夫婦で住宅ローンを借りる「3つの方法」とは? 離婚リスクも考慮して契約を選ぼう住宅ローンの基礎知識 第19回

【第19回】2019年11月14日公開(2021年5月10日更新)
淡河範明:住宅ローンアドバイザー

夫もしくは妻の収入だけでは住宅ローンの審査に不安がある場合、共働き夫婦であれば2人の収入を合算するなどして、借入可能額を増やす方法がいくつかあります。けれども、住宅ローンは借りておしまいではありません。その後、何十年にもわたって返済が続いていきます。各方法のメリット、デメリットをよく理解し、将来のリスクも十分に検討しましょう。

夫婦で住宅ローンを借りる3つの方法

夫婦 住宅ローン
夫婦で住宅ローンを借りる3つの方法と注意点(出所:PIXTA)

 住宅ローンの借入可能額は原則、「税込年収に占める年間返済額の割合」をベースに算出します。簡単にいえば、税込年収が多いほど、たくさん借りられます。そのため、夫もしくは妻が単独で借りるよりも、夫婦の収入を合算したり、夫と妻それぞれが住宅ローンを借りたほうが、借入可能額を増やすことができます。

 このように夫婦で協力して借りる方法には、大きく3つありますが、各方法で返済の責任の範囲や、家の所有権(持ち分)が違ってきます。銀行や商品によって利用できる方法は決まっているため、申し込み前に十分な検討をしておく必要があります。以下で、「夫が妻より収入が多い」という前提で、各方法の特徴を見ていきましょう。

■夫婦で借りる方法① 連帯保証による収入合算

 夫と妻の収入合算で審査を受け、夫が債務者(=ローン契約者)、妻は連帯保証人となって、1つの住宅ローンを借りる方法です。

 合算できる妻の収入の金額は、「妻の収入全額」「妻の収入の2分の1まで」「夫の収入の2分の1まで」など、各銀行で異なります。妻の仕事がパートであっても、収入合算を認めている銀行もあります。

 連帯保証人である妻は、債務者である夫の返済が滞った場合、返済の義務が発生します。つまり、返済に関して夫と同等の責任を負うことになります。一方で、住宅ローン控除を受けられるのは夫だけで、妻は受けられません。また、団体信用生命保険(以下、団信)へ加入できるのも、家の所有権も、夫だけです。

 このように連帯保証人は返済の責任を保証するだけで、何の権利も主張できません。後述するように、離婚の際の財産分与などでトラブルになることも多いため、注意が必要です。

■夫婦で借りる方法② 連帯債務による収入合算

 夫と妻の収入合算で審査を受け、夫が主債務者、妻が連帯債務者となって、1つのローンを借りる方法です。夫だけでなく、妻も全額債務を負います。たとえば、5000万円借り入れた場合、夫の債務も5000万円、妻の債務も5000万円となります。

 連帯保証人との区別がわかりづらいと思いますが、夫が返済できなければ、妻が返済しなければならない点は同じです。違いは、夫だけでなく妻も住宅ローン控除を受けられること。また、夫婦で出し合った頭金や収入の割合に応じて、妻にも家の持ち分があることです。万が一、離婚することになっても、一方が勝手に家を処分するなどの事態を防げるメリットもあります。

 団信へは原則、主たる債務者(ここでは夫)しか加入できません。そのため、連帯債務者である妻にもしものことがあっても、夫は1人で残債をすべて返済していかなければなりません。

 この連帯債務型に対応しているのは、住宅金融支援機構のフラット35くらいで(連帯債務と連帯保証人のいずれかを選択できます)、民間の銀行ではほとんど取り扱っていません。

 ただし、フラット35には、夫婦で加入できる「デュエット」という団信があり、加入しておくと、夫婦のいずれかが死亡・高度障害状態になった場合、2人の持ち分にかかわらず、すべての残債が保険金で弁済されます。妻に何かあったときには、夫の返済も免除されるということです。その分、保険料は1人で加入する場合の1.56倍となっています。

■夫婦で借りる方法③ ペアローン

 夫婦それぞれが住宅ローンを組む方法です。合計2本の住宅ローンを借りることになります。例えば、借入希望額が5000万円のとき、夫が3000万円、妻が2000万円の住宅ローンを別々に組みます。そして、妻は夫の債務の連帯保証人となり、夫は妻の債務の連帯保証人となります。

 ペアローンは多くの銀行で取り扱っています。夫婦とも債務者となるため、住宅ローン控除は夫も妻も受けられます。家の持ち分については、借入額(+頭金等)の割合に応じて、妻も持てます。

 デメリットしては、事務コストが2倍(2人分)かかること。また、団信には夫も妻も加入できますが、それぞれ独立した住宅ローンのため、万が一のことがあった場合には、自分が借りている分の残債しか弁済されないことです。

夫と妻それぞれの経済力を考えて、
無理をしないことが大事

 3つのタイプのどれを選べば良いかというのは、一概には言えません。借入可能額をより多く増やしたいのなら、ペアローンが最も期待できるでしょう。だからといって、現在の収入ベースでギリギリまで借り入れてしまうと、将来に大きな不安を残すことになります。

 3つのタイプを見てきてお分かりのとおり、夫婦で住宅ローンを組むときは、いずれの方法でも、妻もリスクを負います。もし夫が病気やリストラなどで十分な収入を得られなくなった場合、その分を妻の収入で賄わなければなりません。

 加えて、通常の連帯債務型やペアローンでは、夫婦のどちらかが死亡・高度障害になっても、自分で借りた分の住宅ローンについては免除されません。

 現在は共働きでも、将来、子育てや介護を優先して、妻が仕事を辞めて専業主婦になっている可能性もゼロではないでしょう。そんなある日、夫が亡くなり、専業主婦だった妻が仕事を新たに見つけて、自分の残債を返済していくのは並大抵のことではありません。

 夫の死亡等のリスクに備えるなら、フラット35で連帯債務タイプを選択し、デュエットへ加入することです。とはいえ、デュエットは金利が高いため、返済の負担は増します。すでに個人で加入済みの生命保険などがある場合は、その保障内容を精査して、何がベストか総合的に判断する必要があります。

離婚のリスクに備えるなら、連帯保証タイプは避ける

離婚 住宅ローン
もしも離婚した場合、家の所有権と住宅ローンはどうなる?(出所:PIXTA)

 妻からすると、夫の連帯保証人なって住宅ローンを組むのには、もう1つ大きなリスクがあります。離婚時のリスクです。

 前記のとおり、特に妻が連帯保証人の場合、購入した住宅に関して何の権利もありません。夫に家を勝手に売却されても阻止することはできず、売却代金を夫の預金口座に振り込まれてしまえば、資産を取り返すのは難しくなります。

 また、住宅ローンは「本人(主債務者)や本人の家族が居住する」ことが原則です。そのため、離婚して主債務者である夫が家を出ることになると、一括返済を求められることも十分考えられます。現金がなければ、家を明け渡すしかありません。

 それでもまだ銀行が家を売却して、残債がゼロになるならいいでしょう。住宅ローンの残額が家の売却代金で賄い切れないときは、手持ちの資金で完済するか、銀行(保証会社)と相談の上、家を失った後も返済し続けなければなりません。主債務者である夫が返済を滞納すれば、保証会社は連帯保証人である妻に返済を求めてきます。

 もし収入合算をせずに、普通に住宅ローンを組んでいれば、妻が連帯保証人につく必要はありません。連帯保証人になると、こうしたケースを招く可能性があることを十分に理解しておきましょう。

 では、妻が連帯保証人になっていて、将来、離婚しなければならなくなったときはどうすればいいでしょうか。

 妻が家に残るのであれば、現金で一括返済するか、妻名義で住宅ローンを組み直すことができるか相談してみてください(後者については妻が働いていたり、担保のあることが前提となります)。これは連帯債務やペアローンの場合も同様です。夫から妻単独の名義に変更できれば、問題は解決します。

 一方、妻が家を出るなら、離婚前に夫単独の収入で借り換えを行ってもらい、妻の連帯保証人を外してもらいます。契約当時よりローン残高は減っているはずですから、夫の収入だけで借り換えられるケースは多いと思います。また、夫自身も金利の低いローンに借り換えをおくことで、離婚による慰謝料や養育費の負担に備えることができます。

まとめ

・1人の収入で審査に不安があるときは、夫婦での借り入れを考えてみる
・夫婦で借り入れる方法には「連帯保証による収入合算」「連帯債務による収入合算」「ペアローン」の3つがある。
・病気や離婚など万が一に備えて、借り過ぎに注意する

【関連記事はこちら】>>夫婦で一緒に借りた住宅ローンは、離婚すると「思わぬトラブル」の原因になる!連帯保証、ペアローンのデメリットを解説

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