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NYタイムズ紙が山口市を「2024年に行くべき52カ所」に選出! 価格が高騰する前に知っておきたい山口の中古マンション事情

2024年8月6日公開(2024年8月6日更新)
山下和之:住宅ジャーナリスト

アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズが、「2024年に行くべき52カ所」を発表、山口県山口市が3位に選出された。23年に選出された岩手県盛岡市はインバウンド需要が増加、マンション価格も上昇したが、24年には同じような現象が山口市にも起こるのではないかと期待されている。

皆既日食のアメリカ、オリンピックのパリに次いで山口市が3位

山口市の国宝瑠璃光寺の五重塔(出典:PIXTA)
山口市の国宝瑠璃光寺の五重塔(出典:PIXTA)

 ニューヨーク・タイムズ紙は毎年、旅行先として勧める世界の各地の場所を公表しており、2024年には、皆既日食が見られる北米が1位で、オリンピック・パラリンピックが開催されるパリが2位に挙がり、3位に日本の山口県山口市が入った

 2023年に岩手県盛岡市が2位に挙げられたのに続き、2年連続して日本の都市が紹介された。それも、首都圏や近畿圏などではなく、京都・奈良など世界的に知られる観光地ともいえない地方都市だけに注目される。

  全米だけではなく、世界的に影響力の大きい新聞だけに、2023年に盛岡市が2位に挙げられたときには、国内から観光客が増加しただけではなく、世界各地からインバウンド客が押し寄せ、人流が増加、観光客で賑わうだけではなく、移住者も増加した。そして、マンションが買われ、中古マンション価格が急騰した。

山口市も盛岡に続いて中古マンションの価格が上昇する?

 2024年に入っても、その名残から上昇が続いていて、マンション情報の「マンションレビュー」の調査によると、盛岡市の中古マンションの70㎡価格は1487万円で、前年比5.40%の上昇となっている。

  この盛岡市の中古マンションの上昇率は、2024年4月に30件以上の取引があった全国の市区町村237のうち38位。最近は中古マンションの下落傾向が強まっており、106位以下は前年同月比でマイナスだから、38位で+5.40%というのは、注目しておいていいだろう。

 山口県山口市は、まだ月間30件以上の取引がないため対象外だが、地元では、ジワジワと取引が動き始めているという見方が強まりつつあるようだ。

 というのも、山口市は首都圏や近畿圏などの大都市部に比べると、価格水準がまだまだ低いため、地元の人たちだけではなく、大都市部の人たちからの関心度が高くなっているというのだ。

東京都の人が山口県にマンションを買うなら平均年収の3.65倍!

 不動産データバンクの東京カンテイでは、全国の都道府県の中古マンションが、その都道府県の平均年収の何倍で買えるのかという年収倍率を調査しているが、その結果が下のグラフだ。

都道府県別の年収倍率

 2022年の築10年中古マンションの全国平均の倍率は7.27倍だが、山口県は5.07倍となっている。東京都は14.49倍だから、格段に買いやすくなっている。

 しかも、これは山口県の平均年収が416万円で、山口県の平均価格2108万円の中古マンションを買う場合の年収倍率であり、東京都の平均年収は578万円だから、東京都に勤める人が、山口県のマンションを買うとすれば、2108万円÷578万円で、年収倍率は3.65倍に低下する

山口県内にある多彩な都市の中古マンション価格例

  しかし、ニューヨーク・タイムズ紙で取り上げられ、世界的に注目度が高まれば、内外から観光客が押しかけ、山口県の中古マンションが買われるようになって、年収倍率3倍台では買えなくなってしまうかもしれない。

  居住するにしても、リゾート、別荘として活用するにしても、あるいは賃貸で運用するにしても、購入するのであれば早めに買っておいたほうが得策かもしれない。自身でリゾートとして利用するために購入、利用しないときには、民泊で運用するといった手もある。

  それも、山口県には、山口市だけではなく、魅力的な都市が少なくない。錦帯橋で知られる岩国市、コンビナートの夜景が映えると若い人たちの間でも人気が高まっている周南市、フグなどの魚介で知られる下関市などもあり、中古マンション価格も異なっている。

 中古マンションの価格は、岩国市は2000万円台だが、山口市は1400万円台で、下関市などは1000万円台の前半で手に入れることができる。予算に応じて、お気に入りのエリアで取得することができそうだ。
参考:アットホーム「山口市の中古マンション価格相場を調べる

ニューヨーク・タイムズ紙が山口市を取り上げた理由は?

 ところで、ニューヨーク・タイムズ紙が「2024年に行くべき52カ所」の3位に山口市を取り上げた理由をみてみると、古くから「西の京」と呼ばれ、観光公害に悩まされることが少ない、コンパクトシティーであることが大きな魅力とされている。

 現在、各地の観光地では、内外からの観光客の急増によるオーバーツーリズムが問題になっているが、山口市は大都市圏から離れていることもあって、コロナ禍の終息によってインバウンド客が回復しても、比較的静かな環境を維持できているのが、評価の要因にもなっているようだ

山口市の観光の代名詞は国宝瑠璃光寺の五重塔

国宝瑠璃光寺五重塔(写真提供:山口県観光サイト)
国宝瑠璃光寺五重塔(写真提供:山口県観光サイト)

 山口市の観光の代名詞ともいうべき、国宝瑠璃光寺の五重塔は、西の京としての歴史的な文化を感じさせてくれる場所であり、わが国最古の五重塔である法隆寺五重塔、豊臣秀吉の醍醐の花見で知られる醍醐寺の五重塔と並ぶ、三名塔のひとつとされている。

 戦国大名の大内氏が京をまねた街づくりを行い、大内文化をいまに伝えるのが瑠璃光寺の五重塔だ。

全面葺き替え工事中の五重塔(写真提供:山口県観光サイト)
全面葺き替え工事中の五重塔(写真提供:山口県観光サイト)

 ただ、五重塔としては珍しい檜皮葺き(ひわだぶき)の屋根を後世に引き継ぐため、2024年5月現在、国宝瑠璃光寺の五重塔は、約70年ぶりの全面葺き替え工事の作業中でシートでおおわれている。生の五重塔は見ることができないが、その分、葺き替え工事中ならではの景観があり、特別デザインのシートが印象に残るのではないだろうか。 

800年の歴史がある湯田温泉が山口市の中心部に

 瑠璃光寺五重塔の檜皮葺き屋根の改修工事は2026年3月末の完成予定だが、そのほか、市内にはさまざまな歴史的建造物などが残っている。五重塔ゆかりの大内氏を継いで戦国大名の雄となった毛利元就の菩提寺として知られるのが洞春寺。山門と境内にある観音堂は国の重要文化財に指定されており、座禅体験ができるほか、敷地内の工房では陶芸体験もできるようになっている。

 また、「西の京」といわれるだけあって、京都の祇園祭を山口市に持ち込んだ「山口祇園祭り」は、およそ600年の伝統を持ち、毎年7月20日には、八坂神社で鷺(さぎ)の舞が奉納され、多くの観光客で賑わう。

 山口市は山口県の県庁所在地だが、市内の中心近くに温泉がある全国でも珍しい県庁所在地となっている。湯田温泉はおよそ800年の歴史があり、多数の温泉旅館、ホテルなどがあって、中心部から歩いて行ける便利な場所にある。

山口市以外の見どころは?

 山口県には、「おいでませ、やまぐち」として、山口市以外にも訪れてみたい場所が少なくない。それも、ニューヨーク・タイムズ紙が「2024年に行きたい52カ所」の3位に取り上げた理由のひとつになっているのではないだろうか。

  2015年には、萩市の産業遺産群が世界遺産登録されたが、2000年に開通した角島大橋は、コバルトブルーの海の上につながる全長1780mの橋で通行料金なしの離島架橋としては日本屈指の長さを誇っており、映画やコマーシャルのロケ地として人気がある。

山口県岩国市の錦帯橋(写真提供・山口県観光サイト
山口県岩国市の錦帯橋(写真提供・山口県観光サイト)

 橋は橋でも、岩国市の錦帯橋は木造5連のアーチ橋。東京の日本橋、長崎の眼鏡橋と並んで、日本の三名橋のひとつとされている。

 美祢市の中・東部に広がるのが秋吉台。日本最大のカルスト台地で、国の天然記念物に指定されている。その地下には巨大鍾乳洞の秋芳洞がある。

 下関市には、フグの市場として知られる唐戸市場があり、早朝には実際のセリを見学できるし、フグ料理の名店も多い。日清戦争の講和条約締結の場所となった春帆楼はなかでもよく知られている。 

 周南市の沿岸部には全国でも有数の石油化学コンビナートが形成されていて、幻想的な工場夜景を船上から楽しめるクルーズツアーが人気。日本夜景遺産に認定されており、若い世代に、映える景色として人気を集めている。

見どころが豊富な山口県は移住先としても魅力的

 こうしてみてくると、山口県にはさまざまな文化・歴史があり、1日、2日ではとても回りきれない。山口市に拠点を持って、じっくりと回ってみるのもいいだろうし、移住先としても魅力があるのではないだろうか。

 先にもみたように、山口市のマンションはまだまだリーズナブルな価格帯で手に入れることができるので、観光がてら物件を見て回るのもいいのではないだろうか。

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