いまだあの「女子高生コンクリート詰め事件」のイメージが強い東京足立区・綾瀬。その綾瀬がなぜ公示価格・住宅地の上昇率ナンバーワンにまでなったのか。住宅の価格高騰から、庶民の手が届く23区最後の砦の一つともいわれる足立区エリア、そのなかでも綾瀬の魅力と今後の資産価値について紹介する。(マンショントレンド評論家・日下部理絵)
たった1年で地価上昇率8%の「綾瀬駅前」
国土交通省が、最新の「公示地価」を公表した。公示価格とは、毎年1月1日時点の土地の価格、つまり標準地の地価のことを言う。東京都の土地の価格は、2年連続で上昇。その中でも目を引いたのが、住宅地の上昇率だ。
まず東京都・区部の住宅地の上昇率は3.4%。区として最も高かったのが台東区で4.8%、次いで豊島区4.7%、中野区4.6%と続く。そんななか、たった1年で上昇率8%と突出していたのが、あの綾瀬駅前『足立区綾瀬1丁目』である。
綾瀬といえば、「女子高生コンクリート詰め事件」のほか、対岸沿いには「東京拘置所」があり、オウム真理教の元代表の麻原彰晃、元死刑確定囚らが収容されていたことでも有名だ。地上12階建ての建物に刑事被告人の収容形容人数は3010人と日本最大規模の拘置所である。
コンクリ事件、東京拘置所と聞くだけで「治安が悪そう…」「住みたくない!」と思う人はいるかもしれない。
ちなみに2022年の足立区全体の犯罪発生率(※)は5.3%で綾瀬だけの犯罪発生率は8.4%。東京23区平均の犯罪率は5.7%なので、足立区自体は東京全体で見ると平均よりも下回るものの、綾瀬だけで見ると犯罪発生率がやや多いエリアということにもなる。
しかし、同時に駅前タワマン、始発駅、大手町へのアクセス、スーパーなど生活利便施設のほか、足立区の治安改善や「東京藝術大学」「東京電機大学」など6つもの大学誘致。さらに条件を満たすと給付型奨学金として1人最大3600万円もの子育て支援を受けれられるという政策まである。
そんな背景から、実際住んでいる人に聞くと、妥協して住んでいるのではなく、満足度も高いという。
※犯罪認知件数(2022年度)÷各区の総人口(2022年1月時点)×1,000人の犯罪発生率で計算
参照:令和4年 区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数/警視庁
住民基本台帳による東京都の世帯と人口(町丁別・年齢別)/東京都総務局統計部
足立区の町丁別の世帯と人口(令和5年)/足立区
綾瀬は住みやすい?実際の住人の声
まずは、綾瀬に住んでいる人の声を紹介しよう。
30代女性、主婦Aさんは言う。
「治安が悪いイメージがありましたが、実際に住んでみたらそんなことはなかったです。むしろスーパーマーケットやドラックストアもたくさんあり、価格も安い。
隣駅の北千住や亀有まで行けば大型ショッピングセンターもあり、生活しやすいです。ただ、一般的にイメージが悪く周囲からは心配されますが…」
40代男性、会社員Bさんも言う。
「職場が大手町にあり、通勤のしやすさと価格で探したらたどり着きました。漠然と悪いイメージが強かったのですが、買い物も便利だし、東綾瀬公園などの公園も多く、温水プールは子どもとよく利用します。
何より始発電車で座って約20分で大手町駅に着くのは助かりますし、激安の大衆酒場はたまりません…!」
20代男性、大学生Cさんも続ける。
「大学へ通学の良さと賃料が安価だったので。住み始めてから知ったのですが、同じ学校の子も多くいます。
格安スーパーや吉野家、松屋など、時間を気にせず1人で入れる安価なお店が多くて助かります」
実際に綾瀬だけでなく足立区政に関する世論調査では、「暮らしやすい」と感じている人が約8割にも上るという。このように住んだ人からは、満足度が高いのが綾瀬エリアなのである。
綾瀬が「居住価値」と「資産価値」を持つ最強の街である理由
コンクリ事件、東京拘置所のイメージをも押しのけた高い利便性とコスパの良さが評価されているといえる綾瀬エリア。実は「居住価値」と「資産価値」を兼ね揃えた最強の街だったといえる。
ここからはその理由を7つの項目に分けて解説していく。
1 交通利便性が高い
会社員のBさんも言うように、綾瀬は、東京メトロ千代田線で、大手町まで乗り換えなしの20分。1回乗り換えで上野まで20分、池袋も25分。“当駅始発”の電車もあり、座っていけるのも魅力的である。
隣駅の北千住で乗り換えれば、都心の主要拠点にも快適にアクセスできる。便利な複数路線に支えられ優れた交通利便性を確保しているのだ。
通常、家から駅までの徒歩表記については、ホームや改札からではなく駅舎の入り口からとされている。
そのため、大きい駅や地下鉄だと、駅舎入り口や地上入り口から改札を抜けてホームまで、物件の徒歩表記よりも実際は1~5分ほど余計に時間がかかる駅も多い。例えば、新宿駅や東京駅をイメージするとわかりやすいだろう。
その点、綾瀬駅は小さい駅なので、徒歩3分の物件なら実際に歩く分数とほぼ一緒である。ただし、小さい駅だけに駅の高架下辺りの道が狭く、自転車等との接触には注意したい。
2 生活利便施設が多い
綾瀬駅といえば、食料品などが手に入るスーパーマーケットやドラッグストアが豊富だ。例えば、イトーヨーカドー、東急ストア、ビッグ・エー、ベルクス、業務スーパーなど複数のスーパーマーケットのほか、マツモトキヨシなどのドラッグストアなどが徒歩圏に複数ある。しかも安価なお店が多い。
サイゼリヤ、デニーズなどのファミレス、吉野家、天丼てんや、富士そばなどチェーン店のほか、串のこたになどの大衆居酒屋も多く、日常的な外食にも便利な街である。
さらに、隣駅の北千住には丸井やルミネ、亀有にはアリオやビーンズなどの大型店もある。
北千住に行くには東京メトロ千代田線を利用していくが、運賃は東京メトロの初乗り運賃170円ではなく、『特定運賃』としてJRの初乗り運賃に合わせた150円(ICカード146円)で行ける。これもちょっとしたお得ポイントではないか。
3 子育て環境の良さ
綾瀬駅周辺を見ると、ゴミゴミと込み入った印象を受けると思うが、実は都内でありながら、歩いてすぐ行けるところに東綾瀬公園などの大きな公園や緑地が多く、自然豊富でのびのびと子育てできる環境である。
東綾瀬公園は、駅の北側からUの字の遊歩道のように続いているのが特徴だ。公園は2キロほど続き、気持ちのよい散歩コースにもなる。途中には区営の温水プールやテニス場、野球場などグラウンドもあり、安価に使用することもできる。
また2022年4月には、綾瀬小学校の校舎がリニューアルした。新校舎の授業では生徒がタブレットを利用できる環境を整備するなど、ICT(情報通信技術)の活用も積極的だ。
下町情緒にあふれ、公園などの自然環境も豊富、子育て支援に新校舎と子育て環境にも優れている。
4 足立区の戦略構想が止まらない
綾瀬だけではないが、足立区は人口減少に伴い学校の統廃合を進める一方で、文化、芸術、新産業を誘致するという戦略構想を掲げている。
具体的には、平成5年の「放送大学」を皮切りに、平成18年の「東京藝術大学」、平成19年「東京未来大学」、平成22年「帝京科学大学」、平成24年「東京電機大学」、令和3年「文教大学」と6つの大学の招致に成功している。
若者が行きかう街となりイメージが一新したのも大きい。若者が青春を過ごし、土地勘ができたエリアに将来マイホームを持つことも十分考えられ、非常にうまい政策だと感じる。
また、私大医学部に進学したら3600万円の奨学金支給という子育て支援も話題になり、子育て世代への周知にも一役買っている。既に第1期20人の枠に192人の応募があったという。
5 再開発で資産価値の上昇が見込める
綾瀬駅前では、さらなる街の変化も見られる。
東口を降りてすぐの駅前では427戸が入る地上32階建ての高層マンション「シティタワー綾瀬」の建設工事が進んでおり、2025年に完成予定。低層階には地域のにぎわいを創出する施設、店舗なども配置される見込みとなっている。
デベロッパーによると、427戸に対して既に1500件以上の問い合わせがあるという。
目安として72㎡の2LDKで9000万円台半ばから後半での売り出しが想定されているというが、都心が非常に高くなっている現状を受けると、『70㎡の新築の“タワマン”が1億円以内』で買えるならと割安感を持っている人も多いという。
さらに、隣駅の北綾瀬駅の再開発も好影響を与えそうだ。
それは、綾瀬と北綾瀬は足立区が進める未来につながるまちづくりプロジェクト「エリアデザイン」の核となるエリアのひとつとされ、さらなる発展と将来性が期待されているからである。
北綾瀬は、3両編成の短い列車だけが止まる駅だったが、2019年3月からホーム延長に伴い10両編成列車との直通運転を開始。2020年12月には駅北側に出入り口が新設された。
そして、2021年には北綾瀬駅高架下にワイズマート、キャンドゥ、モスバーガーなど12店舗が入る「マーヴ北綾瀬リエッタ」がオープンした。
2021年4月には、足立区と三井不動産による北綾瀬駅周辺地区のまちづくりに向けて覚書が締結され、駅周辺の再開発が進められている。
6 手ごろな価格帯の中古マンションが多い
これだけの好条件がそろっているにもかかわらず、マイナスイメージ先行のおかげで現状手ごろな中古物件が多い。
綾瀬駅周辺で物件を探すなら築20年超のリノベ物件が狙い目だ。駅から徒歩圏内にファミリーで住める60㎡以上で、3000万台の中古マンションが複数ある。なかには2000万円台の物件も見られる。
【関連記事】>>足立区の中古マンションランキング・トップ100! 北千住、綾瀬、五反野などの購入・売却価格や値上がり率は?【完全版】
7 足立区には、まだまだ伸び代がある
綾瀬は、不動産業者などのプロ(業界関係者)から見ると上昇すべくして上昇したと納得のエリアである。足立区はまだまだ伸び代があると注目されている。
そんな足立区で注目されているのが、まず北千住だ。穴場の街ランキング1位、東京メトロ日比谷線沿いで住みやすい街ランキング1位など、近年大注目されるエリアだ。
東京メトロ日比谷線、千代田線、JR常磐線、東武スカイツリーラ
駅前には、「丸井」「ルミネ」の商業施設に加え、活気があふれる商店街が連なる街並みも魅力的だ。
しかし、これら交通利便性、買い物のしやすさを兼ね備えた結果、足立区のなかでも北千住だけは別格という立ち位置になってしまった。
30階建て「千住ザ・タワー」が坪単価400万円台後半をつけて、足立区初の「億ション」と話題になったのを覚えている方も多いのではないだろうか。
そう残念ながら……もう穴場の街とはいえなくなってしまっている。それでも魅力的な街であることには変わりない。北千住でマンションを探したいという方は、徒歩10分前後、築20年以上のリノベ物件が狙い目だ。築浅が良ければ「千住大橋」の周辺がおすすめである。
そして、その次に熱い視線が注がれているのが綾瀬・北綾瀬エリアなのである。
綾瀬は「資産価値」「居住価値」「職住接近」がそろう希少エリア
とうとう都内のマンション価格が「バブル超え」となり、庶民には手の届かない価格になってしまったが、「それでも東京23区に住みたい」という人は多いだろう。一般的な年収層でもマンションが買える「狙い目エリア」が、まさに今、足立区であり綾瀬なのだ。
当然ながら、綾瀬も頭文字はAだが、都心「3A地区」といわれる「赤坂」「青山」「麻布」のようなブランド力はない。都心3区といわれる千代田区・中央区・港区でもない。
しかし、政治や行政の中枢、ビジネスセンターや、国内有数の商業地がある都心3区に近くアクセスがとてもいい。それにもかかわらず、他のエリアより安価、そして住環境と将来性を考えると、とても現実的なエリアだ。
いまの綾瀬は、綾瀬に住みたいというより、「職場から通勤圏で探した」「予算と広さで選んだ」「新築タワマンに住みたい」という人も多いだろう。
もし、イメージだけでマイホームの候補エリアから外れているのなら、実にもったいない話だ。急上昇した住宅地の綾瀬は、下町情緒にあふれ、一人暮らしからファミリー層まで幅広い人が暮らす街。これから価格上昇も期待できる「資産価値」と「居住価値」を確保し、「職住接近」をも兼ね備えた希少エリアなのである。
「百聞は一見に如(し)かず」。一度気になる物件を内見してみてはいかがだろうか。
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