東京建物は、1896年創業の歴史ある不動産会社である。とくに首都圏を中心に分譲されている「Brillia(ブリリア)」シリーズのマンションは人気で、その長い歴史の中で、独創的なBrilliaマンションを数多く分譲してきた。今回は、特徴的な物件を中心に解説する。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
住宅ローンの原型をつくった東京建物
東京建物は、東京大学の安田講堂を寄付したことなどで知られる旧安田財閥の創始者、安田善次郎によって1896年(明治29年)に創業された。
現在の「みずほ銀行」や「損保ジャパン日本興亜」も同じく安田が設立した企業である。他の旧財閥系不動産会社と比べても、格段に長い歴史を持ち、日本で最も歴史のある不動産会社といわれている。
また、住宅ローンの原型ともいうべき「割賦販売方式」で不動産売買に取り組んだことでも知られている。当時、住宅資金は個人金融業者に借りるしかなく、高利貸しも横行するなど社会問題化していたが、創業年の1896年に初めて割賦方式(不動産担保ローン)として住宅を販売したのが、東京建物だった。
消費者の視点を取り入れたマンションづくり
東京建物の住宅事業の歴史は、1963年に東京都府中市中河原で住宅地開発に着手したことに始まる。1968年には神奈川県藤沢市で分譲マンションの第1弾を手がけた。2003年にマンションブランドを「Brillia(ブリリア)」に統一、その第1号として「ブリリア調布国領」(東京都調布市)を分譲した。
「Brillia(ブリリア)」ブランドの浸透に当たっては、工事途中のマンション内を購入者が見学できる『建築現場見学会』を実施するなど、ものづくりの見える化を行っている。また、消費者の声を商品に反映させるため、「東京未来建物会議LISTEN」を2001年に、働く女性の視点を物件にダイレクトに生かすプロジェクトの「ブルーモワ」を2012年にスタートさせた。
「ブルーモワ」では、女性ならではの視点で「L字型洗面化粧台」「コミュニケーションカウンター」をつくるなど、数々の「ブルーモワ」オリジナル商品が「Brillia(ブリリア)」のものづくりに生かされている。
東京建物のメインブランドは、「Brillia(ブリリア)」
東京建物と言えば、「Brillia(ブリリア)」のマンションブランドが有名だが、高級賃貸マンションでは、「Brillia ist(ブリリア イスト)」というブランドもある。
「Brillia(ブリリア)」
「洗練」と「安心」がコンセプトのマンションシリーズ。「洗練」は、長い年月が経過しても色あせない洗練されたデザインと、暮らしのホットラインやシニアサービスなどのきめ細かなライフサポートによる洗練された暮らしを意味する。
また「安心」は、徹底したセキュリティーや防災対策、そして住まいの定期診断やオーナーズクラブなどのアフターサービスが充実していること。ちなみに、ブランド名の「ブリリア」の語源は、光り輝く、卓越したといった意味を持つ英語の「Brilliant」に由来する。
・Brillia City(ブリリアシティ)
ブリリアシリーズの中でも、大規模なマンションに冠されるブランド名。シティと名がつく通り、複数の棟が立ち、広い敷地内に店舗や公園、居住者以外も利用できる通路があるなど、小さいながらも一つの街を形成、敷地内だけである程度生活を完結できるようになっている。
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人気の理由や特徴、注意すべきポイントとは⁉
・Brillia Tower(ブリリアタワー)
20階建て以上の超高層マンションのブリリアシリーズ名。地名との組み合わせで、「ブリリアタワー○○」と命名されることが多い。
・Brillia ist(ブリリア イスト)
東京建物の高級賃貸マンションのブランド。分譲マンション「Brillia(ブリリア)」の「洗練」「安心」に加え、「都市におけるスマートな生活」を商品企画の柱としている。外観デザイン、エントランスなどの共用部にこだわり、専用部のスペックも高い。シングルやディンクスなどの比較的年収が高く、忙しい人たちを想定し、エントランス、エレベーターの2カ所にオートロックシステムを採用するなど、セキュリティーを充実させ、万全の防災体制を確立している。
団地再生の大型プロジェクト「Brillia(ブリリア)多摩ニュータウン」
東京建物が単独で事業参画した、首都圏を代表する日本最大級の建て替え事業が、「Brillia(ブリリア)多摩ニュータウン」(東京都多摩市)である。1971年に建てられたこの大規模団地は、住民の高齢化に伴うバリアフリーの整備、老朽化した建物の改善、設備の更新の観点から、建替えすることが喫緊の課題となっていた。
コンセプトは、まちの資産を継承しながら、次世代の新しい街づくりをすること。23棟640戸が取り壊され、東京建物が総戸数1249戸の新しいマンションの建て替えを行うこととなった。既存住民と新規マンション購入者間のコミュニティー形成をサポートし、魅力ある街を再生することに見事成功する。この事業は、その後各地で行われた大規模団地の建て替え事業の先駆け的な事業となった。
こうした実績を生かし、2019年には、東京建物は東京23区最大級となる従前戸数490戸の大型建て替え事業「石神井公園団地」に共同参画することが決まった。
区役所の本庁舎とマンションの融合「Brillia Tower池袋(ブリリアタワー池袋)」
老朽化し、分散化した本庁舎を新しくしたいとする豊島区の意向と利便性の高いマンションを結びつけ、区役所の本庁舎と住宅を一体化させるという日本初の画期的なプロジェクトが生まれた。それが、「Brillia Tower池袋」(東京都豊島区)だ。
ここは、1階から10階が豊島区役所、商業施設、オフィスで、11階から49階が住宅という立体都市になっている。外観も印象的で、世界的な建築家・隈研吾氏がデザインを監修、自然光や緑をモチーフにした高いデザイン性を実現した。
また、建物外部には環境負荷を軽減する「エコ・ヴェール」を設置、池袋の新たなランドマークとなっている。この「Brillia Tower池袋(ブリリアタワー池袋)」は、「Brillia(ブリリア)」シリーズの代表作となった。
東京建物「Brillia(ブリリア)」がつくる街、有明
「Brillia(ブリリア)」マンションが街づくりの中心になった例もある。湾岸エリアの有明(東京都江東区)である。有明エリア開発の先駆けとなったのが、2008年に竣工した「BrilliaMare有明(ブリリアマーレ有明)」だ。
世界的なスターのマドンナをイメージキャラクターとして採用するなど、派手な宣伝と非日常をアピールした豪華仕様の高層タワーは当時大きな話題となった。最上階には、プール、ジム、バー、スパなど規格外の共用施設を作り、リゾートホテルのようなマンションを実現した。
豊洲、勝どきなどと比べ後発の開発となった湾岸エリアの有明だったが、以後「Brillia有明スカイタワー」、「Brillia有明 City Tower」、「Brillia Tower 有明MID CROSS」と「Brillia」を冠したタワーマンションが次々と建てられ、有明は東京建物のまちと呼ばれるようになった。
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駅前タワーマンションの先駆け的存在「Brillia Towers目黒(ブリリアタワーズ目黒)」
2017年には、JR山手線などの目黒駅の駅前に誕生した大規模複合再開発プロジェクト「Brillia Towers目黒」(東京都品川区)が誕生した。ノースレジデンス、サウスレジデンスの2棟、40階建てと38階建てのツインタワーで、総戸数は940戸(総分譲戸数661戸)のマンションだ。
人気の目黒駅前、徒歩1分という極上の立地にある超高層マンションということで、第1期販売の495戸(30.05㎡~15150 .11㎡)は4850万円から4億5900万円という強気の価格設定だったが、山手線沿線の駅前フラッグシップマンションとして利便性、希少性が高く評価され、平均倍率3.5倍、最高倍率43倍で即日完売した。
その後も販売は順調に進み、結果661戸がわずか4ヵ月で完売となった。この「ブリリアタワーズ目黒」は、その後の東京圏、特に駅前立地型のマンション市場に大きなインパクトを与えたことは間違いない。
「Four Seasons Hotel」と一体となった超高層マンション「Brillia Tower堂島(ブリリアタワー堂島)」
2021年にも話題の物件が登場する。なかでも、東京建物が「今年の目玉」と力を入れているのが、2021年10月中旬販売開始予定の「Brillia Tower堂島(ブリリアタワー堂島)」だ。
大阪市北区堂島2丁目に、再開発事業「ONE DOJIMA PROJECT」として地上49階・地下1階の建物が建設される。そこに世界的なラグジュアリーホテル「Four Seasons Hotel」と一体となった東京建物のプライベートレジデンス「Brillia Tower堂島(ブリリアタワー堂島)」が誕生する。
ホテルと分譲マンションが一体となった物件はほかにもあるが、世界有数の5つ星ホテル「Four Seasons Hotel」との同居はわが国初であり、かつ「Four Seasons Hotel」が大阪に進出するのも初めてのことになる。
水の都にふさわしく帆をイメージした優美な外観デザインで、マンションは4階~27階、38階~49階に入り、総戸数は465戸。専有面積30㎡台から最大230㎡台まで多様なニーズに応える間取りが用意され、天井高は約2.7~約4mというゆとりの空間になる。
また、2階と43階にコンシェルジュを配し、最上階には全居住者が利用できる「ザ・ペントハウス(パーティールーム)」を設けるなど、超高級ホテルと同居するマンションにふさわしい共有施設が実現する予定だ。
東京建物が早期に取り組んだ「定期借地権マンション」
また、忘れてはならないのが「定期借地権付きマンション」だ。定期借地権とは、1992年に創設された制度で、期限付きで土地を借り入れ、期間満了時に所有者に土地を返却する形式の分譲マンションだ。土地を購入しないことから所有権付きマンションより低価格で購入できるメリットがある。
業界でも早期の1996年、東京建物は、東京都荒川区(町屋駅徒歩12分)に定期借地権付きマンション「プランヴェールEX」(総戸数229戸)の分譲を開始した。以降、利便性の高いエリアを中心に定期借地権付きマンションを多数手掛けてきた。
直近で代表的な定期借地権付きマンションは「ブリリアシティ西早稲田」(東京都豊島区、2022年3月竣工予定)である。JR山手線の内側、東京メトロ東西線「高田馬場」駅から徒歩12分の地に、総戸数454戸を開発中だ。その立地利便性、平均73㎡という一回り広いプラン、多彩な共用施設などの商品性が高い評価を受け、第1期・1期2次で販売した計196戸は、296件の登録申込みがあり、平均1.5倍、最高9倍をつけるほどの人気となった。
このように、東京建物は、時代時代のエポックメイキングとなるマンション開発を多く手掛けてきた。これからどのようなマンションを開発し、業界を牽引していくのか、注目が集まる。
◆Brillia Tower 有明 MID CROSS(モデルルーム公開中) | ||||
価格 |
4,598万円~ |
入居時期 |
2021年11月下旬予定 |
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交通 | ゆりかもめ「お台場海浜公園」駅徒歩8分 他 | 所在地 | 東京都江東区有明1丁目101番8号 (地番) | |
間取り | 1LDK~3LDK | 建物面積 | 44.48~89.99㎡ | |
総戸数 | 300戸 | 来場者数 | ー | |
売主 | 東京建物 | 施工会社 | 三井住友建設 | |
※データは2021年5月21日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。 |
◆Brillia Tower 堂島 | ||||
価格 |
未定 |
入居時期 |
2024年3月下旬予定 |
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交通 | JR「大阪」駅徒歩9分 他 | 所在地 | 大阪府大阪市北区堂島二丁目17番5(地番) | |
間取り | 1LDK ~ 3LDK | 建物面積 | 37.01㎡ ~ 236.06㎡ | |
総戸数 | 465戸 (募集対象外住戸55戸含む。住宅フロア:4階~27階、38階~49階、ホテルフロア28階~37階、一部住戸にて住戸連結の分譲の可能性があるため、総戸数が変更となる場合があります) | 来場者数 | ー | |
売主 | 東京建物 | 施工会社 | 竹中工務店 | |
※データは2021年5月21日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。 |
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