2024年5月の関西・中部圏のマンション市場(※7月現在では5月データが最新となる)は、一部に変調の兆しを含みつつも、全体としては先月に引き続き好調を維持している。今月も大阪や名古屋などの新築マンション市場動向のほか、新築マンションと中古マンションの市況、そして注目のマンション「パークタワー大阪心斎橋」について解説する。(フリーライター・神納まお)
関西・中部圏の新築マンション市況【2024年5月】
2024年5月の関西・中部圏の新築マンション市況は、おおむね好調に推移している。詳しく見ていこう。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
2024年5月の新築分譲マンション発売戸数は1051戸、対前年同月比2.6%増、対前月比4.0%減。6カ月連続で前年同月を上回った。
契約率は68.7%、前年同月比7.7ポイントアップ、前月比では0.2ポイントアップ。70%割れは2カ月連続。平均価格は5,750万円で2カ月ぶりのアップ、1㎡単価は85.7万円で、7カ月連続のアップとなった。販売在庫数は5月末時点2696戸、前月末比26戸の減少となった。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏の新築マンション価格(平均価格)と契約率の推移を示す。前月よりは回復したものの、今月も好不調ラインの70%をわずかながら下回る結果となった。
平均価格をエリア別にみると、大阪市内の平均価格は前年同月比22.4%アップの5,767万円。神戸市は前年同月比34.9%アップの7,330万円と大阪市内を大きく上回っている。神戸市の平均価格アップは8,000万円台で供給された高額マンションの影響とみられる。
5月のマンション市況の特徴は、
・戸当たり価格、単価ともに5月としては調査開始(1973 年)以降の最高値を更新。
・販売在庫、完成在庫ともに圧縮傾向が続く。
なお、2024年6月の発売戸数は1,200戸程度の見込みとなっている。2023年6月の発売戸数は1,384戸だった。
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
名古屋を中心とする東海エリアは月別のデータがないが、国土交通省「主要都市の高度利用地等地価動向報告~地価LOOKレポート~」によると、主要都市の地価は全ての地区で上昇(令和6年1月1日~4月1日)。名古屋圏の調査対象となっている名古屋市内8地点すべてで「0%超 3%未満」の上昇を示している。
名古屋圏の市況および見通しをまとめると以下の通りだ。
マンション開発素地についても、立地条件によって選別する動きが見られながら、デベロッパー等の需要は総じて堅調な状態が当期も続いている。
2.名古屋市中心部住宅地エリアでは、建築費の上昇を背景に当期もマンション分譲価格がやや上昇傾向で推移。また、マンションデベロッパー等によるマンション開発素地取得需要は底堅い状態が続いており、取引価格は緩やかな上昇傾向が続いている。
関西・中部圏の中古マンション市況【2024年5月】
次に中古マンションの市場を見ていく。
関西エリア(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)
成約件数は昨年後半から増加傾向にあったが、5月は大きく減少に転じ、コロナ禍前の水準を下回った。
しかし、平均成約㎡単価は11カ月連続で前年同月を上回り、上昇率は引き続き高く、相対的に高額な物件を中心に取引は堅調に推移している。
新規登録物件数は17カ月連続で前年同月を上回ったが、増加率は下がっている。新規登録㎡単価は3カ月ぶりに前年同月を下回り、前月比も 3.7%下落した。今後この傾向が続けば安価な売り物件が市場に出てくるだろう。
成約件数をエリア別にみると、前年同月比で全体に減少したなかで大阪市は9カ月ぶり、大阪府北部(池田市・箕面市・豊中市・吹田市・摂津市・茨木市・高槻市など)は4カ月ぶりに減少に転じた。大阪府東部(門真市・守口市・枚方市・寝屋川市・東大阪市など)や南部(堺市・高石市・河内長野市・岸和田市など)、阪神間南部(尼崎市・西京市・芦屋市)などは 2ケタ減となり、取引は軟調となった。
成約㎡単価は全体的に上昇傾向が続き、京都市と奈良市・生駒市は前年比で2ケタ上昇、大阪市と大阪府北部、神戸市は11カ月連続で上昇した。成約件数が減少する中で㎡単価は上昇が目立ち、高額物件が取引の中心となっている現実がうかがえる。
下のグラフは、過去3年間の近畿圏(関西)の中古マンション価格(成約㎡単価、在庫㎡単価)と在庫件数の推移を示す。
中部エリア(富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県)
成約件数・新規登録物件数ともに前年同月比2ケタアップ、成約価格は平均で2,382万円と高い水準をキープ。全体の市況は好調を維持している。
在庫件数は8,577件と、前年比13.5%増と増え続けており、価格、㎡単価は昨年後半からじりじりと下がっている。成約件数も伸びているため需給バランスはなんとか維持しているといっていい。
エリア別にみると、成約件数は取引のメインとなる愛知県で2ケタアップ、石川県など北陸エリアで減少が目立つ。新規登録㎡単価が下がっているのは、愛知県と三重県の計1,561件(全体の7割超)で単価が下がっているためだ。両県の平均築年数が28年と古くなっている。
今月の注目のマンション「(仮)パークタワー大阪心斎橋」
次に、今月の注目マンション「(仮)パークタワー大阪心斎橋」を紹介する。三菱地所レジデンスは、三菱地所の公式ホームページによると「三菱地所レジデンス 大阪ギャラリー開設」とともにタワーマンションの「(仮称)大阪市中央区博労町3丁目計画」を発表した。
三菱地所レジデンスのタワーマンションで、立地エリアから考えると「(仮)パークタワー大阪心斎橋」または「パークハウス大阪心斎橋タワー」といったネーミングになりそうだ。
「(仮)パークタワー大阪心斎橋」は、大阪市中央区博労町3丁目及び南久宝寺町3丁目に建設中の地上35階、高さ125.50m、総戸数222戸のタワーマンション。現地計画看板によると、竣工は2026年12月下旬予定。
ロケーションについて
「(仮)パークタワー大阪心斎橋」の交通ロケーションは、
● Osaka Metro本町駅から約500m、徒歩6分
※筆者の計測によります。実際の距離や時間には誤差が発生する可能性があります。
Osaka Metro堺筋本町までも約600m、大阪市市街地の中心エリアに立地しているため、地下鉄で東西南北の移動に最適なロケーションだ。生活ロケーションは、すぐ西側に心斎橋筋商店街がある。
さらに、現地北側には丼池ストリートもある。
コンビニエンスストアは周辺に点在し、300m圏内にスーパーが2軒、心斎橋駅にはパルコがある。生活上の買い物やショッピング、グルメなどには困らないロケーションといえる。また、徒歩圏内に保育園・幼稚園が1軒ずつ、小学校・中学校も1キロ圏内だ。
現地の様子は
現地は着工したばかりで、まだ建物はない。接道は南側と東側。道路を挟んで南側には13階建てのビジネスホテルがある。西側には13階建てのマンションが隣接している。
東側は、飲食店や駐車場などの商業施設が並ぶ。
南側の道路を西へ行くとすぐに心斎橋筋商店街というロケーションだ。
「(仮)パークタワー大阪心斎橋」予想販売価格は
近隣で販売中のマンションでは、「ブランズタワー大阪本町」が1億前後から1億円台中盤で坪単価は低層階が400万円台後半、13階でも600万円近くの価格が付いている。すでに数件の中古成約事例が出てきている「ブランズタワー大阪本町」の成約価格は坪400万円台で、坪500万円を超える成約も1件ある。
「ローレルタワー堺筋本町」は5000万円台から最上階(44階)で4億円。坪単価は30階以下で400万円台から600万円台、高層階は800万円を超えている。「ローレルタワー堺筋本町」も10件近い中古成約があり、価格は5000万円台から1億2000万円台。坪単価にして400万前後〜500万円台半ば。
ブランズタワー大阪本町もローレルタワー堺筋本町も、「(仮)パークタワー大阪心斎橋」との立地訴求力は大きく変わらないだろう。「(仮)パークタワー大阪心斎橋」の立面図で見る限り3階までは共用施設、北側にタワーパーキングを配置。1LDK低層住戸で5,000万円前後から。2LDKから3LDKのボリューム価格帯で1億円台前半というあたりが、妥当なラインだろう。
まとめ
引き続きマンションの価格は高い水準を維持している。不動産の市況は景気や金利、株価、人口、アメリカ経済の動きなどが指標となり、関西や中部圏は東京の不動産動向や企業の景況感にも影響を受ける。マンションの購入を検討している方は、自分にとっての買い時のほか、できるだけ将来を見通したベストなタイミングを探ってほしい。
※関西圏は大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県の6府県エリア、中部圏は富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県の7県
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