各種の「住みたい街ランキング調査」が実施されている。その多くは憧れとして住みたい街を聞いたもので、住み心地や実際にそこに住まいを買えるのか、などは別問題。そこで今回注目したのはリクルートが行っている「住み続けたい街ランキング調査」だ。その地域に住んでいる人たちに住み心地や、住み続けたいかどうかなどを聞き、その結果をランキングにまとめている。現に住んでいる人たちの評価だけに、住まいの場所選びの参考になりそうだ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
住みたい街は横浜駅が5年連続1位ではあるが…
リクルートSUUMOリサーチセンターでも、毎年エリア別に「住みたい街ランキング調査」を実施しており、その2022年の首都圏版の結果が図表1だ。
トップは、JR京浜東北線の横浜駅で、2位のJR中央線・吉祥寺駅に大きな差を付けている。横浜駅がトップになるのはこれで5年連続。2位以下に大きな水をあけて断然トップの座を確保している。
図表1 首都圏住みたい街(駅)ランキングベスト10
しかし、横浜駅といえば、JR各線のほか、東急東横線、京浜急行線、相鉄線、みなとみらい線、横浜市営地下鉄などが乗り入れる交通の要衝。周囲には大型商業施設やオフィスビルが林立しており、住まいは駅から徒歩10分程度以上離れたマンションなどに限られる。しかも、価格はかなり高い。ある程度の高額所得者や資産家でない限り、簡単には手が届かないのが現実だろう。
2位の吉祥寺駅は、駅から徒歩圏内に閑静な住宅地が広がっているが、駅に近いほど価格が高く、やはり住まいの入手は簡単ではない。
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住み続けたい街では「湘南海岸公園」駅が1位に
現実的な住居を考える場合には、こうした住みたい街ランキングはあまり参考にならないかもしれない。そのため、リクルートでは「住みたい街ランキング」とは別に、「住み続けたい街」ランキングを作成している。その住み続けたい街ランキングの2022年の首都圏版の結果が図表2だ。
1位は、江ノ島電鉄線の「湘南海岸公園」駅で、2位がみなとみらい線「馬車道」駅、3位がみなとみらい線「日本大通り」駅となっている。
図表2 首都圏住み続けたい街(駅)ランキング
なかには、東京メトロ日比谷線の東銀座駅、都営大江戸線の牛込神楽坂駅などの都心もあるが、上位には一戸建て住宅が中心の湘南方面、横浜市内でも比較的マンションが多いエリアが挙がっている。
江ノ電らしい無人駅の「湘南海岸公園」
住み続けたくなる魅力を分析
トップに挙がった湘南海岸公園駅は、江ノ島電鉄で始発の藤沢駅から鎌倉駅方面に4駅目。単式ホームの無人駅で、10月中旬に開催される江の島花火大会の日は臨時駅員が配置されるが、1日の平均乗降客数は2000人ほどのこぢんまりとした駅だ。
海岸までは徒歩で約10分。駅周辺には閑静な住宅地が広がっており、高層マンションがあまりなく、開放的で眺望が開けている。近くに大規模な商業施設などはなく、江の島、片瀬西浜・鵠沼(くげぬま)海水浴場、新江ノ島水族館などの観光地とはほどよい距離。気軽に訪れることができるが、観光客、レジャー客などによる喧騒(けんそう)からは離れたところに位置している。
その半面、買い物などが不便そうだが、江ノ島電鉄の始発駅の藤沢駅周辺に、ルミネやさいか屋、ダイエーなどの大型商業施設がそろっている。4駅分の距離はあるものの、だからこそ、湘南海岸公園駅周辺の静けさが確保されているといっていいだろう。
駅名になっている湘南海岸公園は、駅から徒歩5分ほどの場所にあり、1964年に開設された。運動広場や湘南海岸公園プールやボードウォークなどがあり、市民に親しまれている。いつでも、気軽にレジャーも満喫できるロケーションだ。
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吉祥寺駅がある武蔵野市は、自治体別住み続けたい街でも1位に
この調査では、駅別の住み続けたい街ランキングと同時に、自治体別の住み続けたい街ランキングも作成している。その結果が図表3だ。
1位は、東京都武蔵野市で、2位が東京都目黒区、3位が神奈川県三浦郡葉山町という結果だった。
図表3 首都圏住み続けたい街(自治体)ランキング
東京都武蔵野市は、リクルートだけでなく、各種の住みたい街ランキングで常に上位のJR中央線・吉祥寺駅がある地域だ。実際に住んでいる人にとっても、住み心地のいい街ということのようだ。
そのほかでは、昔ながらのリゾート地、別荘地として評価の高い葉山町以外は、東京都心の各区が上位に挙がっている。当然ながら交通アクセス、生活利便施設に恵まれていることが魅力になっているだろう。また、都心に住んでいるというプライドが、住み続けたいと感じさせる理由になっているのかもしれない。
子育てしやすい自治体ランキングの1位は千葉県「流山市」
この住み続けたい街ランキングでは、総合ランキングのほか、各種のテーマ別のランキングも作成しており、新たな住まいのエリア選びの参考にできそうだ。
たとえば「子育てに関する自治体サービスが充実している自治体」。岸田政権は子育て支援を最大の政治課題のひとつとしているが、国の施策とは別に、自治体がどんな支援を実施しているかも重要なポイントになる。
その子育て環境が充実している街のトップに挙がっているのが千葉県流山(ながれやま)市で、2位が東京都江戸川区、3位が千葉県浦安市となっている。
流山市では、市を挙げて子育て環境の整備に積極的に取り組んでおり、2010年度には17園だった市内の保育園数が2022年に100園に達し、2021年4月には待機児童ゼロを達成した。
全国でも数少ない「駅前送迎保育ステーション」を設けるなど、働きながら子育てする世帯をサポートしている。「母になるなら、流山市。」「父になるなら、流山市。」をスローガンに、2022年6月には人口が20万人を超え、特に子育て世帯が流山市を選択している。
結果、人口構成を見ても、30代、40代が多く、子どもが増え、若々しく、活気に満ちた街が形成されている。その効果もあり、同市の調査によると、91.4%の市民が流山市にこれからも住み続けたいと答えているそうだ。
まずはどんなエリアに住みたいのかを考える
住まい選びに当たっては、まずはどのエリアに住むのか、住めるのかといったエリア選びからはじまる。その際の選択のポイントはさまざまだろう。したがって、まずは自分たちがどんな特徴のあるエリアを望んでいるのかを明確にして、それに応じたエリア選びを行うようにしたい。そのためには、こうした調査が参考になるのではないだろうか。
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