住宅ローンの借り換えで、「全期間固定金利」を借りている人は、基本的には「全期間固定金利」へと借り換えるが、場合によっては「固定期間選択型金利(20年固定金利など)」を選択してもいいケースがある。期間設定をうまくすれば、毎月支払額はほとんど変わらないので、金利上昇リスクを取りたくない人は、ぜひシミュレーションをしてみよう。
残存期間によっては、固定期間型への借り換えも
今回は、Bさん(48歳・会社員)のケースで⾒てみましょう。Bさんの家族構成は、Bさん、妻(46歳・パートタイマー)、⻑男(18歳・大学生)の3⼈です。
Bさんは14年前、住宅ローン2800万円を全期間固定⾦利3.1%で借りていました。
金利が高いことから、このほど、金利0.95%の20年固定⾦利(固定期間選択型)に借り換えました。下記のシミュレーションによれば、⾦利を2.15%下げたことで、総支払額は約497万円も削減することができました。
全期間固定金利に比べて、20年固定金利は金利が低くなっています。問題なのは、20年の固定期間終了後は変動金利を選択せざるをえないことですが、残りはわずか1年ですから、金利上昇リスクも少しです。
なお、借り換えの諸費用は、銀行に支払う手数料が6万円、抵当権設定のための登記費用やそれを依頼する司法書士への報酬、印紙代として合計20万円ほどかかります。こうした諸費用を払ってでも497万円も得するのですから、借り換えすべきです。
【全期間固定金利で借り入れていたBさんのシミュレーション】
借り換え前 | 借り換え後 | |
借入時期 | 2006年 | 2020年に借り換え |
金利タイプ | 全期間固定金利 | 20年固定金利 |
金利 |
3.10% |
0.95%(20年) 0.85%(1年) |
残りの期間 | 約21年 | 約21年 |
毎月返済額 |
10万9323円(現在) |
8万8583円(20年) |
残高/借入額 | 2023万円(残債) | 2023万円(借入額) |
借り換え諸費用 |
ー |
26万円(手数料、登記費用等) |
総支払額 |
約2755万円 |
約2258万円 (約497万円おトク) |
Bさんの当初の住宅ローン選びが間違っていたわけではありません。残存期間が20年を超えるのであれば、全期間固定金利を選ぶのがセオリーです。しかし、借り入れてから14年が経ち、残存期間は21年となっていました。
そのため、20年固定に借り換えたとしても、そこから将来、変動金利で返済しなければならないのは1年だけです。上記のシミュレーションでは、現在の金利水準がずっと継続するとして、20年後の変動金利は0.85%として試算しているので、毎月の支払額は若干減っています。仮に、20年後に変動金利が4%まで上昇したとしても、月々の返済額は1000円弱しかアップせず、総返済額にはほとんど変化が見られません。
こうした状況から、たとえ金利が上昇してもあくまで許容範囲であり、多少ならリスクを取ってもいいと判断し、20年固定金利への借り換えを選択しました。
貯蓄がある人、固定期間終了後の残存期間が短い人向け
このように、金利が上昇した想定でリスクをシミュレーションしてみて、多少月々の返済額がアップしても支払いが可能な額であれば、安心してリスクを取ることができます。
全期間固定金利から、固定期間選択型金利や変動金利への借り換えは、目に見えて月々の返済額が減るため魅力が大きいのですが、金利上昇リスクが生じるため、選択は慎重を期すべきです。
しかし、Bさんのご家庭のように「お子さんがすでに大きく、固定期間終了後の残存期間が短い」といった場合には、リスクがあってもそれに対処できる可能性が高いため、リスクテークする選択肢があってもいいでしょう。
まとめると、
・固定期間終了後の残存期間が短い
・貯蓄が安定的にできていて、金利が変動しても問題が起こりにくい
・これ以上、子どもが増える可能性がない
など、固定金利選択型のリスクを許容できる人は、「全期間固定」から「固定期間選択型」への借り換えを、ぜひ検討してみましょう。
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
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・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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淡河範明さん
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