新築マンション価格の高騰により、割安感のある中古マンションへの関心が高まっているが、その中古価格も上がり続けているため、築年数の古い中古マンションが注目されている。ただし、築古マンションにはデメリットもあるため、購入の際はよく検討することが大切だ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
2023年3月の新築マンション平均価格は1億円超え
新築マンションの価格上昇は半端ではない。特に、2023年3月の不動産経済研究所の調査では、首都圏の新築マンションの平均価格が1億4360万円と、1億円台に乗せた(図表1)。
図表1 首都圏新築マンションの平均価格と前年同月比
東京23区の平均では1億円を超えたことはあっても、首都圏全体の平均が1億円を超えたのは初めてのことだ。
これは、東京都港区で超高額の大規模マンションが2物件販売されたためで、東京23区に限れば、平均価格は2億円を超えてしまった。
平均的な会社員の年収ではまず買えないし、年収の高い夫婦のパワーカップルでもおいそれとは手が届かないレベルではないだろうか。
その後、4月、5月には平均価格1億円を切っているものの、それでも7000万円台、8000万円台と高い水準が続いている。
中古マンションは平均価格4000万円台後半まで上昇
そのため、新築マンションに比べて割安感のある中古マンションへの注目度が高まっているが、その中古マンション価格も上がり続けている。
図表2にあるように、中古マンションの成約単価はジワジワと上がり続けており、2020年6月から実に丸3年の間、上がり続けているそうだ。
図表2 首都圏中古マンションの成約価格の推移
直近の中古マンション価格を見てみると、2022年5月には4174万円と4100万円台だったのが、2023年5月には4569万円と4000万円台の後半に突入し、前年同月比は9.5%という高い上昇率だった。
仮に、金利1%、35年元利均等・ボーナス返済なしの条件で全額ローンを組むとすれば、価格上昇が始まる前の2020年5月の成約価格の平均は3296万円だったから、毎月返済額は9万3041円と10万円を切る。
しかし、2023年5月の4569万円だと、毎月返済額は12万8976円と13万円近くに達する。
築浅の中古マンション価格は、新築とほとんど変わらない
ゆとりを持って住宅ローンを返済するためには、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)を25%程度までに抑えておくのが安心といわれる。
そのため、25%以内に抑えるために必要な年収を計算すると、2020年の毎月9万3041円だと必要年収は447万円でOKだが、2023年の12万8976円だと必要年収は約620万円に増えてしまう。
年収によっては、簡単には買えない人も出てしまいそうだ。
しかし、ひとくちに中古マンションといっても、実は築年数によって価格は大きく異なっている。
図表3にあるように「~築5年」のいわゆる築浅マンションの平均価格は6704万円だから、新築マンション価格とさほどの差はなく、中古マンションとしての割安感をほとんど享受できない。
それが、築5年を超えて「~築10年」になると6304万円、築10年を超えて「~築15年」になると5765万円と、5000万円台で買えるようになり、「~築25年」では4000万円台に、「~築30年」では3000万円台に、そして「築30年~」では2000万円台まで下がるのだ。
図表3 首都圏中古マンションの築年帯別成約価格(単位:万円)
築30年超えなら年収300万円台でも買える
中古マンションの価格面でのメリットは築浅物件ではほとんど享受できず、割安感を享受するためには、築20年、築30年といった築古マンションに注目する必要があるわけだ。
たとえば、「~築30年」だと3374万円だから、全額ローンでも毎月返済額は9万5243万円と10万円を切るし、「築30年~」の2318万円だと6万5433円までダウンする。
現在、賃貸住宅に住んでいる人であれば、この程度の賃料を負担している人が多いだろうし、十分に購入できるようになるはずだ。
年収負担率を25%に抑えるためには、「~築30年」の毎月9万5243円だと必要な年収は約457万円で、「築30年~」の毎月6万5433円だと、必要な年収は約315万円に下がる。
これなら、まだ若くて年収がさほどではない人でも購入できるようになるだろうし、単身者でも買えるのではないだろうか。
築浅マンションの成約件数は減っているが、築古物件では増えている
それもあって、最近は築年数の古い中古マンションが注目されるようになっている。
図表4は、2023年1月〜3月の築年数帯別の成約件数と前年同月比の増減の推移を示しているが、「~築20年」までは成約件数が前年同月比で減少している。
一方で、「~築25年」は制約件数が前年同月比で1.3%、「~築30年」は6.8%、「築30年~」は1.1%増えている。
図表4 首都圏中古マンションの築年数帯別の成約件数と前年同月比
中古マンションといっても価格が高く、最大のメリットである価格の割安感をさほど享受できない築年数の浅い物件は成約件数が減っているのだが、価格メリットの大きい築古物件は成約件数が増えているわけだ。
ただ、注意が必要なのは、築古物件だと老朽化が進んでいる物件が多いので、購入時に一定のリフォームが必要になることが多いという点だ。
築古マンションを購入するなら、必要なリフォーム費用を含めた資金計画を
不動産仲介の業界団体である不動産流通経営機構の調査によると、中古物件を買った人たちに選んだ理由を聞くと、トップは「希望エリアの物件だったから」で、次いで「手頃な価格だったから」が続いている。
また、3位には中古住宅とはいいながらも、「良質な物件だったから」という回答が挙がっていて、7位には「リフォームするつもりだったから」が入っている。
最近は、中古住宅のリフォーム技術も進歩し、一定の基本性能が確保されていれば、リフォームによって新築並みの基本性能や居住性を確保できるようになっているので、それを前提に築古マンションを買う人が増えているということではないだろうか。
そのため、住宅取得の費用とは別に、リフォームにかかる費用も合わせて資金計画を考える必要がある。
幸い、近年ではリフォームにかかる費用まで含めて、住宅ローンと一体的にローンを組める金融機関が増えているので、事前にリフォームにかかる費用の見積もりを出してもらい、その費用も含めて資金計画を考えるようにしたいところだ。
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築古マンションは、価格以外のデメリットも考慮して購入を検討する
いまひとつ注意しておきたいのが、築年数による専有面積の違い。最近の新築マンションは60㎡台後半の専有面積の物件が多くなっているが、築古マンションはそうではない。
東日本不動産流通機構によると、「~築5年」の専有面積の平均は62.1㎡で、「~築10年」は66.6㎡、「~築15年」は67.6㎡と面積が広がり、「~築25年」は70.9㎡と70㎡台に達するが「~築30年」は65.0㎡に減って、「築30年~」は56.3㎡まで縮小する。
「築30年~」といえば、1990年代のバブル以前に発売されたマンションが中心になるが、なかでも、分譲マンション初期の物件は現在のように3LDKのファミリータイプ中心ではなく、2DKなどの50㎡台、60㎡台の物件が多かった。
シングルやカップルのみの世帯であれば問題ないだろうが、子どもの多い世帯や出産を予定している世帯には広さが足りなくなる可能性がある。
しかも、築年数の古い物件を買うと、次に買い換えが必要になったときにはさらに築年数が経過し、買い換えしにくくなってしまう可能性があるので、その点も覚悟しておく必要がある。
いずれにしても、安いには安いなりの理由があるので、割安感というメリットの半面のデメリットも十分に理解して、購入を考える必要があるだろう。
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