リクルートが毎年行っている『SUUMO住みたい街ランキング2022年首都圏版』の結果が公表された。ランキングの上位には、「横浜」「吉祥寺」などの常連が名前を連ねている。一方、獲得ポイントが大きくジャンプアップした街を見ると、「流山おおたかの森」「船橋」「川越」などが挙がっている。マイホームを購入するなら、そうした将来性の高いエリアにするのも一案だ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
総合ランキングでは横浜が5年連続トップ
住みたい街ランキングの調査に当たっては、今後住んでみたいと思う街(駅)を3つ挙げてもらい、1位を3点、2位を2点、3位を1点として集計、ランキングを作成している。
その結果、総合ランキングトップは図表1にあるように、JR京浜東北線などの横浜駅の1548ポイントだった。2位のJR中央線吉祥寺駅は1046ポイントなので、500ポイント以上の差を付けて圧勝している。横浜駅のトップはこれで5年連続だが、得点差を考慮すると、トップの座は揺るぎそうもなく、しばらく横浜が1位に君臨し続けることになるのかもしれない。
3位にはJR京浜東北線の大宮駅が入り、ポイントは1014ポイントと吉祥寺駅に肉薄している。大宮駅がベスト3に入ったのは初のことであり、大宮駅は2021年のランキングでは949ポイントの4位で、吉祥寺駅の1051ポイントに対して、かなり水をあけられていた。この勢いなら、2023年には1位は無理でも、2位にランクアップする可能性もありそうだ。
図表1 住みたい街(駅)ランキングベスト10
順位 | 21年 順位 |
駅名(代表的な沿線名) | 得点 |
---|---|---|---|
1 | 1 | 横浜(JR京浜東北線) | 1548 |
2 | 3 | 吉祥寺(JR中央線) | 1046 |
3 | 4 | 大宮(JR京浜東北線) | 1014 |
4 | 2 | 恵比寿(JR山手線) | 991 |
5 | 8 | 浦和(JR京浜東北線) | 677 |
6 | 5 | 目黒(JR山手線) | 671 |
7 | 7 | 新宿(JR山手線) | 661 |
8 | 6 | 品川(JR山手線) | 658 |
9 | 9 | 池袋(JR山手線) | 653 |
10 | 12 | 鎌倉(江ノ島電鉄線) | 589 |
人気が急上昇したトップは流山おおたかの森
上位に挙がった駅はそれだけ人気も高く、マイホームなどの住宅価格も高いエリアが多い。これからマンションを買うのであれば、現在はまださほど高くないけれど、将来的に人気が高まり、価格の上昇が期待されるエリアに物件を買っておくのが現実的かもしれない。
そのひとつの指標として、住みたい街ランキングにおいて、前年に比べて取得ポイントが大きくジャンプアップした駅に注目してみるのがいいのではないだろうか。今後、資産価値が上がる可能性があるからだ。
リクルートの調査によると、首都圏で得点がジャンプアップした駅のトップ10は図表2の通り。トップは、つくばエスクプレスの流山おおたかの森駅で、2位がJR総武線の船橋駅、3位が東武東上線の川越駅だった。JR山手線の有楽町駅のような都心の駅もあるものの、多くは郊外のターミナル駅だった。
図表2 得点がジャンプアップしたランキングトップ10
順位 | 駅名(代表的な沿線名) | 21年と22年の 得点差 |
|
---|---|---|---|
1 | 流山おおたかの森(つくばエスクプレス) | +195 | |
2 | 船橋(JR総武線) | +110 | |
3 | 川越(東武東上線) | +98 | |
4 | 有楽町(JR山手線) | +92 | |
5 | 北千住(東京メトロ日比谷線) | +78 | |
6 | 鎌倉(江ノ島電鉄線) | +66 | |
6 | 江ノ島(江ノ島電鉄線) | +66 | |
8 | 大宮(JR京浜東北線) | +65 | |
8 | 調布(京王線) | +65 | |
10 | 溝の口(東急田園都市線) | +59 | |
流山おおたかの森の魅力は、都心への良好なアクセスと子育て環境
とはいえ、単なるターミナル駅というだけではなく、そこにプラスアルファの要素がないと、なかなか上位には上がってこない。そこで、上位の駅のその特徴について見てみよう。
トップの流山おおたかの森は、つくばエクスプレスの快速であれば秋葉原駅まで25分で、秋葉原駅ではJR山手線・総武線、東京メトロ日比谷線と接続しているので、都心の各方面に快適にアクセスできる。途中の北千住駅でも地下鉄各線に乗り換えが可能で、東武アーバンパークラインも利用できる。
また、駅周辺には高島屋ショッピングセンターや大和ハウス工業の新しい業態の商業施設・コトエ(COTOE)などもあって、生活利便施設が充実している。
さらに、流山市は子育て世帯への支援策が充実していることで知られ、2021年の人口増加数は全国1位で、人口増加率でも3位を誇っている。1学年10クラスの小学校もあり、学校の増設を急ぐ一方、学童倶楽部の帰宅方法として路線バスを活用、保護者と駅で待ち合わせる仕組みを構築したり、駅前送迎保育ステーションを設置して、保護者が児童を駅で送り迎えできるようにしている。
こうした施策が広く知られるようになって、流山市、なかでも流山おおたかの森駅の人気が高まっているのだろう。
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船橋は利便性だけではなく、家族が楽しめる場所がある
2位の船橋駅にも同じようなことがあてはまる。
船橋駅からはJR総武線で秋葉原駅までが30分ほどで、御茶ノ水駅で中央線快速に乗り換えると新宿駅も40分ほど。錦糸町駅で総武線快速に乗り換えれば、東京駅や品川駅に快適にアクセスできる。
船橋駅からは東武アーバンパークラインも出ており、隣接するJR総武線の西船橋駅からはJR京葉線・武蔵野線も利用でき、ディズニーリゾートのある舞浜駅や東京駅に直接行けるし、東京メトロ東西線で日本橋駅や大手町駅にも直結する便利さだ。
また船橋駅、西船橋駅には大規模商業施設や生活利便施設がそろっている。
さまざまな面で利便性の高い街でありながら、船橋駅の北側の住宅街には天沼弁天池公園があり、家族でゆったりした時間を過ごせる。少し郊外に出ると全国的に名前を知られるふなばしアンデルセン公園があり、子どもだけではなく、家族で楽しめる公園が充実しているのも大きなポイントだ。
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川越は、観光地としての人気の高まりからマンションが増加!
得点がジャンプアップした街の3位は東武東上線の川越駅。川越駅にはJR川越線も乗り入れており、東武東上線の一駅先には川越市駅もあり、近くには西武新宿線の本川越駅もある。副都心の新宿駅、池袋駅と直結するほか、商業施設が充実した大宮駅とも一本でつながっている。
川越駅周辺には商業施設も充実しているが、川越といえば小江戸として知られる首都圏有数の観光地でもある。首都圏だけではなく全国から観光客がやってくる、活力に満ちた街でもある。
コロナ禍で観光業界は停滞が続いていたが、2022年春から行動規制がほとんどなくなって、各地に観光客が戻りつつある。リスクを考えて、まずは近場の観光地からという人も多く、川越を訪れる人たちが増えている。
川越駅前に大手不動産会社の超高層マンションが誕生するなど、住宅地としても注目度が高まっており、観光の再開とともにマンションの供給の増加が期待されている。
川越駅のほか、得点がジャンプアップしたランキングトップ10(図表2)をみると、6位に江ノ島電鉄線の鎌倉駅、江ノ島駅が並んでいる。ともに65ポイントの得点アップで、観光地としての魅力だけではなく、住む場所としても注目されるようになっている。
東京駅から30~59キロ圏の得点シェア指数が上昇
この調査では、東京駅を起点とする距離圏別の住みたい街(駅)の総得点シェアを算出している。2020年を100とする指数でみると、図表3にあるように、東京駅から10キロ圏のシェアは2021年が90.1、2022年が89.0と2年連続して低下している。
図表3 東京駅を起点とする距離圏別得点シェア指数
都心やその周辺の住宅価格が高くなりすぎて、多くの人にとって手が届かない存在になりつつあると同時に、コロナ禍で在宅勤務が増えて、都心に住む必要がなくなっている人も増えていることなども関係しているのかもしれない。
反対にシェアが高まっているのが、30~50キロ圏内。2020年を100とした指数で、2021年が104.7で、2021年は117.9だった。
この30~50キロ圏内には、藤沢、本厚木、上尾など郊外のターミナル駅や、江ノ島、川越など観光地として人気の高い街の多くが含まれている。これからのウィズコロナの時代、都心やその周辺ではなく、30~50キロ圏で住みやすい街を探すのが得策かもしれない。
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