マンション相場の暴落は起きる!? 新築マンションの価格推移(2007年〜2019年)から、2020年以降の動向を予想!

2020年9月11日公開(2022年3月30日更新)
坂根康裕:不動産ジャーナリスト

2007年以降、上昇の一途をたどっている首都圏の新築マンション価格だが、今後、価格はどのように変化するのだろう? 「コロナの影響で都心のマンションが値下がりするのではないか?」「五輪延期で(または万が一中止になれば)不動産価格は下落に転じるのでは?」という声も聞かれる、新築マンション価格の動向を考察したい。(不動産ジャーナリスト・坂根康裕)

首都圏の新築マンション価格は、12年間で3割近く上昇している

 まずは首都圏の新築マンション価格がどのように変化しているのかをみてみよう。図表1は、リーマン・ショックの前年に当たる2007年から、2019年までの12年間の首都圏全体の「新築マンション平均価格の推移」をあらわしたものである。これによると、首都圏全体で新築マンションの平均価格は、4,644万円から5,980万円に、28.8%値上がりした計算になる。

【図表1】首都圏新築マンション「販売価格」推移(2007年~2019年)
 

 ただし、首都圏の新築マンションの価格相場は、東京都心部になるほど高く、郊外になれば低くなる。

 図表2は、首都圏の新築マンション「供給割合の推移」をエリア別(都区部、都下、近郊県)に構成している。このグラフから分かるように、「供給割合」は、年ごとに各エリアで随分と異なり、特に2007年は千葉県のシェアが高いことが分かる。そのため、新築マンションの価格推移は、エリア別に把握するのが望ましいだろう。

【図表2】首都圏のエリア別新築マンション「供給割合」推移(2007年~2019年)
 

 また、当然のことながら、面積の大小によって戸当たりの販売価格は変わってくる。地価が上昇局面に入れば、分譲価格を抑えるため、1戸当たりの分譲住宅の面積は小さくなる傾向がある。これは総額への影響を抑える「圧縮プラン」と呼ばれる、規格のダウンサイジングである。そのため、相場の変化は平米(㎡)単価で置き換えて把握したほうが正確な数値が分かる

 図表3は、首都圏のエリア別新築マンション「平米(㎡)単価指数」の推移をあらわしたものだ。首都圏の新築マンション平均平米(㎡)単価は、61.4万円(2007年)から87.9万円(2019年)に43.2%上昇した。上昇率は、販売価格(+28.8%)に比べ、14.4ポイントも高いということが分かる。

【図表3】首都圏のエリア別新築マンション「平米(㎡)単価指数」推移(2007年~2019年)
 

首都圏のエリア別新築マンション「平米(㎡)単価指数」推移
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※2007年の平米(㎡)単価を100としたときの推移を示す

 このグラフから分かる、首都圏の新築マンション相場の特徴は以下のとおりだ。

・マンション相場の上昇傾向は、2013年以降に顕著である
・都区部と神奈川県は、リーマン・ショック後(2008年)からアベノミクスの開始(2012年)まで、2007年の水準を回復できていなかった
・2007年の水準を一度も下回っていないのは千葉県のみ

エリア別の販売戸数・販売価格・平米(㎡)単価の推移(2007年〜2019年)

 ではここから、エリア別(都区部、都下、近郊県)に新築マンションの価格推移と供給動向をチェックしてみよう。

 あらためて新築マンションの相場推移における留意点を述べると、「エリア別供給戸数シェア」と「面積」以外にも、「地域のなかでの人気立地・好立地の割合」、「駅近の割合」、「超高層の割合」なども大いに影響するという認識が必要だ。

 これらを念頭に置きながら、都区部から順に、2007年から2019年の12年間でどのような変化があったのかを見てみよう。

【図表4】都区部の新築マンション「販売戸数・販売価格・平米(㎡)単価」推移
 

 都区部の特徴は以下のとおりだ。

販売価格
6,120万円(2007年)→ 7,286万円(2019年)に、1,166万円上昇(+19.1%)

平米(㎡)単価
85.6万円/㎡(2007年)→ 112.3万円/㎡(2019年)に、31.2%上昇

販売戸数
アベノミクスがスタートした2013年に急増している

【図表5】都下の新築マンション「販売戸数・販売価格・平米(㎡)単価」推移
 

 都下の特徴は以下のとおりだ。

販売価格
4,263万円(2007年)→ 5,487万円(2019年)に、1,224万円上昇(+28.7%)

平米(㎡)単価
56.0万円/㎡(2007年)→ 79.3万円/㎡(2019年)に、41.6%上昇
首都圏内では最も高い伸びを示した

販売戸数
2007年から2019年まで著しく減少。単純比較で3分の1以下の水準に落ち込んでいる

 続いて東京近郊県(神奈川県、千葉県、埼玉県)の推移を見てみよう。

【図表6】神奈川県の新築マンション「販売戸数・販売価格・平米(㎡)単価」推移
 

 神奈川県の特徴は以下のとおりだ。

販売価格
4,500万円(2007年)→ 5,295万円(2019年)に、795万円上昇(+17.7%)

平米(㎡)単価
59.3万円/㎡(2007年)→ 75.8万円/㎡(2019年)に、27.8%上昇

販売戸数
2015年以降10,000戸を下回る減少傾向が続いている

【図表7】埼玉県の新築マンション「販売戸数・販売価格・平米(㎡)単価」推移
 

 埼玉県の特徴は以下のとおりだ。

販売価格
3,684万円(2007年)→ 4,513万円(2019年)に、829万円上昇(+22.5%)

平米(㎡)単価
49.6万円/㎡(2007年)→ 64.0万円/㎡(2019年)に、29.0%上昇

販売戸数
2014年以降、4,000戸前後で推移し、極端な減少は見られない

【図表8】千葉県の新築マンション「販売戸数・販売価格・平米(㎡)単価」推移
 

 千葉県の特徴は以下のとおりだ。

販売価格
3,672万円(2007年)→ 4,399万円(2019年)に、727万円上昇(+19.8%)
値上がりはしたものの、4000万円前後で推移しているため、首都圏では比較的購入しやすいエリアと言える

平米(㎡)単価
44.8万円/㎡(2007年)→ 60.5万円/㎡(2019年)に、35.0%上昇

販売戸数
2007年が最も多く、単純比較では2019年は7割以上減少している

新築マンション価格は上昇するも、超低金利により毎月返済額は減少している

 図表4(都区部)、図表5(都下)から分かるように、首都圏の新築マンション価格は、12年間に平米(㎡)単価ベースで3割から4割もの価格上昇が起きたわけだが、住宅ローン利用者(購入者)にどれくらい負担の変化があったのだろうか。

 2007年と2019年、それぞれの金利水準で借り入れ(借入額:購入価格×9割)たとして、毎月返済額は以下のような違いがみられた。

【図表9】首都圏新築マンションの販売額と毎月返済額の比率

 

首都圏新築マンションの販売額と毎月返済額の比率

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データ参照:フラット35は「住宅金融支援機構」金利データから、変動金利は2007年当時の住宅情報誌から、2019年は某都銀サイトのデータを適用
※借入条件:期間35年・元利均等
金利(2007年):フラット35は2.821%、変動金利は1.95%
金利(2019年):フラット35は1.00%、変動金利は0.625%

【図表10】首都圏新築マンションの販売額と毎月返済額の比較
 

首都圏新築マンションの販売額と毎月返済額の比較
※借入条件は上と同じ

 すべての都県で販売価格が上昇したにもかかわらず、毎月返済額は都下の変動金利を除いて減少している。

 つまり、家計の負担は軽減したということである。

今後のマンション相場は?

 新築マンション価格の高騰は、住宅ローンを利用して購入する層から見れば、現実の負担増は起きておらず、デベロッパーは手の届く範囲に価格設定し、供給していると捉えることができる。

 「この先、販売価格が多少変動したとしても、超低金利下では総支払い額が増えることはなく、人口動態や持ち家志向に大きな変化が見られない限り、マンション相場の暴落が起きるようなことはない」と筆者は予想する。

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