住宅ローンを変動金利で借りている場合、借り換えも変動金利を選択する人が多く見られます。しかし、ライフプランによっては10年固定への借り換えでリスクを抑えた方が良いケースも。そこで、家計の出費が増える期間には、金利上昇によるダメージを抑えたいという人のために、「変動金利」から「10年固定」への借り換えをシミュレーションしてみました。
10年固定なら、金利上昇リスクが変動金利より少ない
自営業のFさん(42歳)は、パート勤めの妻(38歳)と2人のお子さま(長男14歳、長女12歳)の4人家族です。9年前に35年ローンでマンションを購入。当時は住宅ローンのことよりも、憧れのマンションを手に入れることで頭がいっぱいで、住宅ローンは銀行員にすすめられた変動金利を選択しました。
ところが、先日、某銀行の変動金利がわずかながら引き上げられたことを知って、途端に変動金利のままでいいのだろうかと心配になってきました。調べたところ、過去には変動金利が1年間で2%、3年間で4%上昇したことがあったことを知り、リスクをある程度減らすために、10年固定金利への借り換えを決意しました。
当初、住宅ローンは3600万円借りましたが、9年たって、住宅ローン残高は2822万円まで減少しているので、この金額を借り換えます。
なお、借り換えの諸費用は、銀行に支払う手数料が65.4万円(借入額×2.32%)、抵当権設定のための登記費用やそれを依頼する司法書士への報酬、印紙代として合計20万円ほどかかります。シミュレーションしてみると、こうした諸費用を払ったとしても、総支払額は198万円も得する計算となりました(下表を参照)。
【10年固定金利で借り換えた場合のFさんのシミュレーション】
借り換え前 | 借り換え後 | |
借入時期 | 2011年 | 2020年に借り換え |
金利タイプ | 変動金利 | 10年固定金利 |
金利 |
1.275%(変動、現在) |
0.645%(10年固定) |
残りの期間 | 26年 | 26年 |
毎月返済額 |
10.6万円 |
9.8万円(10年) |
残高/借入額 | 2822万円(残高) | 2822万円(借入額) |
借り換え諸費用 |
ー |
85.4万円(手数料、登記費用等) |
総支払額 |
3317万円 |
3119万円 (198万円お得) |
※1万円単位で借りられる金融機関は少ないですが、比較のため、借り換え額は借り換え前と同額としています ※変動金利は、今後も現在の水準を維持するものとして試算しています |
シミュレーションでは変動金利のほうがお得だが…
変動金利で借りている人は、借り換えも変動金利を希望することが多くなっています。現在の超低金利なら、変動から変動への借り換えでメリットを得られる人は少なくないでしょう。
しかし、Fさんの場合、本人の希望もそうですし、残存期間が26年と長いことから、やはり金利上昇リスクを回避すべきです。
【関連記事はこちら】>>住宅ローン借り換え時に、金利タイプは何にする?
変動金利に借り換えていい人の3条件を紹介
仮に楽天銀行の変動金利(2020年4月の金利は0.527%)に借り換えた場合、今の金利水準が続けば、借り換え諸費用の53万円(銀行への手数料33万円、登記関連費用20万円)を支払っても、トータルコストで244万円もお得になります。しかし、これでは金利上昇のリスクはなくなりません。特にこれからの十数年は、Fさん家族にとっては子どもの教育費もかさむ時期で、金利上昇リスクは避けたいところです。
そこで、Fさんは変動金利ほどのメリットは出ないものの、リスクを減らせる、りそな銀行の10年固定(WEB申込限定プラン「はじめがお得!当初型・借り換え」2020年4月の金利は0.645%)を選択しました。
その結果、諸費用を計算に入れても、総額で198万円得することになりました。
借り換えにより、金利の支払額は大きく減少します。変動金利1.275%から、0.645%(10年固定。10年目以降は0.429%の変動金利)となるため、金利(利息)は495万円から212万円へと減少するのです(下表参照)。
上のグラフは、借り換えをしなかった場合と、借り換えをした場合の総支払額の推移です。緑のラインが、借り換えをしなかった場合と、借り換えをした場合の総支払額が同額となるポイントなので、借り換えから約9年後には、総支払額が少なくなり、元が取れることが分かります。
「変動金利」から「10年固定」への借り換えは、コスト削減とリスク軽減をかなえたい人向け
変動金利の場合、当初金利は大きく下がりますが、金利上昇時の振れ幅は非常に大きくなります。1991年(バブル末期)に日銀が短期金利引き上げの金融政策を実行した際には、変動金利の基準金利は年8.50%でした。
変動金利から固定期間選択型金利に借り換える場合、悩ましいのは何年間の固定にするかということでしょう。Fさんの条件でシミュレーションしたところ、10年固定であれば、現在より毎月の返済額が減りますが、より金利上昇リスクに強い20年固定だと、金利が今のまま推移した場合、借り換えの諸費用も含めたトータルコストでは、現在の変動金利よりも損をします。勇気がなければなかなか20年固定は選択できません。
この借り換えパターンがおすすめなのは、金利リスクはある程度とってもよいと考えているが、家計に対して過大なリスクは避けるタイミングだと気付いている人です。現在、10年固定金利はリスクがそれなりに低く、毎月返済と総返済額もしっかり下げることが可能です。
そういう意味で、変動金利から10年固定への借り換えは、コスト面(総支払額)でのメリットとリスク(金利変動リスク)軽減を同時に追求したいという人向けの借り換えパターンとも言えます。
132銀行を比較◆住宅ローン金利ランキング[借り換え] (⇒ 新規借入はこちら) |
【金利動向】おすすめ記事 | 【基礎】から知りたい人の記事 |
【今月の金利】 【来月の金利】 【2024年の金利動向】 【変動金利】上昇時期は? 【変動金利】何%上昇する? |
【借り換え】の基礎 【基礎の8カ条】 【審査】の基礎 【フラット35】の基礎 【住宅ローン控除】の基礎 |
おすすめ記事はこちら 【借り換え】多くの人は「高い変動金利」で損している! 【借り換え】メリット額が分かる返済額シミュレーション 【金利】132銀行の住宅ローン金利推移をプロが比較(毎月更新) 【金利】変動金利が上がる時期を予測! 【読み物】年収700万円台世帯は破綻必至!? 【諸費用】手数料・引越し代も借りられる銀行は?(17銀行比較) 【審査】「審査基準」を17銀行で比較(年収、勤続年数) |
借り換え2024年12月最新 主要銀行版
住宅ローン変動金利ランキング
※借入金額2500万円、借入期間30年で試算
- 実質金利(手数料込)
- 0.480%
- 総返済額 2681万円
- 表面金利
- 年0.329%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 72,937円
①「がん・4疾病50%+全疾病+月次返済保障」が無料!
②住宅ローン金利優遇割ならダントツの低金利
③三菱UFJ銀行とKDDIが立ち上げたネット銀行。ネット申し込みで、全国に対応
- 実質金利(手数料込)
- 0.536%
- 総返済額 2702万円
- 表面金利
- 年0.375%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%+33000円
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 73,434円
①注文住宅なら、分割融資に対応でお得
②手数料不要の「借入時負担ゼロ型」は、将来住み替えを考えている人におすすめ
③中古物件でもリフォーム資金含めて借り入れが可能
- 実質金利(手数料込)
- 0.541%
- 総返済額 2704万円
- 表面金利
- 年0.390%
- 手数料(税込)
- 借入額×2.2%
- 保証料
- 0円
- 毎月返済額
- 73,597円
①低金利の上、がん50%団信無料
②無料で全疾病保償&12カ月の就業不能保償を付帯
③金利+0.1%で、がん100%団信も付帯OK
-
住宅ローン利用者口コミ調査の詳細を見る
-
今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
132銀行の住宅ローンを比較 >>返済額シミュレーションで、全銀行の金利を一気に比較・調査
|
- 年収に対して安心して買える物件価格は?
-
- ・年収200万円で妻が妊娠中の家族の上限は1600万円!?
- ・年収250万円の単身者の上限は1800万円!?
- ・年収300万円の4人家族の上限は1800万円!?
- ・年収350万円の2人家族の上限は2100万円!?
- ・年収400万円の単身者の上限は2500万円!?
- ・年収450万円の4人家族の上限は2000万円!?
- ・年収500万円の4人家族の上限は3000万円!?
- ・年収600万円の3人家族の上限は3500万円!?
- ・年収600万円の40代独身の上限は3000万円!?
- ・年収700万円の共働き夫婦の上限は5000万円!?
- ・年収800万円の3人家族の上限は4500万円!?
- ・年収1000万円の30代4人家族の上限は5000万円!?
- ・年収1000万円の40代4人家族の上限は3500万円!?
- ・年収1000万円の50代夫婦の上限は3000万円!?
※サイト内の金利はすべて年率で表示
プロの評判・口コミ
淡河範明さん
auじぶん銀行の魅力は、業界トップクラスの変動金利です。変動金利が大好きな人なら、最上位にすすめたいですね。最大2億円まで借りられるのも大きなポイントです。
審査に関しては、めちゃくちゃ早いです。申し込んでから基本的には1ヶ月以内に融資実行ができるので、急いでいる場合にはありがたい。「今月中に融資して欲しい」とアピールすれば、審査がスムーズに運びやすいです。
団信では「がん・4疾病50%保障団信」が無料で付いているので、通常の団信より手厚いと言えます。通常、保障を厚くするのであれば、金利を上乗せする必要がありますが、無料でつくのは魅力です。