ミックスローン(変動金利と固定金利を組み合わせた借り方・商品)からミックスローンへの借り換えは珍しいケースですが、定年退職や減収など、将来の住宅ローン返済に不安がある人は検討する価値のある借り換えパターンです。今回の事例では、借り換えした場合と借り換えしない場合を比較シミュレーションしたところ、400万円以上もお得になることが分かりました。
リスクは変わらないが、コストを確実に削減できる
Iさんは夫婦とも会社員で、年齢は46歳になります。小学校低学年の女の子が2人いる4人家族です。マンションを購入したのは13年前のこと。家族が増えることを想定して、少し郊外ですが、広いリビングと2つの子ども部屋のある間取りを選びました。
Iさんの借り換えは、ミックスローンからミックスローンというややまれなケースです。
ミックスローンとは、変動金利と固定金利という異なる金利タイプを組み合わせた借り方・商品のことです。たとえば、4000万円の借り入れで2000万円を変動金利、残り2000万円を固定金利と組み合わせることで、「当初の毎月返済額を抑えられる変動金利と、金利上昇時の負担増を抑えられる固定金利のいいとこ取りができる」というメリットがあり、近年、取り扱い銀行が増えています。Iさんのように夫婦共働きなら、1つの銀行で2つのローンを独立して組むことも可能です。
Iさんのケースでは、最初にミックスローンで住宅ローンを組んだ時に、夫は35年の全期間固定、妻は20年の変動金利を選択し、金利タイプだけでなく借入期間も変えていました。これは、金利上昇リスクのある変動部分は早めに返済し、その後、固定金利の分だけが残ってもリスクはなく、返済負担も軽くすることを狙いとしたものです。そこで、借り換えにあたっても、その意図を反映しました。
借り換えシミュレーションでは、429万円も得する計算に
当初、住宅ローンは4000万円(夫3000万円、妻1000万円)借りましたが、15年たって、住宅ローン残高は夫婦合計で2345万円まで減少しているので、この金額を借り換えます。
なお、借り換えの諸費用は以下のようになります。夫は、SBI新生銀行の20年固定金利に借り換えました。妻は諸費用がかかることを考慮すると、借り換えのメリットがあまりないため、借り換えないことにしました(2020年4月の金利でシミュレーション)。
夫:銀行に支払う手数料が5.5万円、登記費用・司法書士報酬など20万円
借り換えシミュレーションをしてみると、夫婦合計で、総支払額は429万円も得する計算となりました(下表を参照)。
【ミックスローンで借り換えた場合のIさん夫婦のシミュレーション】
借り換え前 | 借り換え後 | |
借入時期 | 2005年 | 2020年に借り換え |
金利タイプ |
夫:全期間固定 妻:変動金利 |
夫:20年固定 妻:そのまま |
金利 |
夫:2.890% 妻:1.375% |
夫:0.950% 妻:そのまま |
残りの期間 |
夫:20年 妻:5年 |
夫:20年 妻:そのまま |
毎月返済額 |
夫:11.4万円 妻:4.8万円 |
夫:9.5万円 妻:そのまま |
残高/借入額 |
夫:2069万円(残高) 妻:276万円(残高) |
夫:2069万円(借入額) 妻:そのまま |
借り換え諸費用 |
ー |
夫:25.5万円(手数料、登記費用等) 妻:そのまま |
総支払額 |
夫:2727万円 妻:316万円 合計:3043万円 |
夫:2298万円 妻:316万円 合計:2614万円 429万円もお得 |
※1万円単位で借りられる金融機関は少ないですが、比較のため、借り換え額は借り換え前と同額としています ※変動金利は、今後も現在の水準を維持するものとして試算しています |
シミュレーションでは、1年後に元が取れる
借り換えなしの場合と、借り換えをした場合の総支払額推移のグラフからも分かるように、借り換えをしなかった場合と、借り換えをした場合の総支払額が同額となるポイントが約1年後です。つまり、借り換えからわずか1年で元が取れる計算になります。
この借り換えプランでは、金利の総支払額を、借り換え前の658万円から借り換え後の204万円へと、大幅に下げることができます。その結果、諸費用を入れても429万円得することになりました(下表参照)。
今は家計に余裕があるが、将来の返済に不安がある人向け
ミックスローンからミックスローンへの借り換えパターンは、目先の20年ほどはキャッシュフローが潤沢であるものの、定年退職などでそれ以降の返済が不安な人に向いています。
Iさんのケースでは、借り換え後の5年間は、夫婦合わせて毎月返済額は14.3万円になりますが、5年後には妻が完済となります。その後は夫の固定部分の9.5万円だけを毎月返済していけばいいので、月4.8万円も支払いを減らすことができます。
注意点としては、マイナス金利導入後は変動金利と固定金利の金利差が小さくなり、固定金利単独で借り換えても、十分借り換えメリットが得られる例もあるということです。そのため、借り換えを検討する際は、こういったことも踏まえて考えるようにしましょう。
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今回作成した「住宅ローン利用者口コミ調査」の調査概要は以下のとおり。
【調査概要】
調査日:2023年12月
調査対象:大手金融機関の住宅ローン利用者(5年以内に住宅ローンを新規借り入れ、借り換えした人)
有効回答数:822人
調査:大手アンケート調査会社に依頼
評価対象:有効回答数47以上を対象とするアンケートの設問は以下の7問。回答は5段階評価とした。なお、評価点数の平均点は小数点第2位以降を四捨五入。
【アンケートの設問】
Q1.金利の満足度は?
Q2.諸費用・手数料等は妥当でしたか?
Q3.団体信用生命保険には満足しましたか?
Q4.手続き・サポートには満足しましたか?
Q5.審査について、満足していますか?
Q6.借り入れ後の対応に満足しましたか?
Q7.他の人にも現在の銀行を勧めたいと思いますか?
【回答の配点】
・各設問は5段階で回答してもらい、Q1なら以下のように配点。平均値を求めた。
満足している(5点)
どちらかといえば満足している(4点)
どちらともいえない(3点)
どちらかといえば不満である(2点)
不満である(1点)
・総合評価については、各項目の平均値を全て合算。読者が重視する「Q1金利の満足度」については点数を3倍、「Q3団信の満足度」の点数を2倍として、点数の合計を50点満点とし、10で割ることで5点満点の数値を求めた。
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淡河範明さん
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