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「シティタワー」で知られる住友不動産のマンション
19年まで6年連続発売戸数トップの実績
独自の販売戦略、豊富なブランドラインナップを分析してみた!大手不動産会社分析(1)

2021年2月9日公開(2024年6月27日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

全国の新築マンションの事業主別ランキングで2014年から2019年まで6年間トップの座を占めてきた住友不動産。近年は戸数や順位にこだわらない方針から、年間3000戸前後で推移しているが、マンションの品質、販売手法など独自の戦略で、業界をリードしている。その強さの秘密、豊富なブランドラインナップなどを調べてみた。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

旧財閥系の中で、いち早く分譲マンションに進出

 メジャーセブンと呼ばれるマンション分譲大手の不動産会社(住友不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産、東京建物、東急不動産、大京)は、その知名度の高さ、供給する物件の品質の高さなどから高い人気を誇っている。

 そして、各不動産会社はそれぞれ異なる特徴があることでも知られている。なかでも住友不動産は、独自の販売戦略と、マンションの品質の高さに定評がある。

 住友不動産のマンションの歴史は1962年の「目白台アパート」まで遡る。外国大使館員や外資系企業幹部などをターゲットとした高級賃貸アパートで、後に「目白台ハウス」と改称され、一般分譲された。旧財閥系の不動産会社(住友不動産、三井不動産、三菱地所)のなかで、マンション分譲に取り組んだのは住友不動産が初めてのことであり、「マンションのパイオニア」を自認してきた。

 三菱は東京・丸の内を中心に良質なオフィスビルを多数有して丸の内の大家さんと呼ばれ、三井は東京・日本橋などに多数のビルや商業施設を持ち、三井村といわれるほど膨大な不動産を有している。それに対して、住友は大阪が本拠であり、東京にはほとんど足場がなかったこともあり、二社が手をつけていない新たな分野に力を入れる必要があったのではないだろうか。

 そうした経緯もあり、2014年には事業主別の新築マンション発売戸数ランキングでトップとなり、以来6年、2019年もトップを維持し続けていた。しかし、近年では供給戸数にこだわらず、安定的に年間3000戸前後、順位にして5位前後での推移に変わっている。同時に無理をせずに、じっくりと時間をかけて販売していくという独自の販売戦略を確立して、他社とは一線を画している。

(資料:不動産経済研究所「全国マンション市場動向」)
(資料:不動産経済研究所「全国マンション市場動向」)

国内初の超高層マンション開発を手がけた住友不動産

 マンションのパイオニアを自認するだけあって、これまでにさまざまな面で業界のエポックメーキングとなる物件を手がけてきた。

 たとえば、1976年竣工の「与野ハウス」(埼玉県与野市・現在はさいたま市中央区)は、鉄筋コンクリート造の地上21階建てで、わが国初の超高層マンションといわれる。高さ約66m、総戸数463戸の大規模物件で、1970年からスタートした総合設計制度を活用したマンションの第1弾という点でも注目された。総合設計によって高さを確保し、後に続く超高層マンション時代への道を開いたということができる。

 また、分譲から40年以上が経過した「広尾ガーデンヒルズ」(東京都港区)は、現在も高い人気を誇り、ヴィンテージマンションの代名詞といっても過言ではない。三井不動産、三菱地所、第一生命との4社の共同事業で、住友不動産が事業幹事をつとめた。総戸数1181戸で、「都心の一等地における最後の大規模開発」といわれ、1982年の発売以来、即日完売を続け、最高倍率が209倍に達した住戸もあったほどだ。

 そして、その人気はいまも続いている。竣工から40年たった現在も大規模修繕によって外観が新築並みに保たれ、維持・管理が充実していることもあり、分譲時価格より高い価格で取り引きされている。なかなか売出物件が出ず、新規売出があれば、すぐに客がつき、値引き交渉などなしで成約するのが当たり前となっている。なかには、「言い値で買う」という購入希望者もいるほどだ。

独自の販売手法は、竣工後もじっくり販売

「ワールドシティタワーズ」は3棟からなる2090戸の超高層タワー(写真提供:住友不動産)
「ワールドシティタワーズ」は3棟からなる2090戸の超高層タワー(写真提供:住友不動産)

 マンションとしての規模とともに、その内容や販売手法においても革新的と話題になったのが、2007年全体竣工の「ワールドシティタワーズ」(東京都港区)。

 総戸数2090戸という規模もさることながら、24時間スーパー、保育所、クリニックなどのインフラを整備し、街のランドマークとなる外観、豪華なエントランス、ホテルライクな共用部などのほか、専有部では、ハイサッシで足元から天井近くまで眺望が開けるダイナミックパノラマを採用、その後のメガマンションのモデルとなったとさえいわれる。

 販売手法の転換も注目された。それまでの新築マンションの売り方は、「即日完売」主義で、完成後には値引きしてでも早く売り切り、回転で勝負するのが主流だったが、この「ワールドシティタワーズ」で、住友不動産はあえて完成後の外観や共用部を見せることで、完成後も値引きせずにじっくり時間をかけて販売する方針をとった。

 それまで定石となっていた「建物の完成後は、売れていない住戸を値引きする」という売り方をやめたわけだ。これは、体力のある不動産会社だからできることであるが、結果的に完成後も値下がりしないため、消費者からの物件評価も高まったといわれる。

 何しろ、販売開始から完売まで10年間かけて売り切り、その間、一度も値引きしなかったというから、なかなかのものではないだろうか。

物件別モデルルームはつくらず、「総合マンションギャラリー」を採用

 販売手法としては、マンションごとにつくるモデルルームではなく、一カ所で販売中の全マンションの情報を収集できる「総合マンションギャラリー」の設置が注目を集め、やがて他社の多くも追随することになった。

総合マンションギャラリーのコンセプトルーム(写真提供:住友不動産)
総合マンションギャラリーのコンセプトルーム(写真提供:住友不動産)

 さらに、2020年7月のコロナ禍においては、新築分譲マンションについて、物件見学から引き渡しまで「非対面」で完結する、「リモート・マンション販売」を他社に先駆けて採用して話題となった。

 こうした姿勢は、江戸時代初期の住友の初代である住友政友以来の「浮利に趨(はし)らず」という考え方に基づくものかもしれない。目先の利益を追わず、信用を重んじ、確実を旨とする基本姿勢が、現在も住友グループ共通の事業精神に継承されており、それが住友不動産にも脈々と受け継がれているのだろう。

 先の「ワールドシティタワーズ」は2000戸超という規模の大きさもあって、分譲開始から完売まで10年の年月をかけている。バブル崩壊後のデフレ環境下ではあったものの、決して値下げすることなく、むしろ年を追うごとに人気が高まり、価格が上昇、購入者から高い評価を得ている。

「シティタワー」「シティテラス」など、品質にこだわった多彩なマンションブランドを展開

 住友不動産は、大手不動産会社のなかでも「マンションのパイオニア」を自任し、供給量で業界をリードするだけではなく、同社最高峰の「グランドヒルズ」シリーズをはじめ、「シティタワー」などの超高層マンション、さらに高級賃貸マンションの「ラ・トゥール」シリーズなど多彩なラインアップを誇る。

グランドヒルズ

 住友不動産が提供するマンションブランドの最高峰で、番町、白金台、西麻布など希少性の高い立地が大前提になる。その上で、建物は特徴ある外観デザインを採用し、周囲の街並みに溶け込みながらも存在感を示す。主な物件は、「西麻布グランドヒルズ」(推定相場価格:約591万円/坪 マンションレビュー)、「グランドヒルズ白金台」「グランドヒルズ一番町」など。

 設備・仕様のグレードの高さなどのハード面での充実ぶりはもちろん、ソフト面でもコンシェルジュサービスなど、きめ細かな管理サービスが行き届いている。将来にわたって住み続けるマンションとして申し分ないだけではなく、高い資産性を期待できる。

シティタワー

 高級タワーマンションシリーズで、「シティタワーズ豊洲」や「シティタワーズ東京ベイ」のように、複数の棟からなる場合には、「シティタワーズ」と呼ばれる。ブルーブラックの大胆な色彩を採用した外観デザイン、天空にそびえ立つようなスタイリッシュなフォルムなど、エリアのステータスシンボルとしての威風を備えた物件が多い。エントランス、共用施設なども充実しており、コンシェルジュなど充実したサービスも備えている。

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シティハウス

 住友不動産のメインブランド。駅近郊、商業施設が充実しているなど、都市生活の利便性を重視して供給されている。中規模から大規模までさまざまなマンションがあり、デザイン的には直線的でシンプルかつスタイリッシュな建物が多く、住友不動産のマンションに共通する傾向になっている。居住スペースには、ユニバーサルデザインを取り入れ、シニアにも使いやすいように配慮されているのも特徴。

シティテラス/ガーデンテラス

 上記のほかに、比較的な閑静な住宅地にある「シティテラス」、自然環境に恵まれた「ガーデンヒルズ」などがある。

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ラ・トゥール

  住友不動産の高級賃貸マンションシリーズのブランド名。落ち着いたたたずまいのモダンでシンプルなデザイン、開放感にあふれた壮麗で気品を備えたエントランス、機能的な使いやすいシステムキッチン、上質のリラクゼーションスペースなどが用意されている。

 東京、大阪、札幌などで展開しており、「ラ・トゥール代官山」には、日本一高いとわれる専有面積500㎡超、家賃500万円以上の部屋がある。ちなみに、「ラ・トゥール」とはフランス語で「塔」の意味。

実物を見られる完成済み物件を多く販売

 そんな住友不動産らしく、2024年6月現在も完成済みのマンションを継続して販売している物件が多い。多くの新築マンションでは、完成前の「青田売り」が中心で、竣工まで売り切ることが前提になっているが、住友不動産ではそうではない。

 特に、富裕層向けの高額物件に関しては、実物を見学できるのが大きなメリットであり、「むしろ完成後の販売のほうが売りやすい」とする担当者もいるほどだ。

 住友不動産の最高級ブランドのひとつである「グランドヒルズ南青山」は総戸数105戸で、2022年に竣工しているが、2024年6月現在でも、先着順受付の販売が継続されている。専有面積は42㎡台から80㎡台で、価格は1億3500万円台から2億9000万円台となっている。完成しても焦ることなく、じっくりと販売していくという住友不動産の販売戦略が体現されている。

 南青山という立地、ワールドワイドなブランドショップ、歴史ある寺社、桜並木、庭園などを実際に見てもらいながら、住環境とともに、格式高い外観ファサード、広々としたエントランスホールなどに接してもらうことで、富裕層の満足度を高めたいとしている。

 「グランドシティタワー月島」(東京都中央区)は、地上58階・地下2階建て、総戸数1285戸の大規模マンション。超高層マンションが急速に増えている月島エリアでも、58階建てというのは最高層で、2026年の完成時にはエリアのランドマークになるのは間違いないところ。足元にはもんじゃ街という下町風情を残す場所に、隅田川の水辺を見下ろす開放感あふれる住まいになる。

 「グランドヒルズ南青山」と違って、竣工は2026年なので、実物を見ることはできないが、先進的な販売手法を駆使する住友不動産らしく、この「グランドシティタワー月島」では、「オンライン見学会」を行っており、物件公式ホームページから申し込むことができるようになっている。また、メタバースによる物件案内も行っていて、客が設定したアバターを通じて営業スタッフが物件や周辺環境などを案内してくれる仕組み。住友不動産の販売手法はまだまだ進化していくことになりそうだ。

住友不動産が手がけた注目の物件一覧

最後に、先に説明した「グランドヒルズ南青山」や「グランドシティタワー月島」を含む住友不動産が手がけた注目の物件一覧を紹介する。

図表2 住友不動産が手がけた注目の物件

名称 所在地 竣工年 総戸数
与野ハウス 埼玉県さいたま市 1976年 463戸
広尾ガーデンヒルズ 東京都港区 1983年 1183戸
六甲グランドヒルズ 兵庫県神戸市 1985年 384戸
シティタワー高輪 東京都港区 2004年 365戸
ワールドシティタワーズ 東京都港区 2005年 2090戸
シティタワーズ豊洲 ザ・ツイン 東京都江東区 2009年 1063戸
ラ・トゥール代官山 東京都渋谷区 2010年 138戸
ドゥ・トゥール 東京都中央区 2015年 1668戸
グランドヒルズ南青山 東京都港区 2022年 105戸
グランドシティタワー月島 東京都中央区 2026年 1285戸

 

 

住友不動産の物件一覧
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