マンションを買うなら、快適に住めて利便性の高いマンションが一番だが、最近は将来の資産性を重視する傾向が強まっている。では、実際にどんな条件の物件を購入すれば資産価値が高まるのだろうか。データを分析すると、いくつかの条件が見えてきた(住宅ジャーナリスト・山下和之)
若い世代は、マンション購入理由に「資産を持ちたい」と回答する人が多い
リクルートの「2020年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、マンション購入理由(複数回答)は、以下のようになっている。
・1位 「子どもや家族のため、家を持ちたいと思ったから」38.1%
・2位 「現在の住居費が高くてもったいないから」32.5%
・3位「もっと広い家に住みたかったから」28.0%
・4位「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」27.1%
4位の「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」の割合をライフステージ別にみると、シングル世帯では40.8%に達し、夫婦のみ世帯が30.0%と全体平均より高く、子どもあり世帯の19.5%、シニアカップル世帯の15.5%を大きく上回っている。
この数年、マンション価格が急速に高騰していることもあってか、若い世代ほど、マンションにおける資産としての価値を改めて認識するようになっているのかもしれない。同じ年に実施された一戸建て購入者を対象とした調査では、「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」は11.0%にとどまっていることからも、マンションの資産性への注目度の高さが分かる。
「ザ・パークハウス新宿御苑」は、分譲価格の1.5倍以上に値上がり
では、その資産性の高いマンションを選ぶにはどうすればいいのか。マンション情報サイトの「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、「築5年以内の値上がりマンション」のランキングを作成している。その結果をみると、値上がり率が高く、資産性が高いと見なされる物件の条件が浮き彫りになる。
まず、関東の築5年以内の物件で、値上がり率が高かったマンションのベスト10は図表1のようになっている。トップは、三菱地所レジデンスが分譲した「ザ・パークハウス新宿御苑」で、値上がり率は57.3%だった。数年の間に分譲時価格の1.5倍以上に値上がりしているわけだ。2位の「パークマンション三田綱町 ザフォレスト」(三井不動産レジデンシャル)も上昇率56.5%と1位と遜色ない上昇率を記録している。
ここに掲載したのは10位までだが、17位までが、30%以上の上昇率だった。
図表1 築5年以内マンションの値上がり率ランキング(2021年・関東)
順位 |
物件名 |
上昇率 |
所在地 |
竣工年 |
---|---|---|---|---|
1 |
ザ・パークハウス新宿御苑 |
57.3% |
東京都新宿区新宿 |
2017年 |
2 |
パークマンション三田綱町 ザフォレスト |
56.5% |
東京都港区三田 |
2016年 |
3 |
ザ・パークハウスグラン南青山 |
45.1% |
東京都港区南青山 |
2016年 |
4 |
ザ・タワー横浜北仲 |
37.2% |
横浜市中区北仲通 |
2020年 |
5 |
ザ・パークハウス西新宿タワー60 |
36.4% |
東京都新宿区西新宿 |
2017年 |
6 |
ブリリアタワー高崎アルファレジデンシア |
35.0% |
群馬県高崎市東町 |
2020年 |
6 |
ブリリアタワー代々木公園クラッシィ |
35.0% |
東京都渋谷区冨ヶ谷 |
2018年 |
8 |
ピアーズ赤坂 |
33.1% |
東京都港区赤坂 |
2019年 |
9 |
BOTA三宿 |
32.7% |
東京都世田谷区三宿 |
2017年 |
10 |
リストレジデンス上野黒門町 |
32.5% |
東京都台東区上野 |
2017年 |
首都圏で値上がり率が高いのは、東京都心部
個別マンションの上昇率では、資産性の高い物件の条件が明確になりにくいが、属性別の値上がり率を見ると、どんな条件の物件を買えばいいのか、資産性の高いマンションの条件が明確になる。
まずは立地。「マンションの資産価値は立地で決まる」と言われるほどだが、首都圏なら東京都のできるだけ都心に近いエリアで買うのが得策だ。
「首都圏の値上がり率トップ100(100位が2物件あるため101物件)」のうち、東京都が89物件、88.1%を占めている。首都圏全体の分譲マンションに占める東京都の割合は64.7%だから、東京都のマンションがトップ100に入る確率は、首都圏全体の1.4倍(89.1÷64.7)になる。資産性重視なら、やはり東京都ということだ。
その東京都のなかでも、都心が有利であるのは言うまでもない。市区町村別でトップ100に入る物件数が最も多いのは、東京都港区の18物件だった。
都心5区以外の狙い目は、台東区、品川区
首都圏全体ではどこを購入すると値上がり率が高くなるのだろうか。港区が1位で、トップ100に入る確率は、4.0倍(トップ10に入る割合17.8%÷港区のマンションの割合4.5%)である。
通常、都心といえば千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の5区を指すが、都心5区では、渋谷区が2.7倍、新宿区が2.1倍で、中央区が1.8倍になっている。
注目度は低いかもしれないが、実は100位に入る確率が高い区として台東区の2.9倍、品川区の2.7倍を挙げることができる。
台東区や品川区は都心周辺という位置づけになるが、その分、価格水準が都心各区に比べて低く、最近のマンション価格上昇のなかで都心並みの価格に近づくような上がり方をしているため、値上がり率が高くなったのではないかとみられる。都心各区のマンションは高くなり過ぎて、購入は簡単ではないので、こうした周辺エリアの物件に注目しておくのもいいかもしれない。
【関連記事はこちら】>>台東区の「新築マンション人気ランキング」
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図表2 首都圏の値上がり率上位エリア
順位 |
物件所在地(東京都) |
ランクイン物件数 |
100位までにランクインする確率 |
---|---|---|---|
1 |
港区 |
18 |
4.0倍 |
2 |
台東区 |
9 |
2.9倍 |
3 |
品川区 |
8 |
2.7倍 |
3 |
渋谷区 |
11 |
2.7倍 |
5 |
新宿区 |
7 |
2.1倍 |
6 |
中央区 |
8 |
1.8倍 |
テッパンは大手不動産会社、中堅や電鉄系にも注目
次に、首都圏の値上がり率トップ100に入った分譲会社を見てみよう(図表3)。
物件数が一番多かったのは「三井不動産レジデンシャル」で、2位が「三菱地所レジデンス」と、老舗不動産大手2社が他社に大きく水をあけている。3位以下も「野村不動産」「東京建物」と大手不動産が続き、5位も大手住宅メーカーでマンション分譲も多い大和ハウス工業だった。
大手のブランド力、底力を思い知らされるランキングといっていいだろうが、大手の物件は都心の富裕層向けのマンションや大規模再開発が中心で、一般会社員では手の届きにくい物件が多いのが現実だろう。
そこで注目しておきたいのが、中堅の不動産会社や電鉄系の不動産会社。たとえば、「モリモト」は都心やその周辺で比較的規模の小さいマンションを手がけており、デザイン性や仕様・設備の充実度などで評価が高い。また、「京浜急行電鉄」などの電鉄系は沿線に土地を多く所有しており、その分、リーズナブルな価格帯での分譲が多く、入居後、周辺の相場に合わせて上昇する可能性がある。
図表3 首都圏の値上がり率トップ100(101物件)の物件数上位(分譲会社別)
順位 |
分譲会社名 |
件数 |
関東全体に占める割合 |
100位までにランクインする確率 |
---|---|---|---|---|
1 |
三井不動産レジデンシャル |
20 |
6.5% |
3.1倍 |
2 |
三菱地所レジデンス |
19 |
8.7% |
2.2倍 |
3 |
野村不動産 |
13 |
8.0% |
1.6倍 |
4 |
東京建物 |
10 |
3.0% |
3.3倍 |
5 |
大和ハウス工業 |
7 |
―― |
―― |
6 |
モリモト |
5 |
2.5% |
2.0倍 |
7 |
京浜急行電鉄 |
4 |
―― |
4.9倍 |
7 |
住友商事 |
4 |
―― |
4.9倍 |
駅徒歩5分以内のタワーマンションが狙い目
値上がり率は、物件の属性によっても変化する。何階建てか、最寄り駅からの徒歩時間はどうかでも、値上がり率は大きく異なる(図表4)。
首都圏の値上がり率トップ100入りした物件のうち、徒歩時間5分以内の占める割合は、61.4%だが、首都圏全体の徒歩5分以内の割合は44.3%だから、トップ100に入る確率は1.4倍ということになる。反対に徒歩16分以上、バス便物件などは、ほとんど値上がりを期待できないといっても過言ではない。
さらに、20階建て以上のタワーマンション(超高層マンション)は、値上がり率トップ100のうち25.7%を占めている。首都圏全体ではタワーマンションは7.0%にすぎないから、値上がり率トップ100に入る確率は3.7倍になる計算だ。
図表4 首都圏の値上がり率トップ100(101物件)の物件傾向
項目 |
区分 |
件数 |
割合 |
100位までにランクされる確率 |
関東全体に占める割合 |
---|---|---|---|---|---|
階建 |
2~9階 |
20 |
19.8% |
0.4倍 |
46.6% |
10~19階 |
55 |
54.5% |
1.2倍 |
46.5% |
|
20~29階 |
10 |
9.9% |
2.4倍 |
4.1% |
|
30~39階 |
7 |
6.9% |
4.3倍 |
1.6% |
|
40階~ |
9 |
8.9% |
6.8倍 |
1.3% |
|
20階以上の割合 |
26 |
25.7% |
3.7倍 |
7.0% |
|
駅徒歩 |
1分以内 |
9 |
8.9% |
1.7倍 |
5.2% |
2~3分 |
27 |
26.7% |
1.5倍 |
17.4% |
|
4~5分 |
26 |
25.7% |
1.2倍 |
21.7% |
|
6~10分 |
32 |
31.7% |
0.9倍 |
36.4% |
|
11~15分 |
7 |
6.9% |
0.5倍 |
15.2% |
|
16分~ |
0 |
0.0% |
0.0倍 |
3.4% |
|
バス・その他 |
0 |
0.0% |
0.0倍 |
0.6% |
|
5分以内の割合 |
62 |
61.4% |
1.4倍 |
44.3% |
|
総戸数 |
100戸未満 |
55 |
54.5% |
0.8倍 |
65.2% |
100戸以上の割合 |
46 |
45.5% |
1.3倍 |
34.8% |
これまで見てきたように、資産価値を重視したマンション選びをする場合、重視すべきいくつかのポイントがあることがわかる。首都圏なら、東京都心部、定評のある中堅か大手不動産会社、20階建て以上のタワーマンション、最寄り駅から徒歩5分以内というのが最も有利な条件となる。
もちろんこれらすべての条件を満たすとなると、おのずと価格が高額になるのは間違いないが、将来の値上がりを期待するならば、立地、不動産会社、徒歩時間、階建などを多面的に検証しながら、物件を選択したいところである。
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