「定期借地権マンション」は、相場の2、3割安い!
借地期間は長期化、70年が主流に

2022年12月21日公開(2024年4月3日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

マンション価格が上がり続ける中、割安感のある「定期借地権マンション」が人気だ。所有権を持たず、一定期間土地を借りるタイプのマンションだが、人生100年時代に対応し、借地期間を70年とするマンションが増加している。定期借地権マンションのメリットや、気をつけておくべき点などを確認しておこう。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

所有権マンションの7割から8割程度で購入が可能になる

首都圏では、「定期借地権マンション」が増えている(イメージ写真/出典:PIXTA)

「定期借地権マンション」というのは、一般的な所有権マンションと異なり、一定期間土地を借地し、その上にマンションを建てる仕組み。借地期間中は自由に住むことができるが、売却や転貸については地主の許可が必要で、借地期間終了時には、更地にして地主に返還する必要がある。

 借地期間中は地主に地代を払う必要があるが、その分、土地に関しての固定資産税や都市計画税などはかからない。一方、定期借地権マンションでは、借地期間終了時に更地にするための資金を積み立てていくことになる。

 借地であるため、分譲会社としては土地取得費がかからない分、販売価格を安くすることができる。立地などにもよるが、所有権マンションの相場価格に対して、7割から8割程度の価格になることが多いといわれている。通常の所有権マンションとの違いは図表1にある通りだ。

 定期借地権マンションの場合、借地期間は50年以上で、これまでは50年とする物件が多かったが、最近は人生100年時代に対応して、従来の50年よりも長い70年とする物件が増えている

図表1 一般的な所有権マンションと定期借地権マンションとの違い

  定期借地権マンション 所有権マンション
権利の存続期間 一般定期借地権で50年以上 期限なし
地代 借り手が地主に支払う 必要なし
物件価格 所有権マンションの70%~80%程度 土地付きの価格
固定資産税・都市計画税 土地に関する税金はかからず、建物に関する固定資産税・都市計画税がかかる 土地、建物に関する固定資産税・都市計画税がかかる
売却、転貸など 地主の許可が必要 自由に行える
定借期間後 期間満了時に更地にして地主に返還する ――
*ほか 更地にするための費用を積み立てる ――

価格上昇のなかで、定期借地権マンションは増加傾向

 この定期借地権制度は、1992年に施行された「借地借家法」によって誕生した。価格を安くできることもあって、2000年前後には全国で年間1000戸から2000戸程度供給されたが、その後マンション市況が停滞し、価格も下がってきたことから、定借物件の魅力が低下。  

 2010年代にはほぼ年間1000戸以下に減少した。年によって年間1000戸を超えることがあっても、ほとんどの年は1000戸以下で推移してきた。

 それが、2022年に入って、増加傾向に転じているといわれる。周知のようにマンション価格が急速に上昇し、多くの人にとってマンション購入が難しくなっていることに対応、少しでも価格を安くできる定期借地権マンションを供給しようとする動きが広まっているようだ。

図表2 定期借地権マンションの供給件数と供給戸数の推移 

「ザ・パークハウス南麻布」など多彩な定期借地権マンションが登場!

 特に、価格水準が高く、供給量の多い大都市部で定期借地権マンションは増加傾向が目立っている。

 定期借地権マンションのこれまでの累計供給数をみると、東京都、愛知県、大阪府での供給が目立っている。大阪府より愛知県の方が少し数が多いのは、愛知県はマンションより一戸建てのニーズが強く、その一戸建てに対応するためにも、価格の安いマンションを供給したいとする分譲会社が多いためではないだろうか。

 定期借地権マンションの数は、やはり価格が全国で一番高く、供給数が多い東京都がトップであり、最近は、その東京都で多彩な定借マンションが供給されつつある。

 たとえば、三菱地所レジデンスは、東京都港区南麻布という高級住宅地で、総戸数26戸の定借マンション、「ザ・パークハウス南麻布」を販売している。専有面積が40㎡台から90㎡台で、価格帯は7000万円台から2億円台という高額物件だ。

 それでも、三菱地所レジデンスによると、「周辺相場よりは1割から2割程度安い水準になっています」としている。定借マンションは先に触れたように、相場より2割から3割安い物件が多いといわれるが、南麻布という人気エリアだけに、そこまで安くしてはいない。それでも、富裕層のなかには麻布に住みたいと希望する人が多く、順調に販売が進んでいるようだ。

図表3 定期借地権マンションの都府県別供給数の累計(単位:戸)

歴史的建造物に関連した定期借地権マンションも人気に

 神社などの歴史的な建造物の敷地内に建てられる定期借地権マンションもある。由緒ある土地の地主は、土地を売却することを好まないことが多い。そのため、所有権ではなく、定期借地権マンションとなることがあるのだ。

 東京都千代田区の東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄三田線・都営地下鉄新宿線の「神保町」駅徒歩3分の「レ・ジェイドクロス千代田神保町」は、その一つ。鉄筋コンクリート造地上14階建て、総戸数50戸の定期借地権マンションで、千代田区景観まちづくり重要物件に指定されている歴史的建造物「東方学会本館」の隣地に建てられる。

 また、東京都豊島区の妙義神社境内整備計画の一環として建設された「リビオ駒込妙義」は、JR山手線「駒込」駅徒歩5分、鉄筋コンクリート造地上9階建ての定借マンションで、総戸数は45戸。隣接する神社の社殿やその社務所に配慮した外観デザインで、2021年に販売が行われ、2022年7月に竣工した。

これからは借地期間70年以上の時代に

 また、首都圏で人気となった定期借地権マンションのひとつが、「ドレッセタワー町田グランベリーパーク」だ。東京都町田市鶴間三丁目にあり、東急田園都市線「南町田グランベリーパーク」駅徒歩1分で、駅とペデストリアンデッキでつながった利便性の高い場所にある、鉄筋コンクリート造34階建ての超高層マンションだ。

 こちらは借地期間が2094年3月31日までで、竣工予定は2024年なので、借地期間が70年になる。

 先の「レ・ジェイドクロス千代田神保町」も借地期間は2095年5月まであり、やはり70年以上の設定となっている。また「リビオ駒込妙義」も借地期間70年となっており、人生100年時代の今、借地期間70年以上が主流のようだ。

 ここで、取り上げた物件のなかでは、「ザ・パークハウス南麻布」が借地期間50年の設定だが、三菱地所レジデンスとしては、本来70年の設定にしたかったものの、地主の意向により、50年とせざるを得なかったといわれている。

 借地期間70年であれば、30歳で買っても100歳まで居住できるのだから、安心して人生をまっとうできそうだ。これからの定借マンションは70年の時代になっていくと思われる。

 地主の承諾が必要など売却にはいくつかの制約があるが、マンション価格が高騰する今、借地権物件の購入が一つの選択肢になりそうだ。

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