マンションブランド「プラウド」で有名な野村不動産。最近では、大規模修繕サイクルの延伸や木造ハイブリッドマンションの採用など新たな取り組みでも注目されている。今回は野村不動産「プラウド」の人気の理由を探ってみた。また、今後の注目マンションについても解説する。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
野村不動産がマンションのブランド化に成功、「プラウド」人気が定着
野村不動産は1957年、野村證券から分離独立して創業する。1961年に神奈川県鎌倉市の「梶原山」の宅地造成から開発事業をスタートし、マンションの分譲は1963年の「コープ竹の丸」(横浜市中区)が第1弾となった。
当時は「コープ」をはじめ、さまざまなブランドが使用されていたが、2002年に「プラウド」に統一。「プラウド久我山」(東京都杉並区)が嚆矢(こうし)となった。その後、郊外型ブランドとして「オハナ」を2011年からスタートさせているが、この「プラウド」ブランドの確立が大きなターニングポイントとなったのは間違いない。
「プラウド」は、上質な生活を想起させる人気ブランドとして定着し、発売戸数も増加し、民間調査機関の不動産経済研究所の調査によると、2012年には全国で発売戸数1位となり、その後も常に3位以内をキープしている。
野村不動産がマンションのブランド化に成功したことに触発され、東京建物が「ブリリア」、東急不動産が「ブランズ」ブランドを打ち出してきたといっても過言ではないだろう。
野村不動産の新築マンション発売戸数と事業主ランキングの推移
高級路線の「プラウド」と低価格が魅力の「オハナ」
野村不動産のマンションシリーズは、以下のような分類となっている。
プラウド
主力のマンションブランドは「プラウド」。テレビコマーシャルが盛んで、認知度が高く、高級マンションとしてのブランド力を確立している。企画開発から、設計、施工まで一貫して自社グループで完結しているのが特徴。分譲後も野村不動産パートナーズが管理を行っているが、各種の顧客満足度調査でトップ評価を得ているのも強みといわれる。
・プラウドシティ
プラウドシリーズの中で、数百から1000戸以上の大規模マンションに冠されるシリーズ名。大規模マンションならではのゆとりある配置計画で、敷地内に遊歩道や緑豊かな広場などが設けられ、建物内にはライブラリースペースなどの共用施設が充実している。なかには、保育園を併設している物件もある。
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・プラウドタワー
プラウドシリーズの中で、20階建て以上の超高層マンション(タワーマンション)につけられるブランド名。周辺環境と調和しつつも、エリアのランドマークとなることを目指し、スタイリッシュな外観デザイン、天井高10メートルの開放的で豪華さにあふれたエントランスアプローチなどを重視している。高層化することで、敷地内の空地率を高めて緑を増やしたり、オープンスペースを確保することで、地域交流の場としての空間づくりをしている。
オハナ
郊外型を想定した、比較的リーズナブルな価格帯のマンションシリーズ。設計、施工は、中級クラスのマンションの実績が豊富な長谷工コーポレーションで統一している。2011年にスタートした新しいブランドであり、2022年現在は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の関東エリアに限られている。
製作、販売、管理の一貫体制と、大規模修繕のコスト削減を意識したマンションづくり
「プラウド」は、「安心と安全」「機能性と心地良さ」「時と共に深まるデザイン」「環境と未来への対応」「豊かな暮らしへのエスコート」の5つを住まいづくりの指針として打ち出している。
特に、「安心と安全」には力を入れる。製作、販売、管理をトータルで考える、製・販・管一貫体制を確立し、設計段階と施工時に厳格な基準を設けて品質を管理している。
グループ企業の特性を生かし、土地取得の開発・営業・建築の担当者が一体となって商品開発をし、その後の販売や管理体制につなげる。また、竣工後もグループ企業である管理会社「野村不動産パートナーズ」が、手厚いサポート体制を提供している。
また、「アトラクティブ30」と呼ぶ大規模修繕コストの低減を意識したマンションづくりプロジェクトを実施。
現行の大規模修繕計画では、一般的に12年ごとの大修繕サイクルになっているが、「アトラクティブ30」では、大規模修繕の工事項目ごとの耐久性を精査し、高耐久部材・工法を採用することで、大規模修繕のサイクルを16年から18年ごとに延伸することが可能になった。コストダウンとともに、住民の心理的な負担感を抑制している。
最新の空調システムを取り入れ、CO₂削減を実現する野村不動産
住まいづくりの指針の一つ「環境と未来への対応」では、環境問題に配慮した取り組みがすすむ。菅首相が2050年のカーボンニュートラルの実現を提唱するなど、環境意識の高まりから住宅部門においてもCO₂排出量削減が重要なテーマになっており、「プラウド」でもさまざまな取り組みを進めている。
その一例として、住戸全体の空調システムとして、24時間365日快適な室温を保つ最新の全館空調システム「床快full(ゆかいふる)」を導入している。
リビングだけではなく、各居室、廊下からトイレ、洗面所、浴室に至るまで住戸全体を換気しながら快適な温度に保ち、冬のヒートショック、夏の熱中症の抑制を実現し、ウィズコロナ時代には感染症の対策にもなる。
わが国では、ヒートショックによって浴室で亡くなる人が、交通事故で亡くなる人よりはるかに多いといわれ、その改善への期待は大きい。電源をオンオフする必要がないため、エアコンなど個別の空調に比べて光熱費の削減にもつながる。CO₂排出を抑制する効果もあり、環境問題にも貢献する。
現在、JR総武線亀戸駅近くで開発が進められている大規模開発の「プラウドタワー亀戸クロス」(東京都江東区)や「プラウド高田馬場」(東京都新宿区)では、追加費用のかからない標準仕様としてこの「床快full(ゆかいふる)」が採用されている。
木材を積極活用、国内初の木造ハイブリッドマンションも!
マンションへの木材の活用も進めている。桜の名所でもある飛鳥山という緑豊かな立地に恵まれた「飛鳥山レジデンス」(東京都北区)では、植物との共生を実現する擁壁緑化を採用。広い敷地を活かして共用棟には、木材をふんだんに使用する。スタディー&ワークラウンジ、パーティーダイニングなどは梁、床、窓枠などに木材を使用し、木の椅子に座り、飛鳥山公園の緑を眺めながらゆったりした時間を過ごすことができる。
また、「プラウド神田駿河台」(東京都千代田区)では、竹中工務店と連携して、日本初となる、RC造と木造のハイブリッド構造の「木造ハイブリッド高層分譲集合住宅」を実現した。柱や壁など構造部の一部に、木質系部材が使用されている。木材は、表面を耐火被覆材などで覆うことなく使用されているため、木の素材感を楽しめるのも魅力だ。
野村不動産の注目物件、「プラウドタワー亀戸クロス」が登場
野村不動産では、2021年も旗艦物件である大規模プロジェクト「プラウドタワー亀戸クロス 」(東京都江東区)や、「プラウドシティ日吉 」(横浜市港北区)などの販売が続く。
「プラウドタワー亀戸クロス」は、JR総武線の亀戸駅から徒歩2分、鉄筋コンクリート造地上25階・地下2階建てで、総戸数は934戸。亀戸エリアでは、最高層タワーであり、新たなランドマークとなる。
もともと、長く地元で親しまれてきた「サンストリート」と呼ばれる大規模なショッピングセンターがあった場所であり、再開発によってテナント数が100を超える大型ショッピングモールが開業予定で、交通アクセス、生活利便施設に恵まれた人気物件になっている。
シングルやDINKs(ディンクス)向けのコンパクトタイプから、ファミリー向けの100㎡超の部屋もあって、多様なライフステージ、ライフスタイルの世帯が生活できるようになっている。
敷地内で生活が完結する、コンパクトシティーを目指す「プラウドシティ日吉」
「プラウドシティ日吉」は、東急東横線・目黒線の日吉駅から徒歩9分という立地。販売が続いているレジデンスⅢの建物は、鉄筋コンクリート造の地上20階建て、総戸数539戸(総計画戸数は1318戸)となっている。最大の特徴は、「商」「健」「学」「働く」の要素を合わせた大規模複合開発で、道路を隔てずに生活のすべてが敷地内で完結する都会のコンパクトシティーを目指している点にある。
敷地内にスーパーや各分野のエキスパートが集結するクリニックモール、調剤薬局などが設置され、隣接する小学校は徒歩3分で、認可保育園が一体開発の商業施設内に開園予定。
共働き夫婦も安心して生活できる。また、敷地内にテニスコート20面分の広場や緑地が用意される予定だ。
2009年以降に神奈川県で分譲された新築マンション1230物件のうち、総戸数1000戸以上で、商業施設と一体となって開発された物件はこの「プラウドシティ日吉」を含めてわずか3物件で、実に全体の0.2%だという。
芝浦エリアに新たなランドマーク「プラウドタワー芝浦」誕生
一方、今年は注目の新規販売物件も登場する。そのひとつが「プラウドタワー芝浦 」(東京都港区)。JR山手線・京浜東北線の田町駅から徒歩11分で、開発が進む新駅の高輪ゲートウェイ駅から徒歩18分だ。このエリアは2027年のリニア中央新幹線開業に向けて、急速に発展を続けるのは必至で、新たな東京、日本の玄関口となることが期待されている。
建物は鉄筋コンクリート造地上33階・地下1階建ての超高層マンションで、設計・施工は竹中工務店が担当する。
「和」のテイストと、木という素材の持つやわらかさを表現した高輪ゲートウェイ駅に呼応するかのように、「木」をデザイン化した穏やかながら格調高い外観デザインが、エリアの新たなランドマークとなる。
総戸数は421戸で、6月下旬からの販売を予定している。価格や販売戸数は未定だが、専有面積は40.16㎡~180.35㎡で、間取りは1LDK~4LDK。富裕層向けのプレミアム住戸は相当な高額物件になりそうだが、低層階にはコンパクトタイプも用意される。
2021年度の税制改正で、住宅ローン減税の対象が現行の50㎡以上から40㎡以上に引き下げられており、シングルやDINKs(ディンクス)も注目しておきたい物件になりそうだ。
住宅ローン減税の関連記事はこちら>>令和3年度税制改正大綱で3年延長の特例措置と40㎡の緩和を)享受する条件とは ?
◆プラウドタワー芝浦 | ||||
価格 |
未定 |
入居時期 |
2023年1月中旬 |
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交通 | JR山手線・京浜東北線 「田町」駅 徒歩11分 他 | 所在地 | 東京都港区芝浦四丁目4-45(地番) | |
間取り | 2LDK ~ 3LDK | 建物面積 | 40.16 ~ 180.35㎡ | |
総戸数 | 421戸 | 来場者数 | ー | |
売主 | 野村不動産株式会社 | 施工会社 | ー | |
※データは2021年3月1日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。 |
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