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三井不動産のパークマンションはなぜ人気がある? 戸建てやブランドマンションの「格付け」と、注目マンションを解説

大手不動産会社分析(2)

2021年3月9日公開(2024年6月26日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

「パークマンション」「パークコート」などの高級マンションで人気を博す三井不動産レジデンシャル。ウォーターフロント物件の先駆け「大川端リバーシティ21」(東京都中央区)やオリンピック選手村の「晴海フラッグ」(東京都中央区)の開発では、中心的な役割を果たした。そしていま、初代パークマンション竣工から50年以上が経過し、時代の変化に合わせたさまざま提案を行っている。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

三井グループの“御三家”に挙げられる名門企業

 三井不動産は、いうまでもなく江戸時代から続く三井グループの中核を担う企業のひとつ。事業範囲はオフィスビルから商業施設、ホテル・リゾートなど広範に及ぶが、そのなかで住宅事業を担うのが三井不動産レジデンシャルだ。

 三井不動産は、三井物産、旧三井銀行(現在の三井住友銀行)と並んで三井グループの“御三家”の一角を占めてきた。旧財閥系企業(三井、三菱、住友)グループのなかでも、不動産会社が御三家に数えられるのは三井不動産だけであり、それだけグループ内、またわが国経済界のなかで存在感の大きい企業といえよう。
 
 三井不動産の歴史をみると、1914年に三井合名会社の不動産課が誕生し、1941年には三井不動産株式会社が設立され、1961年から住宅地・別荘地の開発・販売に進出した。

 住宅事業の展開は1967年着工、1968年竣工の「百合ヶ丘ガーデンマンション」が第一弾で、1969年着工、1970年竣工の「原宿パークマンション」が現在に続くパークシリーズの先駆けになる。その後、住宅事業部門として三井不動産レジデンシャルが設立されたのは2005年のことだ。

年間販売戸数は、事業主ランキングで10年間5位以内をキープ

 三井不動産レジデンシャルのパークシリーズを中心とするマンションの発売実績は下の図表にある通りだ。2013年に事業主別ランキングで首位に立った後、2位から4位の間を行き来していたが、2023年には久々にトップに返り咲いた。

三井不動産レジデンシャルの年間発売戸数と事業主ランキングの推移

(資料:不動産経済研究所「全国のマンション市場」)
(資料:不動産経済研究所「全国のマンション市場」)

 ただ、マンション適地の取得が年々難しくなっており、発売戸数自体はこのところは年間2000戸台から4000戸台で推移しており、特に2021年から2013年までは3000戸台で推移するなど、安定的な動きになっている。

 三井不動産レジデンシャルが注目されるのは、その供給量だけではなく、供給の内容、マンションの質という面で業界をリードする役割を担ってきたという点ではないだろうか。

 それに合わせて、近年では「経年優化」をコンセプトとしている。住まいは、年数が経過するごとに劣化が進み、「経年劣化」するのが常識。しかし、三井不動産レジデンシャルでは、常に維持管理につとめ、居住性、資産性ともに経過年数により向上、「経年優化」することを目指している。それはさまざまな物件、街づくりにおいてみることができる。

タワーマンションのさきがけとなるマンション開発を手掛ける

「三田綱町パークマンション」のキャッチフレーズは「空に住まう」 (写真提供:三井不動産)
「三田綱町パークマンション」のキャッチフレーズは「空に住まう」 (写真提供:三井不動産レジデンシャル)

  たとえば、1971年竣工の「三田綱町パークマンション」(東京都港区)は、地上19階・地下2階建てで、東京タワー、霞が関ビルに続く第三の高層建築物と呼ばれ、三井不動産レジデンシャルではその眺望の素晴らしさを強調するため、“空に住まう”というキャッチフレーズで販売を行った。

 竣工後50年が経過した現在でも維持管理が徹底し、純白のツインタワーとして洗練されたたたずまいをみせている。

「大川端リバーシティ21」の「センチュリーパークタワー」は湾岸の象徴でもある(写真提供:三井不動産)
「大川端リバーシティ21」の「センチュリーパークタワー」は湾岸の象徴でもある(写真提供:三井不動産レジデンシャル)

 また隅田川の河口近くで開発された「大川端リバーシティ21」(東京都中央区)は、都心の地価高騰や定住人口の減少といった、都心の抱える問題を解決するための官民一体となったプロジェクトで、三井不動産レジデンシャルはその中心的な役割を担った。

 1999年竣工の「センチュリーパークタワー」は、「大川端リバーシティ21」のランドマークとして、中央大橋近くにそびえ、現在も中古マンション市場ではウェイティング客がいるほどの人気の高さを維持している。

 ここでは、“水に住まう”という、リバーサイドでの生活という新たなライフスタイルを提案、ウオーターフロント開発の先駆けとなった

 このリバーシティに超高層マンションが林立する風景は、マンハッタンのような景色を思わせ、テレビのトレンディードラマ、サスペンスドラマなどの舞台としてしばしば登場、わが国における超高層マンション時代の象徴ともなった。

マンションブランドと戸建てのカテゴリーを見直し、ブランドの再構築を実施

 先に見たように、パークシリーズの先駆けとなった「原宿パークマンション」が竣工したのは1970年のこと。2020年で満50周年を迎えたわけだが、三井不動産レジデンシャルでは50周年を期して、2021年1月から住宅事業におけるリブランディング(ブランドの再構築)を推進してきた。

 時代の変化に対応した多様なライフスタイルに対応するため、さまざまなブランドを開発、マルチブランド化してきた三井不動産レジデンシャルだが、今後も必要に応じて新ブランドの展開もあるとしている。

 2024年現在の主なブランドとしては次のようなブランドを挙げることができる。

パークマンション

 三井不動産レジデンシャルの最高級マンションシリーズ。千鳥ヶ淵、麻布、白金などの都心の一等地における立地にこだわり、外壁、エントランス、パブリックスペースなどすべてにおいて最高級を目指す。代表的なものに、「パークマンション千鳥ヶ淵」(東京都千代田区)「麻布霞町パークマンション」(東京都港区)「白金台パークマンション」(東京都港区)などがある。

 そのなかには、専有面積500㎡台の住戸が50億円以上で販売された「パークマンション檜町公園」(東京都港区)がある。当時としては分譲マンションの最高値を更新した物件もある。50億円以上の住戸は、一般分譲ではなく、非公開での販売であり、50億円以上というのは、あくまでも業界の専門家の見立てだ。

パークコート

 パークマンションに次ぐ、都市型のハイグレードマンションシリーズ。パークマンションは数十戸の中規模マンションが中心だが、パークコートには大規模マンションもある。

 都心の閑静な住宅地に建てられることが多く、時間が経過しても色あせない品格のある「本格邸宅」をコンセプトとしている。「パークコート赤坂檜町ザ タワー」「パークコート浜離宮ザ・タワー」(推定相場価格:約787万円/坪 マンションレビュー)、「パークコート神宮北参道ザタワー」などがある。

【関連記事はこちら】>>「パークコート神宮北参道 ザ タワー」の価格や特徴を分析! 平均価格2億2800万円が驚くほど売れる理由は?

 パークタワー

 原則として20階建て以上の超高層マンションで、エリアのランドマークとなる高品質のマンション。洗練された外観フォルムをはじめ、ラウンジ、ゲストルーム、キッズルームなどのコミュニティースペースの設置など、常に時代を先取りする試みが採用されている。テレビCMで知られる東京都中央区の「センチュリーパークタワー(リバーシティー21)」がその代表格。

パークシティ

 街と一体となった大規模開発のマンション。大規模だからこそ実現できる緑豊かな配置計画などで、自然とうまく調和している。住まいとしてのマンション開発という枠を超えた、周囲に溶け込み、エリアと一体となった新たな住環境を創造するというコンセプトで開発が進められている。

 首都圏では江東区豊洲の「アーバンドック パークシティ豊洲」、杉並区浜田山の「パークシティ浜田山」など、都心周辺部や近郊のターミナル駅周辺での開発が多い。

パークホームズ

 都市住居型マンションシリーズで、三井不動産レジデンシャルの最もスタンダードなマンションだ。三井不動産レジデンシャルのマンションシリーズのなかでも一番供給数が多く、基幹商品的な位置付け。最近ではマンションの断熱性、耐震性、劣化対策などの商品力の向上に力を入れている。

パークアクシス

 三井不動産レジデンシャルの賃貸マンション。分譲マンションデベロッパーとしての経験をもとに、ハイクオリティーなマンションづくりを目指す。品のある落ち着いたおとなの暮らし、上質でゆとりある豊かなプライベート空間を提供している。

パークリュクス

 都心型小世帯向けのマンションシリーズ。シングルやDINKS(ディンクス)向けのコンパクトタイプのマンション。自己居住用の実需としての販売だけではなく、賃貸住宅として運用する投資家向けにも販売される。

パークウェルステイト

 コンセプトは「シニアのためのサービスレジデンス」。所有権付きの分譲マンションではなく形態としては賃貸住宅であり、入居時に一時金のほか、毎月、月額利用料を支払う。共用施設が充実し、クリニックが併設されていたり、近隣の有名病院と連携していたりする物件もある。 

三井不動産の2023年の発売実績は事業主別で10年ぶりにトップ

 2023年の三井不動産レジデンシャルの新築マンション発売戸数は3423戸で、事業主別の発売戸数としてトップになった。三井不動産レジデンシャルがトップになったのは、2013年以来10年ぶりのこととなる。

 ただ、このところはマンション適地の確保が難しくなっていることもあり、年間の発売戸数は2000戸台から4000戸台の間で推移しており、2024年以降もその水準から大きく変わることはないだろう。事業主別ランキングでは、トップにこだわっているわけではなく、常に5位以内程度で推移していくのではないだろうか。

三田ガーデンヒルズは平均坪単価1300万円

 その三井不動産レジデンシャルが手がける物件として直近で最も話題になったマンションとしては、「三田ガーデンヒルズ」(東京都港区)と、HARUMI FLAG SKY DUO」(東京都中央区)を挙げることができるだろう。

 「三田ガーデンヒルズ」は分譲マンションとしては港区最大となる約2万5000㎡の敷地に、中高層の6棟が建設される。総戸数は1002戸で、うち952戸が一般分譲されたが、平均坪単価は1300万円で、専有面積90㎡の住戸であれば3.5億円という超高額物件。2023年2月の1期販売の最高額は45億円だった。一般分譲マンションとしては、過去最高額になったのではないだろうか。

 この「三田ガーデンヒルズ」は、三菱地所レジデンスとの共同事業で、三井不動産レジデンシャルが幹事社となっている。ガーデンヒルズという名称は、ヴィンテージマンションの代名詞ともいうべき「広尾ガーデンヒルズ」(東京都渋谷区)以来のネーミングであり、その点からも、次代のヴィンテージマンションとなるのは間違いのないところだろう。

 価格が桁外れであるだけではなく、エントランスに従前の建物だった旧逓信省簡易保険局庁舎が再現され、格調高いファサードを形成している。内部ロビーには、旧建物から取り外したステンドグラスなどの部材を活用するなどの凝りようで、歴史あるホテルのような風格を備えている。

 共用施設としては会員制のジム・プール、ゴルフレンジ、スパ、ワークスペース、カフェラウンジ、キッズルーム、バーベキュースペース付きのゲストハウス、ミニストア、バー、レストランなどが用意されている。コンシェルジュサービスでは、帝国ホテルと提携、帝国ホテルのバーテンダーによるバーサービス、クルマの入出庫を任せられるバレーサービス、ポーター、ドアマンなどのフロントサービスも徹底している。

 こうした充実した内容であるため、価格は平均的な会社員ではとても手がでない超高額物件だったものの、分譲住戸は比較的短期間に完売したといわれる。

【関連記事】>>「三田ガーデンヒルズ」は坪単価1300万円!? 価格表を公開! モデルルーム予約も満席続きの異次元高級マンションが誕生

 一方の「HARUMI FLAG SKY DUO」は、価格的には対極にあるタワーマンション。晴海フラッグは、東京オリンピックの選手村として利用後に、リフォームして分譲することを前提として10社のコンソーシアムに相場よりかなり安い価格で土地が販売された。そのため、分譲価格も周辺相場より3割程度安く設定され、たいへんな人気になった。

【関連記事】>>【HARUMI FLAG SKY DUO(晴海フラッグ )】最終期!第2期の価格や販売スケジュールは? 第1期の抽選結果や間取りもを公開中(2024年5月20日追記)

 都心近くでは最大規模の再開発であり、分譲住宅4145戸、賃貸住宅1487戸が建設され、すべて完成したときには、約1.2万人が暮らす街になる。住宅は全24棟で構成されるが、そのラストを飾ったのが晴海フラッグ中央に建設されるツインタワーの「HARUMI FLAG SKY DUO」。地上50階建ての733戸と、やはり50階建ての722戸のツインタワーで、総戸数は合計1455戸だ。

 価格は平均坪単価にして300万円台から500万円台で、都心近くのタワーマンションとしては破格の価格設定であり、たいへんな人気を集めた。

 三井不動産レジデンシャルは、その10社の幹事として企画・開発・販売などで中核を担ってきたが、この「HARUMI FLAG SKY DUO」は晴海フラッグの分譲の最後を飾るツインタワーで、価格の安さもあってたいへんな人気となった。たとえば、1455戸のうち573戸が販売された第1期1次は平均倍率15.3倍、最高142倍の競争率となった。

 今後もこうした注目物件を手がけ、三井不動産レジデンシャルはマンション業界をリードする存在であり続けるのではないだろうか。

三井不動産が手がけた有名物件一覧

 最後に、「三井ガーデンヒルズ」や「HARUMI FLAG SKY DUO」。を含む三井不動産が手がけた注目の物件一覧を紹介する。

三井不動産が手がけた有名物件一覧

名称 所在地 竣工年 総戸数
三田綱町パークマンション 東京都港区 1971年 147戸
センチュリーパークタワー 東京都中央区 1999年 756戸
パークマンション千鳥ヶ淵 東京都千代田区 2004年 64戸
ファインコート目黒 東京都目黒区 2012年 49戸
パークマンション檜町公園 東京都港区 2017年 43戸
パークコート青山ザタワー 東京都港区 2018年 163戸
パークウェルステイト浜田山 東京都杉並区 2019年 70室
パークウェルステイト西麻布 東京都港区 2024年 400室
三田ガーデンヒルズ 東京都港区 2025年 1002戸
HARUMI FLAG SKY DUO 東京都中央区 2025年 733戸

 

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5.三菱地所レジデンス
6.大和ハウス工業
7.東京建物
 

三井不動産レジデンシャルの物件一覧
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