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マンションの修繕積立金は10倍増額されるケースも! 資金不足で劣化リスクを抱える建物が増えている

2024年2月1日公開(2024年1月31日更新)
福崎剛:フリージャーナリスト

全国の分譲マンションでは「修繕積立金」が不足し、老朽化しても資金不足で適切な修繕工事ができないリスクが高まっている。不足の要因として、積み立て途中の負担金の過度な増額にあるとされており、国土交通省はその対策として、増額幅の目安を示すことを検討するという報道があった。(フリージャーナリスト:福崎剛)

修繕積立金が不足するマンションのリスクとは

マンションは新築から15年前後で大規模修繕が必要
マンションは新築から15年前後で大規模修繕が必要(出所:PIXTA)

 分譲マンションでは、建物の維持管理のための修繕積立金を設定している。その修繕積立金が不足して、健全な建物の維持管理ができない劣化マンションが増加するリスクが高まっており、社会問題となりつつある。

 築40年以上のマンションは2022年時点で125万戸を超え、2032年までに250万戸を超えると予想される。こうした築年数を重ねたマンションは、安全で快適に住まうために建物の維持管理が必要で、長期修繕計画に基づいて修繕工事を実施する必要がある。

 ところが、修繕工事のための資金が不足しているマンションが増えている。修繕工事ができなくなれば老朽化は加速し、最悪の場合は居住できないほど劣化するリスクもある。

国土交通省が修繕積立金の値上げ幅の目安を示す

 修繕工事のための資金が不足している要因として、修繕資金の積み立て途中の増額幅が大きすぎるため、支払い困難に陥ってしまったり、そもそも値上げのために必要な住民の合意が得られないことにある。

 そこで、国土交通省が修繕積立金の値上げ幅の目安を示すとともに、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」などにも負担金の目安を盛り込むことを検討し、2024年の夏までに対策をまとめるという報道があった。ここで簡単に解説してみよう。

 修繕積立金の不足のトラブルが最初に起きるのは、新築から15年前後の「大規模修繕工事」を前にした頃である。

 大規模修繕工事には、建物の防水や壁、廊下、外構の補修のほか、設備機器の交換も含まれる場合もあり、建物の規模や設備内容によって工事費も大きく異なる。

 国土交通省の「マンション総合調査(平成30年度)」によると、長期修繕計画修繕積立金の状況について「不足していない:33.8%」「不足している:34.8%」「不明:31.4%」との回答があり、およそマンションの35%が修繕積立金の残高が不足していると認識している。

出典:国土交通省「マンション総合調査(平成30年度)」から

 しかし、これはすでに作成された長期修繕計画に対しての話であり、実際に修繕工事をする場合は、資材や人件費の高騰を考慮すれば、必要な修繕費との間に大きな開きが出ることは必至。長期修繕計画は机上の計画であり、個々のマンションに必要な修繕内容が異なるのだ。

 実際に修繕積立金がいくら必要なのかは明示しにくいが、多くのマンションで当初に設定されていた修繕積立金の金額では不足するとされている

 そのため、以下の3つから不足分を補う方法を選び、修繕工事を行うことになるのである。

①「段階的に値上げ」をする
②修繕工事のタイミングで各戸から「一時金徴収」をする
③修繕積立金の不足分を金融機関から「管理組合で借入金をする」を選び、修繕工事を行う

修繕積立金の積立方式を見直そう

 修繕積立金の値上げは、管理組合の総会で変更決議が必要になり、簡単には値上げできない。

 しかし、多くの分譲マンションは、デベロッパーが修繕積立金を低く抑えて売り出している場合がほとんどで、新築なら数千円程度になっていることも少なくない。これがやがて修繕積立金不足を引き起こす原因でもある。

 では、修繕積立金をどう増やしていくのがいいか。修繕積立金の積立方式は大きく分けて「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2つがある。

均等積立方式とは

 毎月の修繕積立金を一定額にし、積み立てる方式が「均等積立方式」で、以下のメリット・デメリットがある。

メリット:定額負担として設定するため、安定的な修繕積立金を確保できる

デメリット:段階増額方式より多くの資金管理が必要。長期修繕計画の見直しで更に増額が必要な場合もある

 国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、例えば、築後30年間に必要な修繕工事費を戸当たり522万円としたときに、30年間均等に積立金を確保するには月額14,500円/戸(年額174,000円/戸)に設定しておく必要がある(下のグラフ参照)。

均等積立方式のイメージ
出典:「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(平成23年4月/令和3年9月改訂/令和5年4月追補版)」国土交通省から

 築後30年間に必要な修繕工事費は机上の計算のため、実際には老朽化の進捗とそのマンションで優先すべき修繕工事を見極めて、その都度、修繕工事の見積りを取る必要がある。

段階増額積立方式とは

 マンションによっては、分譲時に「段階増額積立方式」にしている場合もある。段階増額積立方式とは、当初の修繕積立金を低く抑え、例えば5年サイクルで修繕積立金を段階的に増額改定していく方式になる。メリット・デメリットは以下の通りだ。

メリット:修繕資金のニーズに応じて積立金を徴収するため、当初の負担額は小さい

デメリット:将来の負担増を前提とするため、増額しようとする際に区分所有者の合意を得にくい

 国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、例えば、築後30年間に必要な修繕工事の戸当たりの総額が522万円とすれば、購入時に修繕積立基金として36万円徴収し、初年度の修繕積立金を月額6,000円/戸(年額72,000円/戸)とする。

 そして、5年置きに月額3,000円/戸ずつ段階的に値上げしていき、築26年〜30年目には、月額21,000円/戸(年額252,000円/戸)まで増額して必要な修繕工事費用を確保しようという方式である。

修繕工事積立金が不足するような徴収方式はいち早く改善する必要がある

 では、どちらの積立方式がいいのだろうか? これは各人の居住スタイルによっても最善の方法は変わってくる。

 例えば、新築から10年程度で、売却・転居を想定しているのであれば、当初の修繕積立金が低い「段階的増額積立方式」のほうが負担が小さくなるため、メリットがある。

 しかし、永住するつもりで購入・居住しているのであれば、年金暮らしになったあとも積立金が一定の負担で済む「均等積立方式」が安心だろう。

 いずれにしても、紹介した事例は築後30年間の修繕工事総額を設定したうえでの戸当たりの積立額を算出したもので、各マンションによって築後30年間の修繕工事代金の総額はそれぞれ違う。

 そのため、例えば築20年のマンションの修繕積立金を戸当たり月額いくらにすればいいのかは簡単に算出できない。立地や階数、付属設備や構造によって修繕工事代金も変わるからだ。

 修繕工事積立金が不足するような徴収方式はいち早く改善する必要があるが、急激な増額によって区分所有者が支払えなくなれば元も子もない。国土交通省によると、計画当初から最終年までの増額幅は平均3.6倍で、10倍を超えるケースもあるという。

 そこで、国土交通省が修繕積立金の増額幅の目安を示そうとしているのである。

 確かに、修繕積立金が月額6,000円/戸のマンションで、例えば、修繕積立金を月額3万円/戸と5倍に増額すれば修繕工事資金は潤沢になるかもしれないが、滞納者が増えるリスクは大きくなる。そうなれば、修繕積立金を増額した意味がなくなる。

 なお、均等積立方式だからといって資金不足にならないとは限らないことは留意しておきたい。

管理組合は機能しないことを前提に「均等積立方式」に変更する

 修繕積立金の増額は、管理組合による決議を経る必要がある。しかし、修繕積立金の不足を問題視する以前に、多くの分譲マンションでは管理組合が機能不全を起こしている。

 管理に関しては管理会社に全面委託しているケースが多く、残念ながらほとんどの区分所有者は管理組合の活動に対し"厄介事を押しつけられた"程度の認識しか持てない。

 そのため、管理組合の役員のなり手すら不足し、管理費や修繕積立金の資産チェックの業務を放置せざるを得ないケースも多いのである。

 すべての管理組合がそうとは言えないが、職業や年齢、ライフスタイルも異なる人たちがマンションという現代の長屋に集っているだけに過ぎず、簡単に合意形成がはかれるとは考えにくい。近年では外国人の購入が増えたことで、ますます合意形成は難しいといわれる。

 実際、修繕積立金の増額に関しても意見は分かれ、合意形成できずにトラブルになるケースが増えているといわれる。

 そのため、分譲時に初期の負担が小さい段階的増額方式のマンションでは、早い段階で積立金額の見直しや積立方式を変更しておきたい。

 とはいえ、管理組合が機能していない場合、積み立て金額の変更や積立方式の変更を提案しても合意形成がはかれずに、やがて資金不足になることは明らかだろう。

 そのため、国土交通省では安定的な積立による修繕工事費用を確保できる「均等積立方式」を推奨しているというわけだ。管理組合が機能していないマンションこそ均等積立方式に切り替えて、修繕積立金を増額しておくべきだ。

 そうしなければ、必要な大規模修繕工事が実施できず、マンションの資産価値は下がる一方で、やがて売却すらできない負の資産になりかねない。

修繕積立金の設定額の目安は?

 国土交通省では、修繕積立金の設定目安に関して試算する方法も示している。

 計算方法の詳細は省くが、下表の通り、20階未満の中高層マンションか20階以上の超高層マンション(タワーマンション)かによって計算方法が変わる。

 例えば、20階未満で建築延べ床面積が5,000㎡であれば、平均月額335円/㎡・月になっているため、専有面積80㎡のマンションであれば [335×80=26,800円/月] が修繕積立金の目安となる。

 20階以上のタワーマンションでは、平均月額338円/㎡・月になっているため、専有面積80㎡のマンションであれば [338×80=27,040円/月] が修繕積立金の目安となる。

 ただし、この試算の平均値に関しては366事例のマンションのデータから導いた目安なので、この金額を積み立てれば修繕積立金の不足を回避できるとは限らない。

修繕計画を定期的に見直し、それに合わせた修繕積立金の設定を

 国土交通省がこれから修繕積立金の値上げ幅の目安を示すとしても、それぞれのマンションで必要な修繕積立金が確保されなければ意味をなさないだろう。

 そのことを踏まえ、管理組合で議論できるようにする必要もある。とはいえ、機能しない管理組合が多いマンションでは修繕資金も不足し、いずれ管理会社も管理受託を断る可能性も出てくる。

 そうなる前に、修繕積立金をしっかり確保するしかないし、修繕積立金を増額する前に管理組合の予算会計に無駄がないのかを見直すことから始める必要も出てくるだろう。

 職人不足に加え、工事資材や人件費の高騰で、机上の修繕計画による修繕費用よりもはるかに高い工事見積もりになることは間違いなさそうだ。

 住宅ローンを払い終わっても、マンションに住まう限りはずっと管理費と修繕積立金は払わなければならないことを考えると、修繕費用が不足したまま工事もできずに老朽化が加速するマンションが増えるリスクは残る。

 定期的に修繕計画を見直して、それに合わせた修繕積立金を設定し直すことが快適なマンションライフを維持できる唯一の方法と言ってもいいだろう。

【関連記事】>>修繕積立金の相場は? 安い新築マンションには要注意!? 20年後には積立負担額が2倍以上になる可能性も!

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