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古い団地がリノベーションで、時代に合わせた住まいにシフト! いま人気の「新しい団地のあり方」とは?

2024年1月31日公開(2024年2月2日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト
団地リノベーション物件が熱い

建物の老朽化、住む人の高齢化でかつての活力を失った大規模な住宅団地。空室が目立ち、商店街や買い物施設、飲食施設などが次々と閉鎖され、シャッター街となっている団地も増えている。それが、いま、各種のリノベーションによって様変わりし、特に若い人たちの間で評判になり、注目度が高まっている。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

かつての団地は、憧れの的から都会のなかの過疎地に

 ほとんど木造の戸建て住宅中心だった1950年代から1960年代にかけて。当時は住宅難の時代であり、狭い住宅が多く、各種設備も旧式のものがほとんどの貧しい住まいだった。そこに、鉄筋コンクリート造で、システムキッチンや水洗トイレなど、当時としては先進的な設備を採用した大規模な住宅団地が登場したのだから、たいへんな人気を集めた。

 団地は、全体の敷地が広く、建物と建物の間に公園や植栽などが設けられ、ゆとりある空間が形成されたのも人気に拍車をかけ、物件によっては応募の度に何倍もの希望者が集まり、なかなか入居できない団地もあった。

東京都江東区辰巳一丁目の都営辰巳団地
最新設備を備えた団地は、かつて憧れの的だった(出典:PIXTA)

 それが長い年月の間に、外観は古くさくなり、ひび割れなどの老朽化が目立つ建物が増えてきた。

 住む人も高齢化し、エレベーターのない団地がほとんどなので、足腰が弱くなった高齢者は次々と団地を離れていった。若い人たちも進学や就職、結婚などで団地を出て行き、人口が減少、団地内の買い物施設や飲食店なども閉鎖や退去が続き、すっかりさびれた団地が目立つようになってきた。

 かつて多くの人が憧れた団地の面影は失われ、住まいとしてほとんど顧みられなくなってしまったのだ。団地の多くは活気にあふれていたのが、過疎地化してしまった。

いま、団地の持つポテンシャルが見直されている

 それがいま特に、若い世代の間で団地住まいが注目されるようになっているのだ。その最大の要因は、団地の持つポテンシャルを活用して、潜在力を引き出すリノベーションによるところが大きい。

 居住部分の専用部は間仕切りや壁紙、古くさい設備などを取り除いて、いったんスケルトン状態にしてから、今風のおしゃれな間取りにして、最新の設備を導入した住宅が増えている。

昭和のさびれてしまった団地にある公園
さびれてしまった団地でも、公園や広場が多く、実はポテンシャルが高い(出典:PIXTA)

 団地には、公園や緑などのほか、建物内にも集会所などの各種の共用施設がふんだんに設けられている物件が多い。共用施設などは住民の減少などでほとんど活用されないようになり、公園なども子どもがいなくなって、さびれてしまった。

 しかし、それがリノベーションによって最新仕様に様変わりし、単体で開発されるマンションなどに比べると格段にゆとりがある、魅力的な空間に変身した。その結果、そこに住むこと、生活することが「エモい」とする若い世代が増えているのだ。

人気を集めるMUJI×URの団地リノベーション

 そのイメージアップに大きく貢献したのが、MUJI×URの団地リノベーションプロジェクトといわれる。

 木造住宅や住設機器、雑貨などを扱う無印良品は、若い世代から高い支持を集めているが、その無印良品が、UR都市再生機構とタッグを組んで、賃貸部分の居室のリノベーションに取り組んでいる。

 2012年からスタートし、2022年末までに全国の61団地で、1200戸以上のリノベーションを手がけてきた。写真にあるような無印らしいシンプルでおしゃれなプラン、インテリアになり、高い人気を集めているのだ。

MUJI×UR花検見川リノベーション事例
MUJI×URのリノベーション事例(千葉県千葉市花見川団地、画像:公式ホームページ
MUJI×URのリノベーション事例(東京都多摩ニュータウン永山団地)
MUJI×URのリノベーション事例(東京都多摩ニュータウン永山団地、画像:公式ホームページ

 いったんスケルトンにしてから最新の住まいに作り替えるので、家賃設定は周辺相場よりやや高くなるケースが多いが、それでも人気は高く、募集すればすぐに入居者が決まるという。

  こうした居住部分のリノベーションにとどまらず、無印良品では団地全体の丸ごとリノベーションにも取り組むようになっている。

 2021年から千葉県千葉市の花見川団地の商店街リノベーションに取り組み始めており、間もなく完成する予定。地元関係者は、「団地の活性化に貢献するのではないか」と期待を高めている。無印良品では、花見川団地のほか首都圏や近畿圏の4団地で、団地丸ごとリノベーションをスタートさせており、団地人気の高まりをいっそう促進することになりそうだ。

リノベーションで、ペット可賃貸にする団地も登場

 団地リノベーションの動きは、UR×無印によるプロジェクトだけではない。たとえば、三重県四日市市の「ビレッジハウス笹川」は、総敷地面積15万㎡、61棟1726戸の大規模団地「笹川団地」をリノベーションしたものだ。

 笹川団地は築53年が経過して、外観には汚れが目立ち、居室も古くなっていたのだが、賃貸住宅の管理会社であるビレッジハウス・マネジメント株式会社がURから居室を買い取り、リノベーションを施した上で自社管理の賃貸物件とした。

ビレッジハウス笹川外観
リノベーションでペット可賃貸へと生まれ変わった「ビレッジハウス笹川」(画像:公式ホームページ

 賃貸住宅ではペット不可がほとんどだが、リノベーション後にはペット飼育もOKとし、敷地内にドッグランを設置。

 また、専属管理人を置き、近くの工場などで働くブラジル人を念頭にポルトガル語にも対応するようになった。オプションでエアコン、ガスコンロ、温水洗浄便座、モニター付きドアホンなども設置可能としている。

 間取りプランは2DKから4DKまで幅広く、38平方メートル台の2DKは家賃3万円から、40平方メートル台の2LDKは3万4000円からなどとなっている。家賃相場は、周辺物件より格段に安い。現在も住居のリノベーションを進めており、今後、現在空室となっている約600戸がリノベーションされる予定だ。

団地の特性を活かして、住人同士の交流を促す取り組みも

 このような団地リノベーションの浸透を象徴するのが、2023年度グッドデザイン賞だ。団地におけるリノベーションの実績3件が受賞している。

 UR賃貸住宅の管理・修繕を行ってきた日本総合住生活が、団地内の遊休施設を再活用したコミュニティー施設として運用、団地の活性化を促進したケースが2件、UR都市機構が団地の外壁修繕を実施、きめ細かな景観デザインづくりを行ったことが評価されたケース1件の合計3件だ。

約1000冊の蔵書を備えた共用施設を新設

 日本総合住生活が手がけたリノベーションのひとつは、「読む団地」として、書籍を通して住民同士が交流できるような施設を設置、団地内の活力を取り戻すことに成功した東京都足立区の「大谷田団地」だ。

大谷田団地7号棟
大谷田団地7号棟に設けられた住民用ラウンジ「BOOK MARK」(画像:公式ホームページ

 共用施設として新たに「コミュニティラウンジ」を設けて、約1000冊の書籍が並ぶ本棚の前で、住む人たちがのんびりとくつろいだり、ごはんを食べながらおしゃべりなどができるようにした。また、一部をシェアハウスとしてリノベーションすることで、より住民同士の交流が図れるようにしている。

居住者だけでなく周辺住民が利用できる交流の場としても

 いまひとつが、「"団地キッチン"田島」で、埼玉県さいたま市の田島団地の隣接地に「食」をテーマにしたコミュニティー拠点を設け、団地内外の人たちが交流できるようにしている。

埼玉県さいたま市「団地キッチン」の様子
田島団地の「団地キッチン」では、月1回、ワークショップやマルシェが開催されている(画像:団地キッチン田島プレスリリース

 シェアキッチン、カフェ、ブルワリー(クラフトビールの醸造所)が設置され、誰でも自由に料理をつくったり、食べたりできるようになっている。料理教室としてみんなで楽しむことができるし、販売用の商品づくりを行うこともできる。また月1回、埼玉の旬を味わえるマルシェが開催され、地域のヒト・モノ・コトと出会える。

 外観もおしゃれなレストランのようなイメージに転換、団地内外から多くの人が集まるようになって、活気が戻っている。

 どちらも団地内のゆとりある共用施設を活用したもので、団地の持つポテンシャルが活かされた事例といっていいだろう。

団地人気はあらゆる世代に広がっている

 築40年、50年と経過した団地は、そのまま放置するとますます老朽化、住人の高齢化が進み、街の活力が失われてしまうが、共用部、専用部をリノベーションすることで、人が戻り、新たな街としての魅力が生まれる。

 もともとの団地の存在を知らなかった若い世代にとっては、それが「エモい」ということになるのだろう。若い世代だけではなく、多くの世代で団地に関心を持つ人たちが増えており、団地への注目度がますます高まりそうだ。 

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