三井不動産のパークマンションはなぜ人気がある? 戸建てやマンションブランドの「格付け」と、注目マンションを解説
大手不動産会社分析(2)

2021年3月9日公開(2023年1月5日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

「パークマンション」「パークコート」などの高級マンションで人気を博す三井不動産レジデンシャル。ウオーターフロント物件の先駆け「大川端リバーシティ21」(東京都中央区/1988年)の開発では、中心的な役割を果たした。初代パークマンション竣工から50年がたち、時代の変化に合わせた住まいを提案すべく、リブランディング(ブランドの再構築)に取り組んでいる。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

三井グループの“御三家”に挙げられる名門企業

 三井不動産は、いうまでもなく江戸時代から続く三井グループの中核を担う企業のひとつ。事業範囲はオフィスビルから商業施設、ホテル・リゾートなど広範に及ぶが、そのなかで住宅事業を担うのが三井不動産レジデンシャルだ。

 三井不動産は、三井物産、旧三井銀行(現在の三井住友銀行)と並んで三井グループの“御三家”の一角を占めてきた。旧財閥系企業(三井、三菱、住友)グループのなかでも、不動産会社が御三家に数えられるのは三井不動産だけであり、それだけグループ内、またわが国経済界のなかで存在感の大きい企業といえよう。
 
 三井不動産の歴史をみると、1914年に三井合名会社の不動産課が誕生し、1941年には三井不動産株式会社が設立され、1961年から住宅地・別荘地の開発・販売に進出した。

 住宅事業の展開は1967年着工、1968年竣工の「百合ヶ丘ガーデンマンション」が第一弾で、1969年着工、1970年竣工の「原宿パークマンション」が現在に続くパークシリーズの先駆けになる。その後、住宅事業部門として三井不動産レジデンシャルが設立されたのは2005年のことだ。

年間販売戸数は、事業主ランキングで10年間5位以内をキープ

 以来、2019年度末までの実績では、パークシリーズを中心とするマンションの分譲実績は約23万戸で、ファインコートの一戸建て住宅は約1万戸に達する。民間調査機関の不動産経済研究所の調査によると、三井不動産レジデンシャルの2019年の新築マンション発売戸数は1750戸で、事業主別のランキングでは5位だった。

 下表を見れば分かるが、過去10年間の発売戸数をみるとおおむね2000戸/年を超え、事業主別のランキングでは常に5位以内をキープしている。2013年には年間6000戸を超えてトップに立ったこともある。


三井不動産レジデンシャルの年間発売戸数と事業主ランキングの推移

タワーマンションのさきがけとなるマンション開発を手掛ける

「三田綱町パークマンション」のキャッチフレーズは「空に住まう」 (写真提供:三井不動産)
「三田綱町パークマンション」のキャッチフレーズは「空に住まう」 (写真提供:三井不動産レジデンシャル)

  たとえば、1971年竣工の「三田綱町パークマンション」(東京都港区)は、地上19階・地下2階建てで、東京タワー、霞が関ビルに続く第三の高層建築物と呼ばれ、三井不動産レジデンシャルではその眺望の素晴らしさを強調するため、“空に住まう”というキャッチフレーズで販売を行った。

 竣工後50年が経過した現在でも維持管理が徹底し、純白のツインタワーとして洗練されたたたずまいをみせている。

「大川端リバーシティ21」の「センチュリーパークタワー」は湾岸の象徴でもある(写真提供:三井不動産)
「大川端リバーシティ21」の「センチュリーパークタワー」は湾岸の象徴でもある(写真提供:三井不動産レジデンシャル)

 また隅田川の河口近くで開発された「大川端リバーシティ21」(東京都中央区)は、都心の地価高騰や定住人口の減少といった、都心の抱える問題を解決するための官民一体となったプロジェクトで、三井不動産レジデンシャルはその中心的な役割を担った。

 1999年竣工の「センチュリーパークタワー」は、「大川端リバーシティ21」のランドマークとして、中央大橋近くにそびえ、現在も中古マンション市場ではウェイティング客がいるほどの人気の高さを維持している。

 ここでは、“水に住まう”という、リバーサイドでの生活という新たなライフスタイルを提案、ウオーターフロント開発の先駆けとなった

 このリバーシティに超高層マンションが林立する風景は、マンハッタンのような景色を思わせ、テレビのトレンディードラマ、サスペンスドラマなどの舞台としてしばしば登場、わが国における超高層マンション時代の象徴ともなった。

マンションブランドと戸建てのカテゴリーを見直し、ブランドの再構築を実施

 先に見たように、パークシリーズの先駆けとなった「原宿パークマンション」が竣工したのは1970年のこと。2020年で満50周年を迎えたわけだが、三井不動産レジデンシャルでは50周年を期して、2021年1月から住宅事業におけるリブランディング(ブランドの再構築)を推進している。

 下にあるように、住宅事業におけるマンションや戸建てブランドなどを大きく4つのカテゴリーに整理し、それぞれの役割、機能を明確化した。

 時代の変化に対応した多様なライフスタイルに応えるため、さまざまなブランドを開発、マルチブランド化してきた三井不動産レジデンシャルだが、今後も必要に応じて新ブランドの展開もあるとしている。

三井不動産レジデンシャルにおけるブランド

 三井不動産レジデンシャルは、さまざまなマンションシリーズを展開している。基幹シリーズである「パークホームズ」から最高級シリーズの「パークマンション」、高齢者向けマンション「パークウェルステイト」などがある。

・パークマンション

 三井不動産の最高級マンションシリーズ。千鳥ヶ淵、麻布、白金などの都心の一等地における立地にこだわり、外壁、エントランス、パブリックスペースなど全てにおいて最高級を目指す。代表的なものに、「パークマンション千鳥ヶ淵」「麻布霞町パークマンション」「白金台パークマンション」などがある。

 数年に1棟程度の供給だが、最近は一般分譲されずに非公開で販売されるケースが少なくない。そのなかには、専有面積500㎡台の住戸が50億円以上で販売されたケースもあるという話も。

・パークコート

 パークマンションに次ぐ、都市型のハイグレードマンションシリーズ。パークマンションは数十戸の中規模マンションが中心だが、パークコートには大規模マンションもある。

 都心の閑静な住宅地に建てられることが多く、時間が経過しても色あせない品格のある「本格邸宅」をコンセプトとしている。「パークコート赤坂檜町ザ タワー」「パークコート浜離宮ザ・タワー」(推定相場価格:約787万円/坪 マンションレビュー)、「パークコート神宮北参道ザタワー」などがある。

【関連記事はこちら】>>「パークコート神宮北参道 ザ タワー」の価格や特徴を分析! 平均価格2億2800万円が驚くほど売れる理由は?

 ・パークタワー

 原則として20階建て以上の超高層マンションで、エリアのランドマークとなる高品質のマンション。洗練された外観フォルムをはじめ、ラウンジ、ゲストルーム、キッズルームなどのコミュニティースペースの設置など、常に時代を先取りする試みが採用されている。テレビCMで知られる東京都中央区の「センチュリーパークタワー(リバーシティー21)」がその代表格。

・パークシティ

 街と一体となった大規模開発のマンション。大規模だからこそ実現できる緑豊かな配置計画などで、自然とうまく調和している。住まいとしてのマンション開発という枠を超えた、周囲に溶け込み、エリアと一体となった新たな住環境を創造するというコンセプトで開発が進められている。首都圏では江東区豊洲の「アーバンドック パークシティ豊洲」、杉並区浜田山の「パークシティ浜田山」など、都心周辺部や近郊のターミナル駅周辺での開発が多い。

・パークホームズ

 都市住居型マンションシリーズで、三井不動産レジデンシャルの最もスタンダードなマンションだ。三井不動産レジデンシャルのマンションシリーズのなかでも一番供給数が多く、基幹商品的な位置付け。最近ではマンションの断熱性、耐震性、劣化対策などの商品力の向上に力を入れている。

・パークアクシス

三井不動産レジデンシャルの賃貸マンション。分譲マンションデベロッパーとしての経験をもとに、ハイクオリティーなマンションづくりを目指す。品のある落ち着いたおとなの暮らし、上質でゆとりある豊かなプライベート空間を提供している。

・パークリュクス

 都心型小世帯向けのマンションシリーズ。シングルやDINKS(ディンクス)向けのコンパクトタイプのマンション。自己居住用の実需としての販売だけではなく、賃貸住宅として運用する投資家向けにも販売される。

・パークウェルステイト

 コンセプトは「シニアのためのサービスレジデンス」。所有権付きの分譲マンションではなく形態としては賃貸住宅であり、入居時に一時金のほか、毎月、月額利用料を支払う。共用施設が充実し、クリニックが併設されていたり、近隣の有名病院と連携していたりする物件もある。 

三井不動産レジデンシャルの2021年新規発売は、首都圏だけで3000戸か

 この三井不動産レジデンシャルの2021年の新規発売予定に関しては、2020年より若干増える見込みだ。2020年はコロナ禍の営業自粛や工事の遅延などによって、当初予定していた発売が先送りになったケースも少なくなく、それが2021年に出てくれば、首都圏だけで3000戸程度に増える可能性もあるのではないだろうか。

 もちろん、2021年1月には首都圏や近畿圏などに再度緊急事態宣言が発出され、不確定要素が多いものの、このシリーズで取り上げた住友不動産の2021年の発売予定も3000戸だったことから、事業主別ランキングではトップ争いを展開することになるのかもしれない。

都心の注目マンションは、「パークコート千代田四番町」「パークホームズ市ヶ谷ヒルトップレジデンス」

 その2021年には都心の高級住宅地として根強い人気の番町エリアで、久々の大型物件の分譲を予定している。

 それがJR総武・中央緩行線「市ケ谷」駅徒歩5分、東京メトロ有楽町線「麹町」駅徒歩4分の「パークコート千代田四番町」(東京都千代田区)。鉄筋コンクリート造地上14階・地下1階建て、総戸数は168戸で、2021年3月上旬からの販売を予定している。

「パークコート千代田四番町」は人気の「パークコート」シリーズのマンション(写真提供:三井不動産)
「パークコート千代田四番町」は人気の「パークコート」シリーズのマンション(写真提供:三井不動産レジデンシャル)

 1969年以降、いわゆる番町エリアで分譲されたマンションとしては最大規模の敷地約4,600㎡。

 「エントリーフォレスト」「カスケードフォレスト」「シーズンフォレスト」の3つの森が用意され、ロビーラウンジ、コージーサロン、応接室、コミュニケーションルーム・ワークスペース、ゲストルーム、プライベートスパなどの共用施設が設置される。

 このうち、ゲストルームとプライベートスパには、温泉が供給され、低層プレミアム住戸12戸にはオプションで温泉供給が可能になるそうだ。

 先に触れたように「パークコート」シリーズは、リミテッドカテゴリーのハイクオリティーマンションだが、なかでも共用施設が充実した人気物件になりそうだ

 もうひとつ、やはり都心の人気住宅地のひとつである市谷エリアで分譲されるのが、「パークホームズ市ヶ谷ヒルトップレジデンス」(東京都新宿区)。東京メトロ有楽町線・南北線「市ケ谷」駅から徒歩7分、JR総武・中央緩行線の「市ケ谷」駅から徒歩11分で、先の「パークコート千代田四番町」は市ヶ谷駅の南側の千代田区だが、こちらは北側の新宿区になる。

「パークホームズ市ヶ谷ヒルトップレジデンス」は都心にありながら、落ち着いた雰囲気(写真提供:三井不動産)
「パークホームズ市ヶ谷ヒルトップレジデンス」は都心にありながら、落ち着いた雰囲気(写真提供:三井不動産レジデンシャル)

 鉄筋コンクリート造地上6階建て、総戸数64戸で、都心にありながら、敷地約2万平方メートルの緑地帯「市谷の杜」や中根坂東公園に隣接した絶景の眺望、重厚感と先進性を感じさせる外観ファサードが、住む人の充足感を高めてくれそうだ。

 同時にスマートフォンと室内家電を連動させるなどのIoT対応が特徴となっている。

 各戸の玄関前に宅配ボックスが設置され、子ども連れなどで荷物を運ぶ必要がなく、トランクルームとしても利用できる。クリーニングの集配、食配、靴磨き集配などとしても利用でき、ウィズコロナ時代に安全・安心といえるだろう(販売活動を一時休止中・2021年3月16日時点)。

【大手不動産会社分析】記事一覧
1.住友不動産
2.三井不動産レジデンシャル
3.東急不動産
4.野村不動産
5.三菱地所レジデンス
6.大和ハウス工業
7.東京建物
 

三井不動産レジデンシャルの物件一覧
(ライフルホームズのサイトへ)

◆パークコート千代田四番町
価格

未定

入居時期

2022年11月下旬入居予定

交通 総武・中央緩行線「市ヶ谷」駅 徒歩5分  他 所在地 東京都千代田区四番町4番6他
間取り 1LDK ~ 3LDK 建物面積 35.76㎡ ~ 181.23㎡
総戸数 168戸 来場者数
売主 三井不動産レジデンシャル 施工会社
※データは2021年2月14日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
◆パークホームズ市ヶ谷ヒルトップレジデンス
価格

未定

入居時期

2022年4月上旬入居予定

交通 東京メトロ南北線「市ヶ谷」駅 徒歩7分  他 所在地 東京都新宿区納戸町38番3
間取り 1LDK~3LDK 建物面積 55.2㎡ ~ 81.61㎡
総戸数 64戸 来場者数
売主 三井不動産レジデンシャル 施工会社
※データは2021年2月14日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
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