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「プレミスト」の大和ハウス工業は、なぜ人気があるのか? ハウスメーカーならではのネットワークと地方でのマンション展開がカギ!大手不動産会社分析(6)

2021年5月31日公開(2024年9月30日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

大和ハウス工業は、倉庫からスタートしたハウスメーカーだが、現在は注文住宅のほか、一戸建てやマンションなどの分譲住宅など幅広く事業を広げている。売上高規模でみれば、大手不動産会社や大手ゼネコンをも大きく上回っており、マンション市場でも独自の地位を築いているといっていいだろう。2021年の注目物件も併せて紹介する。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

大和ハウス工業のマンションブランド「プレミスト」は2007年に誕生

 ハウスメーカーとして知られる大和ハウス工業は、1955年に創業、1977年に大型マンション「グリーンコーポ千寿」(東京都)でマンション事業に進出した。その後「ネオ」シリーズ(当時は大和団地)、「ロイヤル」シリーズ、「D’(ディー)」シリーズなどを展開し、2005年には免震構造の建築物として日本最高層(2005年時点)となる超高層免震型分譲マンション「D’グランフォート神戸三宮タワー」(兵庫県)を完成させた。

 なかなかブランドが定まらなかったマンション事業だが、現在のマンションブランドである「プレミスト」シリーズが誕生したのは、2007年のこと。大和ハウス工業としては、2020年10月末現在、全国に9万7967戸のマンション分譲を行っている。2021年には2000戸前後の供給が見込まれるため、2021年内か2022年初めには、大和ハウス工業のマンションは累計で10万戸を突破することになるとみられる。

 民間調査機関の不動産経済研究所の調べによると、大和ハウス工業の2020年の新築マンション発売戸数は2039戸で、事業主別のランキングでは7位にランクされている。ここ10年、安定的に分譲マンションを供給している。

大和ハウス工業の新築マンション発売戸数と事業主別ランキングの推移

大和ハウス工業の新築マンション発売戸数と事業主別ランキングの推移
(資料:不動産経済研究所「全国マンション市場動向

 大和ハウス工業のブランド名「プレミスト」の語源は、「PREMIUM」(上等な、上質な、高価な)と、「IST」(~する人)を組み合わせた造語。上質な暮らし、住まいを求める人へのマンションといった意味合いになる。

 ハウスメーカーとしてのノウハウを駆使しながら、長寿命の住まいに欠かせない快適性と安全性を重視した建物とし、管理体制、アフターサービスまで一貫体制を取っている。大手不動産会社の手がける分譲マンションのような派手さや華やかさには欠けるものの、シンプルで温かみがあるマンションが多いといわれる。

 なお、20階建て以上の超高層マンションについては、「プレミストタワー」と命名されることがある。 

大和ハウス工業のマンション戦略は、北海道や札幌など地方のマンション開発を重要視

 地域性を重視する考え方は、ハウスメーカーならではと言えるだろう。全国に支店や営業所、住宅展示場などを多数有し、大手不動産会社以上の情報網を持っているのも強みだと言える。

 大和ハウス工業は、首都圏、近畿圏に限らず、全国でバランスよくマンション開発を行ってきた。これまでの実績をみると、首都圏が約2.8万戸と最も多く、近畿圏が2.4万戸で、中部・北信越が1.3万戸、東北エリア1.2万戸、九州・沖縄1万戸、北海道0.9万戸などとなっている。

 2020年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、二地域居住などの新たなライフスタイルが注目されるようになってきたが、大和ハウス工業では、実はそれは2011年の東日本大震災後に始まっていたと見ている。

 首都圏では震災後の計画停電や余震が多発するなど震災の影響が大きく、より安心感のある沖縄県や北海道のマンションが売れるようになってきたのだ。こうしたことから、大和ハウス工業でも沖縄県や北海道で他社に先駆けた開発を行ってきた。

 沖縄県の場合、地元の人たちが台風対策としてマンションを購入するケースが多いが、物件によっては4割から5割が県外からの購入だという。この地方展開は今後の事業計画においても重要な柱となっている。

2021年に注目された、駅直結の新築マンション「プレミストタワー新さっぽろ」

「プレミストタワー新さっぽろ」の外観
「プレミストタワー新さっぽろ」の外観(提供:大和ハウス工業)

 2021年の目玉物件の一つが、その北海道における「プレミストタワー新さっぽろ」。北海道札幌市厚別区厚別中央の、JR千歳線「新札幌」駅、地下鉄東西線「新さっぽろ」駅からともに徒歩4分。

 「住・商・医・学・ホテル」の大規模複合開発の街づくりが行われる地区の一画に、地上30階建て、総戸数220戸のマンションが建設される予定だ。

 JR駅・地下鉄駅直結のプロジェクトであり、地元の関心も高い。大規模のメリットを活かして、ゲストルームが3戸のほか、ワーキングラウンジ、フィットネスルーム、パーティールーム、スカイラウンジなどが用意される。

 2023年5月中旬完成予定で、入居予定は同年7月下旬。2021年6月中旬からの販売予定となっており、専有面積は50㎡台~120㎡台、間取りは1LDK~4LDK、価格は3500万円から1億8000万円台の予定だ。札幌市でもかなりの高額物件だけに、どれくらいの売れ行きになるのか、その動向が注目される。

【関連記事はこちら】>>「プレミストタワー新さっぽろ」の価格や特徴を分析! 外気に触れずに移動可能な「ペデストリアンデッキ」で、冬場も快適!

首都圏の注目物件は、「プレミスト湘南辻堂」「プレミスト船橋塚田」

 首都圏でも大規模物件の継続販売が行われる。

「プレミスト湘南辻堂」の外観
「プレミスト湘南辻堂」の外観(提供:大和ハウス工業)

 その一つ、「プレミスト湘南辻堂」は、神奈川県藤沢市羽鳥一丁目にあり、最寄り駅のJR東海道本線「辻堂」駅から徒歩9分のマンションだ。

 湘南エリア最大級の敷地面積約3万5000㎡、総戸数914戸の大規模開発物件で、「クラブライブラリー」「ギャザリングテラス」「クラブカフェ」「ゲストルーム」「パーティー&キッズルーム」など16の共用施設が用意されている。

 価格は2021年4月下旬の販売で、専有面積68㎡台から87㎡台、2LDK+S(納戸)~4LDKの間取りの住戸が3900万円台から6300万円台となっている。

 また、「プレミスト船橋塚田」は、千葉県船橋市行田一丁目にあり、最寄り駅は東武アーバンパークライン(東武野田線)「塚田」駅徒歩3分という、駅近立地の大規模開発で、総戸数は571。2021年4月時点の先着順販売では、専有面積65㎡台~76㎡台の2LDK~4LDKが3580万円から4650万円だ。

 さらに、東京都北区の東京メトロ南北線の「王子神谷」駅徒歩2分の場所に、総戸数227戸のマンション開発を進めている。ここでは、大和ハウス工業が力を入れているSDGsの取り組みとして、生物多様性の認証(ABINC)を受け、もともと東京にあった豊かな動植物の生態系を呼び戻す計画を立てている。

 また、首都圏では1981年の新耐震基準施行以前の旧耐震のマンションの建て替えを積極的に推進しており、東京都内でもすでに3棟の建て替えを実現。今後も東京都港区の白金台などで新たな物件が出てくる見込みだ。

原点はハウスメーカー、マンション知名度アップを狙う

 大和ハウス工業の原点は、あくまでもハウスメーカーというところにある。マンション分譲に当たっても、地域性を重視するだけでなく、マイホームの温かさや住み心地を重視している。

 特に入居後のサポートや管理業務は、グループ内で一括管理するなど企業全体でのバックアップ体制が整っている。メンテナンス、アフターサービスの充実は、ハウスメーカーの強みと言えるかもしれない。

 ただ一方では、注文住宅戸建てのテレビコマーシャルのイメージが強く、「プレミスト」シリーズが大和ハウス工業のマンションであることを知っている人がどれくらいいるのかが気になるところ。マンションメーカーとしてのイメージを定着させることが今後の課題となるだろう。

【大手不動産会社分析】記事一覧
1.住友不動産
2.三井不動産レジデンシャル
3.東急不動産
4.野村不動産
5.三菱地所レジデンス
6.大和ハウス工業
7.東京建物
 

大和ハウスの物件一覧
(Yahoo!不動産のサイトへ)

◆プレミストタワー新さっぽろ
価格

3,500万円台~18,000万円台

入居時期 2023年7月下旬予定
交通 JR千歳線「新札幌」駅から徒歩4分  他 所在地 北海道札幌市厚別区厚別中央1条6丁目493-37他
間取り 1LDK ~ 4LDK 建物面積 50.05㎡ ~ 120.34㎡
総戸数 220戸 来場者数
売主 大和ハウス 施工会社 フジタ・大成建設特定建設工事共同企業体
※データは2021年5月1日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
◆プレミスト湘南辻堂
価格

3,990万円~7,180万円

入居時期

2018年12月完成済(AQUA Face) 
2021年1月完成済(FOREST Face)

交通 JR東海道本線「辻堂」駅徒歩9分 (AQUA Face)/徒歩11分(FOREST Face) 所在地 神奈川県藤沢市羽鳥一丁目1003番2、1003番3(AQUA Face)
神奈川県藤沢市羽鳥一丁目1002番1、1002番2(FOREST Face)
間取り 2LDK~ 4LDK 建物面積 68.91㎡ ~ 90.33㎡
総戸数 914戸 来場者数
売主 大和ハウス・神奈川中央交通・長谷工コーポレーション 施工会社 長谷工コーポレーション
※データは2021年5月1日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
◆プレミスト船橋塚田
価格

3,730万円~4,750万円

入居時期

2020年9月完成済

交通 東武アーバンパークライン(東武野田線)「塚田」駅徒歩3分  所在地 千葉県船橋市行田一丁目382番25(地番)
間取り 2LDK(3戸)・3LDK(32戸)・4LDK(9戸) 建物面積 65.09㎡ ~ 76.59㎡
総戸数 571戸 来場者数
売主 大和ハウス 東武鉄道 施工会社 長谷工コーポレーション
※データは2021年5月1日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
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