ヴィンテージマンションと呼ばれる、築年数が40年や50年と長くなっても資産価値が落ちないマンションがある。高すぎて実際のヴィンテージマンションと呼ばれる物件は買えなくても、なぜヴィンテージマンションになったのか、その条件を知れば、それに近い物件を取得して、資産価値の向上が期待できるかもしれない。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
多くの人が憧れるヴィンテージマンション
ヴィンテージの語源を探ると、フランス語の「vendange」で、ワインづくりにおけるぶどうの収穫から瓶詰めまでの工程を意味し、転じて、ぶどうの収穫年、当たり年のことがヴィンテージと呼ばれるようになった。
最近では、ワインだけではなく、年代物の楽器、カメラ、衣料品、クルマなどの古くて希少性の高いものもヴィンテージと呼ばれるようになり、マンションにおいても、築年数が長いのに、希少性が高く、多くの人が憧れるマンションが、ヴィンテージマンションと呼ばれるようになっている。
首都圏のヴィンテージマンションともなれば、1億円はおろか、物件によっては5億円、さらには10億円を超えるものもあり、一般の人では簡単には手が届かない。逆にいえば、だからこそ多くの人が憧れる住まいでもある。
しかし、実際にヴィンテージマンションを買うことはできなくても、なぜヴィンテージマンションになったのか、その条件を知れば、それに近い物件を見つけて購入し、将来の資産価値の上昇が期待できるかもしれない。
通常は築年数が長くなれば価格は大幅にダウンする
最近は、中古マンション価格の上昇によって、ある程度築年数が経過しても一定の価格を維持できるようになっているが、通常は、築年数の長さと資産価値は反比例する。
東日本不動産流通機構によると、首都圏の中古マンションの2022年7月~9月の築年数帯別の成約価格の平均は図表1のようになっている。
図表1 首都圏中古マンションの築年数帯別の成約価格
不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンションの2022年度上半期(4月~9月)の平均価格は6,333万円だが、築5年までの築浅物件の平均価格は6,752万円と、新築価格の平均を上回っている。
特に都心などの人気エリアでは新築マンションの供給が難しくなっており、築浅の中古マンションが、エリアの新築相場以上の価格で取引されているケースが多いのだ。
しかし、築年数が経過するにつれ、中古マンション価格は急速に低下していく。築15年までは5,000万円台になり、築25年までになると4,000万円台に下がり、築30年では3,000万円台に、築30年以上では2,000万円台に下がる。
以下の記事では、築年数別の売却価格について詳しく解説しています。
>>【マンション売却】築10年で売ると損か得か?
>>【マンション売却】築20年は売り時?
>>【マンション売却】築30年たつと売りにくくなる?
40年、50年経っても、分譲時価格より高い資産価値
築30年が経過すれば、築5年以内の築浅物件に比べて、資産価値は3分の1近くまで低下するわけだ。
ただ、これはあくまでも平均であって、なかには築40年、50年が経過しても価格が下がらず、むしろ分譲時の価格を大幅に上回る価格で取引されているヴィンテージマンションがある。
よく知られている物件としては、次のようなマンションが挙げられる。
図表2 有名なヴィンテージマンション
マンション名 | 築年 |
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広尾ガーデンヒルズ | 1983年 |
フォレストテラス松濤 | 1999年 |
麻布霞町パークマンション | 2000年 |
ドムス南青山 | 1988年 |
ルミエール青山 | 1969年 |
購入希望のウエイティング客が多数
たとえば、「広尾ガーデンヒルズ」は、1983年の竣工で、分譲価格は坪単価200万〜400万円台だったが、現在はそれを上回る価格帯で取引されている。
最近の売却事例をみると、専有面積80㎡台の2LDKの売出価格が2億1,800万円だから坪単価は約900万円に達する。これでほんとに客が付くのかと疑問を感じるが、そうではない。
大手不動産会社のホームページによると、売却物件のウエイティング客のなかには、専有面積120㎡程度の物件を4億円程度で購入したいと考えている購入希望者がいるそうだから、坪単価1,000万円超でもOKということだ。
敷地が広く、建物も多いので、物件の条件によって価格が大きく異なるとはいえ、分譲時価格を大きく上回る水準で取引されているのは間違いない。
「麻布霞町パークマンション」は、2000年の竣工とヴィンテージマンションとしては比較的新しいほうだが、専有面積152㎡台の3LDKが6億4,800万円で売り出されている。
さらに、1999年竣工の「フォレストテラス松濤」や1988年竣工の「ドムス南青山」などは、総戸数が少ないため、なかなか売り物件が出ず、物件が出れば言い値でも購入したいとするウエイティング客が多数存在とするといわれている。
ヴィンテージマンションに共通する条件とは
では、なぜこうしたマンションはヴィンテージマンションとなったのか。その主な条件を整理すると次のようになるだろう。
ヴィンテージマンションに共通する条件
① 魅力的で人気の高いエリアにある
② 築年数が経過しても劣化せず良好な状態を維持している
③ 管理が良好で細部にまで配慮が行き届いている
④ エリアのランドマークとなる優れたデザインが採用されている
⑤ 同一エリアの同条件のマンションに比べて高値で取引されている
魅力的で人気の高いエリアにある
まず、「マンションの価値は立地で決まる」といわれるほど、どこに立っているのかが絶対条件になる。渋谷区の広尾、松濤、港区の3A(赤坂、青山、麻布)、目黒区目黒など、誰もが憧れる人気住宅地に建つマンションであることが重要だ。
人気エリアの物件であれば、最寄り駅からの徒歩時間はさほど問題にならない。ヴィンテージマンションにおいては、閑静な住宅地であることも重要なので、最寄り駅の雑踏から離れているほうがいいケースもある。
築年数が経過しても劣化せず良好な状態を維持している
次に、維持管理状態が良好であることも大切。経過年数が長くなれば、所有者、建物双方の高齢化が進んで管理が行き届かない面も出てくるものだが、ヴィンテージマンションではそれはあり得ない。
所有者は富裕層であり、高齢化しても管理費や修繕積立金の支払いに困るようなことはない。定期的な大規模修繕が実施されているのはもとより、日々の清掃活動などの維持管理状態が充実していることが欠かせない。
これは③「管理が良好で細部にまで配慮が行き届いている」にも共通する。コンシェルジュサービスなど、住む人のさまざまなニーズに対応してくれる管理が充実していることが、入居者の満足感を高め、長く住みたいという思いにつながる。
エリアのランドマークとなる優れたデザインが採用されている
次に、エリアの象徴的な建物として、ランドマークとなる優れたデザインが採用されているマンションであることも見逃せない。
外観デザインに関しては、ある程度流行があるものの、それに流されない時代の変化に耐えられるデザインとして、入居者だけではなく、周辺に住む住民にも愛される建物であること。
小規模物件であっても、タクシーの運転手にマンション名を言えばエントランスまで連れていってくれるようなマンションであることが大切だ。
将来のヴィンテージマンションを先取りする
以上のような条件がそろえば、周辺のマンションに比べて、高値で取引される可能性が高い。価格でマンションの価値が決まるわけではないが、重要な物差しであるのはいうまでもない。
ヴィンテージマンションのなかには、40年、50年前のバブル時の分譲時価格より現在は高い価格で取引されているマンションが多い。それも、先述の「広尾ガーデンヒルズ」や「麻布霞町パークマンション」のように、分譲価格を大幅に上回るケースが少なくない。
すでにヴィンテージマンションとなっている物件については、数億円することが多いため購入は簡単ではない。しかし、先に挙げたヴィンテージマンションの共通条件に合致するようなマンションはほかにもあるはず。
そうした魅力的なマンションを取得して、将来のヴィンテージマンション化、資産価値の向上を期待するのもマンション購入の楽しみではないだろうか。
【関連記事はこちら】>>ヴィンテージマンション価格ランキング・ベスト10
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