時期が限られている場合は仕方ないが、そうでなければ、3月、4月を6月、7月、8月にずらせば、引っ越しを実行する人が減少するので、賃貸住宅の動きが鈍くなる。雨が多く蒸し暑い梅雨時に引っ越しする人は多くないし、酷暑の8月も同様だ。
逆にいえば、この時期ならライバルが少なく、じっくりと時間をかけて物件探しをすることができ、大家や仲介会社との交渉も有利に進めることができる。さらに引っ越しも余裕を持って依頼でき、料金も安く抑えることができるメリットもある。極端にいえば、ピーク時の半額以下の引っ越し代で済むケースもあるだろう。
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まとめ
賃貸住宅の家賃が高騰しているが、エリアや沿線、駅を変えてみれば、家賃をかなり抑えることができるし、時期を変えれば、借り手が優位な環境で物件探し、交渉が可能になるかもしれない。
家賃高騰を嘆いているだけでは事態は好転しない。発想を変えれば道が開ける。ぜひ試してみてはどうだろうか。
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