都心湾岸フラッグシップマンション対決!
「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」VS「ブランズタワー豊洲」

2019年9月30日公開(2024年4月30日更新)
櫻井幸雄:住宅評論家

都心湾岸エリアは、21世紀に入ってから急速に注目度を上げている場所。さらに、来年の東京五輪で注目はさらに高まり、世界的な知名度も上がることが予想される。その都心湾岸で、今、2つの注目マンションがモデルルームを公開している。「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」と「ブランズタワー豊洲」だ。特徴の違う2つのマンションをどう評価するか、不動産の専門家としての見解をまとめたい。(住宅評論家・櫻井幸雄)※新築販売時の記事です。

「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」の第1期はほぼ完売の売れ行き 

 憧れの湾岸でマンションを購入したいと考えている人、そして、すでに湾岸エリアにマンションを所有し、同じエリア内での買い替えや買い足しを考えている人にとっては、「晴海フラッグ」「ブランズタワー豊洲」のどちらにしようかという悩みが生じていることだろう。

 実際、2つのマンションは性格は大きく異なる。「どちらが住みやすいか」だけでなく、「どちらがもうかるか(値上がりするか)」などということを考え出したら、そう簡単に結論はでないだろう。

HARUMI FLAG(晴海フラッグ)の外観
HARUMI FLAG(晴海フラッグ)の外観
出典:PIXTA

 「晴海フラッグ」は、2020年東京五輪で使用される選手村を転用するマンションである。中古マンションのように思われがちだが、一般的な中古物件とは大きく異なる。

  選手村として使われた後、建物の内側はすべて外されて、一度骨格の状態まで戻る。そこから、住戸割りを新たに行い、内装、設備をゼロから入れ直す。

 選手村は、基本的に一人一部屋。これをそのまま売り出したら、1人暮らし用の1DKが大量に発生してしまう。その部屋割りをゼロに戻して、2LDKや3LDK、4LDKを新たにつくるわけだ。 

 選手村として使われるのは24棟。そこに5632戸の住宅を新たにつくるのだが、すべてが分譲されるのではない。うち1487戸は賃貸住宅となり、分譲マンションになるのは13棟の4145戸。さらにいえば、東京五輪終了後に超高層マンションが2棟建設される計画で、それは純粋に新築分譲マンションとして販売されることになっている。

 選手村として使われた分譲マンションと賃貸マンション、五輪後に建設される超高層マンション、そして商業施設や保育施設を含めた巨大な街の総称が「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」となる。

 その第1期販売はすでに8月に行われた。

 第1期600戸に対して、申込みを行ったのは追加販売分を含めて1683組。最高倍率で71倍になった住戸もあった。平均すると、約2.8倍ということになり、第1期600戸に対して、580戸に購入申込みが入ったので、ほぼ完売といってよいだろう。 

 第1期販売された600戸の価格は、2LDK〜4LDKが5400万円から2億3000万円。最多価格帯は8600万円台と6400万円台だった。これは、山手線内側と比べると、半額の水準といえる。さらに、これまでの日本のマンションにはない特性をいくつも備えている。

 とここまで書くと、「安くて、良質のマンション」ということになるのだが、そのほかに大きな短所がある。その短所を書く前に、長所についてまとめておこう。

「晴海フラッグ」の長所は、国際基準でつくられた仕様、短所は駅から遠いこと

 まず、共用廊下の幅やエレベーターホールが広く、エレベーター内も大型化されている。これは、東京オリンピックとパラリンピックの選手村としてのふさわしいサイズになっているからだ。共用廊下は今流行の「内廊下」方式ではない。外廊下になるのだが、とにかく、ゆったりつくられている。

 選手村として体格の大きな選手、車いすの選手も無理なく行き来できるようにつくられているわけだ。エレベーターや共用廊下は、選手村時代のものがそのまま利用されることになっている。

 これに対して、専有部(各住戸内)は、選手村時代のものを全て取り壊して、新たにつくり直される。部屋割りも変えられるので、「この部屋は、あの選手が使っていた」というような“痕跡”は一切残されない。

 そして、「晴海フラッグ」は、これまでの日本のマンションにはない特性を幾つも備えている。例えば、全住戸の玄関には上がり框(かまち)がなく、靴を脱ぐ場所と室内廊下がフルフラットとなる。欧米のコンドミニアムを思わせるつくりだ。

 内廊下の幅は内のりで1mあり、一般的なマンションよりも10センチ以上広い。この廊下幅に合わせるため、リビング入り口の室内ドアは幅広サイズとなる。これも、欧米並だ。

 天井高はリビングダイニングと居室で2.5m。キッチン部分、廊下部分、そして洗面所で2.3mを実現する。一般的なマンションより、それぞれ10㎝、20㎝高い。

 つまり、「晴海フラッグ」の住戸は、国際基準でつくられている。これは、不動産のプロとして高く評価したいポイントである。

 「晴海フラッグ」は、「用途を変える」という意味で、真のリノベーションマンションとなるわけだ。2020年の五輪終了後からリノベーション工事が始まり、分譲マンションとしての引き渡しは2023年の3月予定。3年もの年月をかけて造りかえられることになっている。

 一方で、短所は地下鉄駅から遠いことだ。

 都営大江戸線の勝どき駅から徒歩16分以上かかる。地下鉄駅まで徒歩16分では、銀座や大手町まで自転車で通う、という人も多くなるだろう。実際、都心で自転車生活できるのが、中央区に立地する「晴海フラッグ」の特徴となるのだが、やはり地下鉄駅に遠いのは、痛い。その点を嫌う人、というより「地下鉄駅まで徒歩16分など、問題外」と検討の対象外にする人もでてくるだろう。それは、仕方がないことだ。

 「晴海フラッグ」では、地下鉄よりもバス専用レーンを走るBRT(バス高速輸送システム)が利用しやすい。マンションのエリア内にBRTの発着所があり、それこそ次から次にBRTが来て利用しやすくなるはずだ。

 BRTはバス専用レーンを走り、一般車が専用レーンに入ることは厳しく制限される。そのため、地下鉄並みに正確に運行される。そして、利用者が多ければ増発も容易。従来のバスより格段に使い勝手が上がる。

 実際、名古屋市内ではBRTに近い基幹バス(専用レーンを走る)が運行され、その便利さから、基幹バスのバス停周辺の地価が上がる、という現象が起きている。

 といっても、BRTの様子はまだ想像しにくい。だから、「BRTなどアテにならない」という声も出てくる。そのおかげで、価格は抑えられているともいえる。

 都心湾岸エリアも、マンションが増え始めた当初は、「あんなところ住むべきじゃない」という意見が多く、そのために当初は格安で分譲された。新しいものには厳しいご意見がつき物なのである。

【関連記事はこちら】>>価格大公開!【HARUMI FLAG(晴海フラッグ)】潜入レポート、再販売後は想定以上の人気に!

 

「ブランズタワー豊洲」の圧倒的な利点は駅近だが、その分値段設定は高め

「ブランズタワー豊洲」は48階建ての超高層タワーだ
「ブランズタワー豊洲」は48階建ての超高層タワーだ

「ブランズタワー豊洲」は、東京メトロ有楽町線の豊洲駅から徒歩4分に建設されるマンションだ。豊洲エリアでは、近年、駅から徒歩7分以上のマンションが増えている。

 その中、最後の"駅近”マンションになるかもしれない。駅に近く、大規模商業施設の「アーバンドックららぽーと豊洲」へは徒歩5分と便利。そして、地上48階建て、総戸数1152戸の超高層・大規模であるだけに、注目度は高い。

 7月下旬からモデルルーム公開が始まり、販売開始は10月上旬の予定だ。

 住戸は約43㎡の1LDKから約219㎡の3LDKまで幅広い住戸が設けられ、現時点での予定価格は「未定」。しかしながら、価格の目安を探ると、75㎡程度の3LDKで9000万円前後となりそうだという。70㎡程度の3LDKであれば、8000万円台、約100㎡の住戸で1億2000万円から1億3000万円といったところだろう。

 都心立地としては納得感が大きい設定だが、「晴海フラッグ」よりも予想される価格設定は高い。その理由は3つある。

 ひとつは、どんな街区になるか想像しにくく、未知数が多い「晴海フラッグ」と比べると、「ブランズタワー豊洲」は価値がはっきりしている。多くの人が住んでみたい、と考えている豊洲の中心地近くに建つ。「ああ、ここに住めば、間違いなく便利」だと誰もが認める立地なので、価格が高くなるわけだ。

 もうひとつ、「晴海フラッグ」は、五輪選手村として使われた後、リノベーションして生み出されるマンション。住戸内は新しくされるが、中古の要素もある。だから、割安な価格設定となり、ピカピカの新築マンションである「ブランズタワー豊洲」の方が価格設定は高くなってしまうのである。

 3つめの理由は、駅からの距離の違い。

 「ブランズタワー豊洲」は、東京メトロ有楽町線の豊洲駅から徒歩4分だ。これに対し、「晴海フラッグ」は大江戸線勝どき駅から徒歩16分以上かかる。現実的には、地下鉄よりもバス専用レーンを走るBRTが利用しやすい。「晴海フラッグ」のエリア内にBRTの発着所があり、それこそ次から次にBRTが来て利用しやすくなるはずだ。が、その様子は、まだ想像しにくい。 

 以上の理由で、江東区に立地する「ブランズタワー豊洲」の方が、中央区に立地する「晴海フラッグ」よりも高額になる、と予想されるのである。

 その予想価格でも、「ブランズタワー豊洲」には住戸の魅力が多い。

 建設地は開放感が大きく、小学校が隣接。各住戸の玄関そばに、大型の防災備蓄倉庫が設置されていたり、「中間免震構造」を採用し、非常用電源は72時間分を備える。もともと地震に強い場所として開発された豊洲、東雲、有明エリアの中でも、特に地震に強いマンションになる計画なのだ。

 「ブランズタワー豊洲」の建物で、次に注目したいのは、眺望の良さを満喫できるようになっていること。

 角住戸には、眺望が広がるコーナーサッシを設けているのだが、そのコーナーサッシは床面から立ち上がる。床からサッシがはじまっている形式である。しかも、このコーナーサッシには横の桟が入っていない。縦桟だけで構成されており、気持ちがよい。横桟を無くすために、設計は苦労したと推測される。

 一方で、バルコニーに設置されるガラスの手すりには、縦桟に加えて横桟が2本入っている。これは、一般的な手すり(高さ120㎝)より高い150㎝にしているため、風圧に耐えるように桟で補強しているわけだ。手すりを高くしているのは、バルコニーに出たときの恐怖心を軽減させるため。これも、眺望を楽しむための工夫といえる。

 「晴海フラッグ」と「ブランズタワー豊洲」は、いずれも眺望が開ける立地で、生活利便性も高い。建物にも工夫が多い。違いとしては、「晴海フラッグ」はスケールの大きな新街区に住むことができるのに対し、「ブランズタワー豊洲」は豊洲の既存エリアに建設され、「ららぽーと」が近い。

 なにより大きな違いは、地下鉄駅までの距離。前述した通り、「ブランズタワー豊洲」は、東京メトロ有楽町線の豊洲駅から徒歩4分であるのに対し、「晴海フラッグ」は地下鉄駅から遠い。

 「晴海フラッグ」には、新しい街区の住み心地がどれほど楽しくなるか、という未知数の楽しみがある。「ブランズタワー豊洲」の住み心地は、想像の範囲内だろう。

 結局のところ、確実性を求めるなら、値段が高くても「ブランズタワー豊洲」。割安に購入し、将来の値上がりを期待するなら「晴海フラッグ」……。そんな分類ができそうだ。

関連記事はこちら>>
◆【HARUMI FLAG(晴海フラッグ)】価格大公開!第2弾潜入レポート
◆「ブランズタワー豊洲」の価格大公開!潜入レポートで分かったメリット・デメリット

【完売】ブランズタワー豊洲(※新築時のデータです)

価格
完成時期
2021年10月下旬予定
  • 東京都江東区豊洲5丁目2番1の一部他(底地地番)
  • 東京メトロ有楽町線「豊洲」駅から徒歩 4分(高層棟入口まで5分)、ゆりかもめ「豊洲」駅から徒歩 4分(高層棟入口まで4分)
間取り
1LDK ~ 3LDK(予定)
専有面積
4街区】一般販売住戸:85.37㎡~152.10㎡43.41㎡ ~ 219.91㎡(予定)
総戸数
1152戸(事業協力者住戸1戸含む)
売主
東急不動産株式会社(売主・販売管理)・株式会社NIPPO(売主) 他2社
施工会社
_

※データは2019年7月20日時点。最新情報は公式サイトをご確認ください。

 
 
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