相鉄・東急直通線の開業で中古マンション価格は2倍以上値上がり！ 将来の資産価値上昇は、新駅・新線の開業エリアが狙い目

鉄道の新線・新駅の開業は周辺の交通利便性を高め、商業施設の集積などによって生活利便性も向上する。それによって住宅の建設が進み、価格が上昇、新築だけでなく中古住宅の資産価値も高まる。いまは多少不便でも、新線・新駅によって将来の資産価値向上が期待できるエリアはどこにあるのか。（住宅ジャーナリスト・山下和之）

2023年3月の相鉄・東急直通線の開業効果は？

　首都圏では、2023年3月に相鉄・東急直通線、JR京葉線の新駅などが開業して話題になった。

　なかでもインパクトが大きかったのが相鉄・東急直通線の開業だろう。「羽沢横浜国大」駅・「新横浜」駅間の相鉄新横浜線と、「新横浜」駅・「日吉」駅間の東急新横浜線から成り、相鉄線は東急東横線・目黒線から直通運転される東京メトロ南北線・副都心線、都営地下鉄三田線、埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線、東武東上線の各線と接続、交通アクセスが飛躍的に向上した。

　都心の各方面に簡単にアクセスできるようになっただけではなく、JR東海道新幹線の「新横浜」駅とも直結して、利便性が大幅に高まった。

　そのため、開業に向けて相鉄線沿線の住宅地の地価や住宅価格が急上昇した。

相鉄線エリアの主要駅では、中古マンションの相場価格が2倍以上に

　LIFULL HOME’Sの調査によると、相鉄線沿線の中古マンション価格が大幅にアップしている。

　図表1にあるように、直通線開業の恩恵を大きく受ける横浜市旭区・保土ケ谷区の最寄り駅から徒歩10分以内の中古マンション価格は、2019年12月には2525万円だったのが、開業が目前に迫った2022年12月には4056万円になった。3年の間に1.6倍に上がった計算だ。

図表1　中古マンション価格の変化 (単位：万円)

　もちろん、首都圏全体の中古マンション価格が上がってはいるものの、東日本不動産流通機構の調査では、首都圏全体の中古マンション成約価格の2019年平均は3442万円で、2022年平均は4276万円だから、その間の上昇率は24.2％にとどまっている。横浜市旭区・保土ケ谷区は首都圏全体の2倍以上も高くなっているのだ。

　しかも、相鉄線の「二俣川」駅「西谷」駅の2駅周辺に限ると、2019年12月には2220万円だったのが、2022年12月には4637万円に上がった。その間の上昇率は108.9％で、実に約2.1倍に上がったことになる。首都圏全体の上昇率の4倍以上も高くなっているわけだ。

【関連記事】>>横浜市の中古マンション価格ランキング･ベスト100！ 横浜駅､みなとみらい駅のマンションの価格､値上がり率は？

相鉄線エリアの賃貸住宅の賃料は、前年比で10％以上上昇

　相鉄・東急線直通による交通アクセスや生活利便性の向上を見越して、このエリアで中古マンションを購入する人たちが急増、それが価格の大幅なアップにつながっているのは言うまでもないだろう。

　こうした動きは、中古マンション価格だけではなく、賃貸住宅の賃料にも当てはまる。

　やはりLIFULL HOME’Sが相鉄線各駅から徒歩10分以内、築30年以内、30㎡未満（ワンルームタイプ）の賃貸物件の平均賃料を調べたところ、2021年12月～2022年2月と2022年12月～2023年2月を比較すると、主要駅の多くで2桁台の上昇率となった。

　最も上がったのは、相鉄いずみ野線の「ゆめが丘」駅で、図表2にあるように対前年比24.6％。

　2位の相鉄本線「相模大塚」駅は23.7％のアップ。3位以下は10％台だが、それでも5位の「弥生台」駅でも12.6％のアップだった。

図表2　賃料が上がっている相鉄線の駅ランキング

　一般的に住宅価格は景気動向などによって大きく上下動するのに対して、賃貸住宅の賃料は地域相場への粘着性が高く、比較的変動しにくいといわれている。

　中古マンション価格が2倍以上になっているのに比べると上昇率は低いようにみえるが、動きにくい特性を持つ賃料がこんなに上がるのは、やはり新駅・新線効果と言わざるを得ない。

【関連記事】>>横浜市で住むべき駅・街ランキング全87駅！ 中山駅、みなとみらい駅は中古マンション価格が上昇、資産価値が高い駅だった！

首都圏で新線・新駅の開業が予定されている注目エリアは？

　新線・新駅の開業情報は、マイホーム取得に際しての場所選びにはたいへん重要な情報になるわけだ。

　新線・新駅が資産価値に与えるインパクトとしては、計画が持ち上がった段階、工事に着手するほど計画が本格化した段階、完成が間近に迫った段階など、各段階で大きく跳ね上がる。

　ただし、計画が本格化した段階、完成が間近に迫った段階では、当初の相場からは大きく上がっているのでメリットはさほど大きくない。

　若い世代であれば、できれば当初の計画段階で取得し、将来の発展にかけるのが得策だろう。それに当てはまる首都圏のエリアでは、どんな計画があるのだろうか。

地下鉄有楽町線の延伸計画で「（仮称）枝川」駅、「（仮称）千石」駅が設置

　東京メトロ有楽町線の延伸計画では、有楽町線の「豊洲」駅から東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄新宿線の「住吉」駅間まで延伸され、2030年代の半ばの開業目標となっている。

　この計画では、「豊洲」駅と「東陽町」駅の間に「（仮称）枝川」駅、「東陽町」駅と「住吉」駅の間に「（仮称）千石」駅が設置される予定だ。

　新駅が予定されているエリアに住んでいる人は、現在はバスや徒歩で豊洲駅、東陽町駅、住吉駅まで15分、20分かけて出なければならないのが、開業すれば徒歩数分で新駅に行けるようになり、格段に利便性が高まるはずだ。

　それを狙って、周辺では再開発や商業施設の設置計画などもあって、交通アクセスとともに、生活利便性の大幅な向上が期待されている。

【関連記事】>>江東区の「新築マンション人気ランキング」豊洲、有明、東陽町、南砂、住吉、東雲、亀戸など注目エリアのおすすめ物件は？

相模原市で工事が進むリニア中央新幹線の新駅「（仮称）神奈川県」駅

　2027年開業予定で工事が進められているリニア中央新幹線。静岡県の反対もあって、工事が遅れており、開業は少しずれこみそうだが、そのなかで、始発の「品川」駅以外に、首都圏に唯一設置される新駅が「（仮称）神奈川県」駅だ。

　新駅は、相模原市緑区の「橋本」駅近くの地下深くに設置される予定で、すでに工事が本格化しており、実際の開業がどうなるにせよ、新駅自体は2027年の開業予定に合わせて工事が進められている。

　開業すれば、品川・名古屋間が1時間で結ばれ、東京・名古屋がひとつの大都市圏になるが、品川駅から神奈川県駅までの所要時間はわずか10分。運賃は新幹線の新横浜・東京駅間並みの料金になるとみられるが、その点さえ覚悟すれば、都心の各地までドアツードアで30分以内になる。

 「橋本」駅は現在でも、JR横浜線、JR相模線、京王相模原線が乗り入れるターミナル駅だが、リニア新幹線によって利便性が格段に高まる。

　駅周辺には、大規模商業施設が集積し、超高層マンションが何棟も立っているが、駅から徒歩10分、15分のエリアでは戸建て住宅の分譲も少なくない。

　首都圏の利便性の高いエリアで、戸建て住宅の取得を考える人にとっては、注目しておきたいエリアといっていいだろう。

【関連記事】>>リニアで変貌する「橋本」の不動産は“買い”？ 新横浜の発展をみれば、大化けする可能性も

住宅地として人気の高い湘南エリアの新駅建設計画「（仮称）村岡新」駅

　JR東海道線の「藤沢」駅、「大船」駅間に2032年ころ開業予定なのが「（仮称）村岡新」駅。

　かつての国鉄湘南貨物駅の跡地（約8.5万㎡）と鎌倉市深沢地区のJR鎌倉総合車両センター跡地（約31.1万㎡）を一体開発する計画の中心となる新駅で、2021年にJR東日本、神奈川県、藤沢市、鎌倉市が覚書を交わし、新駅設置が決定されている。

　藤沢市と鎌倉市では、周辺の村岡地区と深沢地区を一体開発し、行政施設、商業施設、医療・福祉施設のほか、マンションなどの都市型住宅などを設ける計画だ。

　同じJR東海道線沿線では、「辻堂」駅周辺で10年ほど前に大規模な再開発が行われた。それまでは駅前にはビルらしいビルがない少し寂しい駅だったが、いまでは大規模商業施設や総合病院などが立ち、神奈川県を代表する商業エリアのひとつになっているのは周知の通りだ。

　ゼロからスタートする「村岡新」駅周辺も、10年後に期待できる有望なエリアと言っていいのではないだろうか。

【関連記事】>>神奈川県藤沢、平塚、海老名、湘南などの「新築マンション人気ランキング」注目エリアのおすすめ物件は？

10年先、20年先に大化けするエリアを狙い、マイホームを探す

　そのほかにも、以下のようなさまざまな計画がある。

　まだまだ海のものとも山のものとも知れない計画も多いが、なかには数年内に計画が明確になり、具体化するものがあるかもしれない。

 「エリアの将来性にかけてマイホームの場所選びを行いたい」と考えるのであれば、新線・新駅開業エリアの将来性にかけてみる手もあるのではないだろうか。

【関連記事】>>新築・中古マンション市場動向は？ 注目物件や在庫状況など最新市況を不動産アナリストが解説！

不動産の相場、将来価格を見る >>