「シティタワー」で知られる住友不動産のマンションは、なぜ販売戸数トップなのか?
独自の販売戦略、豊富なブランドラインナップを分析してみた!大手不動産会社分析(1)

2021年2月9日公開(2023年1月5日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

全国の新築マンション発売戸数の事業主別ランキングで、2014年以来2019年まで6年間トップの座を確保している住友不動産。「シティタワー」などのマンションシリーズで知られる住友不動産は、量だけではなく、マンションの品質、販売手法など独自の戦略で業界をリードするマンションのリーディングカンパニーと言っていいだろう。その強さの秘密、豊富なブランドラインナップを調べてみた。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

旧財閥系の中で、いち早く分譲マンションに進出

 メジャーセブンと呼ばれるマンション分譲大手の不動産会社(住友不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産、東京建物、東急不動産、大京)は、その圧倒的な知名度から絶大な人気を誇る。

 そして、各不動産会社はそれぞれ異なる特徴があることでも知られている。中でも住友不動産は、販売戸数の多さと独自の販売戦略に定評がある。

 住友不動産のマンションの歴史は1962年竣工の「目白台アパート」まで遡る。外国大使館員や外資系企業幹部などをターゲットとした高級賃貸アパートで、後に「目白台ハウス」と改称され、一般分譲された。旧財閥系の不動産会社(住友不動産、三井不動産、三菱地所)のなかでマンション分譲に取り組んだのは住友不動産が初めてのことであり、「マンションのパイオニア」を自任してきた。

 2014年には事業主別の新築マンション発売戸数ランキングでトップとなり、以来6年、2019年もトップを維持し続けている。

 三菱地所レジデンス(以下、三菱地所)、三井不動産レジデンシャル(以下、三井不動産)などの他の財閥系大手とは2000戸以上の差があり、大きく水を開けている(下表参照)。

国内初の超高層マンション開発を手掛ける住友不動産

 発売戸数という‟量”でリードするだけではなく、「マンションのパイオニア」にふさわしく、業界のエポックメーキングとなる物件を手がけてきたという点でも注目度は高い。

 たとえば、1976年竣工の「与野ハウス」(埼玉県与野市・現在はさいたま市中央区)は、鉄筋コンクリート造の地上21階建てで、わが国初の超高層マンションといわれる。高さ約66m、総戸数463戸の大規模物件で、1970年からスタートした総合設計制度を活用したマンションの第1弾という点でも注目される。

 また、分譲から40年近くが経過した「広尾ガーデンヒルズ」(東京都渋谷区)は、現在も高い人気を誇り、高額で取引されている。三井不動産、三菱地所、第一生命との4社の共同事業で、住友不動産が事業幹事をつとめた。総戸数1181戸で、「都心の一等地における最後の大規模開発」といわれ、1982年の発売以来即日完売を続け、最高倍率が209倍に達した住戸もあったほどだ。

独自の販売手法は、竣工後もじっくり販売

「ワールドシティタワーズ」は3棟からなる2090戸の超高層タワー(写真提供:住友不動産)
「ワールドシティタワーズ」は3棟からなる2090戸の超高層タワー(写真提供:住友不動産)

 マンションとしての規模とともに、その内容や販売手法においても革新的と話題になったのが、2007年全体竣工の「ワールドシティタワーズ」(東京都港区)。

 総戸数2090戸という規模もさることながら、24時間スーパー、保育所、クリニックなどのインフラを整備し、街のランドマークとなる外観、豪華なエントランス、ホテルライクな共用部などのほか、専有部では、ハイサッシで足元から天井近くまで眺望が開けるダイナミックパノラマを採用、その後のメガマンションのモデルとなったとさえいわれる。

 販売手法の転換も注目された。それまでの新築マンションの売り方は、「即日完売」主義で、完成後には値引きしてでも早く売り切り、回転で勝負するのが主流だったが、この「ワールドシティタワーズ」で、住友不動産はあえて完成後の外観や共用部を見せることで、完成後も値引きせずにじっくり時間をかけて販売する方針をとった。

 それまで定石となっていた「建物の完成後は、売れていない住戸を値引きする」という売り方をやめたわけだ。これは、体力のある不動産会社だからできることであるが、結果的に完成後も値下がりしないため、消費者からの物件評価も高まったといわれる。

物件別モデルルームはつくらず、「総合マンションギャラリー」を採用

 販売手法としては、マンションごとにつくるモデルルームではなく、一カ所で販売中の全マンションの情報を収集できる「総合マンションギャラリー」の設置が注目を集め、やがて他社の多くも追随することになった。

総合マンションギャラリーのコンセプトルーム(写真提供:住友不動産)
総合マンションギャラリーのコンセプトルーム(写真提供:住友不動産)

 さらに、2020年7月のコロナ禍においては、新築分譲マンションについて、物件見学から引き渡しまで「非対面」で完結する、「リモート・マンション販売」を他社に先駆けて採用して話題となった。

 こうした姿勢は、江戸時代初期の住友の初代である住友政友以来の「浮利に趨(はし)らず」という考え方に基づくものかもしれない。目先の利益を追わず、信用を重んじ、確実を旨とする基本姿勢が、現在も住友グループ共通の事業精神に継承されており、それが住友不動産にも脈々と受け継がれているのだろう。

 先の「ワールドシティタワーズ」は2000戸超という規模の大きさもあって、分譲開始から完売まで10年の年月をかけている。バブル崩壊後のデフレ環境下ではあったものの、決して値下げすることなく、むしろ年を追うごとに人気が高まり、価格が上昇、購入者から高い評価を得ている。

「シティタワー」「シティテラス」など、品質にこだわった多彩なマンションブランドを展開

 住友不動産は、大手不動産会社のなかでも「マンションのパイオニア」を自任し、供給量で業界をリードするだけではなく、同社最高峰の「グランドヒルズ」シリーズをはじめ、「シティタワー」などの超高層マンション、さらに高級賃貸マンションの「ラ・トゥール」シリーズなど多彩なラインアップを誇る。

グランドヒルズ

 住友不動産が提供するマンションブランドの最高峰で、番町、白金台、西麻布など希少性の高い立地が大前提になる。その上で、建物は特徴ある外観デザインを採用し、周囲の街並みに溶け込みながらも存在感を示す。主な物件は、「西麻布グランドヒルズ」(推定相場価格:約591万円/坪 マンションレビュー)、「 グランドヒルズ白金台」「グランドヒルズ一番町」など。

 設備・仕様のグレードの高さなどのハード面での充実ぶりはもちろん、ソフト面でもコンシェルジュサービスなど、きめ細かな管理サービスが行き届いている。将来にわたって住み続けるマンションとして申し分ないだけではなく、高い資産性を期待できる。

シティタワー

 高級タワーマンションシリーズで、「シティタワーズ豊洲」や「シティタワーズ東京ベイ」のように、複数の棟からなる場合には、「シティタワーズ」と呼ばれる。ブルーブラックの大胆な色彩を採用した外観デザイン、天空にそびえ立つようなスタイリッシュなフォルムなど、エリアのステータスシンボルとしての威風を備えた物件が多い。エントランス、共用施設なども充実しており、コンシェルジュなど充実したサービスも備えている。

シティハウス

 住友不動産のメインブランド。駅近郊、商業施設が充実しているなど、都市生活の利便性を重視して供給されている。中規模から大規模までさまざまなマンションがあり、デザイン的には直線的でシンプルかつスタイリッシュな建物が多く、住友不動産のマンションに共通する傾向になっている。居住スペースには、ユニバーサルデザインを取り入れ、シニアにも使いやすいように配慮されているのも特徴。

シティテラス/ガーデンテラス

 上記のほかに、比較的な閑静な住宅地にある「シティテラス」、自然環境に恵まれた「ガーデンヒルズ」などがある。

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ラ・トゥール

  住友不動産の高級賃貸マンションシリーズのブランド名。落ち着いたたたずまいのモダンでシンプルなデザイン、開放感にあふれた壮麗で気品を備えたエントランス、機能的な使いやすいシステムキッチン、上質のリラクゼーションスペースなどが用意されている。

 東京、大阪、札幌などで展開しており、「ラ・トゥール代官山」には、日本一高いとわれる専有面積500㎡超、家賃500万円以上の部屋がある。ちなみに、「ラ・トゥール」とはフランス語で「塔」の意味。

実物を見られる完成済み物件を多く販売

 そんな住友不動産らしく、現在も竣工済みのマンションを継続して販売している物件が多い。特に、富裕層向けの高額物件に関しては、実物を見学できるのが大きなメリットであり、「むしろ完成後の販売のほうが売りやすい」とする担当者もいるほどだ。

「シティタワーズ東京ベイ」は大型ショッピングセンターに直結(写真提供:住友不動産)
「シティタワーズ東京ベイ」は大型ショッピングセンターに直結(写真提供:住友不動産)

 たとえば、「ドゥ・トゥール」(東京都中央区)は、2015年に竣工したツインタワーで、鉄筋コンクリート造の地上52階建て、総戸数は1666戸に達する。100㎡台の2LDKが2億円、30㎡台から50㎡台の1R~2Rが4900万円~8600万円などとなっている。

 2019年竣工の「シティタワーズ東京ベイ」(東京都江東区)は、総戸数1539戸、鉄筋コンクリート造地上32階と33階建てのツインタワーで、専有面積は30㎡台~107㎡台、1LDK~3LDKが5400万円~2億円などで販売されている。

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 関西でも地上30階建て、総戸数490戸の「シティタワー東梅田パークフロント」(大阪市北区)は、55㎡台~104㎡台の2LDK~4LDKが5100万円~2億800万円などとなっている。こちらは2018年竣工の物件だ。

2021年の供給数は4000戸の見通し

 今後の見通しに関してみると、2021年の全国の供給予定は4000戸で、うち首都圏が3000戸、近畿圏が700戸、その他地域が300戸となっている。首都圏と近畿圏シフトが明確で、その他地域の比重は小さい。

 2021年の大型案件として、住友不動産では次の物件を挙げている。
・シティテラス上杉(仙台市青葉区)、総戸数336戸
・シティテラス文京小石川(東京都文京区)、総戸数120戸
・シティテラス新小岩(東京都葛飾区)、総戸数270戸
・(仮称)虎ノ門3丁目計画(東京都港区)、総戸数144戸
・シティテラス谷町4丁目(大阪市中央区)、総戸数183戸
・シティタワー天王寺(大阪市天王寺区)、総戸数179戸
・ベイシティタワーズ神戸WEST(神戸市中央区)、総戸数347戸

首都圏は都心に加え、郊外の大規模物件にも注力

 エリア的には、これまで通り東京都心や湾岸部をメインに据えており、今後も東京都中央区月島、豊島区池袋、板橋区大山などで大規模開発を予定している。

 他方、都心ターミナル駅から30分~40分(大手町からおよそ25㎞~30㎞圏内)の郊外の開発にも腰を据えて取り組んでいく方針。たとえば、越谷レイクタウン、草加松原(松原団地)、八千代緑が丘などのエリアで継続して2000戸を超える供給を行っており、それを継続する。大規模、駅近、商業施設近接などの条件を兼ね備えた物件は、若年ファミリー層を中心に高い支持を得ている。

 関西圏では、超高層マンションの先駆けとなった2003年竣工の「シティタワー大阪」以降、コンスタントに都心タワーマンションの供給を行っており、直近では「シティタワー大阪本町」(大阪市中央区)、「ベイシティタワーズ神戸」(神戸市中央区)などを手がける。夫婦共働き世帯の増加傾向を受けて、より利便性を求める動きが強まると見て、引き続き都心部を中心とした供給を進めていく方針だ。

 

住友不動産の物件一覧
(ライフルホームズのサイトへ)

◆シティタワーズ東京ベイ(モデルルーム公開中)
価格

5,400万円~2億円

入居時期

2021年7月下旬

交通 東京臨海高速鉄道りんかい線「国際展示場」駅から徒歩4分  他 所在地 東京都江東区有明二丁目1番210,211,219,235,238,239(地番)他
間取り 1LD・K ~ 3LD・K 建物面積 38.20㎡ ~ 107.62㎡
総戸数 1539戸 来場者数
売主 住友不動産株式会社 施工会社 前田建設工業株式会社
シティタワーズ東京ベイ詳細はこちら
※データは2021年1月18日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
◆シティテラス上杉(モデルルーム公開中)
価格

未定

入居時期

2022年4月下旬

交通 仙台市地下鉄南北線「北四番丁」駅から徒歩7分  他 所在地 宮城県仙台市青葉区上杉二丁目17番3(地番)
間取り 2LD・K+S~ 4LD・K 建物面積 70.23㎡ ~ 92.85㎡
総戸数 336戸 来場者数
売主 住友不動産株式会社 施工会社
シティタワーズ東京ベイ詳細はこちら
※データは2021年1月18日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
◆シティタワー大阪本町(モデルルーム公開中)
価格

4,400万円~2億円

入居時期

2022年9月下旬

交通 Osaka Metro御堂筋線・中央線・四つ橋線「本町」駅 徒歩5分  他  所在地 大阪府大阪市中央区備後町二丁目30番、安土町二丁目33番(地番)
間取り 1LD・K ~ 3LD・K 建物面積 38.41㎡ ~ 103.91㎡
総戸数 855戸 来場者数
売主 住友不動産株式会社 施工会社 清水建設株式会社
シティタワーズ東京ベイ詳細はこちら
※データは2021年1月18日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。
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